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植物が街灯になる未来へ。ホタルのように光る植物20種を開発

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(著)

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Image by Istock jimfeng
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 映画『アバター』の惑星パンドラの世界が現実になるかもしれない。

 中国のバイオ企業が、発光キノコやホタルの遺伝子技術を応用し、自ら光る植物20種を開発した。

 その目的は、街灯の代わりに「光る植物」を配置する都市インフラ計画で、電気を使わず幻想的に輝く植物で、都市の消費電力を抑え、美しい景観を作り出そうとしているのだ。

参考文献:

試行錯誤を経て誕生した20種の植物の発光

 暗闇の中で、街路樹や公園の花々が優しく光り、街を照らし出す。そんな映画のような光景を現実にするため、中国のバイオテクノロジー企業「マジックペン・バイオ(Magicpen Bio)」は、最新の遺伝子編集技術によって20種類もの光る植物を作り出した。

 この成功の裏には、気の遠くなるような努力がある。

 創設者の李仁漢氏によると、目に見えるほどの輝きを得るために「532回もの技術的な改良」を繰り返したという。

 植物がもともと持っている「光を制限する性質」を抑え込み、導入した遺伝子が作る酵素の効率を極限まで高めることで、ランやヒマワリ、バラ、ユリといった馴染み深い花々を、明るく発光させたのだ。

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Image by Istock Jose David Ruiz Barba

キノコとホタルの力を借りて植物内に光の回路を作る

 この光る植物はどのようにして作られたのか?

 発光キノコやホタルが持つ「生物発光」という仕組みを、植物の体内で再現したのだ。

 生物発光には、光を放つ化学反応を生み出す物質「ルシフェリン」が必要となる。

 研究チームは、まず発光キノコの遺伝子を使い、ほとんどの植物が持っている成分「コーヒー酸」を体内でルシフェリンに作り替えさせる回路を構築した。

 さらにそこに、ホタルが持つ強力な発光遺伝子を組み合わせることで、光をより明るく、安定させることに成功したのだ。

 植物は、自らの代謝を通じてこの化学反応を絶えず繰り返す。

 これにより、外部から特別なエネルギーを補給しなくても、水と肥料さえあれば、植物が生きている限り自力で光り続ける持続的なサイクルが確立された。 

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Image by unsplash Igor Omilaev

植物が街を照らす実用的な明るさを目指す

 光る植物といえば、カラパイアでも2024年に、アメリカのLight Bio社が開発した「ホタルペチュニア(Firefly Petunia)」を紹介している。

 このペチュニアは、世界で初めて一般向けに販売された画期的な商品だった。

 しかし、その光はあくまで観賞用であり、周囲を照らすというよりは、月明かりのようにぼんやりと光る花を眺めて楽しむものだった。

 しかし、今回開発された発光植物は、街灯の代わりとして機能する「実用的な明るさ」を実現した。 

 アメリカのMIT(マサチューセッツ工科大学)でも、ナノ粒子を植物に注入してホタルの酵素を運ばせる「ナノバイオニック植物」の研究が進んでおり、従来の10倍の明るさを実現している。

エネルギー危機を救う生物発光

 生物発光の研究が熱を帯びている背景には、深刻なエネルギー問題がある。

 世界の大都市では、温暖化による猛暑でエアコンの使用量が急増し、深刻な電力不足と電気代の高騰が社会問題となっている。

 もし、夜の街を照らす街灯の一部を「自ら光る植物」に置き換えることができれば、莫大な電力を節約できる。

 李氏はこの技術を観光や夜の時間を楽しむ新しい街づくりに役立てたいと考えている。

 「光る植物で埋め尽くされた町は、まさに映画『アバター』のパンドラの世界を地球で実現するようなものだ」と語る。 

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Image by Istock tomertu

光を保ちながら元気に生き続ける改良

 一方で、こうした光る植物が健康に育ち続けられるのかという懸念もある。

 科学的には、光を放つことは植物にとって一定のエネルギーを消費する行為(代謝コスト)だからだ。

 実際、光る植物は元気なときほど明るく輝き、ストレスを感じると光が弱まることが確認されている。

 そのため、都市のインフラとして活用するには、冬の寒さや夏の乾燥、大気汚染といった厳しい環境下でも、光りながら生き抜く強さが必要になる。

 実際、Magicpen Bio社が行った532回に及ぶ改良の多くは、植物の負担をいかに減らすかに費やされた。

 今回532回におよぶ改良がなされたのも、「植物の健康」と「輝き」のバランスを最適化するためのものだった。

 「光る植物の街灯」は植物に力を借りて、電気に依存しすぎない新しい都市のあり方を提示している。 

編集長パルモのコメント

パルモの表情、てれかくし

街路樹としての都市の景観を保ちつつ、光合成で二酸化炭素を吸い取り空気を良くしてくれる植物が、夜の街まで明るく照らしてくれるなんて、人間は植物の恩恵に頼りすぎな気もする。 その恩はしっかり返していかなければならないね。

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この記事へのコメント 21件

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  1. 飛んで灯に入る
    虫の群れだらけになる未来

    • -2
  2.  すごい! 技術もすごいけど、関係者の努力もすごい! ……と思うのですけど、個人的には抵抗もあります。 夜は暗くあるべきだし、昼間は明るくあるべきだという価値観に縛られているのと、世界中に放たれて予想もつかないことになるかもしれないという現在でも特定外来種問題に悩んでいる各国の状況を考えると切り花用途としての園芸品種ならアリかなというところが妥協点かなと。 園芸品種で地植えや鉢植えで世の中に出て、それが野生化したとき、近縁種と交雑した時など、ちょっと怖いなーと。 まぁ、流星雨の後に三本脚になって歩き出して人を喰うようになったりはしないと思いますけどね

    • +5
  3. 植えれば勝手に育つような街路樹だったら街灯の代わりになるかもしれないけど、花壇に植えるような草花だったりちょっとした低木だったりすると維持費は結構高い。

    • +3
  4. う〜ん…
    考え方は理解できなくもないけど違和感もあるんだよね

    闇を克服する事は無条件に望ましい事なんだろうか?
    本当は、夜は夜らしく暗くある方が望ましいと思うのだが

    • +3
  5. ただでさえ現在でも、特定外来生物・植物のようなものに脅かされているというのに、これに遺伝子組み換えにより人工的に作られた生物・植物種に脅かされるとか「ディストピア」の極致。
    アメリカザリガニも、ミドリガメも、ジャンボタニシも、当初は食用目的という善意で輸入したもので、悪意を以ってばら撒かれたわけではない。

    • +9
    1. 「地獄への道は善意で舗装されている」(ヨーロッパの格言)
      と言いますし…

      • +1
  6. 現状は葉っぱの位置が分かる程度にしか光らないっぽい。都市部の夜間照明としては実用的じゃないけれども、ガーデニング素材としての需要はありそう。副産物として光るイモムシやアブラムシが発生するかもしれないが。

    • +5
  7. これはいいな
    電力消費が抑えられるのはもちろん
    自然な光というのがいい

    • -1
  8. 街灯替わりに出来る程の光量稼げれば良いけど、そうでなくても補助的な光源として十分なシーンも考えられると思う。
    あと食べてバッテリーを回復させたい。

    • 評価
  9. 周辺への遺伝子汚染などを考えたら微妙過ぎ

    • +4
  10. 光るスギ花粉のおかげでハナミズも輝く未来

    • +7
  11. 貴重な肥料をこんな事に使うの勿体なさ過ぎる

    • -2
  12. 植物で可能なら、植物とは比較にならない高代謝である動物もおそらく光らせることができるようになるだろう。現時点でも赤外線レベルでは発光してるわけだし。
    もしかすると、この植物を食べ続けた虫なんかは自身も発光することだってあるのかもしれない。
    Gとかが光るようになれば、蛍のように愛される日が来るのだろうか・・

    • +1
  13. 町の明かりで夜行性の動物の生態が脅かされている分は人間がコントロールできる余地があるが、光る植物が野外に流出して、クレソンやホテイアオイみたいに手に負えなくなったらどうするのか。

    • -1
  14. 環境が汚染されたらどうするって言うけど人間が存在してること自体が一番地球を汚染してるんだよなあ

    • 評価
  15. 交雑しないような対策はしてる?
    たぶんしてないよな…遺伝子的な汚染とかなんも考えてなさそう。

    • 評価
  16. まあ虫が寄って来ない波長の光もあるし

    • 評価
  17. 植物による光害で植物に悪影響が出るのか

    • 評価
  18. 町の街灯という大規模なものより、家の照明インテリアとしての方が実用性高そうだし流行りそう
    僅かな照明がほしいシーンは多分にあるし、本が読めるくらいの光源が確保できるなら電気代も節約できる…のか?

    • 評価

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