
Image by Gerd Altmann from Pixabay
人は早く答えるように急かされると、本音よりも自分が良い人に見えるような回答をしてしまうのだそうだ。これまで学術的な研究では、「パッと答えてください」と回答者に要請したうえで質問をすることが非常に多かった。
『Psychological Science』(10月11日付)に掲載された新しい研究によると、こうしたやり方は回答者に嘘をつかせる結果につながるのだそうだ。
これまでに繰り返しなされてきた、質問に基づく研究の信憑性を揺るがす重大な結果である。
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「あまり考えずに直感で答えてください」が求められる理由
心理学のテストが好きな人なら、「あまり考えず、直観で答えてください」という枕詞には見覚えがあるだろう。なぜ、こうしたテストではパッと答えるよう求められるのだろうか?
アメリカ・カリフォルニア大学サンタバーバラ校のジョン・プロツコ氏によれば、それは私たちには直感に基づいた動物的思考と、もっと人間らしい理性的思考の2種類の思考があると考えられているからだそうだ。
回答に時間をかけさせると理性的思考が働きやすい。だから、パッとあまり考えずに答えてもらえば、より低次元の本能的な回答を得ることができる――というわけだ。

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時間的制約を与えて回答させる実験
このことを検証するために、プロツコ氏らは、被験者に「はい」か「いいえ」で答えられるシンプルな10の質問をしてみた。たとえば「思い通りに行かないと腹が立つ」や「相手が誰でも、大抵は聞き手だ」といった質問だ。このとき回答者は、11秒以内に答えるよう指示されたグループ、11秒以上時間をかけて答えるよう指示されたグループ、そのような時間的な条件が一切ないグループにわけられていた。
その結果、早く答えるように指示されたグループでは、社会的に望ましいとされる回答——いわば良い人な回答をする傾向があることが明らかになった。
良く思われる回答をした人の自己イメージを検証
次の実験では、パッと答えたときに良い人な回答になりがちなのは、本当の自分は善良な人間なのだという自己イメージが原因である可能性が検証された。こうした偏りのことを「善良な真の自己バイアス(good true self bias)」という。こちらの実験では、被験者にはやはりさまざまな時間的条件の中で質問に答えてもらう。それに加えて、ある社会的な状況を評価してもらい、その人が持つ善良な真の自己バイアスの程度をも判定してみた。
このテストで善良な真の自己バイアスが低いと評価された人たちは、良い人という自己イメージが強くないので、タイムプレッシャーがあっても良い人な回答にはなりにくいはずだ。

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急かされると自分を良い人に見せたくなる傾向が明らかに
ここから明らかになったのは、善良な真の自己バイアスが高いと評価された人は、概ね良い人に思われる回答をする傾向にあるが、特に考える時間が長いほどこの傾向が強く出るということだった。これは別に意外ではないだろう。だが意外にも、善良な真の自己バイアスが低い人であっても、タイムプレッシャーにさらされたときは良い人な回答をしてしまっていたのである。
つまり、急かされるからといって、良い人であれ悪い人であれ「真の自己」が顔をのぞかせるわけではないということだ。
むしろ、タイムプレッシャーがあると、たとえ自分を偽ることになっても、自分を善良に見せたいという欲求が人間にはあるようだ。
「あまり考えずにパッと答えてください」という要請は、回答者に嘘を吐かせる。ならば、そうした質問に基づいた研究の結果もまた、嘘の結果なのかもしれない。
References:Under Time Pressure, People Tell Us What We Want to Hear – Association for Psychological Science – APS/ written by hiroching / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
急かして「僕と付き合ってください!」って
言ったらOKもらえる?
2. 匿名処理班
いいや違うね、俺が急かされて出てくるのは嫌われるような回答だよ
3. 匿名処理班
へぇぇ
繕う時間与えなければ本音の方が漏れると普通に思ってたわ
案外回転速いって言うより防衛本能的な判断が自然と優先されるって事か
4. 匿名処理班
これは日本人は顕著に思う
「よく思われる」とは言い換えれば「無難な」「保守的な」とも言える
5. 匿名処理班
これから心理テストを受けるときは嫌われるような回答だけしてやろう
学者なんかに心を読まれてたまるか。あいつらも新しいサンプルが得られてたくさん論文が書けてそれだけ偉そうにしてられるだろうし、嬉しいだろうさ
今後はそう考える被験者が増える気がする
6. 匿名処理班
天気のこと、その家の家具の立派なこと、自分の奥さんのこと、犬の話。
ありとあらゆる「どうでもいいこと」をしゃべって、相手をイライラさせた後、立ち去り際に「あっ、それからもう一つだけ・・・」と言って、犯人に下手なウソをつかせて尻尾を掴む凄腕の刑事さんがいたんですよ。
7. 匿名処理班
心理テストやら性格分析なんてのは嘘ばっかりだよね
結果でわかる
8.
9. 匿名処理班
>>3
べき思考が強いタイプとか社交的なタイプだと特に反射的に模範解答が出てきやすそうな気がする
特に社交性が高いと無意識にその場の空気に合わせた会話してるらしいし
10. 匿名処理班
それ何て詐欺の手口?
11. 匿名処理班
新しい用語提案
バイアスが掛かる→フィックス(fix)が走る
フィックス=固定された精神構造という意図
やっぱり社会生活のなかで獲得する社会性・気遣い・体裁見栄・ルールマナーとか色々なソーシャルスキルが精神体の固定繊維骨格になってるのかなって。
で、時間がないと繊維骨格だけに電気が走る、と。
時間があっても繊維で思考してる人は体裁命って。
12. 匿名処理班
※1
はい。
13. 匿名処理班
いい人っぽい回答って自分の内心に問いかけなくても一般常識的な道徳に当てはめればいいだけだから、深く考えていられない状況では手っ取り早い回答なのかもね
よっぽどアウトローな環境で育たない限り一般的道徳は生育過程で耳にタコができるほど教えられてきてるから、本人がそれに従うかはどうあれ反射的に道徳判断できてしまうし
裏を返せば、小さい頃から親や教師や社会が口酸っぱく道徳を刷り込むように言い続けていることは確かに効果があったのかもしれない
じっくり考えなくとも道徳的な判断を反射的にしてしまうくらいに道徳的な思考のフレームを構築できているわけだから
14. 匿名処理班
育った環境や国によるだろ
なんでもかんでも自分が正しい理論で語るな
15. 匿名処理班
>>3
人間は集団じゃないと生きれない生き物だから咄嗟に孤立するような回答をしないように防衛本能が働くとみた!!
16. 匿名処理班
自分いつもこれだ…
人より飲み込みが遅くて、特に耳から入ってくる音をきちんと認識するのにタイムラグがあるんだ。ADHDだからだと思う。それで、早く答えなきゃって焦る。
んで本当のことじゃなくて「その場ですぐ会話が無事に終わるような理想的な(無難な)答え」を言ってしまう。
何で今嘘ついちゃったんだろう!?ってまた焦って、あっ違います間違えましたってワタワタ返事して、不審がられるっていうw
急かされる(焦る)と、早く終わらせないといけないって思うからそういう返事をしちゃう。なおかつ、すぐ反応できないポンコツとこれ以上思われたくなくて、好ましい返事になっちゃう。
17. 匿名処理班
急かされた場合でも回答が状況によるとか極めてロジカルに答える人だとどうなんだろう
自分をよく見せたいって人も多いだろうけど、あくまで自分のメリット優先の人やデメリット回避優先ってのが相手の意思とは別の場所に置いて考える人も結構いると思うけど
18. 匿名処理班
>>16
わかる。ホントにこれ。
わざわざ急かされなくても日常会話が常に早押しクイズだからわたわたするよね。
お互いゆっくり喋れるよう頑張ろうぜ
19. 匿名処理班
考える間もなくせかされると、広く一般に受け入れられそうなこと(一般的、規範的な回答)を言うこともあれば、ウケそうなこと(深く考えず思い付きのふざけたアホな回答)を言うこともあるので
「よく思われたい」って気持ちは同じでも、後者の場合だとアイツはしょうもない奴だなぁってなるばかりなので望んだ効果は得られていないもよう
20. 匿名処理班
コメディとかで昔から描写されてきたことだよなw
(一部の)学者がずれてるかという証明にも
21. 匿名処理班
「先生におかあさん」じゃないけれど、
よくある話の流れってこうだよねーみたいなやつしちゃう気がする
22. 匿名処理班
善良な真の自己バイアスが高い人はいい人で、低い人は悪い人なのかな?
23. 匿名処理班
ワイも時間を与えられると自分が悪く見えても正確な答えをするようになる
焦らされるとそれができなくなるからこの研究結果に納得できる