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電気代わずか790円、旅客機クラスの電動航空機が27分間の初飛行に成功

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(著)

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Image credit:© Heart Aerospace
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 2026年8月、アメリカ・ニューヨーク州で、旅客機クラスの大きさを持つ電動航空機が初飛行に成功した。

 完全に電気だけで動く、米ハート・エアロスペース社が開発した実証機「X1」は、27分間の初飛行で使った電気代は日本円で約790円(5ドル)である。

 燃料価格の高騰が続く中、旅客機と同じくらいの大きさの機体を、わずかな電気代で飛ばせる可能性が示された。

 この飛行機をもとにした旅客機には、アメリカとカナダの大手航空会社がすでに導入の意向を示している。

参考文献:

翼幅32m、重さ11トンを超える機体が電気だけで飛行

 2026年8月12日の朝、アメリカ・ニューヨーク州北部にあるプラッツバーグ国際空港から、巨大な電動航空機が飛び立った。

 アメリカのロサンゼルスに本社を置く航空機メーカー、ハート・エアロスペース(Heart Aerospace)が開発した実証機「X1」である。

 実証機とは、販売するための機体ではなく、新しい技術が実際に成り立つかどうかを確かめるために作られる試作機のことだ。

 X1は翼の端から端までが約32m、機首から尾までが約23mあり、電池やパイロットを含めた離陸時の総重量は11トンを超える。

 大きさは、約40人乗りの小型旅客機とほぼ同じである。

 X1にはジェット燃料を入れるタンクがない。翼に取り付けられた4基の電動モーターを機内の電池で動かす。

 パイロットが操縦するX1は、空港内を地上走行した後に離陸し、地上から約335mの高さまで上昇した。

 上空で旋回などの試験を行い、離陸から27分後に同じ空港へ着陸した。飛行中には、電気推進システムが1000kWを超える出力を発揮したという。

 翌13日、ハート・エアロスペースは飛行に成功したことを発表した。

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Image credit:© Heart Aerospace

27分間の飛行に使った電気代はわずか790円分

 この初飛行でもっとも注目を集めたのは、使用した電気料金である。

 ハート・エアロスペースの発表によると、地上の走行から離陸、旋回、着陸までを含めた飛行全体で使われた電気代は約5ドル分で、日本円にすると約790円になる。

 ただし、この金額は飛行に使った電気代だけで、機体や電池の費用、整備費、人件費などは含まれていない。

 現在、航空会社が使うジェット燃料の価格は上がり続けている。

 8月7日までの1週間の平均は1ガロンあたり3.50ドルで、1年前と比べて63%も高い。日本円にすると1リットルあたり約147円になる。

 燃料を使用せずに空を飛べれば、航空会社は石油の値動きから受ける影響を減らせる。

 ハート・エアロスペースの創業者で最高経営責任者のアンダース・フォシュルンド氏は、今回の飛行について次のように述べている。

電動の商用航空機には、航空会社の経済構造を根本から変え、最終的には乗客の航空運賃を下げる可能性がある

完全に電動で飛んだ航空機として世界最大

 電動だけで飛ぶ飛行機そのものは、以前から存在している。

 2020年には2人乗りの練習機が世界で初めて型式証明を取得し、2022年にはアメリカで9人乗りの実証機が約8分間の飛行に成功した。

 ただし、これまでに飛んだ機体はいずれも小型にとどまっていた。

 9人乗りの実証機は最大離陸重量が約8.3トン、翼の長さが約18mである。X1はどちらも大きく上回り、電気動力だけで飛んだ飛行機として世界最大となった。

 電動の飛行機が大型化しにくいのには、電池の性質が関わっている。

 電池は同じ重さの燃料と比べて、取り出せるエネルギーが少ない。しかも燃料は飛ぶにつれて減って機体が軽くなるのに対し、電池は最後まで重さが変わらない。

 機体が大きくなるほど電池も増え、増えた重さが機体にのしかかる。

 11トンの機体を電気だけで浮かせた今回の飛行は、大型化を阻んできた壁をひとつ越えたことになる。

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Image credit:© Heart Aerospace

ハイブリッド型電動旅客機の実用化を目指す

 X1はまだ、アメリカ連邦航空局(FAA)が試験用に認めた許可の元で飛行テストに成功した段階であり、まだ乗客を乗せて運航することはできない。

 ハート・エアロスペースは今後、X1の技術を使った30人乗りの旅客機「ES-30」の実用化を目指す。

 ただし、X1とES-30では動力の仕組みが異なる。

 X1が電池だけで飛ぶ完全電動機なのに対し、ES-30は電池で動くモーターと、燃料を使うエンジンの両方を搭載するハイブリッド電動機として開発されている。

計画では、電池だけなら約200km、エンジンを併用すれば約800kmを飛行できる。電池のみで飛べる距離には限界があるため、燃料を使うエンジンを搭載することで、実用的な航続距離を確保する設計だ。

 ハート・エアロスペースは、従来の同規模の地域路線用航空機と比べ、ES-30の運航費を40%以上削減できると見込んでいる。

 エネルギー代に加え、構造が比較的単純な電動推進システムによって、整備費や運航停止時間を減らせると考えているためだ。 

 ES-30には、ユナイテッド航空、エア・カナダ、JSX(米国とメキシコで事業を展開するアメリカのパブリックチャーター航空会社)の3社がすでに導入の意向を示している。

 ハート・エアロスペースはロサンゼルスの工場で最初の機体を製造しており、飛行試験を2028年に始め、2031年の就航を目指している。

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