
どうしても悲惨な出来事は印象に残ってしまいがちだが、世の中まだまだ捨てたもんじゃない。人知れず誰かに救いをもたらしている人、わが身を顧みず誰かを救おうとしている人も数多く存在するのだ。
英語圏では『良きサマリア人』という言葉がある。これは新約聖書の福音書に書かれている「善きサマリア人の例え」から、苦しむ人々に助けと思いやりを与える、『憐れみ深い人』という意味で使われている。今回はそんな『良きサマリア人』たちにまつわる10のエピソードを紹介しよう。
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1. バスで乗り合わせた他人に自分の手を30分間も握らせてあげた男性

「彼は僕の手をずっと握り締めていた。最初は何かのドッキリかと思ったんだけど、そのうち彼はただ安堵を求めているだけなんだと気づいたんだ」とクオットさんはそう語った。
クオットさんはバスに乗っている間の30分ロバートさんの行為を拒むこはなかった。ロバートさんはクオットさんに寄りかかり、抱きしめ、ずっとその手にキスをし続けていたが、黙ってそれを受け入れた。
「ただ好きなようにさせてただけさ。たまには、自分の都合よりも、相手が安心できるように求めているものを与えてあげることも必要だからね」とクオットさんは後に述べている。
そんなクオットさんの慈悲深い行為に対し、ロバートさんの家族は心から感謝の言葉を贈ったそうだ。
2. 父親が奪ったお金を被害者に返した息子

当時15歳だったクリス・ランスフォード君は、ニュースに映し出された男の顔が自分の父親であると確信した。クリスの両親は彼が2歳の時に離婚したが、彼は定期的に父親とあっており、ニュースで顔写真が公開される数週間前に父親はクリスが行きたがっていたバンド旅行用にと250ドル(3万円)をくれたそうだ。
その後クリスは被害者のトナさんに連絡をとり、教会の駐車場で会う約束をした。そして、トナさんに会うと、父親から貰った250ドルを返し謝罪した。クリスの真摯な態度に胸を打たれたトナさんは、「このお金は私のものだったから、私の使いたいように使うわ」と言ってクリスに渡したという。そして「バンド旅行に行きなさい」と言ったそうだ。
3. ホームレスの家族に自腹を切って面倒を見た警察官

ブライアンさんはいくつかのシェルターに連絡を取り、彼らのために住める場所をみつけようとしたが、ほとんどのシェルターはすでに満員状態だった。そこでブライアンさんは、彼らを一時的(10日ほど)ホテルに滞在させることにして、生活必需品を買うためウォールマートに連れて行った。しかも、すべての費用を自分の財布から出したのである。
ブライアンさんは自分の行いを誰にも言わなかったが、母親がフェイスブックにこの出来事を書き込み、職場の仲間が発見したという。「彼が行ったことはなかなか真似のできない真に“親切な行い”です」と仲間のリチャード・K・ジョーンズさんは語っている。
4. 犬を助けるため燃えさかる家に突入した通りすがりの男性

家が火事になったその時、1歳になる彼らのペット、ブービエ・サンプソンは家に閉じ込められた状態だった。
近隣の住民が消防署に通報したが、火はどんどん大きくなる一方だった。そんな中、通りすがりの通行人がその家に飛び込んでいったのである。
「グレーのマスタングの車が止まり、男性が降りてきて“私は消防士だから大丈夫”と言い、家の中に入っていったんです。そして、2分後には犬を抱えて出てきました。驚くべき光景でしたよ」と動画を撮影したジミーさんは話してくれた。
家族は数日後にペットの恩人である消防士のティム・タウォーターさんを見つけることができ、犬を助けてくれたことに感謝を述べたという。
5. 糖尿病の男性を助けたラッパー歌手

レイジーは、その24歳の男性にフルーツなどを与え、彼の血糖値をあげるのを手伝ったという。そして、その出来事をインスタグラムに載せ、「とても心配だった。彼を助けることができたことが嬉しくて、泣きそうになった」とコメントした。
6. 財布を忘れて困っていた老人男性の支払いを済ませたのは赤の他人だった

その女性の名はケイティ・ルイーズさんということが後にわかった。彼女はアーサーさんに「私に支払わせて。あなたがあなたの人生の中で他の人に親切をしたことがあるって私には分かっているから」と言い20ポンド(約3700円)を渡した。
アーサーさんは、彼女に後で支払うと言ったのだが、彼女は私に支払う変わりにチャリティーに寄付してください、と言ったそうだ。アーサーさんの娘のベヴァリーさんがケイティさんの優しさに感謝し、この出来事をフェイスブックに書いたところ、シェア数は12,000回を超えたという。
7. 飛行機で泣き止まない赤子に困り果てていた母親に舞い降りた天使

まわりの席の人に露骨に嫌な顔をされたレベッカさん、フライトアテンダントに座席を移動してもらったところ、そこで思わぬ人の好意に触れ、感動で溢れる涙が止まらなかったという。
隣の座席に座っていたニフェシャ・ミラーさんは赤ん坊の泣き声に動じもせず、逆に赤ちゃんをなだめてもいいかと聞いてきたと言う。レベッカさんがライリーちゃんを手渡すと、ライリーちゃんはあっという間に眠りにつき、飛行中ずっとミラーさんの膝の上で寝ていたという。まさに彼女は「飛行機の天使」である。
レベッカさんはミラーさんの連絡先を聞き、ライリーにとても親切にしてくれたことにお礼を述べた。レベッカさんとミラーさんは毎日メッセージを交わし、いつかまた必ず会う約束をしているという。
8. 教皇を一目見たいという見知らぬ他人のために自分のチケットをあげた女性

「僕の夢はこの目で教皇を見ることでした。チケットは持っていませんでしたが、有り金をすべて使ってニューヨークに行きました。ニューヨークに行きさえすれば会場近くでチケットを手に入れられるかもしれないと思ったのです」当時を振り返りサウルさんはそう語った。
そんなサウルさんの夢を叶えてくれたのは、全く見知らぬ人だった。サウルさんは午前3時から会場近くの路上に立ち、「チケットを譲ってください」と懇願した。何時間もそこに立っていたサウルさんに気付いた女性は、自分のチケットを渡しこういった。「私はチケットを1枚もっているわ。だけど神がそのチケットを彼に渡しなさいと告げたの。だからこれはあなたにあげる」と。サウルさんは涙を流して感謝した。「教皇を見ることは、世界を見ることに値する。その権利を私に与えてくれて本当、本当にありがとうございます」涙で言葉にならない声で、女性に心からのお礼を言った。
9. ゴミ箱の食べ物をあさっていた男性に食事をごちそうした見ず知らずの女性

ナターシャさんはアメリカ、ワシントンD.C.にある学校から帰宅する途中でゴミ箱から食べ物をあさり、食べようとしている男性を見かけた。彼女はその男性に、「ウェンディーズにいって一緒に食事をしませんか?」と声をかけたところ、男性は喜んで受け入れたという。そして、2人でウェンディーズに向かっている最中、男性は「おお神様よ、ありがとう、このような人を僕のもとに送ってくださって本当にありがとう」とつぶやいたそうだ。
そのホームレス男性によると、いつもはその教会で慈善団体が無料で食事を支給してくれるのだが、その日は、教皇がアメリカを訪れるためにお休みだったという。空腹で困り果てた男性は近くのゴミ箱から食べ物をあさっていたと言う。男性はナターシャさんに一緒に写真を撮ってほしいとお願いした。「世界には、このような素敵な出来事を突然起こりうるということを皆が知る必要がある」と言ったそうだ。
「彼は、私にハグをするまでは帰れないと言ったわ。そして彼は私をハグしながらずっとお祈りをしていたの。実は私のほうこそ祝福を受けていたのよ」とナターシャさんは話してくれた。
10. 寒さで震えている一文無しの少女に自分のコートを渡し、無事に家に帰れるよう手配してくれた女性

とりあえずバス停まで歩き、そこで震えながら座っていた。その時にやってきたのが、フェリシアさんである。フェリシアさんは寒さで震えているキンリーを見ると、自分のコートをかけてあげ、バスがくるまで一緒に待っていてくれた。バスが来ると運転手に事情を話し、キンリーが無事に家に帰れるように、なんとかタダで乗せてくれるようお願いした。キンリーは心優しいフェリシアさんの名前を教えてもらったが、それ以上のことは知り得なかった。
フェリシアさんの優しさに感動したキンリーはその出来事をNBC12(アメリカのニュース番組)のフェイスブックにこう書き込んだ。「私は、この女性にコートを返すことをすっかり忘れていました。そして彼女に心からお礼を述べたいです。彼女は私のことなんて全く知らない赤の他人ですが寛容で思いやりがあり、落ち込んでいる私をユーモアで笑わせてくれました。私は彼女を探したいです。彼女を見つけるまであきらめません」
フェリシアさんの親切はフェイスブック上で話題となり、ついにフェリシアさんを探すことができた。そして、キンリーはフェイスブックに心温まる話を紹介してくれたことの謝礼にニュース番組から300ドル(約37000円)を受け取った。
フェリシアさんの居場所が分かった時、彼女は病気で仕事を休んでいたという。キンリーは彼女の家を訪れ、貸してもらったコートを無事返し、番組から受け取った300ドルを渡し、フェリシアさんの優しさに恩返しすることができたという。
via:oddee・translated melondeau / edited by parumo
世界ではたくさんの人が救いを求めている。そしてまた、たくさんの人が無償の愛で人を救っている。例え残酷な闇が世界を覆い尽くそうとしても、やさしさの芽は必ずどこかに生えてくる。そしてその芽に触れた人が、新たなる種をどこかに植えていくことだろう。
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コメント
1. 匿名処理班
2のおばあちゃんかっこいいぜ…これが真のレディーか
2. 匿名処理班
>あなたがあなたの人生の中で他の人に親切をしたことがあるって私には分かっているから
良い言葉だね。
3. 匿名処理班
>あなたがあなたの人生の中で他の人に親切をしたことがあるって私には分かっているから
代わりにお金を払う行為以上に、なかなか言えないよねこのセリフは
4. 匿名処理班
>「ただ好きなようにさせてただけさ。たまには、自分の都合よりも、相手が安心できるように求めているものを与えてあげることも必要だからね」とクオットさんは後に述べている。
心にしみるな…
5. 匿名処理班
こういう人間賛歌なお話し大好きです!
6. 匿名処理班
消防士はヒーローだというのが、すんなり理解できる話だ。
装備なしで火災現場に突入なんて、凄すぎる。
7. 匿名処理班
ああ自分も少しでも見習いたいわ
頑張って生きていこう。
8. 匿名処理班
9.の教皇が来るから、慈善団体の給食が休みっていうのがどうしてもモヤモヤする。身近に困っている人がいるのに、(どういう理由でか知らないけど)教皇が来るからって教会での慈善事業を休む事をお望みになるか?とキリスト教信者でもないけど考えちゃうぜ。
9. 匿名処理班
夫を驚かせるとかいう理由で4か月の子供を飛行機に乗せる親は良くないだろ。親の自己満足のために子供にストレスかけてるだけじゃん。
10. 匿名処理班
盗んだお金を子供の小遣いにしちゃう父親とそれを返しに行く子供。なんか切なくて泣ける。
11. 匿名処理班
世の中は見返りを求める人ばかりではない
12. 匿名処理班
エピゾードの7は私も国内線の機内で遭遇した事があります。
若い母親に抱かれた赤ん坊が泣きやまなくて、前の席の老婦人が「抱かせて」と・・・
子供はその途端に泣き止んで笑顔に。
父親とも席が離れていて、おもちゃとか中継して渡してあげたりとか周りの人達もし始めた。
最後に機内を降りる時に周りの乗客に「ありがとうございました」とお辞儀をして降りて行った・・・
13. 匿名処理班
やらないよりもやる偽善。
確実に喜んでくれる人がいるのなら、それが偽善でも良いと思う。
ただし、個人の範囲で。
14. 匿名処理班
一日一善を座右の銘に定め生きていけば、このような状況に遇っても行動できるんだろうな。
15. 匿名処理班
「現実は冷酷で社会は悪意に満ちている」
少しでも変えていきたいね。
16. 匿名処理班
赤ちゃんの話をひとつ。
診療待ちの患者で一杯の耳鼻科の待ち合い室。
処置室からは、赤ちゃんの凄まじい泣き声が続いている。みんなイライラして、空気がささくれていたが、子供連れのおばさんが、のんびりした声で子供に言った。
「ああ、赤ちゃんが泣いてるねえ」
「ママ、なぜあかちゃんはなくの?」
「赤ちゃんだから泣くの。あんたも赤ちゃんの時はわあわあ泣いてたよ」
「えー」
「ママも赤ちゃんの時は、わあわあ泣いてバーバを困らせてたんだって」
「えー。じゃあパパも?」
「パパもだよ。みんな昔は赤ちゃんで、わあわあ泣いてたんだよ」
「えーすごいねー」
みんな、はっとした。
親子の向かいの老婦人が、にこにこして、
「おばあちゃんも昔は赤ちゃんで、いっぱい泣いてたのよ」
「すごいねー」
診察室からまだ泣き止まない赤ちゃんを抱いて出てきた母親は、微笑みながら会釈されて、びっくりしたような顔してたよ。
17. 匿名処理班
こういう話題が大好き。
そういえば子どもの頃は見返りや周りの目なんて気にせずすぐ動けたのに、大人になってからは頭で色々考えちゃって、この人たちみたいにできなくなってるな…。
18. 匿名処理班
ホームレスを助けた警官の人がさ・・・
これプリズンブレイクのベリックさんだよね
そのせいかどうしてもいい人にみえないw
19. 匿名処理班
※17
これらを偽善と呼ぶなら、この世に善などない。
20. 匿名処理班
自分にはとても真似出来そうにないや...本当に尊敬する。
21. 匿名処理班
どうせ生きて死ぬなら
悪人じゃなくてこういう人間になって死にたいよね
22. 匿名処理班
チキンなので周りに人がいると任せちゃう派…。
でも、人がいなければやります!
ここ10年くらいでは酔っ払い転倒チャリ×2の介抱と
苦しそうにしているおじいちゃんに声掛けしたよ!
みんな大丈夫そうだったけど、ちゃんと帰って元気にしてるかな?
23. 匿名処理班
紹介されてるのが外国の話ばかりなのであえて言うけど、
日本人て基本的に親切だし、「困ってる」のが明確に分かってる人は助けられるんだけど「困ってるのかどうかわからないひと」に自分から声掛けるの苦手な気がする。違ってたらどうしようって思うのかもな。
自分は「大丈夫ですか?」「何かお困りですか?」のひとことを掛ける勇気が中々持てないのかもしれないと気付いてからはなるべく「なんかありましたか?」て言ってみる事にしている。それなら「いやなんでもないよ」て言われてもあんま気にならない。
24. 匿名処理班
こういう話の日本のやつをもっとみたいな
25. 匿名処理班
※11
まず他人の行為の悪い点をあげつらって、その部分に文句を言うことを止めようぜ。
そういう気持ちがなかったからこそ、ここに書かれた善意が生まれ、それを知った人々の心に優しさを生み出したんだからさ。
26. 匿名処理班
4を見て以前カラパイアで見た「火災現場にふらりと現れ、取り残された老人を救いだし名も告げずそのまま立ち去って行ったリアル・ヒーロー」を思い出した
27. 匿名処理班
8 教皇への尊敬度が1上がった!
9 教皇への尊敬度が2下がった!
28. 匿名処理班
他の方のコメントにもあるけど日本では皆が親切だし自ら善意をネットに載せるような事もしないから(他人が勝手に載せるのも控え目)気付かないだけじゃないかな。優しい世界はすぐ近くにわりとあると思う。
29. 匿名処理班
>28そうかも。でも親切にされたら誰かに伝えるべきだと思うな。
30. 匿名処理班
※25
※11はまさにそのことを言ってるんじゃないの?