この画像を大きなサイズで見るホラアナライオンは約1万3000年前に絶滅したが、そのDNAには、現代のライオンの先祖の遺伝子が残されていた。
スウェーデンのストックホルム大学が新たにホラアナライオンの遺伝情報を解読し、現代のライオンと比較したところ、共通先祖から枝分かれしたのは150万年以上前と、これまで考えられていたよりずっと古いことがわかった。
別の種に分かれた後も氷期になるたびに、ホラアナライオンは南へ移り、そこで暮らすライオンの先祖と交配を繰り返していた。
その痕跡がホラアナライオンのDNAから発見されたのだ。
この研究成果は『Cell』誌(2026年6月3日付)に掲載された。
かつて存在したホラアナライオン
ホラアナライオン(Panthera spelaea)はかつて、シベリアを含むユーラシア大陸から、アラスカまでの広い範囲に生息していた。
頭から胴までの長さは2.1mから2.3mほど、肩の高さは1.2mで、年代や種類によって大きさは異なるが、現代のライオンより1割ほど大きい。
オスでも、今のライオンのようなふさふさのたてがみはなかったとみられ、体毛は現代のライオンより淡い色をしていた可能性がある。
洞窟から化石や壁画が数多く見つかることから、この名がついた。
ホラアナライオンが生きていたのは更新世(約258万年前から約1万1700年前まで)の中期から後期にかけてだ。
地球の気候は、寒さの厳しい氷期と、比較的暖かい間氷期を何度も繰り返してきた。氷期には氷河や氷床が大きく広がり、間氷期になるとそれがとけて縮む。
寒暖を繰り返す長い時代を氷河時代と呼び、私たちが暮らす今も、実は氷河時代の中の間氷期にあたる。
ホラアナライオンは、何度も訪れた氷期を生き抜いた猛獣であり捕食者だった。
この画像を大きなサイズで見る150万年以上前に共通の先祖から分岐
ストックホルム大学とスウェーデン自然史博物館が共同で運営する古遺伝学センターの研究チームは、シベリアやアラスカなどで見つかったホラアナライオン12個体の遺伝情報を解読し、アフリカと南アジアに生息する現生のライオン20個体と比較した。
ホラアナライオンの個体の年代は、1万7000年前から14万8000年前のもので、歯や骨だけでなく、軟組織標本を利用した。
その結果、ホラアナライオンと現生ライオンは150万年以上前に、共通の祖先から別のグループに枝分かれしていたことがわかった。
脳の働きや目の仕組み、体の成長に関わる遺伝子にも、ホラアナライオンならではの変化が見つかっている。
体の大きさも暮らしぶりも当時のライオンの先祖と違っていたことは、各地に残る化石や洞窟の壁画からもうかがえる。
この画像を大きなサイズで見るホラアナライオンとライオンの先祖は交配を繰り返していた
150万年以上も別々の道を歩みながら、ホラアナライオンとライオンの先祖は完全に縁が切れたわけではなかった。
研究チームは、二つの系統が長い年月のあいだに何度も交配していた痕跡を発見し、広い範囲で繰り返されていたことがわかった。
交配の時期は、地球の寒暖の移り変わりと深く結びついていた。
氷河や氷床が大きく広がった氷期ほど、ホラアナライオンの遺伝情報に現生ライオン由来の遺伝子が多く混じっていた。
寒さが厳しくなると、ホラアナライオンは比較的暖かい南へ移動し、中央アジアや南西アジアで現生のライオン先祖と出会い、子を育んだのである。
古遺伝学センターのラブ・ダレーン教授は、気候の変化が種どうしを引き合わせ、本来なら生まれなかったはずの出会いと交配の機会をつくり出したと考えている。
この画像を大きなサイズで見る人の手で断ち切られたつながり
ホラアナライオンに遺伝子を渡したライオンの先祖は、南西アジアにいた集団だったとみられている。
ところがこの集団は、20世紀の初めまでに人間に狩り尽くされ現代まで生き残ることなく姿を消した。
氷期のたびに繰り返されてきた二つの系統のつながりは、近代になって人の手で断ち切られたことになる。
ホラアナライオンは約1万3000年前に絶滅している。
急激な気候変動で獲物となる動物が減り、さらに数を増やした人類が残った個体を狩ったためと考えられている。
References: DOI.10.1016/j.cell.2026.05.007 / Ancient genomes reveal the unique history of the extinct cave lion















