0_e25
 無重力状態となる宇宙滞在では、骨密度が低下し、筋肉の萎縮が発生することは以前から知られていた。また、地上でひどい頭痛を経験したことがない宇宙飛行士が、宇宙で激しい頭痛に見舞われる「宇宙頭痛」なるものが存在し、昨年行われた米テキサス大学ラリー・クレイマー教授の研究によると、宇宙に長期間滞在した宇宙飛行士には脳と眼に異常が起こることも明らかになっている。

 長期にわたる無重力状態は、生体にどんな影響を及ぼすのか?

 米国とロシアが共同で打ち上げた生物実験衛星「ビオン−M」の持ち帰ったデータの検証を経て、露米の学者たちは、無重力で一番負担を受けるのは脳の動脈であるとの結論に達した。

広告
 今年の春と夏、ロシアと米国の専門家たちが、、脈拍数や血圧、放射線量など、あらゆるデータを計測する20以上の装置が搭載された生物実験衛星「ビオンM(Bion-M)」にネズミ、ヤモリ、魚、植物、微生物などを載せ、宇宙空間に送り込んだ。無重力空間に1ヶ月、生物実験の最長記録である。その後モスクワの生物医学問題研究所が地上で承継実験を行った。
2_e29
「ビオン−M」プロジェクトのウラジーミル・スィチョフ代表は実験の最初の総括として、「脳の動脈は、たとえば太ももの動脈などと比べて、最も深刻なダメージを受けることがわかった」と語っている。無重力が、たとえば思考など、脳の多くの機能に本質的な影響を与えることが示唆された。
1_e32
動物の宇宙飛行士たちは詳細な検査を事前に受けた。体重が測られ、計器が髯から尻尾まで取り付けられ、無重力へのトレーニングも行われた。さらに、被検体の性格を調べるために、心理テストもほどこされた。そしてオスメスの別も峻別された。すべては、どのような固体が無重力空間をよりよく生き延びるかを正確に知らんがためである。性別については、オスのほうがサバイバル率が高かった。
4_e23
スィチョフ氏は語る。「メスは大量のホルモンを分泌し、それが多くの変化を隠してしまう。そのため、実験体としては、オスのほうが興味深い」。たしかに、オスのほうが新たな住環境から多くの、そしてドラスティックな変化を受けた。
3_e29
 その後地上の実験でも、やはり30日の観察が行われた。宇宙と同様の気温、湿度、大気組成。ただし、無重力と有害な放射線はない。そこで動物たちの脳の動脈を調べた結果、人間にとっても実に示唆的な結果が得られた。

これから実験は、半年におよぶ、ビデオ記録の閲覧と分析というフェーズに入る。研究はロシアの生物医学問題研究所と米国の同種機関との共同研究になる。互いに最新の研究メソッドを用いる。

スィチョフ氏は語る。「目下の優先課題は、宇宙空間が血液循環系に耐える影響、また心臓に与える影響を調べることにある」。via:ruvr

▼あわせて読みたい
長期の宇宙旅行に生命体はどれだけ耐えられるか?ロシアの生物実験の結果が明らかに


無重力状態に置かれた6種の動物たちの観察映像


カラパイア無料メールマガジン購読方法

この記事に関連するキーワード

キーワードから記事を探す

Advertisements

コメント

1

1. 匿名処理班

  • 2013年09月17日 08:59
  • ID:nTbn.Hc30 #

あとは長期滞在で適応できるかどうかだね
無重力下での生殖は無理らしいから、後天的に適応できる目途が立たないと宇宙進出は無理ってことになりそう

2

2. 匿名処理班

  • 2013年09月17日 10:41
  • ID:9liOAEkM0 #

よくわからん...具体的に脳の動脈にどういう作用でどういうダメージがあったの?

3

3. 匿名処理班

  • 2013年09月17日 11:54
  • ID:ft7HptG80 #

俺 片頭痛持ちだけど、
無重力空間に行ったら、頭に血が登って
激烈極悪な片頭痛になる自信がある。

4

4. 匿名処理班

  • 2013年09月17日 12:02
  • ID:RNVeLEad0 #

無重力状態だと頭の方の血圧が高くなりがちなのかな?

5

5. 匿名処理班

  • 2013年09月17日 13:01
  • ID:V.8JcBqU0 #

脳動脈を鍛える方法はよ

6

6. 匿名処理班

  • 2013年09月17日 13:15
  • ID:gzE..Qfo0 #

やっぱり地球の生命体には重力は必要不可欠なモンだったか・・・

7

7. 匿名処理班

  • 2013年09月17日 13:23
  • ID:ZtV8TwnB0 #

ニュータイプくるかな?

8

8. 匿名処理班

  • 2013年09月17日 14:00
  • ID:x7C8Qp040 #

重力に魂を引かれて云々

9

9. 匿名処理班

  • 2013年09月17日 14:06
  • ID:1itb.BXC0 #

考えてみればそうか、重力下でも真上の頭に血流を送るために首は短く首の動脈は太く大きくなっているのに、無重力になると起きた状態で枕も無しにずっと横になってるようなものだから頭に血が行くわな。
たぶん毛細血管にも圧が行くだろうから、脳はかなりダメになるだろうな

10

10. 匿名処理班

  • 2013年09月17日 14:43
  • ID:zzai6tUq0 #

血液は循環してるとはいえ、下に溜まりやすく、上に行きにくい。
重力のある地球でそれをうまく調整してる血管の仕組みが無重力によって壊される。
ということ?
それに色んな臓器も無重力になると、浮いたり、膨張したりで、神経も血管も圧迫されそうだ

11

11. みあきち

  • 2013年09月17日 20:46
  • ID:rewsqn2h0 #

血液はそのままでは重力により立っているときなどは特に、「圧力なし」でも足の方に「自然に落ちていく」が、心臓よりも高い位置の脳に送り込むには、やはり圧力をかける必要があると見做すべきだろう・・・が、「下半身〔足の裏)→脳」という経路もありえそうだ。
無重力では足の方へ「自然に落ちていくのを前提とした血の流れ」が巧くいかずに、ムーンフェイスという「むくみ」や頻尿などがあると本で読んだことがあった。(寒いときのように、胴体へ血液が集まる→血液の主成分の水分過剰と体が判断)
多分、今回の案件の「脳の動脈のダメージ」は、「心臓がかけた血液供給の圧力」が「下半身経由+上半身」の内「下半身」をすっ飛ばしてしまい脳動脈には「必要以上になってしまった」というところだと思うーぜ

12

12. 匿名処理班

  • 2013年09月17日 21:47
  • ID:iYYiX49T0 #

地球の生物は地球の環境で生きるために進化してるからなあ

13

13. 匿名処理班

  • 2013年09月17日 23:08
  • ID:bMF.or4n0 #

無重力下の人間は、「2001宇宙の旅」のスターチャイルドのように赤ん坊に進化するのかな。

14

14. 匿名処理班

  • 2013年09月18日 06:32
  • ID:H4NnWvdb0 #

長いこと宇宙に滞在してると人は低血圧になる。
脳に行く血液の量が増えると、身体が順応して過剰な圧を減らすから。
ちょっと寝すぎた日、体が怠いのも同じ機序。
こういう柔軟さがあるのに、脳にダメージってどういう事なんだろ。
たとえば、入院患者にも同様のダメージがかかってるのかな?

15

15. 匿名処理班

  • 2013年09月18日 18:12
  • ID:Vfa9u0vk0 #

普段重力で足元に偏ってる血液が全身に均等に回ることで身体の上部にある脳は相対的に言えば高血圧の状態になるからだろ。

お名前
Advertisements
記事検索
月別アーカイブ
Advertisements
Advertisements