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数世紀にわたり湖から発せられる謎の爆音「セネカの銃」の正体を科学が解き明かす

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セネカ湖 Photo by:iStock
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 アメリカ・ニューヨーク州にあるセネカ湖では、数世紀にわたって原因不明の爆音が響くと報告されてきた。

 地元では、まるでドーンと大砲を発したかのようなその音を「セネカの銃(Seneca Guns)」、または「セネカのドラム(Seneca Drums)」と呼び、神話や伝承の題材にもなってきた。

 この“セネカの銃”と呼ばれる謎の現象に、ついに科学が答えを出そうとしている。

セネカ湖から発せられる謎の怪音の歴史

 セネカ湖は、ニューヨーク州にあるフィンガーレイクスのうち最大の湖で、州内で最も水深の深い氷河湖でもある。湖の名前は周辺で生活していたアメリカ先住民のセネカ族に由来する。

 セネカ湖で爆音が聞こえるという記録は17世紀にまでさかのぼる。

 セネカ族はそれを「聖なる狩猟地を汚した戦士に怒る神の声」と信じ、開拓期の人々は「独立戦争で命を落とした兵士の霊が太鼓を鳴らしている」という伝承がある。

 19世紀には作家ジェームズ・フェニモア・クーパーが短編小説『湖の銃声(The Lake Gun)』でこの現象を描き、「自然界のどの法則でも説明できない」と記している。

 以下の動画はセネカ湖から発せられる謎の音を録音したものだ。

20世紀以降、科学的な解明が行われるが結論には至らず

 20世紀に入ると科学的な仮説が登場した。

 1934年、地質学者ハーマン・フェアチャイルドは、地下に閉じ込められたメタンガスが湖底を突き破って噴出し、水面で破裂する際に爆発音が生じるとする「地下ガス噴出説」を発表した。

 しかし当時は観測技術が乏しく、実証は困難だった。

 その後も地震説や雷鳴説などが提案されたが、いずれも決定的な証拠を示すことはできなかった。

 21世紀に入ると観測機器の精度が向上し、研究者たちは改めてセネカ湖の音の正体を探り始めた。

 ソナーによる湖底地形の測定やガス検出装置の導入により、音の発生源を探る試みが続けられたが、現象はあまりにも突発的で、どの説も完全には説明できなかった。

 長年説明のつかない謎の音とされてきたセネカの銃は、科学者を悩ませる存在となっていた。

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セネカ湖は水深の深さとアクセスの良さからアメリカ海軍がソナーの試験などで利用している Dough4872 / WIKI commons CC BY-SA 3.0

湖底に無数の巨大なくぼ地を発見

 そんな中、近年行われた湖底の詳細な調査によって、ようやくその謎を解く手がかりが見つかろうとしている。

 2018年から2024年にかけて、ニューヨーク州の複数の機関がセネカ湖の湖底をソナーで詳細に調べた

 もともとは、19世紀の蒸気船など湖底に沈む難破船を高解像度で記録する目的で始まった調査だった。

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この調査はもともと、1890年代の難破船を探すのが目的だった / Image credit:Canal Society of New York/Institute of Nautical Archaeology

 だがその過程で、南端の広い範囲に144個もの巨大な窪地(くぼ地)が点在していることが判明した。

 直径は数十mから数百mに及び、湖底はまるで月面のクレーターのようにえぐれていた。

 この構造は「ポックマーク(pockmark)」と呼ばれ、もともとは海底で見られるガス噴出による海底窪地を指すが、セネカ湖のような淡水湖でも同様の形成過程が確認されている。

 研究者たちは、この湖底の異常地形こそが、長年の謎であったセネカの銃と関係しているのではないかと考えた。

セネカの銃の正体は湖底から噴き出すメタンガス

 2025年、ニューヨーク州立大学環境科学・森林学部のティム・モリン准教授を中心とする研究チームが、コーネル大学の地質学者らと共同で現地調査を開始した。

 チームは湖底の複数地点から水と堆積物を採取し、メタンなどの地質性ガスの有無を分析している。

 これは、1934年にフェアチャイルドが提唱した「地下ガス噴出説」が、現代の観測技術によって90年越しに裏づけられつつあることを意味している。

 ガスは地中で長い時間をかけて圧力をため込み、限界に達すると湖底を突き抜けて一気に放出される。

 上昇した巨大な気泡が湖面で破裂する瞬間、衝撃波が低く響く音を生み出す。この現象こそが、何世紀にもわたり人々を驚かせてきた「セネカの銃」の正体である可能性が高いという。

 この研究はニューヨーク州環境保全局と水資源研究所の支援を受けて進められており、この後、最終的な分析結果の公表される予定だ。

 セネカ湖のように、原因不明の怪音が聞こえるという現象は世界各地で報告されている。

 科学者たちは、こうした音の多くを地殻変動や岩盤の破裂、天然ガスの噴出などの自然現象として説明しているが、すべてが完全に解明されたわけではない。

 セネカ湖の研究は、世界各地で響き渡る謎の「怪音」を理解するうえでも大きな手がかりとなるかもしれない。

References: Solved At Last: The Mystery of New York’s Burping Lake / Dec.ny.gov / Nauticalarch

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この記事へのコメント 20件

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  1. 想像の5倍ガッツリ爆音に聞こえたわ
    要は地球のおならか

    • +41
  2. 毎朝6時半に「ハッ!」とオッサンの声が近所から
    聞こえてくるんだけど姿は見えないから地下の
    メタンガスがオッサンの声に聞こえるだけなのか…。

    • +24
    1. うちは夜11時ごろにオペラが聞こえて来ます
      メタンガスの多様性

      • +12
  3. 湖面に居たら巻き込まれるのかな湖のおならに。

    • +8
  4. でもそれだと水面に大きな水柱が立ったり気泡が膨れ上がったりしないものだろうか?
    音だけで目で判るような現象は報告に無かったのかねえ?

    • +9
    1.  音は特徴的だからわりととらえやすい気がします。 たとえば水中マイクを仕掛けることで空気を伝わってくる音との音速の差から距離がわかると思います。 でもって、このマイクのセットを 3 セット用意して離れたところで記録すると発生場所が湖面のどの辺か特定できますね。 あとはいわゆるドラレコタイプのイベント(今回の場合は音)が発生して前後一分くらい?を保存って感じで映像は昼間だけ、音は夜間も含めてデータ収集できそうです。 なんてことを考えるとどれくらい手間(≒お金)をかけて調べたいかということになるのかなと。
       てっきり氷河湖に崩れ落ちた氷がドッポンみたいな音かなと想像しましたがホントに発砲音(似てるのは小さいのは爆竹、大きいのは花火)みたいな感じでびっくりでした

      • +2
    2. 音は瞬間だったとしても円形の波は湖面全体を眺めるぐらいの時間は残っていそうだよね

      • +4
    3. 何かあれば、釣り人が発見しそうなのにね
      >セネカ湖は釣り場として非常に人気で、トラウト類やサーモン、バスなどを釣ることができる[4]。

      • +2
  5. 最近自衛隊機が墜落した入鹿池。
    30年前に夜中にトランペットの
    音がきこえる怪現象があった。
    取水塔の上でトランペット吹いてる
    トランペット小僧である。
    セットでターボババアに似た
    ぴょんぴょんババアというのもいた。

    • +5
  6. 俺のおならもこんな音なら誰にもおならだと気づかれないのに

    • +6
  7. 超常的とも思える謎が科学の力で解明されていく…なんとも贅沢な瞬間に立ち会えている!

    • +8
  8. 解明はされてもメタンガスは二酸化炭素の何倍もの温室効果ガスだからな
    喜んでは居られないぞ

    • +2
  9. 爆音機(一定間隔で爆発音を発生させ、鳥獣から農作物を守る)の音に似てる
    でもこっちは着火してるわけではないのか

    • +1
  10. メタンガスなら、たまたま近くで焚き火でもしようものなら大爆発だ

    • +1
  11. 爆音の前にトリガーを引くような音も聞こえるけど
    どういう自然の予備現象なんだろうか

    • 評価
  12. メタンガスが噴き出す時の音なのか、引火して爆発した音なのか
    水面に大きな気泡が割れて出た音なのか
    細かい気泡の場合はそこを通りがかった船が突然浮力を失い沈没する現象がサルガッソーかどこかであったような気がする

    • 評価

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