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小さな魚の大群が10時間かけて滝の崖をよじ登る。伝説は本当だった。

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(著)

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Image credit:Pacifique Kiwele
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 体長4cmの小魚「シェルイヤーフィッシュ」が大群で、高さ約15mの切り立った滝の崖を10時間近くかけてよじ登ることが科学的に確認された。

 コンゴのルブンバシ大学の研究チームが2018年から2020年にかけて現地調査を行い、その一部始終を写真と動画に収めた。

 魚がひれの突起を岩に引っかけながら水流に逆らって崖を登る姿は、50年以上にわたって地元で語り継がれてきた伝説が、ついに事実だったことを証明するものだった。

 この研究成果は『Scientific Reports』誌(2026年4月2日付)に掲載された。

参考文献:

コンゴ固有の小さな淡水魚「シェルイヤーフィッシュ」

 シェルイヤーフィッシュ(Shellear fish)の正式な学名は Parakneria thysi といい、コンゴ民主共和国を流れるルフィラ川上流域にのみ生息する固有種の淡水魚だ。

 クネリア科(Kneriidae)に属し、最大でも体長約5.1cmにしかならない小さな魚で、水温18〜22℃の熱帯の川底近くを泳ぐ生態を持つ。

 今回の研究で滝登りを記録されたのは、そのなかでも体長37〜48mmの若い個体たちだった。

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断崖絶壁の滝を上るセルイヤーフィッシュたち Image credit:Pacifique Kiwele

50年間語り継がれた伝説が科学的事実に

 シェルイヤーフィッシュが滝を登るという話は、コンゴでは50年以上にわたって語り継がれてきた。しかし長い間、科学的な裏付けはまったくなく、伝説の域を出ることがなかった。

 その謎を解明すべく、コンゴのルブンバシ大学の生物学者、パシフィク・キウェレ・ムタンバラ氏は、ベルギーの王立中央アフリカ博物館の魚類学者エマニュエル・フレヴェン氏らとともに研究チームを結成し、2018年から2020年にかけてウペンバ国立公園内のルヴィロンボの滝を複数回訪れ、シェルイヤーフィッシュの行動を直接観察した。

 研究チームが目にしたのは、数千匹もの小さな魚が岩肌に体を押しつけながら、高さ約15mの滝の崖をひたむきに登っていく光景だった。

 ムタンバラ氏は後に「まるで魚が垂直方向に泳いでいるようだった。想像を超えた光景だった」と語っている。

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Image credit:Pacifique Kiwele

カギ状の突起と体の揺れが生む驚くべきクライミング技術

 では、体長4cmにも満たない小さな魚が、どうやって垂直の岩壁を登れるのだろうか。

 シェルイヤーフィッシュは、胸びれと腹びれの裏側に鉤(かぎ)状の微細な突起を持っており、これを岩の表面に引っかけることで体を固定する。

 さらに体の後ろ半分を左右に揺らして推進力を生み出し、ゆっくりと上方へ体を押し進めていく。この鉤状の突起は「アンクリ」と呼ばれる単細胞構造で、岩との摩擦を高める役割を果たす。

 人間の登山靴の滑り止めに相当する機能を、魚が進化の過程で自らのひれに備えていたことになる。

 ただし、この登攀能力は体の小さな個体にしか備わっていない。

 体長が約48mmを超えると体が重くなりすぎて、岩にしがみついていられなくなるためだ。

 滝登りは、若く小さな個体だけに許された特別な行動なのだ。

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(b) 滝を登る姿: 体長約4cmのシェルイヤーフィッシュ が、体の後半部を波打たせて滝を力強く登る際、胸ビレと腹ビレを完全に全開にしている様子。(2020年4月27日、コンゴ川水系での調査にて撮影)(c) 胸ビレの微細突起: 胸ビレの第一鰭条(一番前のスジ)にある吸盤状の組織。その腹側表面に見られる「アンクリ」と呼ばれる一細胞レベルの微細な突起。(d) 腹ビレの微細突起: 腹ビレの第一鰭条の腹側表面にある、(c)と同様の微細な突起。Image credit:Scientific Reports (2026). DOI: 10.1038/s41598-026-42534-8

9時間45分の挑戦。休みながら、転落しながら、それでも登り続ける

 研究チームの計測によると、シェルイヤーフィッシュが高さ約15mのルヴィロンボの滝を登りきるまでにかかる時間は、平均で9時間45分にのぼる。

 その内訳は、実際に動いている時間が約15分、短い休憩が約30分、そして岩棚で行う約1時間の長い休憩が9回だ。

 つまり、登っている時間よりも休んでいる時間のほうがはるかに長い。

 魚たちは崖の途中にある水平な岩棚にたどり着くたびに立ち止まり、次の登攀に備えて体を休める。

 そうした岩棚には多くの個体が集まり、まるで順番待ちをするように休息をとる。

 苦労はそれだけではない。突発的に強い水流に当たると体が岩から離れてしまい、滝つぼまで落下してしまうこともある。

 そうなれば、また最初から登り直しだ。それでも魚たちは諦めず、何度でも挑戦を繰り返す。

なぜ命がけで滝を登るのか

 これほどの苦労をしてまで、シェルイヤーフィッシュはなぜ滝を登ろうとするのだろうか。

 研究チームはいくつかの仮説を挙げている。

 ひとつは、雨季に増水した川の流れによって下流へ押し流された魚が、もとの生息場所へ戻ろうとしているという考えだ。

 もうひとつは、滝の上流は食物をめぐる競争が少なく、天敵も少ないため、より良い環境を求めて移動しているという説だ。

 天敵の一例として挙げられているのが、シルバーバターナマズ(Schilbe intermedius)というナマズの一種だ。

 雨季になると滝のふもとに大量に集まり、シェルイヤーフィッシュを捕食する。

 命の危険を冒してでも滝を登る理由として、この捕食圧から逃れたいという本能が働いている可能性は十分にある。

 滝登りは主に雨季の終わり、4月から5月にかけて行われる。増水した川で大量の個体が滝のふもとに集まり、そこから一斉にクライミングを開始する。

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滝登りをする魚たちを待ち受ける人間の脅威

 この行動が逆に、シェルイヤーフィッシュを危険にさらしている。

 滝登りの前に大量の個体が滝つぼに集まる習性を利用し、蚊帳のような目の細かい網を使った違法漁業が横行している。

 集まったところを一網打尽にされてしまうのだ。

 この漁法は、稚魚を含むあらゆるサイズの魚を根こそぎ捕獲してしまうため、コンゴでは法律で禁止されている。

 さらに深刻なのは、乾季に農家が農作物への干ばつのために川の流れを上流で変えてしまうことだ。

 これによって滝の下流の川床が干上がり、シェルイヤーフィッシュが暮らす生息環境そのものが失われてしまう。

 研究チームは、ルヴィロンボの滝を国家的な自然記念物または生態系として指定し、法的な保護を強化することを求めている。

 同時に、この珍しい魚のクライミングをエコツーリズムの目玉として活用することも提案している。

 アフリカの野生動物といえばライオン・ヒョウ・サイ・ゾウ・アフリカスイギュウといった「ビッグファイブ」に注目が集まりがちだが、研究者たちはこの小さな魚の存在が、コンゴの豊かな生態系と保全の必要性を世界に伝えるきっかけになってほしいと願っている。

References: Fish climbing in the upper Congo Basin (Central Africa), first report for the shellear Parakneria thysi on the Luvilombo Falls

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この記事へのコメント 12件

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  1.  すげー、竜門を登る鯉どころじゃないっすね。 オーバーハングしてるところも越えていっちゃうの~? 伝説もやっぱり百聞は一見に如かずってやつで見れば一発でわかります。 目撃した人はほら吹き呼ばわりされたりしたのかななどとおもっちゃったり。 食われるよりはナマズのいない、あるいは少ない上流へ避難ってのは理解できるけどその労苦たるやビックリですよ

    • +16
  2. 日本だとヨシノボリとかウナギが若い時に滝登りをするみたいです

    • +10
  3. 検索するとアクセサリーの画像ばっか出てきた

    • 評価
    1. シェルイヤーフィッシュは商売にならないからしようがない

      • 評価
  4. 〜idaeで〜科になるから科が二重になってる
    正しくはKneria(語尾 a 削除)+idaeでクネリア科(Kneriidae)になる。

    • +1
  5. この魚たちはもうすぐ龍になるのではないか

    • +7
  6. なんで今までわからなかったんだろう
    動画はもちろん写真なんかはずいぶん前からあるのに
    誰も撮らなかったのかな
    それとも撮る機会がなかったのか

    • 評価
  7. ボウズハゼの滝登りもけっこうすごいよ

    • +2

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