この画像を大きなサイズで見るアメリカのユタ州で、コンクリートミキサーの中から1羽のフクロウが見つかった。羽にはコンクリートが付着しており、保護施設で必死の洗浄作業が行われた。
だが、羽がきれいになっても、フクロウは野生に帰ることができなかった。コンクリートで傷んだ羽は、飛翔時に音を立ててしまう。
闇の中、静かに獲物を狙う「夜のハンター」であるフクロウにとって、「静かに飛べない」ことは、生きるための武器を失うことを意味する。
それでも保護施設のスタッフたちはあきらめなかった。前例のない「羽の移植」が行われた結果、フクロウは再び自分の力で空へと飛び立ったのである。
コンクリートミキサーの中で見つかったアメリカワシミミズク
2025年10月下旬、アメリカ・ユタ州南西部の建設現場で、コンクリートを流し込む作業中に、ミキサーの中から1羽のフクロウが見つかった。
身体はコンクリートに覆われており、顔や胸、右の翼に乾いた固まりがこびりついていた。体重約900gの小さな体のかなりの部分が、重い殻のようなものに包まれていたという。
現場の作業員たちはすぐにホースで水をかけ、フクロウの身体を洗ってやった。そしてタオルで包み、州の野生動物当局を通じて、ユタ州カナブにある保護施設「ベスト・フレンズ・アニマル・サンクチュアリ」へと搬送した。
この画像を大きなサイズで見るこのフクロウはアメリカワシミミズクのオスで、おそらくはこの年に生まれたまだ若い個体と推定された。
ベスト・フレンズ・アニマル・サンクチュアリには、野生動物のリハビリを専門に行う「Wild Friends」チームがある。
だが、コンクリートミキサーに入り込み、全身に乾いたコンクリートをまとったフクロウという事例は、彼らにとっても初めて対処するものだった。
スタッフたちは、まず呼吸に問題がないかを確認したうえで、固まったコンクリートを少しずつ取り除いていった。
大きな塊は鉗子やピンセットで慎重に砕き、小さな破片や汚れは歯ブラシや食器用洗剤を使って洗い落とすという、地道な作業を何度も重ねた。
無理に引きはがせば、皮膚や羽を傷つけてしまうかもしれない。これは治療というより、ほとんど発掘に近い作業だったという。
下の動画は、保護時の様子を伝えるニュース映像である。小さなブラシで丁寧にコンクリートを取り除いている様子が記録されている。
音を立ててしまう羽は闇の中での狩りには致命的
幸いなことに、骨折などの大きなケガは確認されなかった。だがこのフクロウが野生で生きていくためには、大きな問題が残されていた。
アメリカワシミミズクの狩りにおける最大の武器は、飛翔する際に音を立てず、獲物に気づかれずに近づけることだ。
だがそのためには、羽が柔らかく正常な状態でなければならない。しかしコンクリートで傷んだ羽では、飛ぶたびに音が出てしまう。
たとえ再び飛ぶことができたとしても、今のままでは野生で狩りをし、生き残るのは難しいのだ。
スタッフたちは当初、自然に生え替わるのを待とうとした。アメリカワシミミズクは通常、春~夏にかけて換羽が発生する。
だが、大型の風切羽は一気に全部生え替わるわけではない。少しずつ順番に抜け替わるため、全部が新しい羽になるまで数年かかる場合もある。
特にこの個体はこの個体はまだ若いこともあり、10枚の初列風切羽すべてが自然に生え替わるには、4年ほどかかってしまう可能性があった。
この画像を大きなサイズで見る他のフクロウの羽根を埋め込む「インピング」を行うことに
そこで選ばれたのが、「インピング」と呼ばれる処置である。インピングとは、傷んだ羽根の軸に別の個体の羽根を継ぎ足す技術である。
そのための羽根は、ソルトレイクシティ近郊の野生動物リハビリ施設「Utah Wildlife Foundation」から提供された。
ドナーとなったのは、既に死亡した同程度の大きさのアメリカワシミミズクだという。この個体の羽根を損傷した箇所のものと交換するのだ。
チームはインピング手術に備え、このフクロウの羽の状態や並び方を慎重に観察した。Wild Friendsのスーパーバイザー、バート・リッチワルスキー氏は、後にこうこう語っている。
数週間おきに羽の状態を確認し、どの羽を処置する必要があるかを見極めていました。事前に傷んだ羽軸も切りそろえておいたんです
この画像を大きなサイズで見るそして2026年5月1日、フクロウは全身麻酔を受け、いよいよWild Friendsのスタッフによるインピングが行われた。
手術はベスト・フレンズの獣医師ケルシー・パラス氏とスタッフ3人で行われ、処置が全て終わるまで約90分かかったそうだ。
最終的に交換されたのは、右の翼の初列風切羽10枚と、次列風切羽1枚だった。左の翼には交換が必要な羽はなかったという。
最初の数枚は本当に緊張しました。でも作業の流れがつかめてくると、インピングにも慣れていき、すべて順調に進みました
リッチワルスキー氏は、手術時の様子をこのように話す。交換が完了した羽はきれいに切りそろえられた。
そして長さを測り位置を合わせたうえで、エポキシ樹脂で固定された。手術は無事に成功し、フクロウは新しい羽を手に入れたのだ。
この画像を大きなサイズで見るインピングは成功し無事に野生の空へと帰還した
麻酔から覚めたフクロウは、大型の飛行ケージへ移された。きちんと飛べるかどうかを確認し、できるだけ早く野生に放すためである。
インピングで得た新しい羽で、ちゃんと飛ぶことができるだろうか。そして何より、羽音を抑えて飛べるのだろうか。
そんな心配は杞憂だった。フクロウはすぐに羽ばたき、一番高い止まり木へととまった。そこでリッチワルスキー氏は騒音計を使い、翼が立てる音を測定した。
この画像を大きなサイズで見るその結果、フクロウが飛び立った瞬間も、羽音はほとんど計測されなかった。野生で狩りをするうえで欠かせない、静かな飛翔が取り戻せたのだ。
接着剤が安定し、新しい羽に慣れるまで十分な時間をとった後、ケージの屋根が大きく開けられた。フクロウは自らの力で羽ばたき、野生へと帰って行った。
彼が飛び去っていくのを見るまで、自分の心臓が動いていたかどうかもわからないくらいでした。
これだけ長い時間をかけて、彼が健康を取り戻し、元気な状態で野生へ戻れたんだと思うと感無量でした
発見された建設現場ではなく、元の生息地に近い、安全な場所を選んでの放鳥だったという。
この画像を大きなサイズで見るこのフクロウは保護当初から、人々の注目を集めていた。無事に放鳥成功のニュースに、多くの人から喜びのコメントが寄せられた
- みなさん本当にすごい! このフクロウを助けてくれてありがとう
- フクロウが大好きです。この子を本当に大切にケアしてくれてありがとう
- 放鳥おめでとう。本当に素晴らしい成果ですね。この幸運なフクロウに、文字通り「第二のチャンス」を与えたみなさんの優しさにも感動しました
- この小さな天使のために、みなさんが注いだ忍耐とケアと時間が、この鳥の人生を大きく変えたんですね。今こうして自由になれたのは、そのおかげ。本当にありがとう
- すごい! 本当に良いニュースですね。それに、インピングについても教えてくれてありがとう
- そもそもどうやってミキサーの中に入り込んだのか気になってしまう。でも、間に合ううちに見つけてもらえたのは本当に幸運だったね。ただ生き延びるだけじゃなく、野生復帰までできたんだから
- 自分の新しい羽が生えてきたら、エポキシで接着した羽は押し出されるのかな。それとも隣に生えてくるの?
- ちゃんと生え替わりますよ! 最終的には全部、自分自身の羽になります。この子はまだ若鳥なので、10枚ある初列風切羽が全部生え替わるまでには4年くらいかかるかもしれません(ベスト・フレンズからのコメ)
この画像を大きなサイズで見るアメリカワシミミズクは、北米では広く見られる大型のフクロウで、頭部の羽角が耳のように見えるのが特徴だ。
英名の「Great Horned Owl(大きな角を持つフクロウ)」は、この角のような羽に由来する。実際の耳ではないが、シルエットとしてはかなり印象的だ。
今回保護された個体は、まだ若く経験も少なかったために、コンクリートミキサーに入り込んでしまった可能性がある。
この画像を大きなサイズで見るミネソタ州にある国際フクロウセンターの代表、カーラ・ブローム氏は、「インピング」は“何世紀も前から鷹匠たちによって行われてきた技術であり、非常に効果的な処置だと話している。
インピングした羽が長持ちしなかったという話は聞いたことがありません。処置にはかなりしっかりした材料を使いますからね
約30年にわたりアメリカワシミミズクを研究してきたブローム氏は、たとえ接着した羽根が数枚抜け落ちたとしても問題はないと説明する。
今回の処置で重要だったのは、大部分の羽が新しい羽に生え替わるまで、持ちこたえてくれることだった。
今度はこの子自身が、「また広い世界に戻ってきたんだ。狩りをしなくちゃ!」と気づく必要があるんです。自分の縄張りを見つけて、パートナーを見つけて、腰を落ち着けて、子供を育てていくんです
たとえ羽をきれいにして野生に帰したとても、夜の静寂の中で音を立ててしまうのでは、捕食者にとっては致命的である。
そのことにきちんと気づき、適切な処置をしたWild Friendsのスタッフたちのおかげで、このフクロウは次の世代へと命を繋げていくことができるのだ。
References: Owl found stuck in a concrete mixer is on the mend and flying free / PHOTOS: Owl found encased in concrete gets new wings, flies free
















以下、「頭髪への期待は捨てろ(先制攻撃)」
彡⌒ミ
(´・ω・`) なんだァ?てめェ……
いや、むしろ近い将来ハゲ頭に鳥の羽を付けるファッションが流行る可能性も微レ存
手術中の写真が蛾の標本みたいで、思わず笑ってしまった。
インピングていうのか
アラブのハヤブサレースで傷ついた羽の移植をするのをテレビで観た
チャンピオンクラスだと一千万円くらいになるので、そく処置をするとか
移植用の羽根も年齢や大きさ別に数セット用意してあった