image credit:Robert Clark/Courtesy of Phaidon
半分がオスで半分がメス。遺伝子変異が起こした雌雄モザイクは、甲殻類や鳥類をはじめ自然のいたるところで見ることができる。この現象は雌雄二型(オスとメスで外見上の違いがあること)を示す仲間が多い蝶では特に目を引く。このトリバネチョウは明るいオスの羽と、暗いメスの羽を備える。2011年には雌雄モザイクのナガサキアゲハがニュースとなった。
写真家のロバート・クラークは生命の神秘的な進化の姿を写真に収め、写真集Evolution: A Visual Recordで発表した。彼は身の回りを取り巻く進化の事例に真摯に向き合っている。
特定の蘭の受粉の為に進化したキサントパンスズメガ
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チャールズ・ダーウィンはマダガスカルから持ち込まれた30センチほどの蜜腺を持つランを調べて、これに適応した異常なまでに長い吻を持つ蛾が存在するに違いないと確信した。そして80年後、それは確認された。まさにこの花から蜜を吸うキサントパンスズメガが記載されたのである。「私の生涯において、このラン以上に興味を惹かれた対象はない」とダーウィンは友人の植物学者ジョセフ・フッカーへ宛てた手紙で綴っている。
これらの多様で広く分布した植物とダーウィンとのつながりゆえに、アングレカム・セスキペダレは今やダーウィンの蘭として知られている。これを研究することで、ダーウィンは、この種がある蛾からしか受粉できないことを理解する。その蛾にはこれまで見たこともないほど長い吻があるはずだった。
その蛾がマダガスカルのどこかにいるに違いないという1862年に発表されたダーウィンの説は、様々な方面から嘲笑された。それもキサントパンスズメガが発見される1903年までのことだ。もともとの学名はXanthopan morganii praedictaというが、このpraedictaはダーウィンが予測(predict)した種であることにちなむ。
地理的な分断により進化したヤイロチョウ
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博物学者アルフレッド・ラッセル・ウォレスがボルネオ島とスマトラ島で収集したヤイロチョウ。この島はいわゆる”ウォレス線”の西に位置する。ウォレスは、アジアの動物相が西に、オーストラリアのそれが東に分かれていることに衝撃を受け、地理的な分断による新種の進化の実例を示す地域であるとみなした。
ダーウィンが繁殖させた鳩
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ダーウィンが繁殖させた鳩は、人工的な選別のために身体的な変化が現れている。羽が下ではなく逆立つ個体(右。ジャコビン)や体が大きい個体がいる(左。ポーター)。
恐竜の面影を残したヒクイドリ
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鳥は恐竜に似ているだけでなく、まさに今も生きる恐竜である。この説が賛否両論あったのはそれほど前のことではないが、今では広く受け入れられている。ヒバリやワシからダーウィンフィンチまで当てはまる事実であるが、ヒクイドリほど分かりやすい例も稀だ。この種はオーストラリア/ニューギニアの固有種で、全長1.5メートル、体重45キロほど。地球で最大かつ最重量の鳥類の一つである。
水中で狩りを行えるように進化したクロコダイルの目
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クロコダイルの目は半水生環境で獲物を狙い定め、狩りを行えるよう進化した。潜水するとき横に閉じる第三の瞼で守られており、眼球は攻撃の際に眼窩へと引っ込む。輝板の薄い層が目のすぐ後ろにあり、これが網膜を通して光を反射させることで、画像の結びを補い、光の乏しい環境での狩を助ける。
犬と人の絆の長さ
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進化のスケールで見た場合、ほとんどの犬種は瞬きほどの時間しか存在していない。しかし人間の歴史においては、多くが古代種と言ってもよく、人と犬との絆の長さと固さを示している。例えば、アフガンハウンドは、かつてそれほどきちんとは定義されていなかったが、アフガニスタンやその周辺では1世紀の歴史を持つ。
ウマ科の複雑な進化の歴史
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ロバの胎児は、ウマ科に独特のいくつもの特徴を備えている。最近ウマ科の複雑な進化史を解き明かすヒントを与えてくれるツールが発見された。カナダのツンドラで発見された70万年前の仔馬の足の骨だ。ここから古代の馬の全ゲノムのマップ化が可能となった。それによると、ウマ、ロバ、シマウマは、これまで考えらえていたよりも2倍も古い400万〜450万年前に共通の祖先から進化したようである。
地球自身も進化している
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ダーウィンの時代、鉱山、農場、道路を拡大させる過程で決定的なことが明らかとなった。地上に息づく生命はおろか、地球自身も静止状態にはないということだ。その証拠の一つは、西部内陸海路で見つかった。ここは現在のメキシコ東部からカナダ北部へ至る地域にあった白亜紀の浅海である。今では海から遠く離れたこの一帯がかつては海だったとどのようにして分かったのだろうか?
化石である。プレシオサウルスやモササウルスといった巨大な海洋爬虫類が、巨大なサメなどの魚、ウミユリの一種などと一緒に発見されたのだ。
12万年前の人間の足跡
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「良好な堆積条件と、ヒト上科を含む動物が水源のそばにいるという事実の組み合わせ」という偉大な古人類学者リチャード・リーキーの発言は、人間の祖先が湖の付近で発見されることが多い理由を説明する手助けとなる。これらの美しい人間の足跡はおよそ12万年前のもので、タンザニア、ナトロン湖南部で発見された。
オランウータンとキリンの骨格
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オランウータンとキリンの骨格は、哺乳類の進化の幅広さを示している。オランウータンは、アルフレッド・ラッセル・ウォラスをボルネオ島サラワクの森に足を向かわせた種の一つだ。彼はここで自身の進化論を発展させた。チャールズ・ダーウィンはキリンについて多岐に渡り記述している。彼はその長い首が自然選択の格好の例だ考えていた。地球上の生命の驚異の進化の神秘が美しい写真で紹介されている、ロバート・クラークの写真集Evolution: A Visual Recordは日本のAmazonでも購入することができる。
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コメント
1. 匿名処理班
生命は驚きに満ちている。
当たり前だと思っている事にも多分まだまだ神秘は隠されているのだと思う。
2. 匿名処理班
今は、○○する為に●●の形態を持った物に進化した
じゃなく
たまたま●●の形態を持った物が出現して環境に適応、生存に有利だから生き残った
の方が主流じゃないの?
キリンの首は高い所の草を食べる為に長くなった訳じゃなく
たまたま何かの原因で首が長くなったキリンが他の動物が食べられないような高い所の
エサを食べられるようになったから、生存に対して有利になって生き残る事が出来た
みたいな
3. 匿名処理班
ジャコビンの誇らしさといったら!
4. 匿名処理班
>恐竜の面影を残したヒクイドリ
ヤダ・・・イケメン・・・///
5. 匿名処理班
雌雄モザイクの蝶であしゅら男爵を思い出してしまったwww
6. 匿名処理班
ダーウィンって着眼点からしてすごい
発想もはっちゃけてるし自分の考えをそこまで信じられるのもすごい
7. 匿名処理班
※2
首の短いキリンがオカピとして存在してるからねぇ...
ダーウィンの進化論では適者生存だけしか説明しておらず、種の分化については実は説明していないという...
(突然変異が組み込まれたのはネオダーウィニズム)
8. 匿名処理班
キサントパンスズメガの吻は寄生虫にしか見えない
9. 匿名処理班
このスズメガさんは、擬人化してはいけないな
18禁レベルのとんでもないキス顔クリーチャーになってしまう
10. 匿名処理班
昔半分がシジミチョウ、半分がムラサキシジミってのを捕まえたことがある。
めずらしいのかと思ったが、シジミチョウには割とある話だったらしく、
がっかりしたのでそのまま標本にせず放したな。
11. 匿名処理班
渾沌に呻くゴア・マガラかと思った
12. 匿名処理班
「特定の蘭の受粉の為に進化した」
こういう書き方をすると勘違いする人もいるから、表現には気を付けた方が良いのかも
まぁ普通に義務教育を受けた人なら、定向進化的な考えは現在では主流では無い、って知ってるはずだし、いちいち突っかかる所でも無いんだけど、※2みたいな人もいるしね