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海の生態系に影響を及ぼす未知の巨大ウイルスが230種見つかる

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Photo by:iStock
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 アメリカ・マイアミ大学の海洋科学チームが、世界各地の海から採取した海水サンプルを解析したところ、微細藻類やアメーバなどの単細胞生物に感染する巨大ウイルスの中から、新たに230種のウイルスが発見された。

 発見された巨大ウイルスの一部は、光合成に関わる遺伝子を持ち、宿主である単細胞生物の代謝や成長に干渉している可能性があるという。

 巨大ウイルスは、海の生態系や食物連鎖、さらには地球規模の炭素循環にも深く関わっており、その影響が懸念されている一方で、巨大ウイルスが保持する特殊な遺伝子や酵素は、生物工学の分野で活用できる可能性がある。

この研究は『nature』誌(2025年4月21日付)に掲載された。

微生物に感染する新種の巨大ウイルスを230種発見

 マイアミ大学ローゼンシュティール海洋・大気・地球科学スクールの研究チームは、9つの国際海洋調査プロジェクトから得られた海水の環境DNA(水や土壌などの環境中に存在する生物由来のDNA)データを解析した。

 このデータには、海水中に存在する微生物の細胞や、それに感染していたウイルスの断片的な遺伝情報が含まれている。

 研究チームは、この環境DNAデータから巨大ウイルスに由来するゲノム配列を抽出し、ウイルスの分類を行った。

 その結果、既知のウイルスとは異なる230種類の新種が特定された。

 新たに発見された巨大ウイルスの多くは、微細藻類やアメーバ、鞭毛虫(べんもうちゅう)といった単細胞生物に感染していた。

 これらの単細胞生物は、海洋の食物連鎖の出発点として、他の生物にとって重要な栄養源となっており、巨大ウイルスの感染による影響は、生態系の構造やエネルギーの流れに波及する可能性があるという。

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単細胞藻類フロレンシエラに感染した巨大ウイルス。六角形のカプシド(ウイルスゲノムを取り囲むタンパク質の殻)に遺伝物質を包み込み、細胞の内部から飛び出している様子が確認できる Photo:Grieg Steward, Ph.D. University of Hawai’i at Manoa.

光合成に関わる遺伝子を持つウイルスも発見

 研究チームは、発見した巨大ウイルスのゲノムを詳細に分析した結果、9種類の巨大ウイルスが光合成に関連するタンパク質を作る遺伝子を保持していることが判明した。

 このような遺伝子は、通常は植物や藻類など光合成を行う生物にしか見られない機能である。

 巨大ウイルスがこのような遺伝子を持っているという事実は、ウイルスが宿主の光合成プロセスや代謝に直接干渉している可能性を示している。

 筆頭著者であるベンジャミン・ミンチ博士は、「巨大ウイルスは、これまで生物固有とされていた代謝関連の遺伝子を保持しており、宿主の生命活動に深く関与している」と述べた。

 光合成の制御に関わる巨大ウイルスの存在は、海洋の炭素循環や酸素生産にまで影響する可能性がある。

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研究で回収されたすべての巨大ウイルスのゲノムと、既知の巨大ウイルス(参照データベース)の系統的関係を示した系統樹。外側のリングは、それぞれの巨大ウイルスが採取された場所を表している。Rosenstiel School of Marine

巨大ウイルスを正確に検出するツールを開発

 巨大ウイルスを正確に検出するため、マイアミ大学の研究チームは新たな解析ツール「BEREN(ベレン)」を開発した。

 BERENは、メタゲノムデータから巨大ウイルスの配列を効率的に抽出・分類できるソフトウェアである。

 このツールの導入によって、従来の手法では見逃されていたウイルス配列の特定が可能になった。

 巨大なデータ量の処理には、同大学が所有するスーパーコンピューター「ペガサス」が使用され、1サンプルあたり数ギガベースに及ぶゲノム情報を高速で解析した。

 研究チームはこの解析を通じて、海洋における微生物群集の遺伝子ライブラリを再構築することに成功した。

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研究で使用された各データセットの分布と、それぞれから発見された巨大ウイルスの数を示す地図。円グラフの色は、ウイルスの分類群(目レベル)に基づいているRosenstiel School of Marine

海洋生態系だけでなく人間社会にも影響

 今回の研究で明らかになった巨大ウイルスの活動は、海洋生態系だけでなく、人間社会にも関わる可能性がある。

 中には、植物プランクトンの大量死や異常増殖(有害藻類ブルームなど)に関与しているとみられるウイルスも存在する。

 有害藻類ブルームが発生すると、沿岸部の酸素が不足し、漁業資源や人間の健康に深刻な影響を与えることがある。

 研究責任者であるモハンマド・モニルザマン助教授は、「巨大ウイルスの多様性とその働きを理解することが、有害藻類ブルームの予測や抑制の鍵になるかもしれない」と語っている。

巨大ウイルスを有効利用できる可能性も

 巨大ウイルスは、通常のウイルスよりも大きく、細菌に匹敵するサイズと複雑なゲノムを持つ特異な存在だ。

 今回の研究で発見された巨大ウイルスの中には、これまで知られていなかった特殊な遺伝子や酵素を持つものが多数含まれていた。

 その中には、光合成や炭素代謝など、生物の基本的な生命活動に関わる遺伝子や酵素を含むものもある。

 こうした機能を持つウイルスは、生物工学の分野で活用できる可能性がある。

 たとえば、未知の酵素を利用してバイオ燃料の生産や環境モニタリングに応用したり、新たな医薬品の開発に役立てたりする研究が進められている。

References: Expansion of the genomic and functional diversity of global ocean giant viruses / Scientists discover 230 new giant viruses that shape ocean life and health

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この記事へのコメント 6件

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  1. やはり何処でもデカいヤツはつえーんだな・・・

    • +5
  2. 巨大ウイルスは元々は単細胞生物で宿主に依存するあまり細胞内器官を次々に失っていったものではないか
    寄生性単細胞生物には実際に多くの遺伝子を失ったものがいるという

    • +5
    1. 大雑把に言えば「単細胞から逸脱した説」と「ウイルスが細胞に進化した説」がある
      はっきりしたことは太古過ぎて不明

      • +6
  3. こういう他生物の遺伝子を持ったウイルスが宿主の核DNAに侵入したはいいけど増殖に失敗することで水平伝播が起こるんだろうな

    • +2
  4. 元々代謝を行う生物だったのがウイルスに進化したけど代謝関連の遺伝子の名残だけは残ったパターンか、他の代謝を行う生物から持ち出したパターンかな

    • 評価
  5. 系統樹がオシャレ(Tシャツにプリントしたい)

    • +1

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