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脳や目を持たない菌類に認知能力。図形を認識していることが確認される

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(著) (編集)

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培地上にマルやバツを描くように配置して菌糸体を培養したところ、菌類はマルやバツの図形を描いただけでなく、図形の違いによって成長する方向を変化させたこの画像を大きなサイズで見る
image credit:Dr. Fukusawa et al., released.
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 脳や目を持たない生物が知能(認知能力)を持つことがあるのだろうか? 少なくとも菌類に関していえば、イエスと言いたくなるはずだ。

 これまで、カビ状の菌糸体で生きている菌類の認知能力についてはほとんどわかっていなかった。

 そこで、東北大学の研究チームが木材を分解して生きている「木材腐朽菌」のエサである角材9個を異なる図形に配置したところ、各菌糸体が察知した情報を、ネットワークを介して全体で共有し、成長の方向を決定したという。

 菌類に脳はないが、研究チームによれば、観察された振る舞いは、脳が図形の違いを認識するときのプロセスにも似ているそうだ。

脳のない菌類が広げる通信ネットワーク

 菌類は分類学において独自の「界」を構成しており、植物とも動物とも違う生き物だ。だが、その振る舞いはどこか動物じみている。

 これまでの研究では、記憶・学習・決断といった知能がなければできないような行動が観察されている。

 もちろん菌類に脳はない。そんな生き物がどうやって高度な認知能力を得ているのか? 生物好きなら興味を惹かれずにいられないことだ。

 菌類の特徴の一つは、「菌糸」という糸のような構造を地下に広げて成長することだ。食材としてお馴染みのキノコは、じつは胞子を散らすための器官であって、本体は菌糸で構成される「菌糸体」のほうだ。

 普段は見えないが、地下に広がる菌糸のネットワークは、ときにとんでもなく巨大なものになる。

 なにしろ単一の菌糸だけでも900ヘクタール(サッカー場1000面以上に相当する)に広がっていることすらある。

 驚いたことにこうしたネットワークを通じて、菌類は会話まで交わしてしまう。脳のない菌類になぜそんなことができるのか? 今回の最新の研究は、その謎を解く1つの手がかりになることだろう。

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菌糸体 Photo by:iStock

菌類はネットワークを通じて図形を認識している可能性

 東北大学大学院農学研究科の深澤遊准教授らは、木材を腐朽させる木材腐朽菌の仲間「チャカワタケ」を使って、菌糸ネットワークを介した知的な振る舞いを目撃することに成功している。

 その実験では、チャカワタケを定着させた角材を、マル型かバツ型に置き、菌糸がどのように成長するのか観察された。

 もしも菌類が何も考えずに菌糸を広げるのなら、それぞれの角材から放射状に広がるだけだろう。

 だが、研究チームが目の当たりにしたのは、それとは違う振る舞いだった。

 驚いたことに、マルかバツかで菌糸の広がり方が違っていたのだ。

 例えばバツでは、一番外側に置かれた4つの角材がもっともよく菌糸ネットワークを発達させていた。

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東北大学プレスリリース

 研究チームの解説によれば、これは一番外側の角材を探索の”前線基地”として機能させるために、内側の角材よりも緊密なネットワークを形成したからと考えられるという。

 一方マルでは、菌糸のコロニーはどの角材も同レベルだったが、円の内側に広がることはなかった。

 これはコロニー密度が十分な状況で内側に菌糸を伸ばしても無意味であると、何らかの方法でチャカワタケが判断したからだと考えられる。

 この発見からわかるのは、各菌糸はその周囲の情報をネットワーク全体に伝え、成長する方向を上手に調整しているということだ。

 例えばマルのケースで、エネルギーを浪費して円の内側に成長しないようにするには、円の正反対にいる菌糸から情報を受けとって、そんなことをしても無意味であると菌糸の先端が察知する必要がある。

 「図形の違いによって菌糸体ネットワークの活性が異なる」現象は、「図形の違いによって脳のニューラルネットワークの活性が異なる」現象、すなわち脳における図形認識のプロセスと似た現象といえるかもしれないという。

 この研究は『Fungal Ecology』(2024年9月12日付)に掲載された。

References: 脳や目を持たないのに菌類は図形を識別しているのかも... | プレスリリース・研究成果 | 東北大学 -TOHOKU UNIVERSITY- / Scientist Shows Fungi Are ‘Mind-blowing’: They Have Memories, Learn Shapes, Can Make Decisions and Solve Problems

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この記事へのコメント 16件

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  1. どんな過程でネットワークの密度が変化してくのかも動画か連続写真で見てみたいねえ

    • +7
  2. 個人的な考えだとこういうネットワークの広がるアルゴリズムといって良いかわからないけど、広がり方は少なくとも地球のプリミティブな生物に実装されていて、それを脳も踏襲しているだけなんじゃないかという気がしています。それは一見複雑な動きをしているコンピュータもトランジスタの組み合わせでON/OFF→1/0みたいに見立ててプログラムを動かしたり今だとAIまで行っちゃうようなのも元をたどれば同じみたいなことかなと。
    今回の記事の発見で脳を含む網構造を持つものの理解が深まるといいな。もしかしてインターネットのネットワーク網も同じような広がり方したりして……

    • +15
    1. 蜘蛛が幾何学的に美しい巣を作るのも似たような理由なのかなあ、と思ったり。

      • +11
  3. 餌のあるとこへあるとこへ伸びただけやないの

    • +2
  4. 知的生命は人間型とは限らない
    こういうのから進化した知的生命のいる星もあるかもしれない

    • +10
  5. >驚いたことに、マルかバツかで菌糸の広がり方が違っていたのだ。

    いや
    マルもバツも同じだよ

    両方とも角材から角材へは一本のみで同じ
    内より外に伸びる広がるやり方も同じだ

    • -14
  6. これ木材腐朽菌だから、本来は枯れ木の表面や中を栄養を摂取しながら縦横無尽に手を伸ばして他のコロニーと接続するはずが、この黒い部分は木材腐朽菌にとっては栄養の無い枯れ木の中の空洞と同じで、限られた栄養の中、付近のコロニーと接続を果たした段階で、栄養を取る為の菌糸を伸ばすのを止めたのでは?
    もし仮に、9個の材木ブロックを同じ木の板の上に置けば34日目のように白い菌糸が全体に広まり、コロニーの接続も縦横の区別なくもっとひろがったのでは?

    • +3
  7. 進化論と同じで世代で突然変異していくプログラムの中で一番最適解(生存確率が高かった)の一団が生存し続けたっていことだろよ

    • 評価
  8. 900ヘクタールの脳と考えるとな人間はまだまだだ
    別件だが、AIの新しい可能性がひらかれるな

    • +3
  9. 菌でできたコンピュータとかあったら便利そう

    • 評価

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