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東京大学、全大気のデータ作成に成功:気象予測の未来を変える

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 東京大学の研究チームによって、大気圏すべてを網羅するデータセットが作成されたそうだ。

 佐藤薫教授らが開発したデータ同化システム「JAGUAR-DAS」と、ここから作成されたデータセット「JAWARA」は、地上から高度110 kmまでの大気全体をカバーしたものだ。

 これまで技術的に観測が難しかった「中間圏」や「下部熱圏」までをも分析することができる。

 この画期的な成果のおかげで、天気予報や気候変動の予測がより正確になるだけでなく、宇宙気象の解明も進むと期待されている。

過去20年にわたる全大気再解析のデータ作成

 最近ではずいぶんマシになったが、それでも天気予報に裏切られることが完全になくなったわけではない。

 もちろん気象予報士にも言い分はあるだろう。そもそも、これから天気がどう変化するのか予想するのは、そう簡単ではないのだ。

 大気は複雑かつ相互に作用するシステムなのだから、それを完全に読み解くのはかなり難しい。

 東京大学大学院理学研究科の佐藤薫教授らはこうした状況を前進させるため、大気大循環モデルとデータ同化手法を組み合わせて「JAGUAR-DAS」というシステムを開発。これを利用して大気全体のデータセット「JAWARA」を作成した。

 JAWARAは、地上から高度110 kmまでの大気圏の様子を2004年9月~2023年12月に渡ってとらえたデータだ。

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地上から高度110kmまでの全大気をカバーする世界初の再解析データJAWARA。北極域の気温と赤道域東西風の19年間にわたる時間高度断面図。 image credit:東京大学プレスリリース

 高度100 kmを「カーマン・ライン」といい、一般にそこより上は宇宙とみなされる。つまりJAWARAは地球の大気圏すべてを19年にわたり網羅したデータセットなのだ。

 特にすごいのは、このデータセットが高度50~110 kmまでの「中間圏」や「下部熱圏」までをもカバーしているところだ。

 この領域は、人工衛星で観測するには低すぎ、気象観測用気球では高すぎるため、これまでは観測が難しかった。だがJAWARAのおかげで、今後は「研究困難領域」と呼ばれたこの領域すらも詳しく調べられるようになる。

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地上から高度110kmが全大気。高度約10km以上を中層大気と呼ぶ。灰色の線は大まかな物質循環の構造を表す image credit:東京大学プレスリリース

気象現象の解明や、天気予報、気候変動対策に有効

 中間圏・下部熱圏の様子がきちんと解明されるようになれば、その下にある「成層圏」で起きる現象や、「対流圏」や地上の天気にどう作用しているのかなど、大気の働きの理解がさらに深まると期待される。

 それは天気予報をより正確なものにしてくれるほか、気候変動への対策を練るうえでも便利だろうという。

 また地球だけでなく、宇宙の天気の解明も進むと期待される。

 JAWARAがカバーする一番上の領域は、宇宙の一番下でもある。ここを分析すれば、大気が「電離圏」に与える影響や、太陽フレアが放出した高エネルギー粒子が地球の大気に与える影響といったことも調べられる。

 JAWARAという新しいデータセットの登場によって、これまで別々に研究されていた大気科学と宇宙科学が統合され、より深い理解がもたらされると期待できるそうだ。

 この研究は『Progress in Earth and Planetary Science』(2025年1月10日付)に掲載された。

References: Unlocking the Ignorosphere: Tokyo’s Breakthrough in Atmospheric Science / Press Releases - 東京大学 大学院理学系研究科・理学部

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この記事へのコメント 6件

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  1.  すげぇぜ! ついにここまで来たんだ! と感激。 こんなことを言ってはあれだけどデータ量が膨大だから、時間と空間の単位つまり何分毎・何キロメートルメッシュみたいなサイズをちょっといじるだけで三乗とか四乗の勢いでデータが増えるはずと思うとずっと先だと思ってました。 関係者の努力に感謝してます。 これらが生きるというか活用されて私たちの生活に直接影響が出てくるのは少し先でしょうけれども少しづつ良くなっていくことを期待してます。 不確定性原理を考えると時空間の単位をいくら小さくしても予測は完璧にならないというのがまたちょっと悔しいところw それでもこれからの気象・気候の予測の精度や過去の推定とかもしかすると他の惑星などの大気の動きのモデルにもなるかもと思うと期待しちゃうな。 個人的には今年に入ってからは一番の記事でした

    • +11
  2. ゲーリケの気圧計天気予報から400年でここまで来たのか……
    今後もまだ進歩がありそうだけど、そのとき出してくれるだろう気候変動への予測が悲観的なものにならないようにしたいものです……

    今後アメリカではこの種の研究も冷や飯食わされそうなので、その他の国々、もちろん日本でもなんとか頑張ってと言いたいところですが、どの国でも難しくなっていくのではないかと心配です。

    • +7
  3. 真鍋淑郎(まなべ しゅくろう)さんの話かと…

    • 評価
  4. 逆に、今までなかったんだと思った。
    ガチ素人の私からすれば、大気の層と構成している気体の成分、日照時間と地軸の傾き、地上の地形ですごい計算をすれば空気の流れや気圧、構成する成分は人工衛星のデータと合わせたらわかっちゃいそうな気がしていた。
    コメントも読ませて頂いたら、ホント、すごいことなんだってドキドキした。
    すごい技術は悪いことに使われがちだから、是非とも人類の平和のためだけに使って欲しい。

    • +2

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