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ドアを通過しようとすると用事を忘れてしまう「ドアウェイ効果」とは?

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(著)

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 ドアを開けて部屋をまたいだ瞬間、あるいはある場所から別の場所に移動した瞬間に記憶がすっとんでしまうことは「あるある」だったようだ。

 私は毎日のこれをやらかしているので心配だったのだが、「ドアウェイ効果」という名称があるくらいだから、頻度の差はあれど経験者は多いはずだ。

 例えば、リビングで「台所から何か取ってこよう」と思いつき、台所に着いた瞬間、その理由がすっかり頭から抜け落ちてしまう。あるいは、買い物に行ったのに、店に入った途端に何を買おうとしていたかを忘れてしまうことだ。

 これは単なる疲れや記憶力の低下だけが原因ではないという。今回は「ドアウェイ効果」の背後にある科学的な理由に迫ってみよう。

場所が変わると記憶がリセットされる「ドアウェイ効果」

 2011年、アメリカのノートルダム大学の研究チームは、「ドアウェイ効果」を検証する実験を行った。

 この研究では、参加者に物を運ぶ仕事を与え、現実世界やバーチャル空間で部屋を移動するよう指示そた。

 その結果、ドアを通過した後に、圧倒的に忘れ物が増えることが明らかになった。

 単に部屋を横切るだけの場合と比べても、ドアを通ることで記憶がリセットされる確率が高くなるのだ。

 これは、私たちの脳が過去の出来事を整理して「区切り」をつける仕組みと関係しているという。

 この記憶の仕組みは「イベントホライズンモデル(Event Horizon Model:記憶や認知における境界)」によるもので、脳は出来事を連続的に記憶するのではなく、「その場所で起きたこと」を断片に分けて記憶する特徴があるのだという。

 その結果、ドアを通ることで、「新しい場面が始まった」と脳が認識し、それまでの出来事と切り離してしまうのだ。

 ノートルダム大学心理学教授のガブリエル・ラドバンスキー氏は当時の声明で「別の部屋で下した決断や活動を思い出すのは、それが区分化されているため困難です。」と説明した。

 これが、前の部屋で考えていたことをすぐに思い出せなくなる理由なんだという。そのためドアウェイ効果は位置更新効果とも呼ばれる。

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Image by CJ from Pixabay

イメージだけでも「ドアウェイ効果」は発生する

 さらに2014年のイリノイ州ノックス大学研究では、実際にドアを通らなくても、この効果が起きることが報告された。

 つまり、脳は「ドアを通り抜ける場面」を想像するだけで、記憶を忘れやすくなることがわかったのだ。

 これは、脳が場所の移動を想像しただけで、記憶の整理を始めてしまうためだと考えられている。

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Image by Jérémie Perron from Pixabay

ドアウェイ効果はいつでも起きるわけではない

 ただし、ドアウェイ効果がいつでも起こるわけではないこともわかっている。

 2021年にオーストラリア、クイーンズランド大学が行ったVR(バーチャルリアリティ)を使った実験では、ドアウェイ効果がどのような条件で起こるのかが詳しく調べられた。

 最初の実験では、参加者にVRヘッドセットを装着してもらい、仮想空間の中でテーブルに近づき、その上に置かれた物を覚えるという作業を行った。そして、覚えた後で別のテーブルに移動し、そこで新たに物を覚えるよう指示された。

 ここで重要なのは、「次のテーブル」がどこに配置されていたかだ。

  • 同じ部屋の場合: 次のテーブルが現在の部屋の中にあり、ドアを通る必要がない
  • 別の部屋の場合: 次のテーブルが隣の部屋にあり、ドアを通過して移動する必要がある

 この実験では、ドアを通過した場合でも、記憶に特に影響がないことがわかった。つまり、「ドアを通過することだけでは、ドアウェイ効果は必ずしも発生しない」ということだ。

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Photo by:iStock

脳の負担が大きいとドアウェイ効果が起きやすい

 クイーンズランド大学による次の実験では、「物を覚えながら同時に数を数える」という追加の作業を加えた。

 すると結果が大きく変わった。この状況では、ドアウェイ効果が強く現れたのだ。

 研究者たちは、脳が同時に多くの情報を処理しようとすると負荷がかかり、記憶が曖昧になりやすいことを指摘している。

 また、仮想空間の部屋がほぼ同じ見た目だったことから、記憶の喪失は「ドアを通過する動作」そのものよりも「環境や状況の変化」による可能性が高いとも考えられる。

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Photo by:iStock

日常でどう活かす?

 「ドアウェイ効果」を理解することで、日常生活の困りごとを減らすヒントになるかもしれない。

 例えば、移動してなにかを行う場合には、意識的に口に出して確認したり、メモを取るなどして「忘れにくい工夫」をすると良い。

 また、何かを探しに行く時は、目的を心の中で繰り返しながら移動すると、記憶の断絶を防ぎやすい。

 ただし私のように1日に数回とか、毎日30分は何かを探しているくらい頻繁だと、単なるドアウェイ効果で片づけられない何か他の要因もありそうな気がする。

 なので「あらやだうっかり忘れちゃった、でもこれってドアウェイ効果だから」とか、自慢げに言わないようにしようっていうか言えないな。

References: Biomedcentral.com / Tandfonline / Sagepub.com / News.nd.edu

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この記事へのコメント 25件

コメントを書く

  1. いや……あの……立ち上がった瞬間に忘れることが多くて…… あれ?はて?何を書こうと思ったんだっけか? 忘れるってことはきっと重要じゃないんだ。 と思いこむことにしていますw

    • +23
    1. それは立ち上がったことにより視点が高くなり部屋の見え方が変わったことにより、ドアウェイ効果と同じことが発生していると考えられます(適当)

      • +18
  2. 2階に上がると…

    これ安眠に使えそう
    頭リセットできるか、今夜試してみる

    • +8
  3. 調べ物をしようとWebブラウザを立ち上げてYahooのホームページを見た途端に何を調べようとしていたのか忘れることがある
    これを「ドahoo効果」と呼ぼう

    • +50
  4. スーパー入って買うものの場所へ行く途中でほかの商品に目を奪われると
    あれ?何買うんだっけー?となることが多いです
    ドア関係なくてすいません、、、

    • +21
  5. パルモさんがよく忘れるのは、記事の更新の方に脳みそを酷使してるからだよ

    • +12
  6. 逆に考えれば 嫌なことを忘れるにはドアを通ることを繰り返せばいいのか?

    • +18
    1. いやなことが起こった場所に戻ると記憶が再現されて強化されるかも
      PTSDだね
      散歩みたいにしばらくは戻らないように心掛けた方がよさそう
      ただ、通過を含めてそこにいる必要があるって場合はどうしたらいいんだろう

      • 評価
  7. ドアは無いな
    人と話をするとその後「何しようとしてたんだろ」はあるけど

    • 評価
  8. 🙀 「どこでもド~ア~!」
    👦 「アレ、何しに来たんだっけ?」

    • +8
  9. えっと、コメなに書こうとしてたんだっけか?

    • +19
    1. 最近頻発するようになってきたので名前があると助かる
      えーとドアスルー効果だっけ?

      • +6
    1. 自分も、確実に年齢が原因なんだよね。かつてドアは影響なかった。

      • +1
  10. トイレで考えていたことが水を流すと同時に流れていっちゃう(忘れる)のも同じような理屈なのかな?

    • +10
  11. ホムセンに行くと何か買い忘れがある気がしてならない現象は何というのだろう

    • +6
  12. 確かに頭の中で幾つも課題持って部屋移動すると、その部屋で先ず行おうとしていた事柄が吹っ飛びやすいかも
    優先順位を強く意識してるとそうでもないんだけどね

    • +2
  13. 場所移動すると忘れるってのは経験あるなあ。その場合いったん元の場所に戻ると思い出したりするんだよ・・・。

    • +7
    1. トイレで座って思案して
      終ると忘れてるよね。

      • +1
  14. スマホをロックした時も忘れやすい…気がする

    • 評価
  15. 「あっそうだアレしなきゃ( ゚д゚ )!」
    (立ち上がる)
    「……(`・ω・´?」

    • +2

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