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アメリカの頭脳流出が加速。カナダが巨額の助成金で優秀な研究者を大量引き抜き

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(著)

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Image credit:Jacob Wackerhausen
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 2026年8月、カナダ政府は世界中から64人の第一線で活躍する研究者を国内の大学に迎え入れたと発表した。そのうちの48人はアメリカからだ。

 現在アメリカ合衆国では、政権による研究助成金の凍結や政治的介入が相次ぎ、研究環境が急速に悪化している。

 カナダは約580億円という巨額の助成金を用意して、優秀な研究者を引き抜いた。

 ハーバード大学やMITの優秀な科学者たちが、次々とカナダへ拠点を移す異例の事態となっている。

参考文献:

米国の政治的圧力と資金難が引き起こした頭脳流出

 現在、アメリカの科学技術研究の現場が大きく揺れている。トランプ政権が、大学の多くの研究機関に対する連邦助成金を凍結してしまったからだ。

 資金の見通しが立たず、政治的な介入も重なったことで、アメリカ国内での研究活動は非常に困難な状況に陥っている。

 南カリフォルニア大学で国際関係学を教えるスティーブン・ラミー教授も、主要な助成機関が削減され、政治化されていると危機感をあらわにした。

 このアメリカ国内の混乱に乗じて、優秀な研究者を引き抜く動きが他国で加速している。

 今年初めにはフランスがアメリカを拠点とする41人の研究者を採用した。

 ノーベル化学賞を受賞したオマル・ヤギー氏も、カリフォルニア大学バークレー校を退職して中国の清華大学へ移籍している。

 そして今回、隣国カナダが大規模な人材獲得に乗り出したのである。

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Image by unsplash / Jason Hafso

約580億円を投じアメリカから48人を引き抜くカナダ

 2026年8月27日、カナダ政府は世界のトップ研究者64人を国内の大学へ迎え入れると発表した。

 そのうちの4分の3となる48人はアメリカからの引き抜きである。残りの16人は、イギリスやドイツなど12カ国から集められている。

 日本の大学からも2人が引き抜かれている。

 沖縄科学技術大学院大学(OIST)で量子科学を研究するウィリアム・ジョン・マンロ教授はカルガリー大学へ、山形大学でセンサー技術を研究するアジット・コスラ教授はレジャイナ大学へ移籍することが決まった。

 カナダ政府は、2025年12月に始めた研究者招致プログラムを通じて、今後8年間で総額5億400万カナダドル(約580億円)という巨額の助成金を提供する。

 助成金は気候変動や人工知能(AI)、医療など、カナダの未来にとって重要な分野の研究に充てられる。

 カナダのメラニー・ジョリー産業相は、「世界の一部が科学に背を向けている時に、カナダは科学に賭ける」と述べ、優秀な頭脳の獲得を大いに歓迎している。

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Image by unsplash / National Institute of Allergy and Infectious Diseases

ハーバードやMITの優秀な科学者が次々とカナダへ

 カナダへ向かう48人の中には、ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学(MIT)などの名門校で活躍していた各分野のトップ科学者が含まれており、マギル大学やトロント大学などカナダの21の大学へ移籍する。

 もっとも多くの研究者を失うのはミシガン大学だ。

 気候レジリエンス(災害への適応力)を研究していたセス・ガイケマ氏は、アメリカでの資金調達の難しさを理由にカナダのウェスタン大学へ移籍する。

 今後は8年間で800万カナダドル(約9億2000万円)を使い、自然災害への備えを改善する研究を進める。

 同じくミシガン大学から機械工学専門の斎藤和弘教授も去り、ブリティッシュコロンビア大学へ移る。

 さらに、マサチューセッツ大学チャン医学部でRNA治療薬を研究していたフィリップ・ザモア氏は、アメリカ国立衛生研究所(NIH)の助成金審査が18か月も放置され、研究室の縮小を余儀なくされた結果、マギル大学へ移ることを決断した。

 ハーバード大学医学大学院などで20年にわたり、がんなどの病気を画像で早期に見つける技術を研究してきたピーター・カラバン氏もカナダへ渡る。

 ハーバード大学とMITも、それぞれ2人を失うことになる。

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Image by pixabay / mauriciodonascimento

若手も同行し、世代を超える頭脳流出の危機

 事態が深刻なのは、移籍する研究者の多くが、大学院生や博士研究員(ポスドク)、研究チームのスタッフまで引き連れてカナダへ向かっていることだ。

 ザモア氏も、自身のチームから大学院生やポスドクなど、少なくとも4人が一緒に移住することを明かしている。

 アメリカ大学協会のリン・パスケレラ会長は、目先の人材流出だけでなく、知識を追い求める場所としてのアメリカの魅力が失われていくことに強い懸念を示している。

 ニューヨーク市立大学シティカレッジの物理学者マイケル・ルーベル氏は、トランプ政権の政策を考えれば今回の流出は完全に予測できたことであり、「まだ始まりにすぎない」と警告した。

 カナダ政府は近く同プログラムの第2弾を発表する予定だ。

 アメリカの科学技術の未来を担う次世代の頭脳までもが失われつつある今、今後も頭脳流出の連鎖はさらに続くとみられている。

References: Canada recruits dozens of US scholars — including several science stars | Nature / Canada poaches dozens of top US researchers for its universities

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