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医薬開発に革命が起きるか?「ゲーム・チェンジャー」と評される抗生物質開発の新手法とは?

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(著)

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 臨床の現場で利用される抗生物質が最後に発見されたのは、実に30年近くも前のことだ。しかし、「既に枯渇している」。と評されることもあった抗生物質開発の冬の時代に、ついに終止符が打たれるかもしれない。

 このたびアメリカの研究チームが考案した革新的な細菌培養法により、25種類の新抗生物質が発見されたが、その内の1つが「非常に有望」なのだという。

 この偉業を成し遂げたのは、米マサチューセッツ州ボストンにあるノースイースタン大学の研究チームである。土壌の中には数十億個もの細菌が潜む。しかし、実験室で培養することのできる細菌はそのうちのわずか1パーセントのみだが、同チームは、細菌用のいわば”地下ホテル”を作り出したのだ。

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 この手法では、穴の空いたプレートの各”部屋”に細菌1個を置いた後、それを土壌に埋める。これによって土壌の化学的性質が部屋に充満し、土壌内の細菌のおよそ半分が成長するようになるのだ。そして、細菌によって産生された化学物質が回収され、殺菌特性が検査される。

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 同チームを率いたキム・ルイス教授によれば、新手法によって、これまで25種類の新抗生物質が発見され、中でもテキソバクチン(teixobactin)は非常に有望であるらしい。検査結果では、テキソバクチンは細菌に対し殺菌作用を示す一方、ほ乳類の繊維に対しては無害であった。マウスの実験では従来の抗生物質への耐性を示すMRSAに対しても効果を示しており、人間での治験が待たれるところだ。

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MRSA

 また、細菌がテキソバクチンに対して耐性を持つ可能性も低いと考えられている。これは細菌細胞壁を作るうえで不可欠な脂肪を目標にするからだ。「耐性を備えることができない、従来にはなかった抗生物質となるでしょう。耐性の発達を最小限に抑える秘密がいくつか備わっているのです」とルイス教授は語る。

 この手法は”ゲーム・チェンジャー(形勢を一変させる出来事)”と賞賛されており、これまで停滞していた新抗生物質の開発を再び活性化させることになるかもしれない。長きに渡り抗生物質開発は枯渇したも同然だったことや、抗生物質が全く効かない耐性菌の出現によって、現在は”ポスト抗生物質”の時代と言われることもある。多くの一般的な感染症が治療できないまま残されており、手術、化学療法、臓器移植といった現代医療の多くまでを不可能にしてしまっているのだ。

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 同時にテキソバクチンには限界もある。MRSAやヒト結核菌などのグラム陽性菌にしか効かず、大腸菌などのグラム陰性菌の保護層を貫通できないのだ。また、細菌が耐性を身につける可能性は低いとされながらも、その濫用には慎重になるべきだという意見もある。ある専門家によれば、今の状況はバンコマイシンが発見されたときに類似しているそうだ。これは1950年代に発見され最強の抗生物質と呼ばれていたが、80年代後半になると耐性菌の出現が報告されるようになった。

Superbugs: Drug resistant infections set to kill over 10m by 2050

 いずれにせよ、この度開発された手法が、膨大な数の新製品への道筋を開いた可能性は否めない。おそらくテキソバクチンの発見は氷山の一角であり、今後様々な新発見があることだろう。抗生物質の開発はいまだ未完の仕事だったのだ。

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via:bbc・原文翻訳:hiroching
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この記事へのコメント 19件

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  1. 麻酔と抗生物質は発見すれば最低でも億が入ると言われているな

    • -2
  2. 「4番・・・薬効なし!」
    とかやったんやろか

    • +5
  3. ゲームチェンジャーっていうのは固有名詞ではなくて、どの分野でもその分野の常識や従来のやり方を変えてしまうくらいの画期的な何か、のことをそう表現するので念のため。

    • 評価
    1. ※5
      つまり、「培養肉」も食肉産業におけるゲームチェンジャーか

      • +5
  4. 「穴の空いたプレートの各”部屋”に細菌1個を置いた後、
    それを土壌に埋める。」
    つまり自然環境に身を任せたほうが
    新しい抗生物質が生まれると言う事か、
    環境が綺麗過ぎると人間も抵抗力もなくすと言うし
    微生物も変わらないのかもね・・・・

    • 評価
  5. MRSAと同じ生活環で繁殖力が高くて人に無害な菌を作ったらMRSA根絶出来ないかな。

    • +3
  6. 約1%の細菌しか培養できないというのは、
    細菌Aが生きるのに細菌Bと細菌Cと(以下略)の作る物質が必要で、
    細菌Bも生きるのに細菌Aと細菌Dと(以下略)の作る物質が必要で・・・
    みたいな感じに複雑な代謝物ネットワークができているせいで
    シャーレの中で細菌Aだけ、みたいに培養するのが難しいから。
    今回の手法はこの複雑な代謝物ネットワークを維持することで
    これまで無理だった細菌を培養できるようになったっていうのが
    かなり大きなブレークスルーっぽい。

    • +1
  7. 結局新しい抗生物質を発見しては食い潰し、また新しい抗生物質を探すことの繰り返しな気がする
    生物種は有限なんだから生物資源も有限
    もっと抜本的な解決法を考えないといずれ枯渇してしまう

    • +7
  8. 近年は発見が無いというより、菌には効くけど人に害が少ないとか、大量生産が容易とかそういう都合の良い手っ取り早い抗生物質の発見が無い、という方が正しいかも。

    • -4
  9. 最近まで新抗生物質が開発されてなかったんだ。
    細菌だけに。

    • 評価
  10. V1「MRSAがやられたか」
    V2「バンコマイシンか?」
    V3「いや違う。彼はアレに耐性を持っていた」
    V4「新たに見つけ出された。そしてソレを利用した。と見るべきだろう」
    V1234「ばかな・・・」
    V?「あわてる必要は無い、いずれ新たなソレにも耐性がつく。高々の辛抱だ数十年だ」
    V?「そう、最後は我々が勝つのd」
    人「コロニーの消滅を確認。っと」

    • +2
  11. >>これは1950年代に発見され最強の抗生物質と呼ばれていたが、80年代後半になると耐性菌の出現が報告されるようになった。
    実際、この新薬もこうなる可能性はでかいよね
    耐性が出ないであろうと言われても、何時かは出るもんだからね
    ただ、良い時間稼ぎにはなりそう

    • +1
  12. >大腸菌などのグラム陰性菌の保護層を貫通できない
    保護層とはなんぞやと思って調べたら外層、または外膜のことなんですね。手持ちの本だとリポ多糖(脂質+多糖類)からできている分子量1万以上の複雑な分子だそうです。ここを破壊できないからグラム陰性菌には効果がない抗生物質てことかと、多分。間違ってたら誰かこっそり教えてね

    • 評価
  13. しょっちゅう風邪だの胃腸炎だので扁桃腺炎だの抗生物質にお世話になってます。
    飲みすぎて自分の身体の中で耐性菌できてたらどうしようと思ってたから、このニュースは個人的に嬉しい。

    • 評価
    1. ※16
      恐がって症状収まったら勝手に飲むのやめたり量減らしたりすると
      かえって耐性菌できやすくなるから
      医者の指示通りちゃんと飲んでね

      • 評価
  14. 人の鼻から抗生剤作るとか最近話題になってるけど、それが抗体もったらどうするん?

    • +1

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