
人間は、本来そこに存在するはずないものを、これまでよく見知った既知の認識で解釈してしまう。こうした現象を「パレイドリア」という。
昔からよく知られている現象だが、なぜ我々はこのような錯覚をしてしまうのか?シドニー大学の新たな研究により、脳内でパレイドリアが起きる仕組みが明らかとなった。それは他人の顔を瞬間的に見分けるために必要なものであるという。
広告
脳は本物の顔とパレイドリアの顔をどう認識するのか?
あるはずのない顔が見える。パレイドリアが起きているとき、一体脳は何をしているのか? オーストラリア、シドニー大学の研究グループがこの不思議な認知機能を調査した。すると、人間の本物の顔とパレイドリアの顔は脳の同じ認知プロセスによって処理されていることが明らかになったそうだ。
『Proceedings of the Royal Society B』(7月7日付)に掲載された研究では、パレイドリアの顔(偽物の顔)が見えたとき、脳がその顔を偽物として無視してしまうのか、それとも本物の顔として扱っているのかどうかが調べられている。
デビッド・アレー教授らは以前、ティンダーという出会い系アプリのように画面をスワイプすると次から次へと表示される顔を見たときに、現在表示されている顔から読み取られる表情が、前に表示されていた顔のものに左右されることを発見した。
今回の研究でも、これと似たような実験が行われている。ただ前回と違うのは、本物の顔に混じって、偽物の顔が表示されたことだ。

photo by Pixabay
脳は偽物の顔も本物として解釈していた
実験の結果、意外にもその結果はまったく変わらなかった。このことは偽物の顔もまた、本物の顔と同じように脳が解釈していることを示しているのだという。「雲の中に顔が見えるという現象が、ただの子供の空想以上のものであることを意味しています」とアレー教授は話す。
つまり何かが顔のように見えたとき、それは無理矢理そう解釈しているわけではなく、実際に脳の顔検出プロセスが働いているのだ。そこに笑顔や怒りのような表情が見えれば、それもまた脳の顔検出プロセスの仕業だ。

photo by iStock
他人の顔を素早く判別するために必要な機能
アレー教授によると、進化によってこうした仕組みができた理由は、ただの物体を顔と見間違うことがあったとしても、本物の顔を見逃すよりはマシだからと考えられるという。社会的な生き物である私たちは、他人の顔をいち早く識別し、その表情などから相手が味方なのか敵なのか、あるいは喜んでいるのか怒っているのかをさっと判断できなければならない。
そのために脳は、目が2つでその下に鼻と口が1つずつといった、大雑把な顔のテンプレートを使っている。
おかげで脳は数100ミリ秒という電光石火の速さで顔を検出できるようになったが、その代償として、テンプレートに一致したものなら何でも顔と感じてしまうようになった。
そして脳は、その偽物の顔をそのまま本物の顔として、そこから表情を読み取ろうとする。だからただの物質でありながら、人間の顔であるかのような奇妙な錯覚を覚えることになる。
つまり火星の人面石も、進化によってつくられた脳の仕組みの賜物ということだ。それはある意味で人工物とも言えるのではないだろうか?

photo by Pixabay
注:海外ではパレドリア現象の中に、3つの点が集まった図形が人の顔に見えるシミュラクラ現象も包括されている。本研究は主にシミュラクラを説明したものだが、シミュラクラは日本だけで通じる表記となるため、誤解を防ぐためにここではパレイドリアとして説明している。References:A man in the moon: why our brains see human faces everywhere - The University of Sydney / written by hiroching / edited by parumo
追記:(2021/07/16)本文を一部訂正して再送します。
あわせて読みたい






コメント
1. 匿名処理班
人の顔ってよりも、動物への反応、肉食動物への警戒じゃないかな。
シュミクラの∵の構造ってさ、人間の顔や草食獣よりも、肉食獣の目と鼻じゃない?
2. 匿名処理班
でもあの顔が「早くここまでおいで 待っとるよ〜」と我々に言っている気がしてならない
3. 匿名処理班
言ってる事はよくわかるが火星の写真は光の加減とかいうけど最初のと次のでは明らかに違くね
4. 匿名処理班
パトレイバー?
5. 匿名処理班
どんなに風化しても、パレアドリアをうまく使って人類に発見させようとしたのが、火星の顔だ。
やっぱ作った人々は進んでるね。
6. 匿名処理班
猫だって車をにらみつける。ヘッドライトが目であると認識している感じ。
7. 匿名処理班
「あの山、地球人の顔みたいで怖いんだよね」
8. 匿名処理班
プラネットライカであったな。
あれは創作じゃなくてこういう元ネタがあったのか。
9. 匿名処理班
いや、その、あの画像が陰影とかの影響で人の顔に見えたわけで。
絵画、漫画、戯画何でもいいが、擬人化された画を見てそれを人間の顔だと感じるのは別に現象とかではないのでは?WYで女体に見えるとか、そもそも顔でないモノにも人は反応するわけだし。
10. 匿名処理班
70年前にアイザック・アシモフが提唱してよね、これ
11. 匿名処理班
パレイドリアがカレードリアに見えるのもパレイドリアなのか
12. 匿名処理班
>>5
うーん…
13. 匿名処理班
※4
パトレイバーの漫画で、オカルト系が怖い熊耳さんが壁のシミに「人の顔に見えるのはゲシュタルトの理論で説明できる」と言っていたのを思い出した。
14. 匿名処理班
これは間違いなく生き残るために進化した能力だ。まえ山で茂みに隠れてた熊を一瞬で判断できたのも3つの点のおかげ。恐ろしかったわ。
15. 匿名処理班
洗剤のノズルやコロッケの断面が男優の姿に見えるのもそれか
16. 匿名処理班
>>3
一緒よ
不鮮明な写真の鼻の穴にあたる部分の丸い影のせいで更に人面に見えただけ
17. 匿名処理班
👨「すみませーん、カレードリアくださーい。」
18. 匿名処理班
人面岩の詳細画像は逆にもっと人工物に見える。
また、USSエンタープライズ号が隠されているような感じ。
19. 匿名処理班
目を持っていて、映像をパターン化して識別しない動物っているんですか?
20. 匿名処理班
※17
あ、じゃあ俺はパエリアで。
21. 匿名処理班
※20
👩「苛性ソーダ入ってて、マーズそうですけど。」
22. 匿名処理班
スターフォース
23. じょん・すみす
火星探査機バイキングが撮影した”シドニアの顔”は、その山の影を見ると
わかるんだけど、結構尖った山なんだよね。
上空から見えるように人面を作るなら、もっと
平たく作る様な気がしないでも無いんだけど。
24. 匿名処理班
>>上の写真はNASAの探査機が撮影した火星の地表を撮影した画像である。
撮影した〜撮影した〜
と同じ表記が1文の中に連続して出てくるような書き方は、避けるべきという教育を受けてきたので、違和感がある。
ここは
上の写真はNASAの探査機が撮影した火星の地表の画像である。
とか
上の写真はNASAの探査機が火星の地表を撮影した画像である。
で良いのではなかろうか
25. 匿名処理班
火星の顔隠蔽されただけ
かもね、意外と真実は違うとか
要は公開する画像変えれば
いいだけだし
まだ気軽に火星を撮影できる国は
限られてる
26. 匿名処理班
風呂屋で床材の人造大理石ながめてると無限とも言えるパターンで顔が見えてくるよ 大部分は人外だけどたまに美人さん萌えさんが出現