メインコンテンツにスキップ

歴史が書き換えられる。モロッコで未知の新石器時代の農業複合施設跡を発見

記事の本文にスキップ

9件のコメントを見る

(著) (編集)

公開:

この画像を大きなサイズで見る
Image credit: Toby Wilkinson
Advertisement

 大西洋と地中海に面した北アフリカの国、モロッコでこれまで知られていなかった紀元前3400~2900年の、新石器時代の農耕社会の痕跡が発見された。

 ナイル川以北のアフリカで、これまでに発見された中で最古かつ最大の農業複合施設の発見により、歴史の教科書が書き換えられるかもしれない。

 この発見は、地中海全域における複雑な社会構造と、マグリブ(北西アフリカを指す地域の名称)が文明に重要な役割を果たしていたことを明らかにしている。

北西アフリカ「マグリブ」は新石器時代に劇的に変化していた

 マグリブとは、地中海環境、サハラ砂漠との境界、アフリカとヨーロッパを結ぶ最短の海路を有する、現在のモロッコ、アルジェリア、チュニジアなどの地域のこと。

 主要な文化の発展と大陸間のつながりの中心地として最適なロケーションにある。

 旧石器時代、鉄器時代、イスラム時代のこの地域の重要性はよく知られていたが、紀元前4000~1000年頃のマグリブの考古学知識には大きな空白があった。

  だが実は歴史的には空白だったこの時期に、地中海地域全体は劇的に変化していたのだ。

この画像を大きなサイズで見る
マグリブの1国であるモロッコのアイト・ベン・バドゥ周辺 Photo by:iStock

マグリブの歴史的空白を調査

 英ケンブリッジ大学のシプリアン・ブルードバンク氏ら研究チームが、モロッコのウエド・ベート(Oued Beht)遺跡でフィールドワークを実施した。

ここ30年以上、地中海考古学において後期先史時代の北アフリカの役割を基本的に見逃している気がしていました

今その予感がようやく正しかったことがわかりました

初期の地中海社会の出現と交易に関して、今後はアフリカ人が貢献した大きな役割を踏まえた新たな方法で調査を進めることができます(ブルードバンク氏)

1世紀以上にわたって、地中海の後期先史時代の最大の謎は、エジプトの西にある地中海南部アフリカ沿岸部の果たした役割についてでした

今回の発見から、この空白が先史時代に主要な活動がなかったという理由ではなく、相対的な調査不足のせいだったことがわかります

ウエド・ベートという地が、まさにマグリブが地中海とアフリカ社会の出現に中心的な役割を果たしていたことを証明しているのです(ブルードバンク氏)

新石器時代の農業複合施設を発見

 これらの結果から、紀元前3400~紀元前2900年の間、ウエド・ベート遺跡がナイル川流域以外ではアフリカでこの時代最大の農業複合施設だったことが明らかになった。

 すべての証拠が、青銅器時代初期のトロイと同じ規模の大規模農耕集落が存在したことを示しているという。

 遺跡からは、新石器時代末の人が栽培した植物、家畜の骨、陶器や石器など前例がないほどたくさんの遺物が出土した。大きな貯蔵穴の存在も明らかになった。

この画像を大きなサイズで見る
ウエド・ベート遺跡から出土した新石器時代の陶器:a) 黄褐色の布製ボウル、壺(焼成後の穴付き)、大きなトンネル状の突起、丸い底、b) 赤茶色の布製調理容器、c) 彩色された破片(スケールバー = 50mm) Image credit: Rafael Laoutari/Rafael Martínez Sánchez/Moad Radi in Broodbank et al., Antiquity 2024 (CC-By 4.0)

マグリブは西地中海の社会形成に重要な役割を果たしていた

 重要なのは、ジブラルタル海峡をはさんだ反対側のイベリア半島でも、同時期に同じような穴が見つかっていることだ。

 ここからは象牙やダチョウの卵が発見されていて、これらはアフリカ由来のものだとわかる。

 紀元前4000年(約6000年前)にマグリブが西地中海の広範な発展に重要な役割を果たしていたことを示している。

マグリブ北西部とウエド・ベートは、間違いなく地中海地域にとって不可欠な場所だった。

 この地域の詳しい調査は、地中海とアフリカの先史時代についての私たちの知識を大きく変えるものになるはずだ。

 紀元前4000~3000年にかけて、地中海と大西洋を結ぶ玄関口の両岸に住んでいた人たちを含め、両者が共に幅広く進化してきた歴史の枠組みの中でウエド・ベートを考えることが大切だ。

 双方向に移動していたと思われるが、この地域の社会形成に大きく貢献したアフリカを基盤とする独特のコミュニティとして認識すべきだろう。

本研究は『Antiquity』誌に掲載された。

References: Previously unknown Neolithic society in Moroc | EurekAlert! / Oued Beht, Morocco: a complex early farming society in north-west Africa and its implications for western Mediterranean interaction during later prehistory | Antiquity | Cambridge Core

📌 広告の下にスタッフ厳選「あわせて読みたい」を掲載中

この記事へのコメント 9件

コメントを書く

  1. アフリカで化石人類が発見されて人類の発祥はアフリカだと言うことは科学会の定説になってるけど、文化の発祥という点ではアフリカは不当に低く見られてるよね。

    • +11
    1. これからの研究とその発表へのアンテナを敏感にしておきたいですね。

      多分日本で教育を受けたほとんどの人が習う世界史はほぼ西洋史で中央アジアやアフリカ史は全然でちっとも世界史じゃないのと似た感じかな。西洋から見た世界史なんでしょうね。

      • +4
  2. おおお、心が躍る記事だ。言われてみればこの地域、ポジション的にはめちゃめちゃ重要だし歴史時代の役割も大きいのに、新石器時代~青銅器時代の話をぜんぜん知らなかった

    この地域って青銅器時代はどんな様子だったんだろう? ひょっとしたら青銅器(とくに原料の錫)が十分に行き渡らなくて、鉄器が普及するまでの間に他地域に出遅れた可能性がある?

    • +6
  3. 華やかなエジプト文明やエーゲ文明が目立っちゃってるけど、当時の気候や地理的なことを考えると北アフリカに大規模農耕集落あっても不思議ではない… どころか、無ければおかしいもんなあ。

    今は砂漠だとか昔から考古学の研究的に余裕がなかったとかいろいろ手付かずだったけど、今後更にいろいろなものが出てくるだろうね。

    • +14
    1. 国がさほど豊かではないとか、政情不安定な地域だと
      「発掘」なんて経済的にさほどうま味もない部分にリソースを割くのは難しいですからね

      • +8
  4. 興味深いのは、モロッコ北部をGoogleマップで見てみると、目に見えて緑が多い、ということと、
    文明の発展に必須であるはずの巨大河川は存在しない、ということ
    大西洋を臨む地中海の門のような半島、という地形が、農耕に適した降雨量を確保しているんだろうか

    • +2
    1. アトラス山脈が地中海沿いの風を遮って、山脈北側に農耕に十分な降雨をもたらしてるそうな。

      • +10
  5. 縄文時代が16000年前くらいからだから、6000年前つーとまああるだろうなあと

    • +4
  6. 時代は下がるが、地中海を支配していたカルタゴもマグリブにあって、西ローマが滅んだ直接の原因の一つが、ここにあった穀倉地帯が砂漠に飲まれたから。
    この地域は古代世界おいて重要地域だったのに見過ごされてきた理由は、その遺跡の多くが砂漠の底にあるからだろう。
    もし、なんらかの技術革新で砂の中の遺跡を掘り起こすことができれば、エジプト並みに重要な発見がゾロゾロ出るだろうね。

    • 評価

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

知る

知るについての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

歴史・文化

歴史・文化についての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

最新記事

最新記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。