メインコンテンツにスキップ

約100年前、アメリカには伝説の8輪自動車「オクトオート」があった

記事の本文にスキップ

27件のコメントを見る

(著) (編集)

公開:

この画像を大きなサイズで見る
image credit:youtube
Advertisement

 100年前の「究極の乗り心地」への挑戦が、自動車史の伝説に。1910年代、自動車が普及しだしたころのアメリカは、道路が穴だらけで車の乗り心地が悪かった。

 そんな時代に、発明家ミルトン・O・リーブスが常識を破る一案をひらめいた。

 「タイヤを4つじゃなく…8つにしたらどうだ?」

 こうして誕生したのが、後に“伝説の8輪自動車”と呼ばれる「オクトオート」 だ。

 全長6.7mの超ロングボディで40馬力というアンバランスさといい、ある意味、存在自体が“奇跡の迷車”ともいえる。

 その大胆さゆえに、現代の私たちを惹きつけてやまない要素が盛りだくさんのオクトオート にせまっていこう。

1911年に作られた8輪自動車「オクトオート」

 誰もが思わず二度見する8輪自動車「オクトオート」の特殊な姿は「世界一スムーズな乗り心地」への追求から生まれた。

この画像を大きなサイズで見る
image credit:youtube

 そのスペックは、このようなものだったという。

  • 1911年製作
  • 4人乗り
  • 全長6.7m(小型のバスかトラック並みの超ロングボディ)
  • 40馬力(8輪には明らかに非力)
  • 3速マニュアル+機械式ブレーキ(止まるかどうかも微妙な設計)
  • 4軸8輪(駆動方式 8×2)

目的は乗り心地の改善 と タイヤ寿命の延長

 オクトオートを手がけたのは、アメリカの発明家ミルトン・オセロ・リーブス。

 その目的は、乗り心地の改善 と タイヤ寿命の延長だ。初期の車はサスペンションも単純で、穴だらけの道での乗り心地が非常に悪く、タイヤの摩耗も激しかったという。

 ヒントは鉄道のボギー台車で、当時トレンドだったアメリカの自動車メーカー、ウィリス=オーバーランド社の1910年式モデルに、4つのホイールを追加し取り付け改造することでオクトオートが誕生した。

この画像を大きなサイズで見る
オクトオートの原型となった米オーバーランド社製、1910年式 モデル42 /image credit:Richardj311 at English Wikipedia, Public domain, via Wikimedia Commons

 この車について、ドライバーのコミュニティサイトHagertyはこう説明。

リーブスは、ある鉄道車両の設計をただ借用したに過ぎない。その車両は4輪の「台車」を採用していた。

(ガソリンカルチャーと周辺特化のウェブサイト)silodrome.comによると、「オクトオートは、前方の車軸2つと一番後ろの車軸のタイヤがハンドル操作で曲がる仕組みになっていた。
その1つ前の車軸だけが曲がらず、ここだけがエンジンの力で動く“駆動輪”だったため、この車は”8×2”という分類になる。そして、ブレーキが付いていたのも、この駆動輪だけだった」

この画像を大きなサイズで見る
image credit:youtube
この画像を大きなサイズで見る
image credit:youtube

 つまりタイヤは全部で8本(4軸)なのに、エンジンの動きが伝わるのも止められるのも2本(1軸駆動)だけ。という変わった構造だったという。

アメリカの車なのになぜ右ハンドルなのか?

 写真を見て「ハンドルが右側にある。これってイギリス車じゃないの?」と思った人もいるかもしれない。だがオクトオートは、れっきとしたアメリカ製だ。

 実は1910年代初頭のアメリカでは、右ハンドルが当たり前だった。

 自動車が登場した当初、馬車の慣習をそのまま引き継いで、運転席は右側に置かれていたのだ。

 流れが変わったのは、フォードが1908年にモデルTを発売してから。左ハンドルのほうが対向車との距離をつかみやすく安全だという認識が広まり、1910年代半ばにかけてアメリカ全体で左ハンドルへの移行が進んだ。

 オクトオートのベースとなった1910年製オーバーランドも、1915年以前のモデルはすべて右ハンドルだった。

この画像を大きなサイズで見る
image credit:youtube

実際には長すぎて扱いづらい車

 リーブスは、この前代未聞の試作車を、自身が設立した自動車メーカー、リーブス・セクスト・オクト社の目玉として大々的に宣伝。

 だが実際のオクトオートはひたすら扱いにくかった。

 全長6.7m といえば、もはや小型のバスや小型トラック。おそろしく伸びた”はやりの車”は、ただ単に悪目立ちするだけでなく、実用に向かない点が多々あった。

 まず駐車がひどく面倒だった。充分な馬力もなければ、小回りもきかず、動きはまるで巨大なカタツムリのよう。

 乗り心地を良くしたい一心でタイヤを増やしたところ、別の問題勃発といったところか。車でありながら、運転のしやすさなどとは無縁なレベルの代物だった。

イベントで大注目も市販化されず幕

 とはいえオクトオートのインパクトはすさまじく、1911年アメリカのインディアナポリスで初めて開催されたモータースポーツイベント「インディアナポリス500(通称インディ500)」に展示されると、レースカー並みの人だかりができるほど脚光を浴びた。

この画像を大きなサイズで見る
image credit:youtube

 ただそこから先は悲しいもので、まったく売れなかった。

 理由としては、先に挙げた運転しづらさだけでなく、3,200ドルという強気の価格が一番の原因だろう。

 ちなみに当時の大衆向けの量産車、フォード・モデルTが 800ドル。つまり4台分だ。

 車の普及がこれからで、市場が“快適性”より“安さ”を求める中で、そのお値段は法外過ぎた。

 たとえ”比類なき快適性”に惹きつけられたお金持ちでも、ビジュアルだけで扱いにくく、馬力もなくて整備も面倒そうな”改造車”にそこまで出せない、といった感じだったのだろう。結果、試作止まりで市販化ならず、で終わってしまった。

 それでもリーブスはあきらめず、6輪の「セクストオート」も作ったが、やはり売れず。タイヤが多い車の流れは、そこであえなく途絶えることに。

この画像を大きなサイズで見る
image credit:youtube

早すぎた天才の発想か

 リーブスは1925年に亡くなるまでの60年間で、100件もの発明で特許取得。初の発明は15歳のころ。働いていた製材所で、ノコギリ用の可変速トランスミッションを設計した。

 1880年代後半に自動車を開発した初期の設計者の一人とされ、彼の最初の試作車は、アメリカ国内で4番目か5番目の車だったと考えられている。

 ほかにも、車のエンジンのノイズ低減にダブルマフラーを発明したり、新しい空冷エンジンを開発したりとエンジンメーカーとしても知られ、今は”自動車産業の初期の先駆者”と評されている。

 現代では、重量分散や安定性などの利点から、バスやトラック、軍用車や特殊車両でも多軸車(タイヤの多い車)が使われている。

この画像を大きなサイズで見る
image credit:youtube

 そうした意味では、リーブスの発想自体は誤りではないのだろう。”時代を先取りした天才”との見方もありだが、4人乗りの普通車でそりゃないわ、とも思ったり思わなかったり。

「なぜこんなものが」「メリットは?」の声

 100年以上も前に作られ、試作で終わったオクトオート。だがその姿は定期的にネットに上がり、その都度SNSで話題に。下は2026年4月公開の動画だ。

The Reeves-Overland Octoauto: 8 Wheels of Pure Insanity

 おなじみRedditの奇妙な車スレッドr/WeirdWheelsr/でも、2022年に取り上げられ、海外ユーザーからこんな声が寄せられている。

  • なぜこんなものが存在するのか
    • それな。なんかメリットある? 後輪4輪すべてが駆動したかもしれないが、前輪4輪がコーナリング時のグリップ向上のためだったとはとても思えない
    • 乗り心地を滑らかにする気だった。車軸を増やせば車輪も増える、つまり乗り心地が滑らかになる(列車の乗り心地を再現を目指した)
      ・・・はずが現実は違った。しかもこれに現価9万ドル(約1400万円)相当の値段をつけた。その後「セクスタウト」ってその名の通り、6輪の2代目モデルも作ったが、これも売れなかった。20フィート(約6m)と長いのに、乗れるのは4人だけだったんだよ
  • 車輪付きの装甲車みたいに駆動力の向上を狙ったのかもしれない
  • 史上最も悲しいお話
  • 彼の母親も買ってやらなかったのか?
    • おばあちゃんまでスルーかよ・・・
      • 当時は12歳の男の子でも車が運転できたのに、女性が運転すると白い目で見られる時代だったから
    • にしても高すぎるって!

 とまあツッコミもいろいろ。

 結局売れなかったけど、自動車がまだ目新しく、これからって時代にいち早く”快適性”を追及したリーブス。

 彼が生んだ”伝説の8輪自動車”はこれからも人々の間で話題になっていきそうだ。

References: Odditycentral / Hagerty

📌 広告の下にスタッフ厳選「あわせて読みたい」を掲載中

この記事へのコメント 27件

コメントを書く

  1. 子供心に「ペロネープ」は魅力的な車体じゃったのう

    • +3
  2. 1輪が穴にハマってガクッてならないなら富裕層が買ってもおかしくなさそうだけどな
    そんなバカにするほどか?と思った

    • +13
  3. 8輪といえばエリーカだな。もっともインホイールモーターで全輪駆動で600馬力オーバーだったが。でも5人乗り。

    • +3
  4. 現在の乗用車のほぼすべてが4輪ということを考えるとそれがベストなんだろうな

    • +2
  5. そういえばF-1の車体にあったよね、6輪とか8輪な車体が。
    レギュレーションの関係で、すぐに使えなくなったみたいだけど。

    • +5
  6. 八輪装甲車の先駆的な存在だったのかな
    ロマンがあるよね
    足が生えててもいい

    • +7
  7. こういう変なものを作れるアイデアは脱帽です
    妙なものでもいつか役立つ日が来るはずだ

    • +11
  8. 野暮なのは分かってるけど・・・
    これアメリカじゃなくて「イギリス」じゃないの?
    画像の車「右ハンドル」だぞ。
    アメリカは左ハンドル。

    • -25
  9. 当時は自動車のサスペンション等が未発達だった為
    大胆にも鉄道の客車の設計をそのまま自動車に当てはめてみたけど
    鈍重になっただけで運転にも支障が出たので一台も売れなかった
    彼は今日では冗談のように巨大で醜悪な8輪車と
    自動車に関わる以前の製材所で勤務中に発明した無段変速機(CVT)で知られているという

    • +1
  10. 大昔のF1で、ティレルの6輪があったが・・・

    • +4
  11. 見た目はかっこいい!
    改造元がイカしてるからってのもありそうだけども!

    • +2
  12. アメリカの結婚式では新郎新婦が
    リムジンとかいう
    車体のやたら長い高級車に乗るのが定番だが
    ちょっとした高低差で引っかかって
    走行不能になるのもそこそこ定番らしい

    • +1
  13. 20世紀初期の白黒映画でよくみた8輪の車か
    伝説になってたのは初耳だが

    • 評価
  14. これが変だと感じている人の頭は固く、現代にこびりついた思考しかできず、道路が穴だらけの時代の想定ができない人

    8輪車は4輪車に比べて、道路とタイヤの接地確率は増大し、乗り心地は確実によくなる

    • -2
  15. トラクターの世界でも車輪多い奴はときどき出てきますよね。
    ヴィジュアルは最高に格好いいんですけどね。

    • +1
  16. キアヌ・リーブス以外のリーブスさんを初めて知った

    • -3
  17. 他の人がやらないことをやれば失敗もする。
    でも、その探究心が人類の暮らしを変えてきた。
    世の中には後世に多大な悪影響を残す悪い失敗もあるけど、これは良い失敗だと思う。

    • +4
  18. タイヤには転がり係数というのがあって、これが悪いと燃費も悪くなるらしい。
    タイヤの数が多いクルマは、増えたタイヤの数だけ燃費も悪化すると想像がつく。
    あと、タイヤは車内に騒音ももたらすので、振動を抑える効果があったとしても、
    今後とも、タイヤの数の多い自家用の乗用車は開発されないと思う。

    • +2
  19. 走破性を考えたら、8輪は間違ってない。先進的だ。
    戦場を駆ける装甲車も8輪タイプ多い。

    • +1
    1. この設計思想は現代の装輪装甲車じゃなくてWWII頃の戦車に良く見られたボギーサスペンションに近いように思える
      それでももちろん先進的ではあるが

      • +1
  20. やってみたいからやってみた。
    それで良いんじゃない?
    なんでもやってみいの精神って大事よね。

    • +4
  21. なんか光岡のラ・セードみたいだなって思ったら、全長も似たようなものだった。こっちは6.7m、ラ・セードは5.1m。
    ラ・セードでさえ前方部分が長すぎて、運転した人によると「3列目のシートからハンドル握ってるみたい」だったそうで、この車も相当運転しづらかっただろうに。

    • +1

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

知る

知るについての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

歴史・文化

歴史・文化についての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

最新記事

最新記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。