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ポンペイでローマの女神ケレスの祭司とみられる女性の墓を発見、壁に見事な彫刻

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(著)

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ポンペイで発見されたローマ時代の墓に設置された男女カップルの像この画像を大きなサイズで見る
Image credit: Prof. Llorenç Alapont/Archaeological Park of Pompeii/Italian Ministry of Culture
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 イタリア南部の古代都市ポンペイで、ローマ神話に登場する豊穣の女神ケレス(ケレース)に仕えていたとみられる女性の墓が発見された。

 この墓には、火葬された女性の遺灰が納められており、壁面には宗教的意味を持つ実物大の男女像が彫刻されている。

 発見された場所は、紀元1世紀に裕福な市民階級が葬られていたポルタ・サルノ地区で、火山噴火直前のポンペイにおける信仰と女性の社会的地位を読み解く貴重な手がかりとなっている。

紀元1世紀の高い地位の女性の火葬墓を発見

 ポンペイの東部に位置するポルタ・サルノ地区一帯は、紀元1世紀当時、商人、地方役人、裕福な自由市民など、都市の上層階級が火葬によって葬られていた場所である。

 今回の墓も例外ではなく、内部には火葬された1人の女性の遺灰が納められていたことが確認されている。

 ポンペイを含む古代ローマでは、紀元1世紀頃までは火葬が一般的な埋葬形式で、遺灰は骨壺に納められ、墓や記念碑の内部に置かれる。 

 この墓の構造や装飾は他の墓に比べても非常に豪華であり、そこに眠る人物が高い社会的地位を持っていたことを示している。

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Image credit: Prof. Llorenç Alapont/Archaeological Park of Pompeii/Italian Ministry of Culture

壁に彫られた実物大の男女像

 墓の壁面には、若い男女2人を実物大で描いた見事な彫刻が施されていた。

 女性は長い衣をまとい、ヴェールをかぶり、左手に「アスペルギルム」と呼ばれる月桂樹の枝を持っている。これは宗教儀式に使われるもので、香を焚いて空間を清める役割を果たす。

 なお、「アスペルギルム」は現在のカトリック教会でも聖水を撒く道具として使われているが、語源と機能は古代にさかのぼる。

 また、女性像の首元には「ルーヌラ(lunula)」と呼ばれる三日月型のお守りが彫られている。

 これは古代ローマにおいて、主に未婚の少女が身につけるものとされていた。結婚する際には一般的に身につけられないことから、この装飾は単なる花嫁像ではなく、宗教的象徴を含む特別な意味を持つ可能性がある。

 これらの要素から、研究者はこの墓に埋葬された女性が、宗教的地位を持つ人物=ケレスの女性祭司だった可能性が高いと見ている。

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 女性像の首元には「ルーヌラ(lunula)」と呼ばれる三日月型のお守り Image credit: Prof. Llorenç Alapont/Archaeological Park of Pompeii/Italian Ministry of Culture

ローマの女神ケレスの祭司だった可能性

 研究チームは、この墓に納められていた女性がケレス(ケレース)の女性祭司であった可能性を指摘している。

 ケレスは、農業・穀物・母性を司るローマ神話の女神であり、ギリシャ神話に登場するオリュンポス十二神の一柱の1人、デーメーテールに相当する。

 彼女の娘プロセルピナが冥界に連れ去られる神話は、季節の変化の由来として語られた。

 ケレスをたたえる「ケレーアーリア(Cerealia)」という祭りは、毎年4月に開催され、豊作と再生を祈願する重要な宗教行事だった。

 ケレスに仕える女性祭司「サケルドス・ケレリス(Sacerdos Cereris)」は国家公認の宗教職であり、古代ローマ社会における女性の最高位の公的地位の一つであった。

石柱墓標「コルメッラ」が示す葬送形式

 墓の壁面に彫られた男女像の前には、「コルメッラ(columella)」と呼ばれる石柱状の墓標が設置されていた。

 これは火葬された遺灰壺の上に建てられる記念柱で、故人の存在を象徴的に示す役割を果たす。

 今回の墓でもこの構造が確認されており、遺灰と像の人物が同一であることを強く示唆している。

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Image credit: Prof. Llorenç Alapont/Archaeological Park of Pompeii/Italian Ministry of Culture

古代ローマで高い地位を持っていた女性司祭

 研究者たちは、この女性像が「宗教的地位を象徴する道具と共に描かれた、極めて珍しい例であり、ポンペイではこれまでに知られている唯一の事例である」と指摘している。

 また、「女祭司という地位は、当時女性が目指すことのできる最高の社会的地位であった。女祭司は公共の場において重要な役割を果たし、他の女性とは大きく異なり、男性の祭司と非常に近い権力を持っていた」と付け加えている。

 このことから、研究者たちは、今回の発見がポンペイの破滅直前における社会的・宗教的・政治的な実態を理解する上で非常に重要であり、この都市にケレス信仰が存在していたこと、そして上流階級の女性たちが祭司として奉仕していた可能性を示すものであると考えている。

 この研究は『Heritage』誌に掲載された。

References: Archaeological Analysis of the Newly Discovered Tomb with a Relief of a Couple at the Funerary Area of Porta Sarno in Pompeii / Tomb Of Roman Priestess Of The Goddess Ceres Found At Pompeii

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この記事へのコメント 5件

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  1. 最近のなろう系小説でよく見かける聖女の立場なのかななどと思いました。 ルーヌラという言葉は初めて見たので調べたら爪の話ばかりでしたが、それでも三日月のお守りと共通な話があり語源は同じなのだなとは理解できました。 ただギリシャ・ローマ時代の女性像・女性司祭像などを検索してみてみましたがルーヌラというお守りを身に着けている例を見つけられなかったことは残念です

    • -4
  2. 女性像側の話題だけど、
    男性像がトーガで“懐手”をしているのが
    「それってそういう着こなしもあったのか!」と妙に親近感わいたw

    • +3
  3. 盗掘でなくなってしまうような国じゃなくてよかった

    • 評価
    1. イタリアでも昔からトンバローリ(tombaroli 単数 tombarolo)と呼ばれる盗掘犯がいるみたいだよ
      ポンペイでも18世紀の発掘から絶えないらしい
      なんで軍(カラビニエリ)に文化遺産保護の部隊があって(優秀と評判)、
      最近も貴重なフレスコ画(70年代に盗まれて違法に輸出されたっぽい)を押収、無事国に返されたんだって

      • +4
  4. 遺灰は女性のみで、碑文は見つからず・・・
    彫像のふたりは夫婦、または母&息子かも?という研究者の予想
    女性のイヤリングがアンフォラ・モチーフというのにちょっとビックリ

    気になる男性の右腕のポーズ 何かを表してる気がする

    (あと女性の右手の月桂樹がアップの写真ではタカサゴユリの種にしか見えず<個人の感想です>、球根が弱るからこうなる前に処理し・・・)

    • +2

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