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100年前にカリフォルニアから姿を消したハイイログマの再導入が検討されている

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(著)

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Photo by:iStock
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 アメリカ、カリフォルニア州の州旗には、力強く歩く一頭のクマが描かれている。これは約100年前に絶滅したカリフォルニアハイイログマだ。

 カリフォルニアハイイログマは、ハイイログマ(グリズリーベア)の一種で、かつては州のあちこちにすんでいた。だが、1924年にセコイア国立公園で目撃されたのを最後に完全に姿を消した。

 そして最近、ハイイログマを再びカリフォルニアに戻すべきかどうかの検証がなされている。

 再導入候補は北米本土に生き残る一般的なハイイログマだ。生物学的、生態学的、経済的、法的、政策的なあらゆる面において、再導入を阻むような問題はないこと示す、査読済みの研究報告書が発表された。

 野生動物と人間の共存は再び可能となるのか?壮大な実証実験がいま、カリフォルニアで動き出そうとしている。

州の象徴だったクマはなぜいなくなったのか?

 カリフォルニアハイイログマ(Ursus arctos californicus)は、かつてカリフォルニア州の山や草原、海岸沿いの森など、さまざまな場所に広く生息しており、カリフォルニア州旗の中央には堂々たるクマが描かれている。

 カリフォルニアハイイログマの体長は2.4〜2.7mほど、体重は通常で約270〜680kgにもなり、特に大きな個体ではそれ以上に達することもあった。

 北アメリカでも最大級の動物のひとつで、力強くがっしりとした体つきが特徴だ。植物や果実、小動物まで何でも食べる雑食性で、自然の中で重要な役割を果たしていた。

 だがその存在の大きさが、やがて命取りになっていった。

 ゴールドラッシュが始まった19世紀半ば、カリフォルニアには多くの開拓者たちが押し寄せた。

 彼らが森を切り開いて農地をつくり、家畜を放牧するようになると、グマとの接触も増えていった。牛や羊が襲われたという報告も相次ぎ、「人間の暮らしを脅かす危険な動物」として、次第にハイイログマは目の敵にされるようになる。

 さらに、毛皮を取るための乱獲も深刻だった。そしてもうひとつ、人間の娯楽のためにクマが利用されていた事実もある。捕まえられたハイイログマは闘牛のように牛と戦わせられ、見世物として使われたのだ。

 こうした状況の中で、クマの数は一気に減っていった。

 自然の中で生きる場所を失い、人間に追われ、そして娯楽の道具にまでされていった結果、1924年、セコイア国立公園で最後に目撃されたのを最後に、カリフォルニアハイイログマはこの地から完全に姿を消した。

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サンタバーバラ自然史博物館に展示されているカリフォルニアハイイログマの標本 Vahe Martirosyan / WIKI commons

クマを再びカリフォルニアに戻すことは可能なのか?

 それから約100年の時が流れ、クマの姿を実際に見ることはなくなった今でも、カリフォルニアの人々の心にはハイイログマの存在が生き続けている。

 その証拠に、州旗や公的なシンボルには今もクマが描かれているし、州内の大学ではマスコットとして使われることもある。

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カリフォルニア州の州旗に描かれたハイイログマ Photo by:iStock

再導入に関する研究報告書では問題ないとの判断

 そうした中で動き出したのが、カリフォルニア・グリズリー・アライアンス(California Grizzly Alliance)という団体だ。この団体は、カリフォルニア大学サンタバーバラ校の環境研究教授、ピーター・アラゴナ博士を中心に結成され、ハイイログマの再導入についての総合的な研究を進めてきた。

 その研究の土台となっているのが、カリフォルニア・グリズリー研究ネットワークである。このネットワークは過去10年にわたり、ハイイログマの歴史、生態、文化的意義、人との関係などを広範に調査してきた。

 そして2024年、この2つの組織の協力により、200ページ以上におよぶ本格的な査読済みの実現可能性調査報告書(PDF)が発表された。

 その内容によれば、ハイイログマの再導入は「生態学的にも法的にも経済的にも、致命的な障害はない」という結論が導き出されている。

 報告書によると、生態学的には十分な生息地が今も残っており、再導入の候補として「トランスバース山脈」「シエラネバダ山脈の南部」「北西部のクレマス山地とトリニティ・アルプス」の3地域が挙げられている。

 また、現在の法律や政策のもとでも、適切な保護措置を講じれば導入は可能とされている。

 ただし、ここで導入が検討されているのは、すでに絶滅してしまったカリフォルニアハイイログマそのものではない。

 代わりに、現在もアメリカ西部やカナダ、アラスカなどに生息する一般的なハイイログマ(Ursus arctos horribilis)が対象となっている。

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ハイイログマ image credit:Pixabay

 この2種はともにヒグマ(Ursus arctos)の仲間であり、カリフォルニアハイイログマはその地域個体群(または亜種)として知られていた。

 体格や性格には多少の違いがあったものの、生態的な役割や食性は似ており、自然の中で同じような役割を果たせると期待されている。

 研究者のあいだでは、カリフォルニアハイイログマを独立した「亜種」と見なすかどうかについて議論もあるが、文化的・象徴的な意味では、今も「カリフォルニアのクマ」として多くの人に親しまれている存在だ。

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Photo by:iStock

人とクマは、もう一度共に生きられるのか

 再導入に対して、カリフォルニア州の人々の多くは前向きだ。カリフォルニア・グリズリー研究ネットワークが2019年に行ったアンケートでは、およそ3分の2の州民が再導入に賛成しており、反対は14%にとどまっていた。

 特に先住民族のあいだでは、ハイイログマの復活に強い思いを持っている人たちが多い。テホン族のオクタビオ・エスコベド三世首長は、「グリズリーはただの旗の模様ではなく、この土地の自然と文化に深く関わっていた存在だ。カリフォルニアの生態系を形作り、州全体の部族国家にとって深い意味を持つ」と語っている。

 もちろん、クマと人との共生には課題もある。人里に出てくるリスク、家畜とのトラブル、観光地での安全対策など、慎重に考えるべきことはたくさんある。

 それでも様々な要因を分析することで、可能かどうか、可能なら戻したいと前向きに考える人々がいる。元の自然を取り戻すことに価値を感じているのだ。

編集長パルモのコメント

パルモの表情、普通

日本にオオカミを再導入したいという声も上がっているが、今回のハイイログマの研究のように、長期的に見た場合の、生物学的、生態学的、経済的、法的、政策的な検証をじっくり行ってほしいよね。イノシシや鹿などの被害や、野犬による被害は減るかもしれないが、家畜を荒らされる可能性もあるわけで、その辺のところをじっくりと本格的に研究して欲しい。ニホンオオカミにニホンカワウソはもういないけど、日本の自然の中で暮らしていくうちに日本固有の変化をしていくだろうしね。

References: Calgrizzly

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この記事へのコメント 30件

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  1. 「再導入」もなにも、北米にはクマさんいるんだから
    カリフォルニアに引っ越して来たときにそっとしておくで良いじゃん

    • +8
    1. 100年間目撃されてないくらいだから
      他の場所から自然に移動してくる可能性は低いのでは
      ハイイログマのいるイエローストーンからだと
      直線距離でも700km以上あるし、
      生息に適した環境が続いてるとも限らない

      北海道のヒグマですら孤立して
      絶滅の恐れがある個体群もあるくらいなので

      • +10
  2. 銃社会ですから、再導入してたら人間に危険の及ぶことがあるかしれないけど、その際は集団的自衛でもって銃撃するんでしょうね

    • +2
    1. 日本の猟師さんの話だと、かなり技術がいるんだなーと感じたよ
      頭は骨の形から弾かれやすく、体はクマーの動きを止められる場所を狙うのが至難だそう
      (マシンガンならいける?)

      • +3
      1. ハンドマシンガン位だと目鼻口に集弾出来れば怯ませ向かって来るのを逸らす位は出来るかも知れないが口径が小さい為にストッピングパワーも無く数秒で弾が切れるので時速40~50kmで突っ込んで来る熊を止める事は無理

        • +2
  3. >牛と戦わせられ、見世物として
    牛側もいい迷惑よね(バイソンなんかならいい勝負になるんかしら)

    • +14
    1. 知識がないから是非についてはコメントしようもないけど、絶滅させておいて別の場所から導入か……とざわざわする

      • +18
  4. イタリアで再導入したクマはどうなりましたか?

    • +2
  5. イエローストーン国立公園で絶滅したオオカミを再導入して成功した実績があるからな
    草食動物の上位捕食者が居ることで植物の均衡が保たれるという説が今は有力らしい

    • +6
    1. クマさんはオオカミと違って山頂では減っていくだけの土壌の栄養素を山の上に持って運ぶお役目もあるからなぁ。 森林帯から標高3000m前後にまで行ったり来たりする動物ったらクマくらい。(ツキノワグマはカモシカより標高高いところまで出向く)

      • +2
  6. 🐻 「増えたら駆除するんでしょ。くまったなぁ~。」」

    • +6
  7. 日本人ならマングースの失敗を想起する人も多いんじゃないかな
    100年も経てばもう新しい自然秩序が出来上がってると思われるが…

    • +11
  8. 今熊がいないと言う以前と異なる状態ならば、
    熊を受け入れる体制が人間も含めてカリフォルニア州の辺りに、そう言う状態に無いってことなんじゃないかって思ったんだけど
    熊を戻すにせよ、居なくなった原因が何だったのか知らないと
    別の問題が起きてしまうような気がする

    • -2
  9. 日本は狼が滅びたおかげで子供だけで
    集団登校できていることをお忘れなく。
    大人もカバンに弁当箱入れて通勤できなくなるよ。

    • +2
    1. まず日本で集団登校が始まったのはオオカミ最後の目撃(1905)から少なくとも50年後だが何の関連があると?
      大体仮に襲ってくるなら野犬の方がよっぽど危険だが大丈夫か?集団登下校始まってからバブル弾けるくらいまで都市部にすらいたぞ?
      なおかつ世界的にどっちも減ってきて鹿が増えまくってるせいでオオカミの再導入が真面目に検討されてる事は知ってる?
      こういうやつがいる限り自然破壊も大量絶滅も続くんだろうなって思う

      • +2
  10. 熊といっても目があったらとっとと逃げてくブラックベアと違ってグリズリーは荒くれだからなあ

    • +5
  11. きちんと囲った保護区を管理出来るなら戻してもいいんでは
    税金上がるけど

    • 評価
  12. 本来、熊は人を襲わないんだけどなぁ。
    小熊を殺されたとか、親を殺されたとか恨みを持っていたら襲います。また、一度でも味をしめた殺人熊になったらおしまいです。
    七海さんというウクライナから来ている熊語や4000語のカラス語を操れる女性がFacebookで教えてくれています。
    飼うといって檻に閉じ込めたりするのではなく、絵本を読み、家族として家の中に入れて、植物性の物を与えていたら農作業も手伝ってくれます。

    熊の1日の移動範囲は山手線の内側くらいあります。
    そして森を作るのに必要なんです。

    日本では愚かにも絶滅させる勢いです。
    多くの熊の家族が人間に殺されています。

    本来共存できたのに。

    ここに再導入をしたなら今度こそ人と棲み分けができたらいいなと思います。

    • -8
    1. 日本の熊は増えているようですよ
      九州では絶滅したそうですが
      近年私のテリトリーに出没することが増えてきました
      前日真夜中に歩いた道を、翌日の朝に熊が通っていきました
      遭わなくてよかった

      • -4
      1. 追記
        その熊ですが4人襲いまして(二人は猟友会)、一人は寝たきりになって半年後に亡くなったと風の噂で聞きました

        • -4
    2. 違います。クマは冬眠します。冬眠明けのクマは空腹により凶暴化しています。だから目の前の肉を食べます。それだけです。クマの生態も知らずに、プーさんのような幻想を抱くのはやめてください。

      • 評価
  13. 日本だと九州の熊はただ一頭を除いて絶滅したけど
    戻したいと思う人はいる?

    • +6
  14. 日本は今でも多くの動物めっちゃ駆除するくせにオオカミとか再導入するな
    どうせい罠に引っ掛かったりオオカミが問題になったら駆除するだろうし
    日本でもアメリカでも一回絶滅させたものは諦めたほうがいいと思う

    • +3
  15. 小さい熊でも脅威なのだから、やめておいたほうが良いような…?
    こういうのはなるべく人への被害が少ない動物に限るべきかと思う。

    • +4
    1. ほんとそれ
      人殺したら責任取れるのかねって
      生態系を保つ道具みたいに認識してるけど
      今その場にいたら猛獣でしかないんだからね

      • +2

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