この画像を大きなサイズで見る1959年の誕生以来、時代に合わせてさまざまな姿を見せてきたバービー人形が、さらに一歩先の未来の姿へ進化した。
ブロンドの姫カットにピンクのヘッドセット、全身を覆うアーマーは。そして傍らにはサイボーグ猫が寄り添っている。
まるでSFアニメから飛び出してきたサイボーグを思わせる姿であり、バービーというよりはヒューマノイドのようでもある。
このバービーはメーカーであるマテル社と、東京発のファッションブランド「アンブッシュ(AMBUSH)」の、異色のコラボで実現したものだ。
アンブッシュのクリエイティブ・ディレクター、YOON(ユン)は、このバービーを自分が見て育った「日本へのラブレター」と表現している。
参考文献:
- Barbie x Yoon Ahn Doll | Mattel Creations
未来からやってきた「プロトタイプ001」
このバービーのコードネーム…いや名称は「プロトタイプ001」という。頭部にはピンクのヘッドセットをつけ、髪型はブロンドの姫カット風。
白・黒・ピンクを基調としたボディには、頭から足先まで、メカニカルなアーマーを思わせる造形が施されている。
単に既存のバービーにSFチックなコスプレをさせただけではない。これは新たに一から造形されたボディを持つ、ヒューマノイドバービーなのだ。
さらに、バービーとおそろいのカラーリングを施したサイボーグ猫もセットになっている。バービーには13カ所、猫にも6カ所の可動部が設けられているそうだ。
マテル公式によると、デザインの着想のもととなったのはアニメとストリートスタイルのファッション、そしてYOON独自の未来観であるらしい。
YOONはこのヘアスタイルについて、「アニメに着想を得た」と語っている。日本人の目にアニメキャラっぽく映るのには、ちゃんと理由があったのだ。
だが、YOONはいったいなぜ、こんなデザインのバービーを作ったのだろうか。
この画像を大きなサイズで見る子供のころからバービーを自分流に改造していた
YOONは韓国系アメリカ人で、自らを「1.5世代の韓国系アメリカ人」と表現している。本人は自身の生い立ちについてこう語る。
私は移民で、アメリカ生まれではない1.5世代の韓国系アメリカ人です。中学生くらいのころにアメリカへ移りました。父が米軍にいたので何度も引っ越し、最終的にはシアトルに落ち着きました
その後、東京へ移住して、パートナーのVERBAL(バーバル)とともにアンブッシュを立ち上げた。
ジュエリーから始まったアンブッシュはファッションへと領域を広げ、2017年には「LVMHプライズ」のファイナリストに選出。
ナイキやブルガリ、リモワなど、数々の世界的有名ブランドとのコラボレーションでも知られている。
アンブッシュのデザイナーとして確固たる地位を築いたYOONだが、子供のころは、別にバービー人形に夢中だったわけではないそうだ。
むしろ好きなオモチャはレゴブロックで、組み立て方や構造そのものに興味を持っていたという。
もちろん、バービーで遊ぶこともあるにはあったが、ちょっと「普通の遊び方」ではなかったらしい。
バービーでは、少し独創的な遊び方をしていたと思います。髪を切ったり、服を切り刻んだりして、キャラクターそのものを変えようとしていましたね。
ただ与えられたもので遊ぶのではなく、いつも想像力を働かせていました
そんな彼女のもとへマテル社から「オリジナルのバービーを作らないか」と声がかかったのは、今から約3年前のことだった。
この画像を大きなサイズで見る「着せ替え人形を作る」のではなく「世界観を形にする」
オファーを受けたYOONは、まず、これまでにデザイナーたちが手がけてきたバービー人形について調べてみた。
バービーはオスカー・デ・ラ・レンタやヴェラ・ウォン、ボブ・マッキーなど、名だたるデザイナーたちとコラボしてきた歴史がある。
だがYOONは、アンブッシュの服をそのままバービーに着せるようなやり方はしたくなかったという。
自分自身が築いてきた「世界観」そのものを形にした、新しいバービーを創りたいと考えたのだ。
私は、ファッションというわかりやすい形ではなく、ブランドとして築き上げてきた世界観を反映させた、自分なりの「印」を残したかったんです
そこで生まれたのが、単に服を着替えただけのバービーではなく、近未来的なヒューマノイド的ビジュアルを持つ「プロトタイプ001」だった。
全身を覆うアーマーは、アニメやSF映画に登場するキャラクターのなどから着想を得ているのだそうだ。
さらにYOONが影響を受けた人物として挙げているのが、未来的な作品で知られる日本の現代美術家、森万里子である。
森万里子さんの作品は、テクノロジーやスピリチュアリティ、超越といったテーマをたびたび探求しています
そして今回の「プロトタイプ001」を作りながら、YOON自身はこんなことを考えていたという。
私自身も、「人間であると同時にヒューマノイドであるとはどういうことか?」ということについて考えを巡らせていました。
あらゆるものが、今まさにそういう方向へと向かっていますから。おそらくマテル史上、初のヒューマノイド・バービーだと思います
2000年代の日本の未来像を込めた「日本へのラブレター」
YOONは「プロトタイプ001」について、「自分が見て育ってきた日本へのラブレター」であると表現している。
そこにある「日本」のイメージとは、我々が今生きている2026年の日本とは少し…いや、かなり違うものかもしれない。
それは2000年代のテクノロジーやアニメ、そして「当時の人々が思い描いていた」、今となってはどこか懐かしい「あの頃夢見た未来の世界」を象徴するもの。
当時の日本は、デジタル・テクノロジーが家庭にも入り始めていた一方で、今とは少し違う「未来」が、マンガやアニメ、そしてゲームの世界で盛んに描かれていた。
YOONがその時代を象徴するものとして挙げているものの中に、2005年にセガトイズから発売された犬型ペットロボット「i-dog(アイドッグ)」がある。
あの当時はこうした高度なテクノロジーが、子供向けのオモチャに組み込まれること自体に新鮮な驚きがあったように思う。
それから約20年が過ぎた現在、世界ではヒューマノイド型ロボットが街を闊歩し、人間の日常生活へ入り込んでこようとしている。
そんな「現実の未来」がやってきた今、YOONが改めて考えたのは「未来の子供にとってのオモチャとは何だろう」ということだった。
ロボットやAIが日常生活で当たり前に存在する未来の子供たちにとって、オモチャとはどのような存在になり得るのでしょうか?
そして私たちは、それをいかにポジティブなものにできるのでしょうか?
とはいえ、彼女は未来を悲観的なものとは見ていない。
私にとって未来とは、過去を置き去りにすることではありません。過去を新しい形で未来へと受け継いでいくことです。
私の夢のバービーは、そんな可能性を表しています。テクノロジーとともにどう生き、それを通してどう自分を表現し、次の世代のためにより良い未来を思い描けるのか、ということです
この画像を大きなサイズで見るこうして誕生した「プロトタイプ001」は、マテル社からコレクター向け限定商品として2026年9月4日に発売された。
日本からも公式サイトを通じて購入可能で、日本向け価格は19,400円。通常配送料は1,550円とのこと。
このバービーにはディスプレイスタンドと、正規品である証明書が付属する。9月5日現在、在庫はまだあるようなので、欲しい人はぜひ見に行ってみよう。
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