この画像を大きなサイズで見る危険を感じると、ぷっくりと膨らむフグの仲間。まるでボールのようである。海の生き物たちも、もしかしたら同じようなことを考えるのかもしれない。
アシカやアザラシ、イルカといった海に住む哺乳類の中には、このフグをボールのように扱って、楽しそうに遊ぶことがあるみたいだ。
メキシコの海で撮影された、フグで遊ぶアシカたちの写真が、ネット上で話題になっていた。
ぽんぽこりんに膨らんだ「フグボール」で遊ぶ若いアシカたち
SNSで話題を呼んでいるのは、メキシコのエスピリトゥ・サント島北端の岩礁群、ロス・イスロテスで撮影された一連の写真である。
撮影者はイギリス在住のヘンリー・スピアーズさんだ。
彼はもともとダイビングインストラクターをしていたが、その後写真家に転身し、エクセターを拠点として海洋生物や海の環境を主な題材にした写真を撮り続けている。
今回の写真は、「ダイビングを楽しんでいる最中に偶然アシカと出会って撮影した…」というシチュエーションで撮られたものではない。
スピアーズさんは当時、アシカの救助団体「Rescate de Lobos Marinos」に同行し、漁具や釣り糸などに絡まったアシカを探して救助する活動を取材していた。
その日、チームは首に釣り糸が絡まった子供のアシカを追っていた。不用意に近づくと逃げてしまうため、チームは糸を切るタイミングが訪れるまで、約2時間にわたって見守り続けていたのだという。
やがて子アシカが眠りについたのを見計らって、チームはそっと海に入った。そのとき、スピアーズさんの目に興味深い光景が飛び込んできた。
2頭の若いカリフォルニアアシカが、膨らんだミゾレフグの仲間を捕まえて、まるでボールのようにつついたりはじいたりしていたのだ。
アシカの「フグボール」遊びは狩りの練習
この行動は「フグボール」と呼ばれており、海中ではよく見られる光景のようだ。彼らは「このやり取りを楽しんでいた」ようで、フグを食べる気は全くなかったようだったと、スピアーズさんは記している。
フグボールは、アシカの子供たちが生きていくための本能を鍛えるために行う、たくさんの遊びのひとつです。
楽しいのはアシカたちだけで、気の毒なフグにとってはたまったものではありませんが……。
アシカたちはフグを食べようとはせず、水中を上下に引っ張り回したり、仲間同士でパスしあったりします。
ほかにもお気に入りの遊びとして、ヒトデを追いかけたり、棒を見せ合ったり、小石をかじたり、ダイバーの長い髪にかみついたりもします
アシカがフグボールで遊ぶ様子は各地で映像に残されており、SNSにもたくさん投稿されている。下は2017年に、今回と同じロス・イスロテスで撮影されたもの。
また、下はガラパゴス諸島のエスパニョラ島沖で撮影された映像である。
アシカもイルカのようにフグ毒で「ハイになっている」のか?
フグボールで遊ぶのは、アシカだけに限ったことではない。アザラシやイルカなど、ほかの海生哺乳類の間でも、同様の行動が記録されているそうだ。
フグは動きが遅く、攻撃されると弾力性のある胃に水や空気を吸い込んでボール状になるため、遊びの道具にされやすいそうだ。
だがフグをオモチャにするのは命懸けでもある。約200種いるフグのほとんどが、肝臓と卵巣にテトロドトキシンという致死性の神経毒を持っているからだ。
以前、カラパイアで「フグの毒でハイになるイルカ」を紹介したことがある。
フグは刺激を受けると毒を出すため、イルカたちがその毒をわざと少量取り込み、陶酔状態になっているのではないかというのだ。
これは2014年に放送されたBBCの自然ドキュメンタリー「Dolphins: Spy in the Pod」で広く知られるようになった話である。
フグボールで遊ぶ他の生き物たちも、もしかすると似たような感覚を味わっているのかな?
生きる術を学ぶと同時に純粋に楽しんでしまうことも
アシカなどの鰭脚類はフグ以外にも、海藻や他の生き物でも遊んでいる。
例えばオーストラリアアシカやニュージーランドアシカは、昆布などを空中に放り投げて、再度キャッチして遊ぶという。
また、ナンキョクオットセイはペンギンを殺しても食べることはせず、サッカーボールのように投げ飛ばして遊ぶことがあるそうだ。
さらにセイウチは海鳥に水をかけたり、牙で突いたり、口でくわえたりするが、命までは奪わないことも多いんだとか。
こうした遊びは、陸上での社会的生活や、海で捕食者から逃れたり獲物を追ったりする行動を学ぶのに役立っている可能性がある。
たとえば仲間同士のじゃれ合いは、繁殖期の争いに備えるためかもしれないし、自分の体の一部を動かすことは、自分と周囲を区別する助けになるだろう。
2024年に飼育下のアシカを対象に行われた研究では、こういった遊びは狩りや社会行動の練習につながるほか、動物たちの福祉向上に役立っている可能性が示唆されている。
フグボールなどで遊ぶことで、アシカなどの動物たちの幸福度が向上する…つまり、彼らは本当に、ただ純粋に楽しんでいるのかもしれないのだ。
これらの画像がSNSに投稿されると、ネット上では上記の「ハイになったイルカ」を引き合いに出すコメントが相次いで寄せられていた。
- かわいそうなフグ。きっと楽しい体験じゃなかっただろうね
- ストレスを受けたフグが出す分泌物を利用してハイになるって話、読んだことがあるぞ!
- イルカはフグの毒でハイになるんだよ。アシカもその悪い遊びを覚えたみたいだね
- なんてこった、イルカがアシカにドラッグを教えたのか
- アシカたちはきっとイルカのパーティーに参加して、そんな不良じみた遊びを教わったんだろうな
- もしかしたら遊びじゃなくて、大人の嗜みなのかもしれないね。イルカがフグで「ハイ」になるって説もあるし。もっとも、アシカには脚がないから、これ以上「脚が立たなくなる」心配はないけどね
References: Sea lions play "pufferball"with unfortunate fish















