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狂戦士ベルセルクを獰猛にした薬物はナス科の植物である可能性が浮上(スロベニア研究)

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(著) (著)

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image credit:Pixabay
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 英語で「go berserk(ゴー・ベルセルク)」というと、”凶暴になる” という意味だ。この言葉は北欧神話に登場する異能の戦士・ベルセルクに由来するもので、「狂戦士」との邦訳からも口角泡を飛ばす野獣のような獰猛さを持つ戦士の一団をイメージする人が多いだろう。

 確かに彼らはバイキング時代に赤道から北のあらゆる市民を震え上がらせ、恐怖を植えつけた戦士たちである。

 ベルセルクたちにまつわるエピソードのひとつとして長く信じられてきたのが、戦いの前に幻覚キノコを服用して恐怖を感じないトランス状態に入り激しい戦闘に挑んだというものだ。

 しかし新たな研究によって、それは必ずしも真実ではないことがわかってきた。戦士たちが士気高揚のために向精神作用のある薬物を使用していたことは間違いない。だが、その原料はあまり知られていないナス科の植物・ヒヨス(Hyoscyamus niger)である可能性が高いようだ。

ベルセルクの獰猛さの源は幻覚キノコではない説が浮上

 スロベニアにあるリュブリャナ大学の民族植物学者、カーステン・ファチュア氏によると、ほかの幻覚作用のあるキノコや飲酒、精神障害、真菌性疾患の麦角中毒ではなく、ヒヨスがベルセルクたちの獰猛さの源である可能性が高いのだという。

 例えば、赤いカサをもつベニテンクタケはバイキングが跋扈(ばっこ)していたユーラシア中で見られ、こういうときによく引き合いに出されるキノコのひとつだ。

 その理由は、精神に影響を及ぼすイボテン酸を含むから。イボテン酸には強力な神経毒性があり、脳に障害を引き起こす薬物としてラットやサルを使った実験で実際に使用されてきた。

 これを摂取すると、めまい、幻覚、妄想といった症状をひき起こす。そして高熱や異様な発汗につながるため、ベルセルクたちが戦いの前に鎧や衣服を脱ぎ捨てる原因になった可能性はある。

 しかし、震えや嘔吐、下痢といった不快な副作用もあり、いくら荒くれ者のベルセルクだって接近戦の最中にそうした状態に陥りたくはないだろう。

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現在は世界中に分布するというナス科の植物、ヒヨス

image credit:Pixabay

バイキング時代に広く使われていた陶酔状態になれる薬草

 そんなわけでファチュア氏は、今回の研究を踏まえてヒヨス中毒がもっともありえる説だと考えたようだ。

 地中海原産のヒヨスは、ローマ人が支配した鉄器時代にスカンジナビアに持ち込まれたのだとか。

 デンマークやフィンランドのバイキング時代の多くの居住地でヒヨスの種が見つかっていることから、中世でも広く使われていたと思われる。

 効果的な鎮痛剤としてだけでなく陶酔状態に陥ることができる薬草として、ヒヨスはベルセルクたちの悪名高い戦闘スタイル、つまり純然たる激しい怒りを原動力にすることと大いに関係がある。

ファチュア氏は

怒りの種類は服用量や個人の精神状態に応じて、単なる興奮状態から怒髪天をつくような怒り、闘争心までさまざまだっただろう。

だがおそらく怒りがベルセルクたちの精神状態を支配する一番はっきりした要素であるため、その原因を特定する上でもっとも重要だ。

なぜヒヨスのほうがベニテングタケよりもベルセルクにとって戦いに陶酔できる中毒物質として重宝されたのか、非常に堅実な理由を示している

と説明する。

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踊る戦士と猛獣戦士(ベルセルクと思われる)を描いた木版画

image credit:Wikimedia commons

戦いの後に二日酔いのようになったのはヒヨスの後遺症か

 ベルセルクは戦いのとき、あまりに逆上しすぎて敵も味方も区別がつかなくなったとよく言われている。とくに人の顔を識別できなくなるのは、ヒヨス系の薬物による中毒症状として知られている。

 さらにトランス状態の後、ベルセルクたちはぐったりと疲れ切って二日酔いのような状態になったといわれているのも偶然ではない。

 ヒヨスも頭痛や目のかすみなど、まさに二日酔いのときのような後遺症を残す。一方、キノコ類にはたいていそうした不快な後遺症はない。

 ファチュア氏は「我々の知識の範囲に見合う証拠はあるものの、ヒヨス説はまだ憶測の域を出ない」としている。

 盾を噛んだり歯をカチカチ鳴らしたりといった、よく知られてはいるが説明のつかないベルセルクの行動がほかにもあるためだ。

 とはいえ目覚めたらひどい二日酔いで前日に何があったのかまるで記憶にない、といった状態はベルセルクでなくとも身に覚えのある人も多いのかもしれないが・・・?

References:Ifl scienceなど / written by konohazuku / edited by usagi

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この記事へのコメント 34件

コメントを書く

  1. まあ可能性はあるね。
    ナス科は、ほとんど毒を持つから何でもいいかも。

    ただ「白樺の妖精」と呼ぶとか聞いた気もする。
    そうなればキノコだろう。

    こういうのは原典に当たらないと、又聞きだと注釈者が「コレはこうだろう」「コレはあのことだろう」が入るのでかえってわからなくなる。
    ソーマと同一視する話も聞くがあれはインド系だしね

    • +2
    1. 日本ではハシリドコロという同じくナス科でアルカロイドを含む植物が知られている
      名前の由来は食べると錯乱して走り回るから
      またの名をキチガイナスビ
      普段口にするトマトやジャガイモもナス科だけど、ともすればそれらですら毒があるから※1の言うようにナス科なら何でもいいかも
      マンドレイクとかね

      • +6
  2. 確かに下痢と嘔吐しながらだと戦えないよな…

    • +6
  3. ???「私もベルセルクになれるはずだ」

    • 評価
  4. 漫画のベルセルクだと作中でコカの葉噛んでたな

    • 評価
  5. えっ狂戦士のキノコではない可能性?!(絶賛放送中のアニメを観ながら)

    • +2
    1. ※6
      ヴィンランドサガでベニテングダケみたいなの食ってましたね。

      • +2
  6. 向精神性の成分があるナスっていうからチョウセンアサガオの事かと思ったらヒヨスってのがあるのね

    • +1
  7. とりあえず「踊る戦士」は「やれやれ」という感じにみえる。
    猛り狂った人間=猛獣、というイメージは分かりやすいね。

    • +1
  8. 伝説が科学的に解明されていくパターン大好き

    • +14
  9. ダチュラって薬がコインロッカーベイビーズにでてきたな
    あれも凶暴になる茄子科の植物や

    • +3
    1. ※12
      京極夏彦の姑獲鳥の夏を思い出した。

      • 評価
  10. 狂戦士ってのはずっとパワー系障害者に熊の毛皮とか被せて戦場に放り込んだものとばかり思ってたから薬物による獰猛化は初耳

    • -6
  11. 子供のころおやじが理不尽に殴ってきたのはナス味噌ばっか食ってたせいだったのか…

    • -1
  12. これだ!って決定的なモノはないんじゃない?
    キノコも食べたろうし、このナスも食ってたんだろ。
    これから殺し合いをしに行こうっていうんだから、無理やりテンションを爆上げさせるために、そういうドラッグ効果のある食べ物を色々食べてたんだろ。伝承が残ってないだけで、覚せい剤的なヤバい植物とか沢山あったし接種してたと思うよ。
    バーサーカーの特徴である
    普段は大人しいが、キメると狂暴化して、冷めるとまた大人しくなる。
    ってこれまさに薬物中毒者の典型例じゃん。

    現代人だって、リゲイン、強眠打破やモンスターエナジー、レッドブル、それに酒だってそうだ。ここ一番ってとこで飲食をしてテンションを上げる方法は一つじゃない。

    • +9
    1. ※17
      「なんだよービールしかないのかよ」
      「あとは不味いウィスキーがあるぜ」
      「あのウィスキーか、明日残るんだよね」
      「酔えりゃ何でもも良いくせに」
      「そうそう俺たちゃ酒なら何でもいいのさ」
      「それでもあんまり混ぜんなよw、この間のチャンポンは最悪だったぜ」

      酒飲みの会話なんてこんなものだけど…

      • 評価
  13. 英語ではベルセルクじゃなくてバーサークって発音するけどな

    • 評価
  14. ベニテンクタケってxxxモドキみたいな感じの、ベニテングタケのアレンジバージョンかな?

    と思ったら普通に誤字だった

    • 評価
  15. ウラケンの漫画ベルセルクの設定は北欧の神話とか良く混ぜ合わせて、ストーリーができてるよな、ちゃんと終わらせて欲しい、ドイツの片腕義手騎士ゲッツとかファルコニアとか面白すぎる

    • 評価
  16. 雄叫びをあげて戦ってるときに急に下痢になったらっていう想像は 心にくる…

    • +5
  17. ナスで突撃させて、キノコで後詰の遊撃か。
    全員2日酔いじゃ次の日奪還に来た敵に対応できんだろ。

    • +4
  18. wikipedia「ヒヨスは、マンドレイク、ベラドンナ、チョウセンアサガオ等の植物と組み合わせて、その向精神作用を利用して麻酔薬として歴史的に用いられてきた」
    もはや執念というか人の業というかw

    • +5
    1. ※29
      アヘン・マンダラゲ(チョウセンアサガオ)・ヒヨス・ドクニンジン,だったな。僕が読んだ小説の中に出てきた古い麻酔薬のレシピは。

      • +2
  19. ペラドンナかなと思ったらヒヨスだったか。ま、いろいろ混ぜて使ってたんだろうけど。
    (薬草技術者としてのwitchの、表に出せないで記録が残らず、後の弾圧で消滅させられた秘匿技術あたりにあったんかな)

    • 評価
  20. つまり、ガッツはナスの煮浸しが大好物でOK?

    • 評価

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