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ローマ軍を恐怖に陥れたケルト戦士のラッパとイノシシ頭の軍旗が良好な状態で発見される

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(著)

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ノーフォークで発見されたカルニクス Image credit: Norfolk Museums Service
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 イギリス東部ノーフォーク州の静かな農村地帯で、考古学の歴史を塗り替える約2000年前の貴重な遺物が発見された。

 古代ケルトの戦士たちが戦場で敵を震え上がらせるために打ち鳴らした伝説のラッパ「カルニクス(Carnyx)」と、部族の象徴である「イノシシの頭の軍旗」が出土したのだ。 

 これほどまでに良好な状態で、かつ両方がセットで見つかるのはヨーロッパ全体でも極めて稀なケースである。

 かつての戦場で繰り広げられていた、ローマ帝国に立ち向かうケルト戦士たちの情景が目に浮かぶほど見事な状態の遺物は、歴史の謎を解き明かす大きな鍵となるだろう。

開発予定地で行われた事前調査で2000年前の遺物が出土

 2023年、イギリス・ノーフォーク州のセットフォードから数kmほど離れた場所にある開発予定地で、建設開始前の考古学調査が行われた。

 この調査を実施したプレ・コンストラクト・アーキオロジー社のピーター・クロウリー氏は、作業開始前からこの場所に特別な何かが眠っているという直感があったという。

 その予感通り、紀元前50年から紀元50年頃のものとされる土の中から、貴重な遺物一式が現れた。

 主任調査員を務めるゲイリー・トリムブル氏は、これほど希少な品々が同じ場所から同時に見つかったことは、大陸規模で見ても非常に特別な事例であると説明している。

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青銅器製のイノシシの頭を模した軍旗(右)、奥にはカルニクス、左は盾の一部  Image credit: Norfolk Museums Service

敵を恐怖に陥れたケルトの知恵「音の兵器」の構造

 発見された遺物の中でも特に注目を集めているのが、ケルト人特有の巨大なラッパ、カルニクスだ。

 カルニクスは、ヨーロッパ中に広がっていたケルト系の部族によって広く使用されていた楽器である。

 この楽器は非常に薄い金属の板で作られており、長い垂直の管を持ち、先端にはイノシシや狼などの動物を模した開口部がついている。

 戦場では高く掲げられ、不気味な咆哮のような音を響かせることで、敵を心理的に追い詰め、味方の士気を高めるための道具として使われていた。

 修復を担当するジョナサン・カー氏は、今回見つかったカルニクスが吹き口から先端まで無傷で揃っており、ヨーロッパで発見された中で最も完璧な状態であると述べている。

 2000年もの間、地中にあった金属の板は非常に脆くなっているが、細部まで精巧に残されたデザインは当時の高度な技術を伝えている。

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角のある兜をかぶり、カルニクスを演奏するケルト戦士の姿を再現 Image credit:Kabuto 7 / Wikimedia Commons

イギリスで初めて出土した青銅製のイノシシの頭の軍旗

 カルニクスと共に、青銅で作られたイノシシの頭の軍旗(Standard)も発掘された。

 イギリスの地でこのような軍旗が発見されたのは今回が初めてのことで、ラッパよりもさらに珍しい発見だという。

 軍旗は戦場での集結点を示す印であり、ケルト系部族の誇りとして旗のように高く掲げられる大切な象徴だった。

 スコットランド国立博物館のキュレーターであるフレイザー・ハンター博士は、イノシシが当時の人々にとって非常に獰猛で強い動物であり、戦闘におけるシンボルとしてふさわしいものだったと分析している。

 この場所には他にも、盾の中央を守る5つの金属部品であるシールドボス(Shield bosses)や、用途が不明な鉄製品も含まれていた。

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青銅器製のイノシシの頭を模した軍旗 Image credit: Norfolk Museums Service

女王ブーディカ率いたケルト系イケニ族のものである可能性

 これらの遺物はケルト戦士たちのものだが、ケルト人という名称には注意が必要である。

 ケルトという言葉は古代ローマ人が支配圏外にいた未知の人々を指して使った呼称に由来しており、もともと特定の民族を示す正式な名前ではなかった。

 現在の歴史学では、ケルト人とは共通の言語や宗教観を持ちつつも地域ごとに異なる文化を築いていた人々の総称とされている。

 今回発見された遺物は、ケルト系の中でも、この地に住んでいたイケニ族のものである可能性が高いという。

 イケニ族は、紀元60年頃にローマ帝国の支配に対して大規模な反乱を起こした女王ブーディカが率いていたことで知られる部族だ。

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遺物を調べるジョナサン・カー氏 Image credit: Norfolk Museums Service

 歴史的価値が高く、かつ非常に脆い遺物を壊さずに詳しく調べるため、発見された一式は周囲の土をつけたまま研究室で精密なスキャンが行われた。

 今後はイギリスの法律に従い、審問を通じて公式に宝物として認定されるかどうかが判断される予定だ。

 ノーフォーク博物館サービスのティム・ペステル博士は、この発見が当時の人々のアイデンティティや、なぜこれほど強力な象徴が土の中に隠されたのかという謎を解き明かす比類のない機会になると期待を寄せている。

References: Labrujulaverde / BBC

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この記事へのコメント 8件

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  1. ゴッドハンドじゃなくてガチならめっちゃ凄いなw

    • +8
  2. 侵略と戦闘の歴史の遺物ですね。
    まさに、”Sī vīs pācem, parā bellum.”(シー・ウィース・パーケム、パラー・ベルム)を表している遺物だと思います。

    • +8
  3. 女王ブーディカのものかもしれないとかロマンすぎる

    • +4
  4. >ピーター・クロウリー
    >クロウリー
    ・・・・・・・・・

    • 評価
  5. 用途不明品は当時の昔の人にこれどうやって使うんですか?と聞いたら実践してくれそう
    時空を越えてやってみたい

    • 評価

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