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ポーカーフェイスもお見通し、体に張るだけで感情を正確に読み取ってしまうAIデバイス

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(著) (編集)

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 Image credit: Yangbo Yuan / Penn State.
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 どんなに思っていることをひた隠しに隠そうとしても無駄な努力だ。この絆創膏サイズのウェアラブルデバイスは、無表情の鉄仮面の下に隠された感情の動きを正確に読み取ることができる。

 体温・汗・心拍など、こうした生理学的な変化は、過去にも嘘発見器で真実を見抜くために利用されてきた。

 だが今やAI技術のおかげで、その正確さはほとんど当てにならない嘘発見器の比ではなくなった。

 米国ペンシルベニア州立大学をはじめとする研究チームによる実験では、たとえ表情を隠したとしても9割近く正確に感情を読み取ることができたという。

AIが人間の生理学データから感情を読み取る

 このウェアラブルデバイスは、プラチナやアルミなどの薄く柔軟な金属パーツから開発されたもので、体にピタッと張り付いてリアルタイムで人体の生理学データを収集する。

 集められるデータは、皮膚の温度・心拍数・汗・血中酸素飽和度といった感情に応じて変化するものだ。

 皮膚温度の上昇は、驚きや怒りにともなうものだし、その低下は幸福感・恐怖・悲しみが引き金になる。また汗の増加や心拍数の上昇は、恐怖を感じたときに起きる。

 こうした生理学的な変化は、それぞれを単独で見ても、その背後にある感情を確実に知ることはできない。

 だが、こうしたデータを人間の表情と絡めながら多元的に分析することで、より正確に感情を読み取れるようになる。

 その分析を担うのがAIだ。

 収集された生理学的データは、モバイル端末やクラウドに送信され、専用に開発された機械学習モデルがデータを解析。デバイスの着用者が経験している感情を予測するのである。

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薄い金属パーツを重ねた構造をしており、きわめて柔軟性が高い。この特性を活かしてデバイスをピタッと人体に貼り付ければ、リアルタイムで皮膚の温度・心拍数・汗・血中酸素飽和度といった生理学的データを収集。これをAIが分析することで着用者の感情を読み取る/image credit : Yangbo Yuan, Hongcheng Xu, Libo Gao, and Huanyu Cheng, Nano Letters 2025

通常で9割以上、無表情を作っても感情を見抜く

 今回の研究では、被験者8人に協力してもらい、デバイスの性能が試されている。

 そのための実験では、デバイスを装着した被験者は、いくつかの映像を視聴。

 映像は特定の感情を呼び起こすよう作られたもので、被験者は幸福・恐怖・悲しみ・怒り・嫌悪といった感情を経験することになる。これをデバイスでうまく当てられるか試されたのだ。

 最初の実験では、被験者には普通に表情を浮かべるよう指示されていた。このときデバイスは92.28%の正解率で感情を当てることができたという。

 だが、もっとすごいのは無表情を指示されたときも、同様の正確さだったこと。

 ポーカーフェイスを浮かべるよう指示された実験でも、デバイスは88.83%の正解率で被験者の感情を見抜くことができたのだ。

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ほっぺに貼るとこんな感じ image credit / Yangbo Yuan / Penn State

医療現場で患者の精神的ケアに役立てる

 このようなデバイスが登場したからには、私たちの心の内側はもはや丸裸も同然なのだろうか?

 少なくとも研究チームは他人の感情を徹底的に暴き出そうとは考えていない。彼らが想定するのは、医療の現場での使用だ。

 ペンシルベニア州立大学の博士課程学生ユアン・ヤンボー氏は、ニュースリリースでこう語る。

 「この技術は、心の病に悩みながらも、自らの苦しみを他人にも自分自身にも語れない人々を助ける可能性を秘めています」

 このウェアラブルデバイスがあれば、医師は患者の心の状態をリアルタイムで把握することができる。

 つまり救いを求めながらも己の感情を他人に伝えることができない患者や、自分自身の感情にすら気づかないような患者であっても、その心を正確に診断できるということだ。

 また、見過ごされがちな心の問題の初期症状を発見し、手遅れになる前に治療することもできるかもしれない。

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絆創膏サイズのAIデバイスはメンタルケアに役立つかもしれない image credit / Yangbo Yuan / Penn State

 それはそれとして、本当にポーカーフェイスを見破るために使ってみるというのはどうだろう?

 世界的なポーカーの大会では、腕利プレーヤーの心の感情を知ることは誰にもできない。

 それをこのデバイスで読み取って、視聴者に見せるのだ。無表情の下に隠された高揚や動揺がわかれば、外からは分かりにくいプロのポーカーの駆け引きがいっそう面白くなるのではないだろうか?

 この研究は『Nano Letters』(2025年3月24日付)に掲載された。

編集長パルモのコメント

パルモの表情、普通

確かに医療の世界で役立てるのが王道だが、犯罪捜査などにも応用できそうだね。知られたくない感情を暴かれてしまって困る人も増えそうだけど、そもそも、そういう人はこの絆創膏デバイスを貼ることを拒むわけで、かといって拒んだら拒んだで余計怪しまれるという、使いどころを間違えるとトラブルの元になりそうだね。

でもやっぱ、自分の感情すら持て余しているわけで、このデバイスがあれば、自分の正直な気持ちと向き合えるのかな。それはいいな。

References: High-tech sticker can identify real human emotions | Penn State University / Stretchable, Rechargeable, Multimodal Hybrid Electronics for Decoupled Sensing toward Emotion Detection

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この記事へのコメント 13件

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  1.  身も蓋もない話ですが、結局「うそをつくと身体に変化が現れる」という前提なのですから、息をするようにウソをつく人には効果がなさそうに思われますね。 反対に看護師さんを目の前にすると血圧が上がるくらいちょっとした変化でも血圧上がっちゃう人も「うそを看破する」機械を目の前にするというだけで数値が暴れて見つけられないかも。 私は前記の両極端の間なので多分うそをついたと思えば検出されるだろうなぁと。

    • 評価
    1. 「自分は無実である」という主張も嘘扱いされて詰むだろうな

      • +1
  2. これは人間なんぞよりも
    動物を対象にした時の方がパンドラの箱な気がする

    私「ん〜可愛い〜〜いい子でちゅね〜」
    ?(…迷惑)

    • +8
    1. イルカの言語をaiで解読するって記事が前にあったけど、これを使ったら面白いかもね

      • +1
  3. 海外サスペンスに登場しそうなアイテムやけど
    身体が動かないような人にも使えたらコミュニケーションにも役立ちそうやね

    • +6
  4. 頭の上にパッと意思表示的吹き出しでも出して欲しいくらい口下手

    • +1
    1. どうする?何を言ってても「嘘ではない」判定が出たら・・・

      • +5
  5. データ数はどの程度なのだろう?被験者は8人といってるけど、その被験者たちの性格の違いによる差がわからないのがちょっと惜しい

    • +1
  6. ポリグラフでとったデータをこのAIに食わせるとどうなるんだろうか

    • 評価
  7. 最近つくづくやって良い科学とやらない方が良い科学について考える法律がまるで追いつけてないと感じる。
    こうなる未来は予想できたたけど規制が検討される頃にはえらいこっちゃになってそうだ。

    • +2

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