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洞窟で発見された1万6000年前の犬とオオカミの中間的存在の骨が物語る人間との関係

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(著) (編集)

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洞窟で発見されたイヌ属の骨格を元に再現した動物のイメージ図この画像を大きなサイズで見る
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 南フランスの洞窟で、1万6000年前に生きていたオオカミでもイヌでもなく、その中間的存在にあたる、イヌ属のほぼ全身の骨格が発見された。

 このイヌ属は、旧石器時代の人類と共に暮らし、怪我を治療されながらも、最期は人の手で命を絶たれた痕跡を残している。

 このことは、犬の家畜化の始まりと、現世人類の祖先(ホモ・サピエンス)とイヌ属の深くて複雑な関係性を物語っており、オオカミから私たち人類最良の友である犬が誕生するまでの、謎に包まれた経緯を解明する、貴重な手がかりになるという。

洞窟に眠っていたイヌとオオカミの中間的存在の骨

 2021年、フランス南部イシラックにあるボーム・トロカードの洞窟で、1万6000年前の最終氷期後半に生きたイヌ属のメスのほぼ全身の骨格が発見された。

 このメスの個体は体重約26kg、肩高約62cmと、現代の大型犬に近い体格をしていた。

 「ボーム・トロカードの犬」と名付けられたその動物の骨格は驚くほど保存状態が良く、約1万6000年を経たとは思えないほどだった。

 通常、断片的にしか見つからない先史時代の動物としては極めて珍しく、研究者たちに詳細な比較分析の機会を与えた。

 しかもこの骨は、完全に石化した化石ではなく、有機成分を一部残す「未化石化骨」であり、洞窟内の乾燥かつ安定した環境が、これほど長期間にわたる保存を可能にしたとされる。

 ベルギー王立自然科学研究所の古生物学者ミーチェ・ジェルモンプレ博士を中心とする研究チームが、頭骨や四肢の計測などの調査を行ったところ、この個体が「旧石器時代の犬(Palaeolithic dog)」と呼ばれるグループに属していた可能性が96%以上であることがわかった。

 このグループは、現代の犬のように完全に家畜化されてはいないものの、人間と密接な関わりを持ちつつ生きていたイヌ属動物と考えられている。

 今日の犬と比べると、やや小柄で、マズル(鼻面)が短く幅広いなど、人間との共生による形質的な変化が見られる。

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人間の集落で暮らす旧石器時代犬のイメージ/Credit: John James Audubon & John Bachman

オオカミの子どもを“ペット”として育てていたのか?

 西オーストラリア大学の考古動物学者、ルーカス・クンゴウロス氏(研究には参加していない)は、こう推測する。

「旧石器時代の人類、ホモ・サピエンスたちは、巣穴からオオカミの子を捕まえて、家で育て始めた可能性があります」

 最終氷期の厳しい気候条件のもと、人間とオオカミが同じエリアで生活するようになったことで、両者の距離が縮まり、家畜化への第一歩が踏み出されたのかもしれない。

大切にされながら命を絶たれる、不可解な人間との関係

 ボーム・トロカードの犬には、背骨の骨折痕が複数見られ、しかもそれらは治癒していた。これは、怪我をした後に人間から何らかの手当てを受けた可能性を示している。

 一方で、肩甲骨には2つの丸い刺し傷が残っており、それらは死亡直前のものであることが判明している。

 こうした傷は、槍や矢といった武器によるものであると考えられており、明らかに人間が関与した致命傷だった。

 クンゴウロス氏も「これは殴打または飛び道具によって負傷した痕跡であり、人間が原因である可能性が高い」と述べている。

 人間と共に暮らし、怪我をしても手当てを受けた動物が、なぜその人間の手で命を奪われたのか?

 それは儀式的なものだったのか、生存のための選択だったのか、あるいはまったく別の理由があったのか。

 研究チームは今後、DNA解析などを通じてこの謎を解き明かそうとしている。

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旧石器時代のイヌ属のイメージ図

骨が語る、人と犬のはじまりの物語

 今のところ、ボーム・トロカードの犬が、現代の犬のように完全に家畜化されていたかどうかは定かではない。

 だが完全なる野生動物ではなかったことは確かだ。犬ではないが、オオカミでもなかった。その境界線にある極めて重要な存在だ。

 これまでの研究では、顎の一部や頭骨の断片といった不完全な遺物しか得られなかったが、ボーム・トロカードの犬は1頭の個体としての「全身像」を初めて示してくれた。

 非業の死を遂げた古代のイヌ属動物は、オオカミが人類最良の友になるまでの家畜化の物語を紐解く貴重なヒントを現代に伝えているかもしれない。

 この研究は『Quaternary Science Reviews』(2025年3月20日付)に掲載された。

References: The Canis lupus ssp. (Mammalia, Carnivora) of the Baume Traucade (Issirac, Gard, France): A complete skeleton of a “dog-like” individual from the post-LGM / 16,000-Year-Old Dog-Like Skeleton Found in France Raises Haunting Questions

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この記事へのコメント 10件

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  1. 可愛がってた人と殺した人は別だった、異なる部族の人だった、とか、いろいろ考えられる

    • +27
  2. 肩甲骨の傷は部族同士の争いでついたものではないでしょうか?

    • +13
  3. 人が住み続けたなら放置しないだろうし、この犬と暮らしていた人々は二度とこの洞窟に戻らなかったのか

    • +1
  4. 狼犬なんかも突然荒れたりすることがあるし、この子も何らかの要因でヒトに襲いかかってしまったのかもしれない
    勿論、敵対的部族によるものかもしれないし、病で弱ったところを介錯されたのかもしれないが

    • +16
  5. 人同士の戦いで飼い主を助けようとして・・・とか?

    • +10
  6. ヒトの痕跡がないってことはヒトのほうは連れ去りなんだろう・・・
    これは洞窟でヒトに襲われた感じに思える
    そう思うと対夜盗の用心棒としてオオカミを飼ってたように思える、夜警が要るんだろう

    • +8
  7. 以前、中央アジア少数民族のドキュメンタリーで、村のシャーマンに言われ、子犬から育てた犬を泣く泣く悪霊払いの生贄として殺す青年のエピソードを見た。
    今回の件も人間同士の戦闘に巻き込まれた他に原始宗教的儀礼の犠牲になった可能性もある。

    • +11
  8. 秋田犬でたまにスリッパみたいな鼻先をしたこたいがいるけど、あんな顔だったのかなあ。

    • +5
  9. 戦争の傷なら他の外傷や治療痕もいくらか見つかりそうなもんだけど…鎧の類を付けてないならほぼ使い捨てになってしまいそうでもある
    もちろん背骨の骨折なんて現代医療ですら高度な治療が必要だし安楽死させてやった可能性も
    重要なのはこの時点で既に犬が人間の味方でも敵でもあったこと、ミッシングリンクが見つかってキツネ派生説の信憑性が下がったこと、そして時期か

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