メインコンテンツにスキップ

受動的な傍観者と思われていた脳細胞の一種が、実は記憶の忘却に大切な役割を担っていた可能性が示唆される

記事の本文にスキップ

9件のコメントを見る

(著) (編集)

公開:

この画像を大きなサイズで見る
Gerd Altmann from Pixabay
Advertisement

 脳の中枢神経系における細胞の約5~20%を占めている「ミクログリア(小膠細胞:しょうこうさいぼう)」は、脳内の損傷や感染に対していの一番に対応にあたる免疫細胞で、常に危険なものがないか目を光らせている。

 とても大切な役割を担う細胞なのだが、これまでの経緯から言うと、損傷や感染などがない限りは、受動的な傍観者と考えられてきたものだ。

 しかし『Science』(2月7日付)に掲載されたマウスを対象にした研究によると、ただ眺めているだけと思われたミクログリアには、記憶の保持と忘却に関する重要な役割があるかもしれないという。

 もし同じことが人間でも確認されれば、認知症やアルツハイマー病といった記憶をダメにしてしまう病気の治療にもつながると期待される発見であるそうだ。

ミクログリアの役割

 ミクログリアにはいくつも仕事があり、先ほど述べた脳内の損傷や感染の第一対応者としての役割以外にも、掃除屋としての顔がある。

 脳内は死んだ細胞やら蓄積された化学物質やらでとにかく乱雑で、定期的にこれらを片付けなければならない。それを行い、脳を健康に保っているのもミクログリアだ。

 また「シナプス」という神経細胞同士のすきまを維持する役割もある。シナプスは、神経細胞同士がサインを送って会話を交わすうえで重要な接点なのだが、特に脳が発達するときには、ミクログリアが積極的に不要なシナプスを刈り取り、効率的な回路の形成を手助けしている。

 何を隠そう、私たちが物事を覚えていられるのも、こうした神経細胞同士の結合のおかげだ。だが、ここはアルツハイマー病といった病気の攻撃に弱い部分でもある。

 病気によってシナプスが破壊されてしまえば、記憶もまた失われる。もし、シナプスを守ることができれば、そうした記憶に影響する病気を治療することもできるかもしれない。

 そして、これについて注目すべきは、アルツハイマー病発症のリスク因子とされる「TERM-2」という遺伝子には、ミクログリアが持つタンパク質の情報が書かれているということだ。

この画像を大きなサイズで見る
selvanegra/iStock

ミクログリアを除去したマウスは恐怖体験を忘れない

 マウスを対象にした今回の研究では、ミクログリアが記憶の保持・忘却機能と密接に関連していることが示されている。

 その研究ではまず、マウスの足もとに電流を流し、その環境におかれると恐ろしさで身が竦むように恐怖を植え付けた(恐怖条件づけ)。

 それからその後の経過を観察すると、35日が経った時点で、恐怖で身が竦むという反応を示すマウスは、70%から20%に低下した。これはマウスがその場所への恐怖感をだんだんと忘れていったということだ。

 次に、遺伝学や薬理学的な方法で、マウスの脳からミクログリアを取り除いてしまってから、再度同じ実験が行われた。

 すると、こちらの場合は、同じ日数が経過してからも、50%ほどのマウスがまだ電気ショックの恐怖体験を覚えていたのだ。

 こうした結果から、ミクログリアは、記憶の固着と、どの記憶を保持し、どの記憶を忘れるのかというメカニズムに関与しているとの仮説を、研究グループは導き出している。

この画像を大きなサイズで見る
ttsz/iStock

人間の脳のミクログリアもやはり記憶に関与しているのか?

 さて、これはマウスを使った研究だが、人間の忘れる能力についてどのようなことが言えるのだろうか?

 覚えておくべきは、私たちの脳は、まず間違いなくかなり作りが異なっているということだ。マウスと人間のミクログリアが明らかに別物であることを示した科学的証拠はどんどんと集まってきている。

 そうした研究は、人間とマウスのミクログリアを調べ、損傷に対する反応にいくつか違いがあることを発見している。このことは、人間とマウスとでは、脳のメンテナンスにおける反応もまた大きく異なっている可能性があるということを意味している。

 人間の記憶関連の機能においてもミクログリアが重要な役割をになっている可能性はあるが、それをはっきりさせるためには、まだまだ研究が必要になる。

 どうやらミクログリアの職務内容がまた少々複雑になっただけであるようだ。

References:Brain cells long thought of as passive play key role in memory – study in mice/ written by hiroching / edited by parumo

📌 広告の下にスタッフ厳選「あわせて読みたい」を掲載中

この記事へのコメント 9件

コメントを書く

  1. こういう機能がわざわざ備わっていてる、ということは
    「忘れる」という現象も生物にとって大切なナニかなんだろうなぁ
    と、思ったり

    • +7
  2. 人は忘れるから生きていける。それは分かっているけど、完全記憶能力って聞くとワクワクする。

    • +2
  3. リメイク版「タイムマシン」に出てくる未来のAI司書は主人公に80万年後の世界で出会うまで「忘れることが出来ない」その苦しみを吐露することが出来なかったと言う場面好き。

    • 評価
  4. 忘れたいのに忘れられない嫌な記憶に苦しめられる。忘れることは本当に大事

    • +5
  5. アインシュタイン脳は、数箇所の部位でグリア細胞が多い、という研究が有る

    • 評価
  6. 割と少し前に出てた脳の記憶が神経回路でなくて脳漿に漂うミクロRNAだって話って今どうなっているんだろ
    もし記憶がミクロRNAってのが本当なら今回の話は膠細胞?がRNAを消化して記憶を消すんだろうね
    それの繋がりでそれなら海馬ってRNA合成工場って仮説はどうかね。加えて扁桃体とかも感情RNAとか作りそうだし、松果体とか下垂とかも妄想RNA、性的RNAとか作ってる可能性

    あとは膠細胞が記憶消すとして、特定の記憶全消しするためには脳全体で同期してなきゃならないけど、膠細胞自体がネットワーク作れるわけではないからニューロンの神経回路を利用してる、これは当然として…するとだがニューロンってのがもし仮に同期・調整機能だけのためにあるとした場合、意識や思考といった脳の機能の本質が膠細胞や星状細胞にあるという可能性が浮上する。何が言いたいかというと

    同期機能を複雑化高次元化するためにニューロンは回路を作る→膠細胞が記憶を消去する
    ↓↓ならば
    膠細胞や星状細胞によるミクロRNAの高速処理によって意識が作るのではないか
    ↑↑ようは
    膠細胞や星状細胞など消化細胞の複雑高次元な同期のために神経回路があるのではないか→間質細胞が脳の機能の本質か(ついでに意識の本質はRNAなのか)

    一行で書くと、インテリジェンス→ブレインワークス→インフォメーション(同期→消化→思考)
    まあこの仮説は3者の仮定義があっていればだが…

    • 評価
  7. つまり
    ニューロン=高次同期コンピュータ←意識ではない・演算とは同期?
    膠細胞・星状細胞=RNA読み出し・消化←脳の本質・実際の活動・認知機能・思考活動
    RNA高速処理=脳漿に満ちた破片RNAの同期した全体性←意識や思考

    インフラ←脳全体の挙動
    エディタ←脳の実活動
    文書←意識

    • 評価

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

サイエンス&テクノロジー

サイエンス&テクノロジーについての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

人類

人類についての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

最新記事

最新記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。