
そんな頭蓋骨に見せられた男性がいる。アメリカ人アーティストのジェイソン・ボーダーズは、ドレメル(米国のホビー用工具メーカー)の回転機を使って、動物の頭蓋骨に複雑な模様を施し、新たなる価値観を見いだしている。
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しかし、それらを自分の芸術活動の手段として使い始めたのは最近になってからだ。アートに興味のあったボーダーズは、余暇にレキシントン芸術リーグでアートクラスをとっていた。のちにオハイオ州のコロンバス美術大学に入学したが、作品の制作は粘土や紙など従来の素材だった。だが、数年前に荒れ野をドライブ中に、たまたま見つけたエルクの死骸をきっかけに、頭蓋骨の造形にのめりこんでいくこととなる。
Jason Borders | A Wanderfoot Artist Interview
「自分のホンダシビックに動物の遺骸を乗せて運んできたのだけど、もう少しで逮捕されそうになったよ」ボーダーズは語る。遺骸を家に運ぶときれいにして、ドレメルの研削工具を引っ張り出した。
「工具と骨を交互に見て、おもむろに作業し始めた。ガレージはうちのすぐ下にあるのだけど、家じゅうを粉塵だらけにしてしまったんで、具合が悪くなったし、奥さんからさんざん怒られたよ。こんな根気のいる作業をやりぬく辛抱強さはないと自分でも思っていたんだけど、あれからもう4年もこの作業を続けている。最近はかなり気をつけているけどね」
ボーダーズはドレメルの工具を使って、ドットやラインを組み合わせた複雑なデザインを頭蓋骨に刻みつけている。非対称の模様は、ペイズリー柄やヘナタトゥーに使われるメヘンディ柄を思わせる。柄を際立たせるためにインクを入れ、仕上げに保護剤を塗る。


「よく地元の農家とトレードするよ。数時間、農家の作業を手伝って、小さな骨と小さな作品を交換したりする。そのために、車にはいつもゴミ袋を常備している。森の中に入ることもしょっちゅうある。この頃は、ぼくはボーンガイと呼ばれるようになって、みんな目ぼしい骨があるとぼくのところに持ち込んでくれるようになったよ」

彼にとって、創造プロセスは動物の骨に働きかけることよりももっと意味がある。「ぼくの作品は自己催眠の形なんだ。頭でだけ認識された考えを遠ざけて、単純に反応するやり方だよ。まさに瞑想みたいなものだ。ある意味、現実逃避だな。その瞬間、純粋に生きているという感覚が超越した存在になる形なんだ。こうやって、作品は恐怖を克服する手段になる」



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コメント
1. 匿名処理班
オ、ナイスデザイン
2. 匿名処理班
カパーラみたいなものか
自分はその骨が「かつて自然を闊歩した獣だった」ってだけで価値見出して満足してしまうが
でもそのままの骨よりは受け入れられやすそうだな
3. 匿名処理班
やってみたい
4. 匿名処理班
未来人が発掘して、あることないこと考察するレベルの完成度
5. 匿名処理班
肌に掘るの飽きて骨にまで手を出したのか・・・
6. 匿名処理班
先史人類の骨器に通ずるものがある
7. 匿名処理班
頭蓋骨丸ごと、ではないけど
動物の骨や角に針で細かい絵を彫っていくやつがあるね
なんという名前だったか…
8. 匿名処理班
うーん…
骨はただ白いほうが美しいな
9. 匿名処理班
麻雀牌が思い浮かんだ🀄
10. 匿名処理班
ちょいとトライポフォビアですね〜
11. 匿名処理班
信長「やっと時代が俺に追い付いたな」
12. 匿名処理班
うん、少数派骨好きの私も生のままの頭蓋骨のが好き。死生観の違いだろうな。いつかは自分の頭蓋骨もこの骨の横に並ぶのだと想像してその状況を受け入れているから、生のままでも怖く感じないのかもなあ。
こうして手を加えた頭蓋骨、恐怖の対象である死の象徴が、彫る生きている人の息遣いに覆われることで生々しく(死々しく)なくなり、頭蓋骨そのものを怖いと感じる人が減るから、遥か昔から支持されているのかも。
13. 匿名処理班
ヨーロッパのどこの国か忘れたけど死者を埋葬して白骨化したら頭蓋骨にファンシーなペイントして納骨する村がある
インカのミイラ巡礼みたいに側にいてくれると感じるとか
14. 匿名処理班
※9
同じ感覚の方が居るとは思わなかった
そうだよね、これは麻雀パイ!