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英国でライオンに人間を食べさせる公開処刑が行われていた証拠となる遺物が発見される(ローマ帝国支配下時代)

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(著) (編集)

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image by:G. Speed / University of Leicester Archaeological Services
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 1世紀から5世紀まで、イギリスはローマ帝国の支配下にあった。その時代、人間がライオンの餌にされていた可能性を示す遺物が見つかった。

 イギリス、レスターにあるローマ時代の家屋から発見された、泥にまみれた青銅の遺物は、紀元200年ごろに作られたキーハンドルであることがわかった。

 これは、かつてローマ帝国だった旧領土で見つかった唯一の遺物であり、そこにはライオンに処刑者を食べさせる装飾が施されていた。

遺物に彫刻されたライオンと格闘する男性と4人の若者

 イングランド・レスターシャー州、レスターのフライアーズ・コーズウェイで2017年に発掘された青銅製のキーハンドルには、ライオンに投げ与えられている人間の姿がリアルに描かれている。

 獰猛なライオンと格闘しているひとりの男がはっきりわかり、裸にされた4人の若者たちが、そんな残酷なシーンを恐怖の面持ちで見守っている。

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ローマ時代の青銅のキーハンドルの上半分には、ライオンと取っ組み合っている男性の正面と後姿が描かれている。 / image credit:G. Speed / University of Leicester Archaeological Services

ライオンに罪人を食べさせる公開処刑

 この希少なローマ帝国時代の遺物は、発見された場所の名をとって”フライアーズ・コーズウェイ・キーハンドル”として知られている。

 レスター大学の考古学チームは、この青銅のキーハンドルについての研究結果を『ブリタニア』誌に発表した。

 共著者のギャヴィン・スピードは、発見された当初は、青銅の遺物だとはわからなかったが、きれいにしてみると、いくつかの小さな顔が描かれていることがわかり、非常に驚いたという。

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保護処理をしたフライアーズ・コーズウェイ・キーハンドル(長さ12センチ) / image credit:G. Speed / University of Leicester Archaeological Services

 描かれているシーンは、残酷な公開処刑の場面だという。共著者のひとり、キングス・カレッジ・ロンドンのジョン・ピアスは、このようなものが見つかったのは、イギリスにあるローマやケルトの遺跡だけでなく、ローマ帝国全体としても初めてだという。

 イギリスにおけるローマの権威の残虐性を、はっきり示している遺物だといえる。

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キーハンドルの下半分には、左から右に4人の若者が彫られている。この希少な遺物は、ローマの属州だったイギリス、つまりブリタニアで、犯罪者たちがローマ人にどのように扱われていたかについて、光を当てている。 / image credit:G. Speed / University of Leicester Archaeological Services

紀元200年頃に作られたローマ帝国の権力のシンボル

 このキーハンドルは、イギリスでのローマ帝国の権力が全盛だった紀元200年頃に作られたと思われる。現在行われている修復作業が完了したのち、2023年にレスターにあるジュリー・ウォール博物館で展示される予定だ。

 ライオンに抵抗している気の毒なこの男は、ケルト人戦士と考えられ、上半身裸で、髪は伸び放題、髭ももじゃもじゃだ。

 ローマ人に征服された者に死が迫っているところを描いていると思われ、全能とされたローマ帝国に敵対する者の虚しい抵抗を象徴している。

Thrown to the Lions? New evidence reveals lions were used during executions in Roman Britain

キリスト教徒が本当にライオンの餌になっていたのか

 キリスト教徒が本当にライオンの餌になっていたのか?という疑問がわくかもしれない。この問いに対する答えは、イエスでもあり、ノーでもあるという。

 ポーランドの作家、ヘンリク・シェンキェヴィッチの1895年の小説『クォ・ヴァディス:ネロの時代の物語』(1951年に映画化)で、皇帝ネロが人間をライオンに食わせたというイメージが植えつけられた。

 しかし、これは事実ではない。歴史的には、4世紀のキリスト神学者で、ラテン語教師、現代イスラエルのカエサレアの司教だった、ラクタンティウスが、ネロはキリスト教徒の最初の迫害者としている。

 ネロは、ローマの大火をキリスト教徒のせいにし、ローマの歴史家タキトゥスによると、彼らに”野生動物の皮をかぶせて、犬に八つ裂きにさせた”という。

 キリスト教徒に対する刑罰は、1世紀から2世紀の始めに始まったという。当時、使徒パウロをはじめ、ローマ市民だったキリスト教徒は、即座に容赦なく斬首されて処刑された。

 2世紀末には刑罰の種類は、磔刑や火あぶり、獣に襲われるなどがあった。死刑囚やその仲間は、腹をすかせた獰猛なヒョウやイノシシ、ライオンなどと一緒に闘技場に閉じこめられた。

 野生動物によるこうした恐ろしい処刑は、ラテン語で”damnatio ad bestias”として知られている。

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犯罪者を攻撃するヒョウ。西暦3世紀のローマ時代の床のモザイク。チュニジア考古学博物館 / image credit:Dennis Jarvis / WIKI commons

 ローマのコロセウムでも、キリスト教徒が動物に襲われるシーンはあったが、ローマ支配下でのイギリス、レスターで見つかったこの青銅のキーハンドルは、イギリスで囚人が野生動物に殺されていた初めての証拠といえよう。

 当時のイギリスにいた裕福なローマ人たちは、メソポタミアや北アフリカから船や馬車でライオンを輸入していたという。

 ローマ帝国周辺でも、彼らにとって反抗的な”野蛮人”を支配し、服従させ、致命的な刑罰を与えるために、動物が使われていたことが知られている。

References:Thrown to the Lions? New evidence revealed for the use of lions during executions in Roman Britain | News | University of Leicester / Artifact Reveals People Were Fed To Lions In Roman Britain | Ancient Origins / written by konohazuku / edited by parumo

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この記事へのコメント 36件

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  1. 当時、少なくなっていたけどローマにもライオンはいたという。

    そういえばトラを絞め殺した人いたよね(腹にしがみついて窒息させた)。
    ローマではどうだったんだろう?

    • +3
  2. 証拠っていうとちょっと違うな
    そういう事が行われていた可能性を示唆するものではあるが
    これは、この形状から連想したに過ぎない、ちょっと想像を膨らませすぎだろう

    もちろん、その事実が無かったとはいわないが
    他の色々な研究結果と合わせて考えて、そういう事があった可能性が高いねという事
    この形状から、決まることじゃない

    • +5
    1. ※3
      研究者の色々な考証に対しておそらく何も研究していない人が一言で違うって言ってしまうのって現代の問題よね

      • +16
      1. ※6
        半魚人の彫刻があったら
        半魚人が生存していたって言い張りそう

        全てを鵜呑みにせず
        ちょっとは自分の頭で考えような

        • -14
        1. ※28
          想像上の架空の状況にしか存在しない対象にお説教するのってなんかすごいっすね
          これこそ典型的なストローマン論法だと思います

          • +1
          1. >>30
            側から見てても完全に藁人形論法&クォートマイニングだね、、
            意図的にやってるならある種悪知恵を使った詭弁だが。
            単純にそういう論理展開の仕方は間違っている、という事を知らない無意識の誤謬だろうな、、

            知識の共有として、
            クオートマイニング
            ストローマン論法(藁人形論法)
            チェリーパッキング
            という詭弁、もしくは誤謬を使う人がここ最近知識人と呼ばれる人の中でも多いので、知っておくとよく言われる論理のすり替えや歪曲引用に気付きやすくなります。

            • +2
    2. ※3
      そうだね
      こんな彫刻に何の証拠価値もないね

      証拠というからには、いつ、どこで、誰が殺された記述書と
      ライオンに食われた遺骨ぐらいは最低必要だろうな

      • -9
    3. >>3
      元の文章を読めばわかる。
      Showは明らかなケースに使われる。

      これはArtifact Revealsとなっている。
      Revealは以前には知られていなかった情報が、データの分析、解釈によって一つの結論に達した、謎が解かれるという意味合いがある。
      よく明らかになる。と訳すのが多い。

      Revealはある種、Showより意味合いが強く、研究過程が目的に達した場合に使うことも多い。

      本当に根拠が不確かで不明確なものはIndicateなど他の用語が使われるので、基本的には何かしらのこれを明らかといえるくらいの複数データを解析、研究した論拠、がある可能性がかなり高いです。

      示唆する程度のものはsuggestが多く、Indicateよりも論文として弱い表現です。

      • +6
      1. ※3
        同じこと思った
        タロットカードとかライオンは力の象徴として一般的だし
        装飾品なんだから美術的視点の方が説得力ある
        下の人間の数が4人(柱の数も東西南北も4だから、場所や空間や土台の比喩にされやすい)なところ、一人一人の目の開け具合が違うところからして
        力と戦う男=勇敢な人間と
        目を閉じることで、戦う前から諦めた者(あるいは臆病者)と
        目を見開きよく見る者とかの寓話的装飾に見える

        キーハンドルならなおさら
        処刑よりも寓話的芸術的視かたの方がより自然だと個人的には思う

        >>33
        の論文も、自分みたいな意見の持ち主に反対された結果
        強い言葉で書かれたかもしれないし、言葉の使い方だけじゃ分からないんじゃないかな?
        それに考古学は推測と想像でやっているから
        こうだと思ったけど違ってた、というのは当たり前の分野だと思う

        自分は>>3の意見が好きだよ

        • -1
        1. >>34
          実際少し読んだだけでも、ズリテンで見つかった他の類似品や、ここでは上げきれない程の類似例から考察し

          その上で、最終的な推測をしている。
          ローマ時代のイギリスでは、ムネラ(近い意味では公共事業)に関するエピグラフや文献がほとんど無いため、物証が大きな手掛かりだそうだ。

           
          最新の骨学的研究から致命的な暴力を伴う見せ物(このような処刑)が当時の英国人にとって身近であったとの根拠が見つかっている。

          骨の分析によると、アリーナとの暴力の関連性も明らかだそうだ。

          最後のまとめ、としては、
          これをどう読み取るかは、前述の通り、ローマ文化や史料に精通しているかどうかで変わると書いてある。

          つまり普通に見たらその通りただの美術品だが、複数のデータを統合してみるとこのような考察になる。

          素人考えの推測、批評を流布する前に、論文が出てるなら読んだほうがいいと思います。

          しかし、この論文のRevealを証拠という訳が正しいかは分からない。

          • +7
          1. ※36
            34だけど
            はえええ
            すごか
            何も言葉でないけど、楽しくコメ読みました(論文には目を通していないため)
            ありがとう(*´∀`*)

            • 評価
  3. 人道だ人権だってあからさまに言われ始めたのってごく最近だからね
    先進国でもちょっと前まで処刑見物は娯楽の一つで人々が押しかけるのが当たり前だったし色々と趣向を凝らしただろうね

    • +11
  4. サムネうんk・・・かりん糖かと思ったわ

    • +64
    1. >>5
      俺もサムネ見た瞬間糞かと思った。

      ローマの遺跡から出土した、化石化したライオンの糞から人骨が…ってな話かと。

      • +3
  5. 遺跡のライオン檻から未消化の人間の…ってサムネかと思った

    • +20
  6. ザワザワ・・・
    1に勇気、2に度胸、3に覚悟だ・・・。

    でもライオンに食べられちゃったら残念賞で300万だよ!

    • +1
  7. 日本でも海外でも罪人や権威に従わない人物を
    残酷に処刑することで、見せしめと異物排除の効果と
    非日常で人々の日々の鬱憤を晴らすためのショーとして
    の役割があったらしい。

    現代でもネットで炎上案件に便乗して、対象を叩くことで
    鬱憤ばらしする人が多いのと同じ。

    • +13
    1. >>13
      犯罪者だからってその人を非難していいわけないからね。ましてや死刑を求めるとか以ての外だし、未だに死刑が許されてる日本とアメリカ(一部の州)は異常としか思えない。
      ゆくゆくは深刻な人権侵害である懲役刑も廃止するのが望ましい。

      • -30
      1. ※18
        思想を語りたいならもっとお勉強して下さい。

        • +4
  8. ウン…だと思ったのが自分だけじゃなくてよかった。
    てっきり出土したライオンのウン…に人骨が混じっていたのかと思った(怖い

    • +14
    1. >>15
      まったく同じこと思って記事開いた人間がここにも

      • +2
  9. 大昔のムツゴロウさんみたいに、よーしよーしと軽くいなす猛者もいたりして

    • +2
  10. 今の日本犯罪犯しても刑期が短い。
    これぐらいでもいいと思う。

    • -2
  11. ローマ時代の遺跡からライオンの骨が出土してその胃袋部分に人骨があった、っていうんなら「証拠」って言ってもいいけど、彫刻にそういうシーンが掘られてただけか。
    これで「証拠」になるならギリシャ・ローマの神話も大抵事実認定されちゃうのでは。
    獣裂きについては文献での言及もあるからやってたのは確かなんだろうけど、これは精々で「傍証」程度でしかないと思う。

    • -1
  12. 手に持ってるやつ、当時生きてたライオンのうんkの化石が出てきて調べたら人間の残骸があったのかと思ったわ

    • +4
  13. 過去に発見された遺構・遺物や記録を「ライオンなどのエキゾチックな猛獣がイギリスまで運ばれていた」という前提で洗い直す証拠となりうるかもというような話らしいので今後に期待
    英国北部で発見されていた動物の噛み痕があるグラディエーター(とされる)人骨たちの研究ともリンクしてゆくのかな

    では一頭のライオンを当時の英国まで生きて到着させるためには一回の輸送で何頭載せたらよいのか、ローマで使役されているライオンを輸送したのであればライン川~海越えルートであろうかなど調査や発見の夢ひろがっているようなことも書かれていて、当時の動物たちにとっても苛烈でキツい過去の現実があったのであろうかなど考えさせられる。全期間でどれだけ輸送中に損耗したのかと遠い目
    キーハンドルってのははじめて知りました。この意匠はどういった部屋の開け閉めに使う鍵に組み合わせたのであろうか

    • +7
  14. ブッダってトラに自分の体食わせたって話だったっけ?

    • 評価
  15. ローマ帝国とローマ帝国領で獣による処刑が行われていたのは確かだから、
    ブリテン島でもそれが行われていたかもと考えるのはなんか分かるな。

    • +6
  16. 正直タキトゥスの叙述はあからさまにスエトニウス大先生と
    記述内容やり取りしてる臭いのが信憑性を損ねる
    批判されてる人物にこれ以下はないという点においての参考資料にはなるが

    • 評価
  17. 良かった。ライオンが黄門様からひり出した人間の成れの果てだと思ったのは、自分だけじゃなかった!

    • +5
  18. ら、ライオンに噛まれた痕がある頭蓋骨とか身体の骨が無い限り信じない。
    ひょっとしたら、創作物で神話を元に再現した奴かもしんないから。

    • +1
  19. これ格闘してるのを見物してんだから処刑じゃなく剣闘士の興業じゃねーの?
    キリスト教徒のフィルター通すと処刑になっちゃうんだな

    • 評価
  20. イタリアのコロッセオじゃ罪人が剣闘士として称えられて英雄だったりグッズも販売されて人気だったからイギリスに流れたお土産品じゃないのかな。

    • 評価

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