メインコンテンツにスキップ

植物は脳がなくてもストレスを記憶していて、次の世代に伝えている

記事の本文にスキップ

7件のコメントを見る

(著) (編集)

公開:

この画像を大きなサイズで見る
Advertisement

 地に根を張りじっとそこに在る植物だが、様々な方法を使ってメッセージを発している。脳を持たない植物だが、植物にも記憶があるという。

 我々はストレスを受けると、その経験を記憶し、次に同じような状況に直面したときに対処しやすくなるが、植物もまた、ストレスを記憶し、環境に適応する能力を持っていることが科学的に明らかになってきた。

 一度ストレスを受けた植物は、次の脅威に対してより強く防御できるようになるという。では植物は一体どこに記憶を保存しているのだろう?

植物は動物とは別の記憶システムを持っている

 ただじっと静かにしているように思える植物だが、実際には活発に動かないながらも、様々な手段を用いて動的に活動している側面もある。

 たとえば、彼らは想像以上におしゃべりで、ひんぱんに仲間とコミュニケーションを交わしており、埼玉大学の研究者がその決定的瞬間の目撃に成功している。

 さらに植物は物事を記憶できる。

 そうした記憶は細菌や害虫から身を守るためのものだが、脳を持たない植物は一体どうやって過去の出来事を覚えているのだろう?

 英国シェフィールド大学の植物学者ジュリアン・トン氏によると、その秘密は植物の遺伝子にあるという。

 私たち哺乳類をはじめとする動物は、細菌やウイルスなどによる病気から身を守るために免疫系を進化させてきた。

 だがさまざまな環境で生きる私たちが、あらゆる病原菌に対応できる免疫をあらかじめ準備することは難しい。

 そこで私たちの免疫系は、過去に出会った病原菌などを記憶しておくことにした。その際に生体メモリチップの役割を果たすのが、「メモリーT細胞」と「メモリーB細胞」である。

 だが植物にはメモリーT細胞とメモリーB細胞もない。その代わりに彼らが身につけたのが、「免疫プライミング」という私たちとはまた別の記憶システムだ。

この画像を大きなサイズで見る
image credit:unsplash

植物の記憶を保持する免疫プライミングとは?

 免疫プライミングは、人間のワクチンによる免疫獲得と似た仕組みで、一度ストレスを受けた植物が次回の攻撃に対してより強く防御できるようになる仕組みだ。

 トン氏によると、免疫プライミングは細胞内の遺伝子を修正することで行われているという。

 私たちの遺伝子は、生まれたときの状態のままずっと同じなわけでなく、生きているうちに遭遇するさまざまな状況に合わせてDNAの塩基配列を変えずに遺伝子の働きを調整している。これをエピジェネティック変化という。

 植物の場合、エピジェネティック変化を「トランスポゾン(転位因子)」を利用して実行している。

 トランスポゾンは「動く遺伝子」と呼ばれるDNAの断片で、その名の通りゲノム内を移動することができる。

 そうした振る舞いは突然変異の引き金になるため、生物の進化に重要な役割を果たしてきたと考えられるユニークな遺伝子だ。

 そのため、突然変異を不用意に引き起こさないよう、植物のトランスポゾンのほとんどはスイッチがオフになっている。

 ところが病気に感染するなど、周囲からさまざまなストレスを受けると、位置を変えてスイッチが入る。

 これが記憶として機能し、同じ病気に対しては防御遺伝子が迅速かつ強力に働くようになる。

この画像を大きなサイズで見る
Unsplash

ストレスの記憶は次世代へ引き継がれることも

 だが、この状態には代償がある。免疫が強くなるのと引き換えに、成長しにくくなるのだ。だから必要がなければ、また元に戻る。私たちの記憶と同じように、だんだんと薄れていくのである。

 といっても、植物が受けるストレスが強ければ、免疫プライミングの記憶はずっと強固なものとなり、場合によっては次の世代に引き継がれることもある。

 研究によると、植物が繰り返しストレスにさらされることで、長期間にわたるエピジェネティック変化がDNAに蓄積されることが分かっている。

 この記憶があることで、次に同じようなストレスを受けた際に、より素早く強力な防御反応を示すことができるのだ。

 免疫プライミングは、寿命が数週間と短いシロイヌナズナから、400年生きるヨーロッパトウヒなどの長命の樹木種に至るまで、さまざまな植物種で報告されている。

この画像を大きなサイズで見る
植物はストレスの記憶を何世代にもわたって伝える可能性がある Photo by:iStock

免疫プライミングの他にも記憶メカニズムを持っている

 この免疫プライミングが植物の内部メモリだとすれば、もう1つ外部メモリのような記憶メカニズムが植物にはある。

 トン氏によると、それは環境を利用した記憶システムであるという。

 外部から攻撃を受けると、植物はその根から化学物質を放出する。この化学物質はいわばSOS信号で、周囲から病気を抑えてくれる微生物を引き寄せてくれる。

 この化学物質が土に十分に放出されれば、その土はいわば”遺産”となって、次の世代までも病気から守ってくれるようになる。

 また、この外部メモリを支える化学物質は、植物のエピジェネティックな遺伝子の変化によって調整されているという。

 つまり内部メモリと外部メモリは、独立した記憶システムではなく、相互につながっているということだ。

 こうした植物が身を守るための記憶システムについては、まだまだわかっていなことも多い。

 温暖化に直面している人類にとって、こうした植物の記憶を理解することは、暑くなった世界でも育つ農作物の栽培のヒントになるそうだ。

編集長パルモのコメント

パルモの表情、すましがお

植物がなければ動物が生きていけないし、植物に含まれる成分が猛毒すぎて動物をあの世へ導くことだってある。地球上で一番偉大で、恐ろしいのはやはり植物なのかもしれない。研究が進むにつれ、植物がコミュ力高かったり、記憶を持ってたり、意識すらあるかもしれないとすら言われているわけで、とりあえず雑草を見たら一礼するくらいの敬意は払っておいたほうがよさそうだ。もしもの時に守ってくれるかもしれないし。

References: How plants are able to remember stress without a brain

📌 広告の下にスタッフ厳選「あわせて読みたい」を掲載中

この記事へのコメント 7件

コメントを書く

  1. この手の記事、度々出てくるけど脳がないのに意識があるならAIで心を作るなんて無理だよな。

    • -7
    1. 免疫反応みたいな「記憶(細胞メモリー)」があると言っているだけで、
      「意識」があるとは言ってなくない?

      • +6
    2. 心も脳にあるわけじゃないのかもしれない

      • +1
    3. それは「人間の」ってのが付くやつのことですよね
      「意識」や「心」というものは人間自身でもはっきり理解できていないわけですが
      AIがアンドロイドとして人間そっくりにふるまえたとしても
      「人間の」ものじゃないことは、はっきりしていますね
      ウィキペディアにあるようなものなら植物にも意識はあるといえるのかもしれません
      >意識(いしき、Consciousness)は、一般に、「起きている状態にあること(覚醒)」または「自分の今ある状態や、周囲の状況などを認識できている状態のこと」を指す[1]。

      • -1
  2. 昔、水やり失敗して水が吸えなくなった多肉ふた株を
    蘇生させるため、一か八かで根を切り落とした
    一月半ぐらいして発根するまで、本当に弱ってて危なかった
    が、翌年、また失敗して根切りしたら、今度は「あーハイハイ
    またあの年中行事ね」みたいな感じであっさり発根された
    やっぱり学習してるのかあいつら・・・

    • +11
  3. タイトルを見て
    「脳が無くても記憶する!」
    「なんだってー!」
    と、条件反射みたくリアクションしちゃったけど。
    考えてみれば、遺伝子ってプリミティブな記憶のメカニズムとも言えるんだね。
    脳は思考や記憶に特化した器官ではあるけれど、他の器官とかで代替できる部分は、意外と大きいのかもね。

    • +8
  4. 記憶の遺伝って蝶についても最近話題になったよね

    • +1

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

知る

知るについての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

植物・菌類・微生物

植物・菌類・微生物についての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

最新記事

最新記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。