メインコンテンツにスキップ

フィンランドの囚人たちは刑務所内でAI(人工知能)に関する最先端技術が無料で学べる

記事の本文にスキップ

24件のコメントを見る

(著) (著)

公開:

この画像を大きなサイズで見る
image credit:Pixabay
Advertisement

 イソップの逸話に「北風と太陽」という話がある。北風と太陽、どちらが旅人の上着を脱がせることができるかの勝負で、結局は太陽が勝った。そこから転じ、寛容的な対応が厳罰な対応に勝る、という教訓となっている。

 北欧の受刑者に対するスタンスはまさに太陽側だろう。罪を憎んで人を憎まずの精神にのっとり、快適空間を実現していることで有名だ。

 人道的でしかもセキュリティ管理もしっかりしており、下手をすれば企業のオフィスより快適そうに見えることもあるともいわれている。

 そんなわけで、フィンランドの刑務所では刑務作業も最先端のようだ。

 刑務作業といえば肉体労働を思い浮かべる人も多いはずだが、なんとノートPCを使った作業を行い、人工知能(AI)のスキルを刑務所に居ながらにして学べるという。

刑務作業はノートPCでデータ選別

 スタートアップ企業・Vainuは、仕事を請け負ってくれる相手を探すための包括的なビジネス向けデータベースを構築している。

 そのためには膨大なニュースを読み、それを分類するという作業(たとえば「アップル」は企業名か果物かなど)を人間の手で行わねばならない。

 こうした作業は英語ならば比較的容易だ。アマゾンの「メカニカルターク」なるウェブサービスを利用できるからだ。しかし、フィンランド語のような英語以外の言語となると途端に厄介なものとなる。そこでVainuが目をつけたのが、フィンランドの受刑者たちだった。

 Vainuはヘルシンキとトゥルクの刑務所にそれぞれ10台ほどノートPCを送り、作業を依頼。刑務所側は大喜びだった。

 何しろAIのスキルはますます重要性を高めているのだ。受刑者にしてみれば、そんな最先端の技術を身につけられる上にお金を稼ぐこともできる。

 また作業に必要なのはノートPCだけなので、直接的に危険な武器として利用される心配もない。まさにウィン・ウィンで、今では毎日100人弱の受刑者がVainuのプロジェクトに参加しているという。

この画像を大きなサイズで見る
image credit:Pixabay

フィンランドには受刑者向けのAIコースを学べる刑務所も

 フィンランドは先進的な刑務所政策で知られている国だ。

 同国の刑務所の3分の1は「オープン・プリズン」となっており、受刑者たちは服役中でありながら一般人と一緒に生活し、仕事をしている。

 そんなフィンランド南部の都市トゥルクでは、また新しいスマートプロジェクトが実験されている。

 その都市の刑務所では部屋や図書室にノートPCやタブレットが置かれており、これを使って受刑者はニュースを読んだり、数学を学んだり、さらには人工知能のスキルアップコースを受けたりすることができるのだ。

 コースはヘルシンキ大学がコンピューター科学の学生向けに用意した初級AIカリキュラムをよりわかりやすく仕上げたもので、最後まで終えれば大学の単位を取得することも可能だ。

 刑罰局のプロジェクトマネージャー、ピア・プオラッカ氏は自分自身がAIコースを受講してから、刑務所のような施設でも実施可能であるかどうか考えるようになったという。

 彼女が提出した企画書は2019年5月に正式に認可され、トゥルクの受刑者はネットを通じて本コースを受講できるようになった。

学校じゃ数学が得意だったもんで、こいつに興味を惹かれてね。でも今まで勉強したこととは全然違うな

と試験棟でコースを受講する10人の受刑者のうちの1人は話す。

この画像を大きなサイズで見る
image credit:Pixabay

釈放された受刑者が労働市場に参入するためのITスキルを

 フィンランド政府はこの制度を、ITスキルの需要が高い労働市場で、釈放された受刑者がきちんと競争力を身につけられる入っていくための支援として活用している。

受刑者はこうした分野の発展からは取り残されがちだ。経済の変化は目まぐるしいから、出所したらまったく違う労働環境に変わっていたなんてこともある

と本プロジェクトのコンサルタントであるミーガン・シーブル氏は話す。

 この秋からは、さらに3つの刑務所でも導入されることになる。シーブル氏はこうした試みから、出席率や終了までの長さなど今後どのように改善できるかデータを収集できればと考えている。

 フィンランド政府は、人口の1パーセント以上にAIの基礎を習得させるという目標を立てているそうだ。

References: The vergeなど / written by hiroching / edited by usagi

📌 広告の下にスタッフ厳選「あわせて読みたい」を掲載中

この記事へのコメント 24件

コメントを書く

  1. 色々と異論はありそうだけど、結果としてこのやり方が上手くいってるんだとしたら、見習う余地はありそう。
    国にとっても、出所→仕事がない→再犯の流れより、出所→AI技師の方が遥かにマシだろうし。
    強いて言えば、その教育を一般市民にも受けさせてくれってのは思う。

    • +19
    1. ※1
      犯罪発生率から言ってその方法は得策じゃないと思うね

      人口に対する犯罪発生率が多いから捕まえる人も多くなる。根本的な発生率を策によって減らす事が出来ないから、発生した後の対処法でせめて再犯を低くしようって話だから。言ってみれば、事態に対処するフェーズ2の方策。
      日本は色んなデータから見ても、人口に対する犯罪発生率が極端に低い。この事は、犯罪に対して心理的なハードルが高い事を示してる。つまり、起きてからそれに対する方策を充実させるより、そもそも犯罪者にならないような方策を取った方が効果的だという事だ。フェーズ1の方策だね。
      犯罪者になって捕まる事が無いようならば、再犯防止の為にこのような策をする必要も無い。
      フィンランドにしろ日本にしろ、どんな方策を取ろうが再犯してしまう部類の人は居るので、その辺りは考えに入れなくても良いと思う。

      • -9
      1. ※5
        悪人正機説をとる自分は、何らかの理由で一度罪を犯してしまって自暴自棄になられるよりは教育を施してリスタートすることを期待しますね。ただ、罪を犯したことに関してのペナルティということで罰を受けてもらうのは容認してもらわないといけませんけどね。
        教育しても再犯というのは、要するに頭が悪い(犯罪=罪を犯した自分に利益がすくないということが理解できない)わけで、一度でそれを見るのは難しい面もあるから三振アウトくらいかなぁとは思います。
        日本の死刑は日本の社会において、その人格(と肉体)が存在することは社会に対して害悪であると判断されるから排除することを目的として執行されるわけですね。これが再教育によって社会に利益をもたらす存在につなげられるなら、そっちの方が生産的だと思いますがねぇ。
        いいことはマネしてみるってのはアリじゃないかなと※1の意見に賛成ですわ。
        私も学んでみたいし。

        • 評価
    2. >>1
      そもそもだけどさ…
      犯罪を侵さないようにする社会や教育構造を作るのが先じゃない?と思う
      あと精神的、遺伝的疾患で更生ができないシリアルキラー、サイコパスタイプとかはどう対処してるんだろw

      • +2
      1. ※23
        >犯罪を侵さないようにする社会や教育

        ずいぶん簡単に言いやがってwそれができりゃ世界中うん千年も苦労したりせんよ

        • +2
      2. >>23
        日本の社会や警察の傾向では事故や犯罪は事前に防ぐこと求められるし好まれる
        それはいいんだけど、起こった後への対象は下手というか心情的に苦手なのかね
        異常犯罪だったらこういう心情は分かるけどね
        例えば交通事故とか車使ってるかぎり無くならないんだけど安全運転してる限り事故は起こらないという思想
        もっと大きな話でいうと事故や災害でも同様、絶対起こらない無理な仕組みを求めるし起こったときに無理矢理責任を求める
        社会全体でリスクと責任を受け入れるっていう考えなんだろうね、向こうは

        • +2
  2. 囚人にも居場所と存在意義があれば再犯は減るかなと思う反面、これで罪が償われるのかどうか疑問にも思ってしまう
    社会的にはいいとしても被害者の感情とかも含めるとちょっとね

    • -1
    1. >>2
      日本の刑法はそもそも被害者の報復を目的とした処罰の仕方を取ってないからね…
      それにどんなに重い処罰でも被害者の気持ちが晴れることはないと思うんだ。

      日本は犯罪を犯すと後ろ指をさされて真っ当な生活をするのがすごく難しくなっちゃう。

      だからこそ、こういう他国の「社会復帰を促すための刑務所」っていうのはすごく良いスタイルだと思う。
      長い独房で精神をすり減らしながらやっと出所しても社会に出たら普通以上の席がない。
      今のは社会はなんて息苦しいんだろうって思うよ。

      被害者の前で同じことを言えますかって聞かれても同じことが言えるね。
      だってどんな処罰でも被害者の屈辱は晴れることがないもの。

      • +2
      1. ※10
        >被害者の前で同じことを言えますかって聞かれても同じことが言えるね。

        その前に、そもそも再犯率が高いやり方を取る事は再犯をさせている状態に等しく
        最も言及すべき事は、再犯すると新たな被害者が産まれる事実
        つまり再犯率を低下させるやり方があるにも関わらず、再犯率を高いまま放置していいとする考え方の人間にこそ「被害者の前で同じことを言えますか」と聞き返すべきなんだよね

        • +3
  3. 福祉や教育を徹底して社会復帰を望める人作りが出来ているから巧くいくんだろうな。
    学習意欲が高いのは将来への展望を失ってない証拠。再犯率が低いのも納得。
    ドライに金勘定するとしても、大人になるまでたっぷりとコスト掛けた人間を腐らせておくのは無駄と言うもの。
    都合の悪いものの掃き溜めではなく、ちゃんと社会システムの一部になってる。
    被害者支援も手厚いようだし、理想的では。

    • +11
  4. 自分の家族を害されたりしてない人はいつも寛容寛容って言うよね。
    死刑反対派の弁護士が、家族を亡くしてから死刑賛成派に転じた有名な話があるのになあ。
    まず、犯罪を犯していない人たちを真っ当に正しく生きるように導く方が大事でしょ。

    • -10
  5. 手に職という意味だけでなく、論理的思考を身につけさせる意味でも再犯の抑止になると思うね。
    軽犯罪だろうが問答無用で死刑の世界でもない限り、再犯しなくなるようになるのが一番いいよ。

    • +4
  6. これが正解なんだよ
    日本は再犯率が非常に高い

    • +8
    1. ※7
      刑務所云々になるとどこのコメント欄でも、犯罪者がどうなろうが知ったこっちゃない!って人が多い気がする。そんな風土じゃ仕方ないのかもね
      法は被害者の身になってではなく第三者として客観的に裁くためのものだし、刑罰は受刑者のためのものであって誰かがスカッとするためのものじゃないのに。

      • +8
      1. ※9
        感情論に走るのが「遅れた国」の特徴だからね

        • +3
      2. ※9
        何の被害も受けたこと無い人間の戯言だな。
        刑務所や囚人の話なんて、まるでお伽噺のフィクションのように見ているんだろう?

        • -2
  7. 単に金周りや境遇が悪かったせいで学びがないってのはよくある話。
    これを期に、社会復帰できる人は少なくないだろう。

    ただ、犯罪犯して打ち込まれた結果、最先端の勉学を無料で受けられ、
    普通に生きている人は、奨学金に怯えながら学ぶってのはなんか変な話だけど。

    • +3
  8. 最先端技術なら食いっぱぐれないし再犯率低そうだな

    • +2
  9. 北欧の教育や福祉、囚人環境もそうだけど理想的だから真似できるならそれが一番いい
    だけどそれを実現できるのは高い税率プラス石油輸出国の金持ち国家で財源が豊富だからだ
    日本みたいな借金だらけの国じゃ真似したくても無理なんだよ

    • +2
  10. 全部とは言わないけどさ、例えばネット犯罪やネット詐欺を行って逮捕された人なんかは、木工とか価値の低い懲役するより、まっとうなコンピュータ技術を与えた方が刑務所内部の労働価値は上がるし、その後もまっとうな世界で生きやすいと思うんだよな
    罪の意識が低い人や、性格診断上おかしい人は除外するとしてさ

    • +3
  11. 技術を与えたらその技術を使おうという気になるだろうし仕事にも就きやすい。
    出所後にその技術が仕事で活かされたら犯罪によって社会に与えた損害を仕事による社会貢献で取り返すことができる。
    「なんかズルい」とか「被害者が納得いかない」とか感情優先の判断をしても社会は良くならないね。

    • +4
  12. コメント見てて関連するなと思ったのが「責任」の定義って何なのか
    企業・政治の重役が問題起こして「責任をとって」辞めるけどそれって責任なのかって。
    例えば汚職とかなら本当に責任をとるなら自分の後釜につく者が同じ汚職をしないように、もしくは企業の暗部的体制を第三者の手を借りて改善するってのが本当の責任で、責任取って辞める必要なんかないし無駄でしかないと思うんだよね

    だから「責任」って過去の罪とか償いとかそういう意味じゃなくて本来は「現在何をするか」「現在の対策」「マネジメント」って意味だと思うんだよ

    それ考えると犯罪者の今の刑罰って変わった方がいいかもと。懲役という過去からなんらかの現在へ。懲役しても責任なんか一切取ってない。
    遺族がよく言う法の下で償ってくれってのも過去の黒歴史をタイムカプセルに埋めてくれ以上の意味がない気がする。

    • +3

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

知る

知るについての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

人類

人類についての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

最新記事

最新記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。