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イカ類は1億年前の深海で誕生し、大量絶滅を生き延び多様化した

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(著)

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ヒメイカの一種 Image credit:Keishu Asada CC BY-NC-ND
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 イカ類の起源は深海にあり、1億年前の白亜紀に誕生していたことが判明した。

 沖縄科学技術大学院大学(OIST)などの国際研究チームは、最新のゲノム解析によって、イカ類が1億年前に主要なグループへと分かれ、巨大隕石の衝突を深海で回避した後に、爆発的な多様化を遂げた進化の過程を突き止めた。  

 この研究成果は『Nature Ecology & Evolution』誌(2026年3月30日付)に掲載された。

参考文献:

イカ類の共通の祖先は約1億年前に深海で誕生した

 体の色を自在に変える皮膚や、ジェット推進による高速移動など、イカ類は独特の能力を持つ生き物として、長年にわたり科学者の関心を引きつけてきた

 しかし、イカ類の進化の歴史をたどる試みは、化石記録が少ないことや、複雑な遺伝情報の解明が困難であったことから、これまで不明な点が多かった。

 沖縄科学技術大学院大学(OIST)とイギリスのウェルカム・サンガー研究所を中心とする研究チームは、最新の全ゲノム解析を用いて、10本腕を持つイカ類(十腕形上目)の進化の歴史をモデル化した。

 その結果、イカ類の共通の祖先は約1億年前の白亜紀中期に、すでに深海で誕生していたことが判明した。

 2025年に北海道大学が発表した「デジタル化石マイニング」による研究では、白亜紀の海がイカ類で溢れていたことが物理的な化石から証明されていた。

 今回のゲノム解析は、その事実を遺伝子の側面から裏付けた形となる。

 化石という「実物」と、ゲノムという「設計図」の両面から、イカ類が1億年前にはすでに地球の海で大きな勢力を持っていたことが改めて証明されたのだ。

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ブレナーミミイカの新種、新種のEuprymna brenneriは2019年、沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究者によって発見された。Image credit:Jeff Jolly CC BY

深海のシェルターで大量絶滅を生き延びた

 今から約6600万年前、巨大隕石の衝突によって地球上の生物の75%以上が姿を消した「K-Pg大量絶滅」が起きた。

 このとき、海面付近は激しい海洋酸性化(海水が酸性に傾き、殻を持つ生物が溶けてしまう現象)に襲われ、多くの生物にとって生存が困難な環境となった。

 しかし、イカ類の祖先は水深の深い「深海」を拠点にしていたため、この環境変化の影響を回避することができた。

 深海にはまだ十分な酸素が残っており、水面付近の急激な変化から守られた「レフュジア(避難所)」の役割を果たしたからだ。

 この深海への適応こそが、恐竜が絶滅する中でイカ類が生き残り、現代まで系統を維持できた要因である。

爆発的な進化を説明する「進化の導火線」

 大量絶滅の後、地球の環境が安定し始めると、イカ類は再び浅い海へと進出した。

 かつて他の生物が独占していたサンゴ礁などの生息空間が、絶滅によって空白になっていたからだ。

 ここで見られた進化の形は、科学用語で「進化の導火線(ロングフューズ・モデル)」と呼ばれる。

 これは、新しい生物のグループが誕生した時期(着火)と、その種類が爆発的に増えた時期(爆発)の間に、長い空白期間があるパターンを指す。

 イカ類の場合、1億年前に「主要なグループへの枝分かれ」が起きて以降、数千万年の間は目立った変化がない期間が続いていた。

 しかし、大量絶滅からの回復期というきっかけを得て、一気に「種の多様化(爆発)」が進んだのである。

 こうして、現在の多種多様なイカやコウイカの仲間たちが形成された。

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一般的なコウイカ Image credit:Keishu Asada

ゲノム解析が解き明かすイカ類が持つ能力のルーツ

 今回の研究において、進化の系統樹をより強固なものにする大きな足がかりとなったのは、らせん状の殻を持つ深海生物「トグロコウイカ」のゲノム解読だ。

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精巧なトグロコウイカの殻は、人の爪先ほどの大きさ。他の頭足類とは異なり、この殻の構造は失われずに保たれてきた。Image credit:Catherine Hodges/OIST

 トグロコウイカは、現生のイカ類の中でも極めて特殊な系統であり、その遺伝データが得られたことで、イカ類全体の進化の道筋における主要な空白が埋められたのである。

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トグロコウイカ Image credit:Dr. Victor Tuset

 この精度の高い系統樹(進化の家系図)は、今後の遺伝子研究において、信頼性の高い「比較の土台」となる。

 たとえば、「高度な擬態能力を持つ種」と、進化の枝分かれで隣接する「擬態能力を持たない種」のゲノムを精密に比較することが可能になった。

 これにより、どの遺伝子が擬態という革新的な能力を生み出したのかを特定するための、より詳細な研究が進むことだろう。

References: Rapid mid-Cretaceous diversification of squid and cuttlefish preceded radiation into coastal niches

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この記事へのコメント 14件

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  1. シーラカンスみたいに浅瀬から深海まで広がった後に深海だけ生き延びてっていうパターンはないのかな?

    • +5
  2. トグロコウイカなんて生き物がいるのか!
    本当に古代生物を思わせるフォルムだ!

    • +7
  3. なんかカンブリアっぽいもんな
    いや時代がちょっと違うけれどなんとなく

    • +10
    1. 古生代にいたエンドセラスとかカメロケラスとかの
      巨大な頭足類はフォルム的にはイカっぽいね
      実際はタコとイカの共通祖先より前の生物だから
      特段イカに近いということもないけれど

      • +6
  4. スルメやタコ焼きを食せるのは奇跡的なことなのかも

    • +9
  5. 水圧に耐えるには殻をコンパクトにした方がよかったのかな。可変の色素胞も深海の闇に溶け込むのに役立っていたのかも。

    • +4
    1. 深海は光が入ってこないので、深海生物はだいたいは赤か白
      深海でも浅い場合は隠蔽のために赤色を付けますが、
      より深い場所だと色付けをする労力も放棄して白って感じ

      色素胞は浅い海で過ごせるようになってから獲得だと思います

      • +2
  6. 生まれた瞬間においしく食べられる性質持ってたのかな

    • 評価
  7. イカよおまえもか!
    2013年に日本の研究グループによって、マグロ、サバなどの仲間の祖先は、白亜紀末の大量絶滅を生き延びた深海魚だったことが明らかにされた。
    我々におなじみの海洋生物が、じつは深海に起源を持つというパターンは、まだ知られていないだけでよくあることなのかもしれない。

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