この画像を大きなサイズで見るアメリカ・フロリダ州の小規模な動物教育プログラム運営施設で人気を集めている2頭のカピバラがいる。
彼らの名前は「パンプキン」と「チーズケーキ」。家のドアまでやって来て開けてもらい、当然のようにソファを占領してしまうなど、彼らのまったり愉快な行動が多くの人を笑顔にしている。
さらにこの2頭が人気なのは、食べられる紙に書かれたお祝いや愛の告白のメッセージを、カメラの前でむしゃむしゃと食べてくれちゃうからなんだ。
存在自体が癒しとも言えるカピバラだが、飼育するとなるとやはりいろいろ苦労もあるらしい。
「ドアを開けて!」家に入ってソファで寛ぐカピバラ
「Dark Wings Wildlife(DWW)」で飼育されているカピバラのチーズケーキは、しれっと家の中に入って来て、ソファを独り占めしてしまう。
何よりひとまず、その話題の投稿を見てもらおう。
カピバラのチーズケーキは、パンプキンがまだ寝ている朝のうちにこっそりやって来て、ソファを独り占めするのがすっかりお気に入りになってしまいました
DWWの創設者、マリーナ・ソンマさんは、この動画に登場するカピバラたちについてこう説明している。
私たちの2頭のカピバラ、パンプキンとチーズケーキは、牧場とつながった裏のポーチを自由に行き来できるようになっていて、ときどき追加のなでなでや甘えん坊タイムを求めてドアの前までやって来るんです
最初、ドアの前でちょっとためらっているようなチーズケーキに向かって、マリーナさんは「どうぞ、入っていいのよ」と優しく声をかけている。
だがチーズケーキが寝室へ行こうとすると、「ベッドはダメ!」と断固拒否。ソファに誘導すると、チーズケーキは慣れた様子でソファに飛び乗り、そのまままったりと寛ぎ始めるのだ。
この画像を大きなサイズで見るなんとも平和な朝の訪問者だが、マリーナさんはその「可愛さ」の裏にある現実もきちんと書き添えている。
見た目は可愛いですが、実際には世話にとても時間もお金もかかります。動画の中で私が「NO!」と言っている時は、本気で言ってるんですよ。
彼らは世界最大のげっ歯類で、手当たり次第に何でもかじろうとします。だから家の中にいる間は、100%ずっと見ていなければなりません。
しかもかなり頭が良くて、私が見ていない時を狙って、コード類やソファの毛布をかじろうとします
可愛いだけじゃないカピバラ飼育の現実
日本ではカピバラは、温泉に浸かっている様子などが有名で、ほっこり癒し系の動物としておなじみだ。
のんびり、穏やかで誰とでも仲良くする大人しい生き物。そんなイメージを持つ人も多いだろう。
だがチーズケーキとパンプキンの日常を見ていると、「かわいいから飼ってみたい」で済むものではないようだ。
また、水遊びが好きなカピバラたちは、しょっちゅう泥だらけになっている。でも彼らの体毛は水をはじく仕様なので、泥が乾いてから身体をブルブルッと振れば、全部キレイに落ちてしまうんだとか。
問題なのは、彼らはベッドやラグの上でブルブルッとやってくれるので、結局人間が泥をすべて掃除しないといけないんだそうだ。
マリーナさんは、カピバラについて人々が抱く最大の誤解は「大きくて落ち着いていて、誰とでも仲良くできる動物」という見方だと話している。
カピバラは南米原産の大型げっ歯類で、水辺の環境を必要とし、群れで暮らす性質を持つ。
見た目はおっとりしていても、飼育には広い空間や水場が必要で、さらに社会的な配慮や法規制への対応も欠かせない。
カピバラは確かに体が大きいですが、野生では被食動物であり、犬というより、モルモットやシカにずっと近い行動をします。
友好的になるには、たくさんの社会化が必要です。ほかのカピバラに対して、かなり攻撃的になることもあります。
ほかの動物に慣れさせるには、一般の人が思うよりもずっと多くの時間がかかりますし、慎重さも必要なんです
そんなこんなで、カピバラは「可愛い」というだけで簡単に飼育できる動物ではないということを、マリーナさんは何度も強調している。まあこれは、どんな動物でも同じだけれど…。
1匹1匹の動物たちそれぞれの個性を大切にしたい
Dark Wings Wildlifeは、フロリダ州を拠点に活動している、非営利で小規模な動物教育プログラムである。
ここには上の動画にも登場するシェットランド・シープドッグのスティービーをはじめ、アフリカシロエリガラスやコツメカワウソ、セバストポールガチョウやピグミーヤギなど、たくさんの動物が暮らしている。
マリーナさんたちは、施設にいる動物たちの物語や性格、日々の世話の様子を、動画やSNS、教育的なストーリーテリングを通じて世界中に発信している。
カピバラのパンプキンとチーズケーキをはじめ、ここで暮らす動物たちは、「教育アンバサダー動物」として活躍しているんだそうだ。
マリーナさんがDWWを始めたのは、誤解されがちな動物たちに光を当てたいと思ったからだという。
私はこれまでいくつかの動物園や水族館で働いてきましたが、そこにはたいてい、動物のアンバサダーがプレゼンテーションを行う小規模な「動物プログラム」部門がありました。
こうした経験から、動物園ではない形で、それに近い専門のプログラムを作りたいと思いました。
私たちの目標は、誤解されがちな動物たちにスポットライトを当てること、そして1匹1匹の動物たちの個性を際立たせることで、見てくれる人たちがそれぞれの動物とつながりを持てるようにしたかったんです
彼女はDWWを、「一歩ずつ1頭ずつ」作り上げる小規模プログラムとして開設した。その後はSNSを通じて、少しずつ活動を広げていく考えだったという。
活動開始時は完全に自費での運営で、フルタイムの仕事を続けながら、空き時間を使ってオンラインでの発信を積み重ねていったんだとか。
現在ではSNSや、人気企画「カピグラム(Capygram)」によって、動物たちの日々の世話にかかる費用をまかなえる自立型のプログラムになりつつあるそうだ。
カピバラがメッセージを「食べてくれる」サービスが大人気
カピグラムとは、食べられるウエハーペーパーにメッセージを書き、それをカピバラたちが食べる様子を撮影して届ける動画企画だ。
40ドル(約6,400円)以上の寄付をすると、メッセージを書いたウエハーペーパーをカピバラたちが食べる様子がSNSで配信される。
例えば下の動画では、ティムさんからシェルドンさんの30歳の誕生日へのお祝いメッセージが書かれたウエハーペーパーを、カピバラたちがむしゃむしゃ食べてくれている。
卒業祝いに申し込む人も多いみたい。下の投稿では、「カピバラたちもあなたを誇りに思っているよ!」というメッセージをむしゃむしゃ。
ウエハーペーパーはでんぷんでできた「食べられる紙」で、口に入れるとすぐ溶けてしまい、味もほとんどしないらしい。
そこで折り紙や切り紙のように扱って、花やレースなどお菓子のデコレーションにしたり、食用インクで絵を描いたりメッセージを印刷したりといった使われ方をしているんだそうだ。
この企画は、偶然から生まれた。ある日マリーナさんは視聴者から、「友人を元気づけるために、紙に書いたメッセージをカピバラに持たせて、映像を撮ることはできないだろうか」と頼まれた。
パンプキンはその紙のニオイをクンクンと嗅いでいたが、それだけだった。完成した動画を送ると、依頼者は冗談で「少し齧るとかしたら面白かったのに」と言い、そこから食べられる紙を使うアイデアにつながったという。
カピバラの「飼育」については賛否両論も
だが一方で、こうしたカピバラたちの扱いについて、ネット上では以前から賛否の声があった。
ペットではない野生動物に「アンバサダー」という役割を与えて飼育することへの批判もある。
また、野生動物であるカピバラを、安易に「可愛い」「飼ってみたい」と思わせてしまうことを懸念する人も少なくない。
とはいえ、SNSではマリーナさんの真摯な態度に、擁護する声も多かった。
- カピバラをペットとして飼うのが正しいのかどうかはさておき、私はパンプキンとチーズケーキが大好きだよ。全体的に、DWWには魅力的な動物たちがたくさんいるし、少なくとも彼らは大切にされているように見える
- 個人的には、こういう系のアカウントの中ではかなり安心して見られる方かな。確かに「動物コンテンツ」化している部分はあるけど、カピバラたちはすごく健康そうだし、広い遊び場もある。世話が足りていないようには見えないよ
- でもちょっと複雑な気持ちもある。ちゃんと世話はされているけど、その一方で、「カピバラをペットとして飼うべきではありません。これは教育用です! 私たちみたいに飼わないように見せているんです」みたいな感じだからね。なんというか、ダブルスタンダードな空気も少し感じてしまう
マリーナさんは、将来的にはプログラムの成長に合わせて、より多くの教育アンバサダー動物を受け入れたいと語っている。
長期的には、野生に戻せない在来種も迎えたいそうだ。それでも、視聴者が1匹1匹の個体とつながれるような、距離の近い発信は保ちたいと考えているそうだ。
チーズケーキとパンプキン、そして彼らの仲間たちの日常は、TikTokやInstagram、YouTube、FacebookなどのSNSで随時更新されている。
なお、カピグラムでメッセージをカピバラたちに食べてもらいたい人は、インスタのDMかメールで申し込めるようだ。
最低40ドルの寄付が必要だが、「ぜひお願いしたい」という人は、希望のメッセージなどを添えて申し込んでみよう。















