メインコンテンツにスキップ

2025年5月11日、旧ソ連の探査機が大気圏に突入、地球に落下する可能性(落下発表あり)

記事の本文にスキップ

42件のコメントを見る

(著) (編集)

公開:

地球の大気圏に突入する旧ソ連が打ち上げた金星探査機のイメージ図この画像を大きなサイズで見る
ESA/David Ducross
Advertisement

 1972年に旧ソ連が金星を目指して打ち上げた探査機「コスモス482号」は、目的地に到達することなく地球の軌道にとどまり続けていたのだが、53年の月日を経て、今まさに地球に戻ろうとしている。

 冷戦時代に誕生したこの鉄の塊は、2025年5月10日前後に大気圏へ再突入する見込みだ。

 金星の極限環境にも耐えられるように設計された、探査機の中核となる耐熱構造の着陸カプセルがそのまま地表に落下する可能性があるという。

冷戦時代の宇宙開発が生んだ遺物

 冷戦たけなわだった1959~1989年、ソ連は国家の威信をかけて宇宙開発に邁進していた。

 その成果は素晴らしい。たとえば金星探査計画「ベネラ計画」の下、1961~1984年に打ち上げられたベネラの名を冠する一連の探査機は、人類史上初めて地球以外の惑星の表面に到達し、人類史上初めて地球以外の惑星の大気測定に成功している。

 現在にいたるまで金星に着陸したのは、唯一これらベネラ探査機だけである。

この画像を大きなサイズで見る
1972年7月22日に金星の着陸に成功したベネラ8号。地面を調査するための科学観測用の器機(ガンマ分光計)などを備えていた image credit:NASA

 だが当然失敗もある。

 1972年3月31日、現在のカザフスタンにあるバイコヌール宇宙基地から打ち上げられたコスモス482号もまた、金星着陸を目指していた。

 ところが宇宙待機軌道から金星へ向けてロケットを噴射した際、機体が分解してしまい、地球軌道からの脱出は失敗に終わった。

 この失敗を隠しておきたいソ連政府は、この探査機にベネラの名を与えず、より一般的な人工衛星につけられる名称である「コスモス」と命名した。

この画像を大きなサイズで見る
ベネラ7号探査機の模型。コスモス482号もこれに似ていると思われる NASA

52年の時を経て、コスモス482号が地球大気圏に再突入の見込み

 最近になって、コスモス482号は世界で大きく注目されている。

 そのきっかけは2022年、SatTrackCam Leidenというオランダのアマチュア観測チームによるブログだ。

 地球周回軌道に残っているコスモス482号の残骸は、宇宙空間巡航用の機体(バス)ではなく、着陸カプセルであると指摘したことだ。

 さらに大きな問題はそのコースである。同ブログによると、機体の高度が急速に下がっているというのだ。

 このままいけば日本時間5月11日4時5分(誤差1.5日)、コスモス482号は地球の大気圏に再突入すると予測されている。

 現時点での予測では、この着陸カプセルは、北緯52度から南緯52度の範囲内に落下するとみられている。

 この範囲内にはイギリス・ドイツ・カナダ・アルゼンチン・チリのほか、大西洋・太平洋の海域などが含まれる。そして、日本もこの範囲内にある。

この画像を大きなサイズで見る
コスモス482号の再突入予報(2025年5月5日現在)、この情報は随時SatTrackCam Leidenで更新されている

燃え尽きず地上まで落下する可能性が高い

 厄介なことに再突入してくるのは着陸カプセルであることだ。

 それは半球状のチタン製シェルで覆われた総重量約472kgの頑丈な物体で、地球より90倍も密度が高い金星の大気を突破し、硫酸の雨が降り注ぎ、鉛ですら溶けるような高温下ですら1時間以上耐える代物だ。

 つまり再突入後、燃え尽きることなく、地上にまで落下してくる可能性がかなり高いのだ。

 だが過度に心配する必要はないだろう。

 地球の約70%は海に覆われており、地上にも人が住んでいない無人地帯が多い。もし落ちてきても、人の頭上に直撃する可能性は宝くじに当たるよりも低いレベルだろう。

 だが宝くじに当選する人がいるように、100%大丈夫とは言い切れないのがつらいところだ。過去にも隕石が家の屋根を貫通し、負傷した人の記録が残されている。(幸いにもこの人は命に別状はなかった)

 常に軌道を常に確認していれば、何らかの対策はとれるはずだ。

インド洋に落下した可能性

追記(2025/05/11)

 NASAは、2025年5月10日、コスモス482号の一部が、インドネシア・ジャカルタ西方のインド洋に落下したと発表した

 ロシア宇宙庁(ロスコスモス)も、「テレグラム」を通じて、ロシア時間の5月11日午前9時24分(日本時間午後3時24分)ごろ、コスモス482号大気圏に突入し、インド洋に落下したと公式に発表した。

 墜落地点は、当初の打ち上げ場所であるカザフスタン・バイコヌール宇宙基地から約8000km離れた海域であり、落下による人的・物的被害は報告されていない。

 探査機は再突入時に分解し、本体部分と着陸機部分が別々に落下したと見られるが、着陸機部分は金星の過酷な環境に耐える設計のため、墜落後も大部分が原形を留めている可能性が指摘されている。

 現在、残骸の詳しい状態や回収計画についての公式な続報はまだない。

編集長パルモのコメント

パルモの表情、普通

工事現場の下を歩いていて落下物に衝突する確率や、突如陥没穴に飲み込まれる確率よりは低い気がするけど、これだけ頑丈なカプセルだと、人間の活動圏内に落下したら、二次災害も考えなくてはならないね。いつ何が起きてもおかしくない世の中だから、もし自分に命中しても、「ああ、あの時自分でみんなにいってた探査機のパーツか」っと振り返ることができるくらいの有余は欲しいんだ。

References: SatTrackCam Leiden (b)log / Cold War-era Soviet probe set to crash back to Earth next week

📌 広告の下にスタッフ厳選「あわせて読みたい」を掲載中

この記事へのコメント 42件

コメントを書く

  1. 破損して(金星の)大気圏突入用パラシュートらしき物体が展開しちゃってるレーダー画像もあったな。

    • +3
  2. >だが過度に心配する必要はないだろう。
    フラグ立てるのやめて!

    • +4
  3.  均等に陸地と海があるなら 3 割の確率で陸地に落ちると。 その 3 割の中で人の住める陸地は 71% で都市は 3 割の 71% のさらに 1% だから、 0.213% と雑に計算。 およそ 500 分の 1 で、これを高いとみるか、低いとみるか…… エネルギーは TNT 換算でどれくらいになるんでしょうね。 コスモス 482 は結構小さいし、太陽系内の移動程度なので運動エネルギーとしちゃたいしたことないはずですけど、知ってる例を挙げると 2013 年のチェリャビンスクの隕石は 10m で 15km/sec で 500 キロトンくらいらしいです。 近づけば何時何分にどこらへんに落ちるか計算できそうですね。 避難しないで済むくらいで観測できるくらいの海に落ちると新しい知見が得られそうでうれしいかも

    • +3
    1. そろそろどうじゃろか?と思って検索したけど、まだニュース見つけられず( 2025/05/10 の 09:30 時点)

      • +1
      1.  メモ:ロスコスモスによると「日本時間の10日午後3時24分ごろにインド洋の上空で大気圏に再突入したと発表」とのこと。
         すみません、この件近所に落ちたらやだな~とか結構気になってました

        • +8
    2. このサイズだと大気バリアで急減速するので
      事前予測によれば衝突時は250km/hくらいまで落ちる模様
      (実際どの程度だったかは分からないけど)

      472kgが時速250kmで衝突した時のエネルギーは
      約113.8万ジュールでTNT火薬なら270g分程度、
      1トンの車が時速172kmで衝突した時と同程度らしい

      • +3
      1.  計算ありがとうございます。 そのものの衝突エネルギーは意外と小さいと感じました。 羊羹一本くらいのプラスチック爆弾と考えると高温の大気というかガスというかそういったものをまとったブツがドーンと落ちてくるくらいで家に落ちても一軒が吹き飛ぶくらいか……
         海底から引き揚げたり……しないでしょうね。

        • +1
  4. 重量500kgのチタン製ならほぼ地表に落ちてくるだろうねぇ。
    北緯52°~南緯52°には陸地と人口密集地帯が多い。
    都市部に落ちてこないことを祈るしかない。

    • +11
  5. コスモス空を駆け抜けて 祈り(具体的には原子力電池)を今 君のもとへ

    • 評価
    1. ユウキ・コスモ
      抱きしめた心のコスモ
      心も満タンに、石油・コスモ

      • -1
  6. ソ連は無くなった、わしゃ知らん(´-ω-`)

    • -2
  7. レーガン政権がぶち上げた荒唐無稽なスターウォーズ計画にソ連が乗っかっちゃった時代の遺物か。

    • +7
  8. ロメロゾンビなら金星探査機の事故で降り注いだ放射線で一斉に死体が活動開始する流れ

    • -2
  9. ソ連の人工衛星ってちょくちょく落下してる印象、、

    • +11
    1. 衛星の打上げ個数が多いからね、母数が大きければ故障して落ちてくる衛星も多くなる。

      • +11
  10. 逆に言えば、最悪の場所にストライクする可能性もあるわけだ

    • +9
  11. 5月11日じゃなくて7月5日に落下じゃないかなそして深海のアメリカの落とし物が誘爆して例の予言が現実になるとか

    • -12
  12. 地上に届く隕石と同じ程度なら運の悪い人の頭に当たる可能性は数万~数十万回に1回くらいかな。年末ジャンボの1等(2千万分の1)よりはかない高い。

    • 評価
  13. 5/7の現時点ではペルシア湾出口あたりの海上(ドバイ近く)に落下と予想されてる。
    ただちょっとずれると陸地に落下なので安心はできない。

    • +8
  14. 半世紀くらい生きてきて、何回かこういうニュースに遭遇したけど、ほとんど海上オチだったと思う。

    名前もついてない宇宙ゴミが既に大量にあり、日々、人知れず大気圏で燃え尽きたり、海に落ちたりしてるんだろなー

    • +5
    1. 地球の大気層をぶち抜ける物体はレアモノだからね

      • +8
  15. 被害が出ない場所に落ちることを祈るしかないのね…

    • +11
  16. サンプルリターン用のカプセルより強いんじゃねーのコレ?
    オーストラリアとかアリゾナの砂漠に刺さるのをライブで見てみたいんだけどキビしいかなーw

    • -3
  17. さて、その破壊力は? どなたかコメントを

    • 評価
  18. 探査機は予測を大きく外れてクレムリンに落下した。
    プーチンが激怒して探査機を問い詰めるとコンピュータが返答した。
    「はい、同志ブレジネフが打ち上げ失敗をなかったことにするから戻ってこいと仰ったので」

    • +10
  19. 去年ぐらいには、ISSから仕方なく捨てたバッテリーのセルらしきものが民家を直撃している
    バッテリーパック内にたくさんあるセルがバラバラになっての一つだから
    大きな一つだけなら相当運が悪くなければ大丈夫だろう
    というか、地上に到達したのは一つだけじゃないはずなのに報告がないみたいなんだよね
    ほとんどは燃え尽きてしまったのかな

    • +6
    1. 調べたところ、バッテリーに取り付けられた支柱だそうです
      これは、ISSにバッテリーとかの飛行支援装備を取り付けるために使うもので
      「こうのとり」が新しいバッテリーを運んできたパレットでも同じ機構を使っていて
      交換した古いバッテリーも同様にパレットに取り付けたわけです
      1つのバッテリーに1つの支柱ということはないでしょうから
      1台4個が9台で36個として
      その内で運悪く燃え尽きなかったものがあったということなのでしょう
      もちろん、NASAは燃え尽きるように設計したといっています

      • 評価
  20. 【米航空宇宙局(NASA)は10日、地球の周りを漂っていた旧ソ連の金星探査機「コスモス482号」がインド洋に落下したと発表した。現時点で、落下による被害は伝えられていない。】
    だそうです。

    • +10
  21. 追加情報ありがとうございます!
    ちょっと気になってました(´ω`;)

    • +18
  22. 陸地に落ちなくてよかった。
    とはいえ、ロスコスモスもNASAも直接観測できたわけじゃなく、ドイツ上空でレーダーに捕らえられた後は行方不明で、計算上おそらくインド洋に落ちただろうというちょっと歯切れの悪い結果なんよね。
    貨物船での目撃情報とかないものか。

    • +4
    1. 船から見える範囲は4㎞ぐらいだったはず
      落下しているのが見えたとして
      どこに落下したかなんてわからないよ

      • +2
  23. 宇宙でのミッションに失敗したものの生き残り、50年ぶりに帰還したら
    祖国が滅んでるってSF映画ネタでしょって意見あったね

    • +4
  24. 万が一落ちてきて被害を被った場合ちゃんと責任とってくれんだろうな? ロシアよ

    • -1

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

知る

知るについての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

自然・廃墟・宇宙

自然・廃墟・宇宙についての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

最新記事

最新記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。