この画像を大きなサイズで見る人間は次々と新たな文明、文化を生み出していったがチンパンジーはどうなのだろう?
スイス、チューリッヒ大学が主導する新たな研究によると答えはイエスだ。チンパンジーの優れた行動のいくつかは、世代を超えて受け継がれ磨かれてきたという。
特にメスの個体が新しい社会集団へ移動する際、複雑で高度な道具の使い方などを新たな群れに持ち込み、時間の経過とともに文化的行動を洗練させている可能性があるという。
これは、人間もたどった累積的文化の初期段階を示しているといえる。
チンパンジー社会における累積的文化の可能性
累積的文化とは、複数世代にわたって知識が引き継がれ、新しいアイデアや改良が積み重なっていく文化のことだ。
この過程によって、1匹のチンパンジーが一度に考え出したり作ったりするにはとても難しいような複雑な道具や仕組みが生まれていくと、野生のチンパンジーを研究している科学者たちは考えている。
たとえば、人間のコンピュータ技術は、長い時間をかけて改良が繰り返され、現代の高度な技術へと発展してきた。
チンパンジーの場合、累積的文化の証拠として、複数の道具を組み合わせた高度な技術の使用が挙げられる。
ある群れでは、木の内側にあるハチミツを取り出すために、蜂の巣を壊す棒、内部をこじ開ける道具、ハチミツをすくうための柔らかい葉といった複数の道具を使う。
こうした複雑な技術は、一度発明されると他の群れに伝えられ、改良される可能性がある。
だがチンパンジーが使う道具は植物の枝や茎など有機物なので、朽ちてしまうと後世には残らない。
そのため、彼らが人間と同じような進化をたどってきたことを証明する記録がほとんど存在しない。
この画像を大きなサイズで見る遺伝子と文化のつながりを追跡
そこで、チューリッヒ大学や研究機関の人類学者、霊長類学者、物理学者、遺伝学者が協力しあって、これまでなかった方法でチンパンジーの文化史をひもといた。
それは数千年にわたるチンパンジーの個体群間の遺伝的な文化のつながりを追跡することだ。
研究チームは、アフリカ全土のチンパンジーの研究現場35ヵ所から遺伝的類似性マーカー(異なるグループ間のつながりを示す遺伝的証拠)の情報と、これまで文化的に習得されたと報告されているさまざまな採餌行動の情報を収集した。
これらの行動を、道具を使わない単純な行動、簡単な道具を使う行動、複数の道具を組み合わせて使う複雑な行動とに分類した。
例えば、コンゴ地方のチンパンジーは、まず丈夫な木の枝で固い土壌深くにトンネルを掘り、シロアリの巣を見つける。
次に長い植物の茎の先端を歯でしごいてブラシのような穂先をこしらえ、それを巧みにトンネルに通して、引き抜くとシロアリがたくさんくっついてくるいわば「釣り道具」を作る。
この研究からわかったのは、道具を組み合わせて使うチンパンジーの能力が、遠く離れた個体群の間で伝達されているという驚きの事実だ。
この画像を大きなサイズで見るメスの移動が新たな技術を伝播させていた
チンパンジー社会では、近親交配を避けるために新たなコミュニティに移動するのは成熟したメスだ。
このようにして遺伝子は近隣のグループへ伝達され、長い時間をかけてさらに遠くへと広まっていく。
新しい文化をそれを知らないグループへ広めることができるのは、メスの移動のおかげであることがわかったのだ。
複数の道具を組み合わせて使うような複雑な行動と簡単な道具のみを使う単純な行動の両方が、異なる研究現場で見られる場合、遺伝子マーカーはその異なる地点が過去のメスの移動によってつながっていたことが研究からわかった。
これは複雑なバージョンが単純なバージョンに追加、変更されている、つまり累積文化の可能性を示している。
チューリッヒ大学のアンドレア・ミリアーノ教授は、「複雑な技術は一度発明されると再発明されることは少なく、むしろ群れ間の移動によって広がる。この研究は、そのことを裏付ける」と述べている。
この研究は、チンパンジー文化の進化に新たな光を当て、彼らの知性や社会的なつながりがもたらす可能性をさらに深く理解する手がかりとなるだろう。
この研究は『Science』誌(2024年11月21日付)に掲載された。
References: Chimps Share Knowledge like Humans Do, Spurring Innovation | Scientific American / Chimpanzee and Human Cultures
















百匹目の猿現象の真偽はともかくとして天才が思いついたことがメスを通じて広がっていくというのはとても興味深いですね。 いわゆる口伝と同じ感じだと思いますが、量に限界があって、文字という時空を超える技術が発明されて使い始めることができたならすごく発展するだろうにとは思います。 まぁ、そこが技術的に彼らとヒト種を分ける差なのですがね。
とても面白い記事でした。
人類もそうだね
石器や骨の前は木だと「証拠が見つかりにくいがいずれ…」と50年以上前にアシモフさんとか提唱していた
また祖母が孫を育てることで、他より優位に立てたとも(結果、文化伝承する、人ならお手玉や手遊び)
ほんの少し、我々のほうがチンパンジーより早かっただけなのか
それとも混血の成果、はたまた犬などの関係(いや、これもっと後か)
類人猿との差がどうして生じたか気になるところ
今のうちにエ〇文化とネットを教えて馬〇にしとかんと危ない
進化の原動力が3つあるとして、文化に置き換えると発明=変異、伝播=複製と言えそうだが、自然選択は何になるんだろう。メスの群れ間移動によって伝播された新技術と、元からその群にあった旧技術を比べてチンパンジーがどちらが有用かを選択し、どちらかが廃れていくようなことがあるのだろうか。ヒトと比べてチンパンジーの文化の進化速度がここまで遅い(もしくは限界がある)のは何故だろうか。そしてヒトの文化進化にも限界はあるのだろうか。興味は尽きない。
ちんぱいないさぁ~~~♪
何れ現生人類がネアンデルタール人になってチンパンジーと交配を繰り返し宇宙猿人ゴリが生まれると言う筋書きかな。
(人類滅ぶな)
同種間でも他の群れとコロしあい抗争するにとどまらず、同じ群れ内でも共食いが日常のチンパンジーは知識共有文明進化で人間同等かそれ以上と言えるかで賛否意見が分かれそうだな
なんか読んだ覚えがあった気がした話だと思ったら、この論文、去年の12月に記事にしてるよ?
「チンパンジーも人間と同じように文化を発展させていることが明らかに」
https://karapaia.com/archives/474519.html
人間でも、父系社会においては女性が、母系社会においては男性が文化の伝播を担っている、とかなのかも。
いつまで進化論を主張し続けるのか。楽しみだ。