この画像を大きなサイズで見る意外かもしれないが、じつは月にも薄い大気がある。それは地球のものとはかなり違い、まるで幽霊のように希薄だ。
『Science Advances』(2024年8月2日付)に掲載された新たな研究によると、このいわゆる「外気圏(エクソスフィア)」はほとんど隕石の衝突によって維持されているそうだ。
隕石が衝突したエネルギーで月面が蒸発し、それがまばらな原子がただよう大気を作り出しているという。
隕石の衝突が月に大気をもたらしていた
隕石の衝突で表面が蒸発することを「衝突蒸発( impact vaporization)」という。
それによって舞い上がった原子の一部は宇宙へと逃げていくが、大半は月にとどまって、薄く希薄な大気を形成する。
舞い上がった原子はやがて月面に落ちようとするが、次なる隕石が落下することで、またも舞い上げられる。
月は45億年前に誕生して以来、絶えず隕石の衝突にさらされてきた。
その結果、月の大気にその成分である原子が補充され続け、弱々しいながらもきちんと安定することができたようだ。
この画像を大きなサイズで見るわずかながら太陽風の影響も
隕石だけでなく、太陽風もまた月の大気を支えている。それは太陽風に含まれる荷電粒子が月面の原子をパチパチ弾けさせる作用(イオン・スパッタリング)によるものだ。
だが今回の研究によるなら、月の大気に一番貢献しているのはやはり隕石の衝突で、7割以上はこれによるものだという。残り3割は太陽風の影響だ。
この画像を大きなサイズで見るアポロ計画で持ち帰られた月の土壌サンプルを分析
シカゴ大学やNASAなどのチームによるこの研究は、アポロ計画で持ち帰られた月の土壌サンプルの分析に基づくものだ。
こうしたサンプルを粉末にして、そこに含まれるカリウムとルビジウムの同位体を調べてみたところ、どちらも揮発性であることがわかったのだ。
つまり隕石の衝突やイオン・スパッタリングによってすぐに蒸発ということだ。
さらに軽い同位体と重い同位体の比率を調べることで、月の大気が主に衝突蒸発によって作られているだろうことも突き止められた。
この画像を大きなサイズで見る過去の研究結果を裏付け
この結果は、過去の研究結果を裏付けている。
2013年、NASAの月探査機「LADEE」は、月を周回しつつ、その大気のくわしいデータを収集。ここから月の大気は隕石の衝突と太陽風によって形成されているだろうと推測された。
例えば、隕石が落下した際に大気中の原子が増加しており、大気がこれに影響されていることがわかる。さらに月食で地球が太陽の光をさえぎると、月の大気の原子が変化することも確かめられた。
だが、こうしたデータは、はっきり結論づけられるものでないうえに、どの原因がどのくらい影響するかといったことを量として表すことまではできなかった。
だが今回の研究では、カリウムとルビジウムの同位体を測定するという独創的なアイデアで、月の大気に作用する微妙な原因を特定することに成功したのだ。
このように月の大気を理解することは、月の歴史や月面を形作るプロセスのみならず、ほかの惑星を理解するヒントにもなる。
また、実際に現地に探査機を飛ばしサンプルを回収する大切さも伝えているとのことだ。
References:Yes, the Moon does have a (ghostly thin) atmosphere — and it was made possible by meteorite impacts / written by hiroching / edited by / parumo
















「隕石で散らされた後」って事は無いんだろうか
どの道月の重力で捕まえて置ける量が抑々少ないんだろうなって気はするけど