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自己中心的な態度が自制心を妨害するという研究結果(ドイツ・スイス研究)

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(著) (編集)

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 最新の研究から脳のユニークなメカニズムが明らかにされた。それによると、ある意思決定によってもたらされる結果を”未来の自分”に重ねて考えることで自制心が高まるのだという。

 この認知プロセスは、”心の理論(他者の心などを推測する心の機能)”を利用することで、私たちに現在形のエゴイスティックで利己的な欲求を克服させるのだという。

利己的な衝動は脳の側頭頭頂接合部が関与している

 チューリッヒ大学とデュッセルドルフ大学の研究者は、自制心に関連のある脳の領域を特定するために、被験者に「すぐにもらえるが少ない報酬」と「すぐにはもらえないが多い報酬」のどちらかを選ぶよう指示。この間、非侵襲的(生体を傷つけないような)な手法で脳の側頭頭頂接合部の機能の”オン/オフ”を行った。さらに被験者に対して、自分だけが得をする利己的な決定か、利益は減るが自分以外の被験者も得をする利他的な決定のいずれかを選ぶようにも指示した。

 その結果、大きなお楽しみを取っておくのではなく、即座に報酬を得るという衝動や独り占めしようという衝動に抵抗するプロセスには、側頭頭頂接合部が関与していることが示唆された。ここは心の理論で他人の立場に立って物事を考える際に使用する領域である。

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心の理論と向社会行動の鍵となる側頭頭頂接合部

 自制心の神経生物学的な根幹は、歴史的に前頭前皮質の前頭葉にあると考えられてきた。この領域はとりわけ感情の調整、衝動の制御、長期目標の設定に関与している。

 しかし、今回の研究からは、未来志向の行動や自制の鍵となるのは、側頭頭頂接合部という心の理論の行使、他人への共感、向社会的意思決定の促進に関与する領域であることが判明した。

 これまで、自制の神経生物学的な基盤に関するほとんどの仮説は、前頭葉が実行機能と認知制御を利用してより高次の目的をエンコードする機能に焦点を当てていた。しかし最近では、前頭前皮質と他の領域との相互作用が行動と自制に与える影響についても目が向けられるようになってきた。

 例えば、米ダートマス大学の研究者が行動阻害について調査するために動物実験を実施し、思春期の子供の危うい行動は、前頭葉の特定の領域と側坐核の間のバランス不全に関連する可能性があることを報告している。側坐核は報酬探索行動と依存症において中心的な役割を果たす。前頭前皮質が完全に発達するのは十代後半から二十代前半であるという事実は、多くの十代の若者が大人の自制心に欠ける理由を説明するかもしれない。

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 この研究者らは、思春期の間は前頭前皮質の眼窩前頭皮質の活動が乏しく、他方で側坐核の活動が活発であることが行動阻害が発揮されないことに関連していることを発見した。だが、今回の発見からは、側頭頭頂接合部もまた心の理論を用いて数日後、数週間後、あるいは数年後の自分の立場に立ってみることで将来的な必要性に注意を向けさせるという、自制において重要な役割を果たしている可能性があるらしきことが明らかとなった。

 本研究では、経頭蓋磁気刺激法という非侵襲的な手法で被験者の側頭頭頂接合部の活動を一時的に阻害した。その結果、側頭頭頂接合部の活動が阻害されると、被験者は衝動的な決定を下し(短期的な利得のために即時の報酬を選択)、より利己的になる(報酬を独り占め)傾向が見られた。また、心の理論を用いて他人の立場になってみたり、他人の視点で物事を考える能力が低下した。

 以上から推測すると、欲求の充足を遅らせるもっとも効果的な神経認知プロセスは、前頭前皮質と側頭頭頂接合部の両方を活発にする手法であるようだ。第一に、賢明な長期的視点に立った決定を補佐する自制プロセスは前頭前皮質の実行機能を活性化させ、目の前の報酬への誘惑を意識的に断ち切らせてくれる。

 第二に、側頭頭頂接合部が関与することで、将来の自分の立場に立って自己中心的な考えを克服することができる。すなわち、欲求充足を先延ばしにすることで得られる利益や、自制心を発揮して将来において長期的に得られる報酬の価値を思い描くことができる。

現在の自己中心的態度を克服することで自制心が高まる

 自己中心的な態度を抑え、他人のためになる行動をとる能力には側頭頭頂接合部が関与する。面白いことに、第三者の立場から将来の自分の長期的な必要性を想起し、目の前の欲求から注意を逸らすことは認知の飛躍である。これにはまた、心の理論で他人を思いやる際に使用される側頭頭頂接合部の領域が関与する。

 研究者はその論文において、「我々の発見は、自制心と向社会的意思決定にある本質的な共通点を実証し、自制に関与する神経認知プロセスの新しい側面を浮き彫りにした」と結論付けている。こうした未来の自分の幸福に注意を向けて自己中心的な考えを抑える機能は、依存症や脅迫性障害などの疾患の治療に効果を発揮すると思われる、衝動的な行動を抑え、自制心を高めるという新しい手法の開発につながる可能性がある。

via:Self-Centeredness May Sabotage Self-Control, Study Finds/ written hiroching / edited by parumo

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この記事へのコメント 27件

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  1. 齢を取って、ままならない事も増えたが、自らの「衝動的な思考」を「衝動的」だと明確に認識できるようになった。
    人間的な成長は、経験も重要だが、肉体的な変化も必要だと思う。

    • +7
  2. この研究は漢字の多い文章をきっちり読む能力にも関係してますか?

    • +9
  3. 早い話、静かな奴隷になってくれって事だよ

    • -17
    1. ※3
      それはない。何故なら、他人を甘やかす事は他人のためにならないからだ。

      • 評価
    2. ※3
      俺も思った
      まっさきに悪用されそうって

      • +3
      1. ※23
        残念ながら日本人という生き物は外面を重視するが故にそのように見えるだけだよ
        結束力ではなく、その実、独裁的な年功序列による采配と強制、そして苦痛を美徳とする狂った精神
        これらが密接に絡み合い、今の日本を形成しているんだ
        そうじゃなければ、年間何万人も自殺者を出すわけがないだろう?
        最近はマシになってきたし、今後上に立っているバブル世代が死ねばその思考も理想ではなくなるかもしれないね

        • +1
    3. ※3
      まったく違うっ、てかそういう意味の説明じゃない

      • -1
  4. 脳の特定部位が特定機能のみを司ってると考えるのがちょっと間違いなのかもしれないね
    よくパソコンと脳を比較させたりするけど(物理メモリとSSDが短期長記憶に当たるとか)、
    実際はパソコンほど厳密に分かれてるわけではなく、部位と部位がお互いに補填しあったり協力しあってるのかもしれない
    これも一つのリスクヘッジなんだろうな

    • 評価
  5. 自己中心的な人ほど、他人だけでなく自分にも不利益をもたらすとは皮肉だね。
    こういう記事は自分を客観的に見る機会になる。

    • +9
  6. 小学6年になる甥がいるのだが行動が自己中を絵に描いたよう
    冗談抜きで自分の行いを微塵も疑ってる様子がない
    美点も多いがそれが全てを台無しにしてる残念な子なのだ
    成長に期待していいものだろうか

    • +1
    1. ※6
      いいよ
      本文にもある通り20代中盤でようやく完成するから
      少年法も理にかなった法である
      まぁ罪が重いとそんな免罪符も使えない雰囲気になるけどね

      • +1
      1. ※10
        ※6の子はともかく、罪を犯しても若いからしょうがない、では社会や被害者に対して少し無責任過ぎる気もするね。
        犯罪を起こす可能性が高いなら、尚更抑制の為に重い罰が必要なのでは?
        刑罰には犯罪行為を思いとどまらせる威嚇の目的もあるのだから。

        • +3
  7. 歳とるとエネルギー枯渇して衝動的に動く余裕なくなるからかね
    そんなこともないか

    • +1
  8. 我慢出来ない人の大半は確かに後先考えない人だよな
    日本の場合行き過ぎに注意って事も多いけど多少の我慢は本人を成長させると思う
    ちょっとの我慢は自分にも周りにも大事
    匙加減の問題なんだが両極端なのがなぁ

    • +6
  9. なんかわかるわ
    他人のことがどうでもいいときって未来の自分のこともどうでもいいよな
    今の自分じゃないし

    • +9
  10. 基本的に自分だけが徳をする考え方の人は後々に苦労する
    全体的に徳をする考え方のは今は苦労するけど後々人間関係に於いても何不自由無く生活出来る事だと思う
    夏休みの宿題は早めにやる人と最後に苦労する人との相違点に似てるかも
    (´・ω・`)

    • 評価
  11. 此の論法だと 子供や孫が居ない高齢者が一番自制心が無いって結論になるんだけど、
    俺の記事の読み方に問題があるのかな?

    • +3
    1. ※15
      さっきの投稿は特に再犯に限定せず、犯罪者予備軍も含めた社会全体への威嚇、という意味のつもりだった。
      私も重い罰が犯罪抑止にならないという説は聞いてたけど、フィリピンの麻薬犯罪対策の結果はその説を覆したと思ってる。
      私も議論したい訳ではなく、せっかくだから知ってる事と自分の考えを書いただけなので、賛同できなくてもあまり気にしないでほしい;^_^A
      レスありがとう

      • -2
  12. 自己承認欲求の暴走で失敗を繰り返し自己嫌悪、
    という人のヒントになりそうな話だなぁ。

    • +2
  13. つまりどういうことなのか誰かわかり易く教えて下さい

    • +5
  14. 未来の自分は他人っぽく感じられるからね。だから、
    「”他人”である未来の自分のために我慢するのが嫌なので、いま刹那的な行動をする」も
    「周囲の”他人”のために自分が我慢するのが嫌なので、利己的な行動をする」も
    根っこは一緒だって言うことなんだね。

    • +3
  15. ひとりはみんなのために、みんなはひとりのために。
    これは社会にも言える。一人一人が集団や地域の幸福度を優先することにより住みよい社会が生まれ、そこに存在する事で自分自身も深い幸福度を得られる。みんなが少しずつ集団のために”ある種犠牲”になることにより、結果として個人にも強い利がもたらされる。
    そして、人のためになることをしているという自覚自体が強い幸福感でもある。
    本来、日本人はこのことの重要性をかなりハイレベルに自覚して来た民族だと思う。
    「人のためになることをするという事は人の奴隷になるという事だ」という意見をネットで見ることがあり正直驚くのだが、刹那的(未来予知なし)・主観的(俯瞰なし)・不幸体質(幸福の本質への理解なし)であるように感じてしまう。

    • -1
  16. つまりどうすれば自己中を克服できるんだ?そこが重要じゃないか…。

    • +3
  17. かなり強烈な磁場を外部からくわえる計測ってアメリカじゃ結構行われてるけど、日本じゃほとんどされないんだよね。外部からの刺激と認知心理学計測で与えられる刺激との区別が難しくて、かつ、自然な状況下の計測ではないからほんとに脳機能の計測を行っているのか区別できるのかということに議論があるからなんだよね
    それにこの結果は、この記事の内容をうのみにしても、側頭頭頂接合部の活動が阻害されると他の判断思考に必要なプロセスの阻害が生じるだけでそれが利己的であるとかはいえないし、ましてや利己的な人間の慢性的に培ってきた脳の神経構造とも違う人の脳を使用してる時点で比較することができないよね

    • +2
  18. 自制心がないから自己中な行動とるんではないの?

    • 評価
  19. 自制心がないから自己中心的な行動を取るんじゃなくて、行動の前にこの行為は自己中心的ではないだろうかという思考をしないから自制できない。
    また、自己中心的な行動にもパターンがある場合から、それが分かれば考えられる。
    他人に言いように言われるかは、他人からのそういう指摘は少なくてもその人はそう思った行為であって、それが本当に自分の自己中心的な行動なのか、単純に相手の自己中心的な発言なのかは検討しないと分からない。

    • +2

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