メインコンテンツにスキップ

台湾で発見された顎骨の化石はデニソワ人のもの、アジアの人類史を塗り替える

記事の本文にスキップ

7件のコメントを見る

(著) (編集)

公開:

この画像を大きなサイズで見る
台湾沖で発見された顎骨の化石はデニソワ人のものだった image credit:Chun-Hsiang Chang, Jay Chang
Advertisement

 約10年前、台湾の海底から引き上げられた顎(あご)骨の化石は、絶滅した旧人類デニソワ人のものであることが判明した。

 「澎湖(ほうこ)1号」と呼ばれるこの顎骨は、これまで誰の骨なのか不明だったが、日本の総合研究大学院大学をはじめとする研究チームが、骨や歯に含まれるタンパク質から身元の特定を試み、台湾では初となるデニソワ人のものであることを突き止めた。

 この化石はは、これまでに見つかっている中で最も完全なデニソワ人の顎であり、東アジアにおける彼らの広範な存在を裏づける貴重な証拠となるという。

謎に包まれた旧人類デニソワ人

 デニソワ人は、およそ前期・中期旧石器時代にアジアに生きていたとされる絶滅した旧人類だ。その名は、2008年にアルタイ山脈にあるデニソワ洞窟で初めて化石が発見されたことにちなむ。

 以来、アジア北部のみならず、チベット高原やラオスなどでデニソワ人とされる化石が発見されてきたが、その数は少なく、またほとんどが骨のカケラか歯であることから、デニソワ人の実像は謎に包まれたままだ。

 遺伝子解析の結果から、数十万年前にネアンデルタール人から分かれたと考えられているが、彼らがいつ頃アジアにやってきて、絶滅したのか詳しいことはわかっていない。

 化石からわかるのは、せいぜい30万年から5万年前にかけてそこにいたということだけだ。

この画像を大きなサイズで見る
デニソワ人の予想再現図  image credit:Cheng-Han Sun

台湾初となるデニソワ人男性の顎骨の化石

 今回デニソワ人のものであることが判明した下顎(あご)の骨は、台湾の澎湖(ほうこ)水道の海底で発見されたもので、「澎湖1号」と呼ばれている。

 これまで澎湖1号が誰の骨なのか、これまではっきりしたことはわからず、「アジア第4の原人」とされてきた。骨のDNAは分解が進んでしまったため、正体を探ることができなかったのだ。

この画像を大きなサイズで見る
澎湖1号の下顎の写真 image credit:Yousuke Kaifu

 そこで今回、日本の総合研究大学院大学とデンマークのコペンハーゲン大学らによる国際研究チーは、DNAではなく「古代タンパク質解析(paleoproteomics)」と呼ばれる方法を用いた。

 これは、化石に残されたタンパク質を質量分析などで調べ、その特徴から種や性別を特定する技術である

 その結果、抽出された約4200のアミノ酸配列(アミノ酸はタンパク質を構成する部品)のうち、2ヶ所がデニソワ人に固有のものであることが判明。さらに男性だけが持つタンパク質も検出された。

 つまり澎湖1号はデニソワ人の男性のものであるということだ。台湾でデニソワ人の骨であることが確認されたのは初めてであるという。

この画像を大きなサイズで見る
台湾沖で発見された澎湖1号の下顎骨の右側面の写真 Image credit: Yousuke Kaifu)

デニソワ人はアジア全域に広がっていた可能性

 澎湖1号の持ち主がいつ頃生きていたのか、19万年~1万年前とかなり幅広い期間でしかわからない。

 だが、その骨がデニソワ人のものであると判明したことで、この旧人類の顎や歯の特徴がだんだんと見えてきた。

 たとえば、同時期に存在したネアンデルタール人やホモ・サピエンスに比べると、その顎と歯は頑丈でごついものであるという。

 さらに彼らが暮らしていた地域についても、新たな洞察がもたらされている。

 興味深いのは台湾で発見されたことだ。

 デニソワ洞窟からは約4,000km、バイシヤ洞窟からも約2,000km離れたこの場所に、デニソワ人が住んでいた可能性が浮上したことで、彼らの分布範囲はアジア全域に広がっていたことになる。

この画像を大きなサイズで見る
デニソワ人の顎骨が発見された場所と、その他のデニソワ人の化石発掘現場を示す地図 image credit:Takumi Tsutaya/Science

 たとえば、東南アジアやオセアニアなどで暮らす現代人の体には、わずかだがデニソワ人の遺伝子が受け継がれているのだ。日本もしかりだ。

 日本列島に暮らす現代人のゲノムにもわずかだがデニソワ人との交雑の痕跡が残っていることが明らかになっている。

 今回、台湾にもデニソワ人がいたことがわかったことで、彼らがアジア南東部でも暮らしていたことがはっきりした。

 どうやら、私たちホモ・サピエンスの祖先はネアンデルタール人、さらには、デニソワ人と交わり、今は存在しない旧人類の痕跡をその体に残したようだ。

 デニソワ人がどのように暮らし、なぜ姿を消したのか、その全貌はまだ明らかになっていない。だが今回の発見が、彼らの謎を解くカギとなるかもしれない。

  この研究は『Science』(2025年4月10日付)に掲載された。

References: Eurekalert / Soken.ac.jp / Science

📌 広告の下にスタッフ厳選「あわせて読みたい」を掲載中

この記事へのコメント 7件

コメントを書く

  1.  「澎湖」がどこかわからず調べて、恥ずかしながらそこに島があることをしりました。 海を越えて、あるいは干上がった海底を歩いてそこまで来ていたということでしょうね。 私は額が狭く母方の係累にも何人か額が狭いのでもしかするとデニソワ人の遺伝子が出てるかも? などと思いつつも、東北出身の人々なのでいろいろな想像をするきっかけになる面白い記事でした。 

     ご親族に額の狭い人やあごががっしりとしてもしかすると四角い顔?あるいは頭の上の方が幅広な方とかいらっしゃいませんか? などとほかの方のコメントにも期待してます 😊

    • +1
  2. よく見つかったな〜
    残ってた一因は、顎に圧がかかるから?

    • +1
  3. デニソワ人は絶滅したと言われているが、デニソワ人の固有種が残ってないだけの話。つまりはデニソワ人全員がヒトと交雑したというだけのこと。
    日本人も今に絶滅種に入るんだろうな。

    • -13
  4. ネアンデルタールとで白人、デニソワとでモンゴロイドが生まれたんかもね

    • +2
  5. デニソワは北の方なんだったよね、中央アジア的な位置のカザフスタンの上の方のロシア
    フィリピンが最もデニソワの血が濃い感じらしいけど、広範囲だね

    • +3
  6. 男性しか持たないタンパク質ってもしかして

    • 評価

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

絶滅・絶滅危惧種生物

絶滅・絶滅危惧種生物についての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

人類

人類についての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

最新記事

最新記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。