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人類は今「進化の転換期」にいる。文化的適応による急速な進化

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 私たちは今、進化のルールそのものが書き換わる「転換期」に直面している。長い間、人類は自然選択と遺伝的変化によってゆっくりと進化してきた。

 しかし今や、医療、教育、テクノロジーといった文化の仕組みが、その役割を急速に肩代わりし始めている。

 アメリカ・メイン大学の研究者たちは、これを「前例のない進化の転換」と呼び、文化こそが新たな進化の駆動力であり、私たちの未来を形づくっていくと指摘する。

 もしこれが本当なら、人類の生き方も、生き残り方も、これまでとはまったく違うものになっていくかもしれない。

この研究成果は『BioScience』誌(2025年9月15日付)に発表された。

文化が遺伝子を超えた?進化の主役が入れ替わる転換点

 アメリカ・メイン大学のティモシー・ウェアリング氏とザカリー・ウッド氏は、人類が今「進化の転換期」の真っただ中にいると論じている。

 この転換とは、私たちの進化がもはや主に遺伝子ではなく、文化によって導かれるという、大きな構造変化を意味する。

 彼らが言う「文化」の定義とは、芸術や生活様式といった狭い意味ではなく、世代を超えて受け継がれ、共有される行動、知識、制度、テクノロジーなど、人間が築いてきた社会的な適応の仕組み全体のことだ。

 医療技術や教育制度、インターネット、民主主義のような仕組みも、すべて「文化的進化の産物」と見なされている。

 たとえば、視力の弱さという遺伝的な不利は、眼鏡という技術の助けで日常生活に支障なく適応できるようになった。

 出産に伴うリスクも、帝王切開や医療制度によって克服されてきた。こうした医療や制度もまた、人類が築き上げてきた文化の一部であり、進化の流れに大きな影響を与えている。

 ウッド氏は「文化は、遺伝子が決して追いつけない速さで進化を生み出している」と述べており、人類の適応の主役が遺伝から文化へと移りつつあることを強調している。

 つまり、人間は今や「どんな遺伝子を持つか」ではなく、「どんな文化を持ち、それにどう適応するか」によって生き延びる時代に入ったということだ。

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文化的継承と遺伝的継承は、同じように見えて実はまったく異なる仕組みで成り立っている。遺伝情報は物理的に複製され、子どもはそれを受け身で引き継ぐ。一方、文化は記憶として直接伝達されるわけではなく、行動などの表現型を通じて観察され、それを学ぶ側が自ら選び取って模倣することで継承されていく。つまり、遺伝は受動的だが、文化は能動的な選択のプロセスなのだ / Image credit:Waring and Wood.

進化の中心が文化的適応に

 文化が進化に影響を与えるという現象は、決して新しい話ではない。農耕の発明、都市の形成、宗教や政治制度の誕生など、人類は古くから文化の力によって環境に適応してきた。

 しかしウェアリング氏とウッド氏は、そうした文化的適応が、今や進化の中心になりつつあると指摘する。

 特に近代以降、医療、教育、通信、交通といった分野での文化的進化は、遺伝的進化をはるかに上回るスピードで進んでいる。

 人類が過去には何世代もかけて行っていた適応が、現代では数年のうちに制度や技術によって達成されてしまう

 こうした変化の加速が、文化による「進化の転換」の本質を示している。

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人類の進化において文化が果たす役割が強まることで、「継承」と「個体性」に関する二重の進化的転換が起きる可能性がある。その背後には、遺伝的進化を上回る文化の適応力と、文化によって組織された集団の力が互いに高め合うポジティブ・フィードバック(正の循環)が存在している。 / Image credit: Waring and Wood.

テクノロジーが進化の行方を左右する未来へ

 この文化進化の延長線上には、さらに新しい未来が見えてくる。ウェアリング氏とウッド氏は、人間がテクノロジーや制度といった文化的仕組みに生存を委ねるようになることで、個々の遺伝子が進化の主役でなくなる未来が訪れる可能性を示唆している。

 すでに、遺伝子工学、生殖補助医療、AI、バイオテクノロジーなどの先端技術は、人間が自らの進化に介入する時代の到来を予感させる。

 これらの技術は文化的なインフラがあってこそ成立しており、遺伝的適応よりも先に、技術的・制度的な適応が進む構造になっている。

 つまり、未来の人類は「進化する生物」というより、「進化を設計する文化的存在」になっていくのかもしれない。

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私たちが作る文化が、進化の未来を決める

 ただし、文化進化の加速が人類にもたらす未来は、必ずしも明るいものばかりとは限らない。

 ウェアリング氏とウッド氏は、「文化は常に前向きに進化するとは限らず、不平等や格差を助長することもある」と警鐘を鳴らしている。

 実際、世界には教育や医療、技術へのアクセスに大きな差が存在しており、その差が文化進化の恩恵を受けられるかどうかを左右する可能性がある。

 つまり、進化の主役が文化に移ったとしても、その文化が誰の手にあるかで未来の形は大きく変わる。

 彼らは今後、文化進化の速度や影響を数値的に測定するための数学モデルを開発し、長期的なデータ収集を行う計画だという。

 人類は今、進化の舵を自らの手に握ろうとしている。その進路がどこへ向かうのか、それを決めるのは私たち自身かもしれない。

References: Academic.oup.com / Researchers Say Humans Are In the Midst of an Evolutionary Shift Like Never Before

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この記事へのコメント 39件

コメントを書く

  1. う〜ん、生物としての進化と
    文化の発展は基本的に別物では?

    • +7
    1. 文化発展の仕組みと遺伝子進化の仕組みの類似性は、「どちらも競争が淘汰圧となり、より優れた者が生き残り次世代へ受け継がれる」として以前から語られてた
      ミーム(ドーキンス博士が提唱した原義の方)の話ね

      今回の研究は「技術発展により遺伝子への淘汰圧は失われ進化は止まったように思われるが、実は進化の主役がミームに移っただけだ」と言っている
      思い付きだけど、単なる思い付きでもないって感じ。数理モデルを組み立てるって言ってるので、それの検証で与太か真理か確かめられると思うよ

      • +7
    2. 「帝王切開が一般化して世代を経ると、生身なら淘汰されていた体質の人でもどんどん子孫を増やして、もし地球規模の大災害で文明が崩壊したとき 人類はもはや出産さえままならない身体になっている」とか、そういう感じの話ではないの?

      • +16
      1. 今回の記事の話は人間の進化の主役が生物的遺伝子からミーム(文化的遺伝子)に移っているという昔から言われてた話を、何とか証明したいねって話

        大きな太陽フレアなどで文明崩壊 → 人類絶滅ってのはあるかもしれないが他の大量絶滅要因と同程度のリスクかな

        • +1
      2. “AIの遺電子”って漫画で人工子宮が一般化した世界では
        「胎内で子供を成長させること自体が冒涜」みたいな話があった
        親のストレスや栄養状態に左右されずに、完全に管理された状態で
        胎児が成長できるならば、確かにその方がいいのかもしれない

        • +1
    3. 野外で遊ばないなど、「過度な清潔さ」が推奨される文化の下では、
      菌に暴露する確率が減るので、逆に菌に対する耐性は落ちると思う
      そしてわずかな菌で簡単に体調を崩すので更なる対策が必要となり
      最終的にはなんかに閉じこもって生活することになるかもしれない

      まぁ。実際に清潔にしすぎるせいでアレルギーが増えているという話はある

      • +5
    4. 文化と遺伝子、どちらが首輪に繋がれてるのか
      両方一つの鎖を介して首輪に繋がれてるという説もあるけど
      今、遺伝子という情報媒体とデジタル特にwebを連絡経路とした半導体基盤の情報媒体が競争状態になりつつある
      競争はいずれ妥協点を探し協力関係を築くか傾向があることが進化の歴史に記されている
      文化の進化速度がいかに速いとは言え、まだまだハード面での安定性に課題があるからこそ、遺伝子基盤の底力は甘く見れない
      最悪人類が滅びても、生命は再び勢力を増すだろう

      • 評価
  2. ロックマンの世界みたいに人間がロボの進化について行けず退廃し最終的に人間に限りなく近いロボに取って代わられる事も考えられる訳か。

    • +3
  3. この先さらに優れたものを生み出すだろうけどテクノロジーに期待するようになればそれは人間が不要になることだろうから人類が進化する前に絶滅するだろうね。

    • +4
  4. 遺伝子の乗り物だったのが今度はミームの乗り物になるって感じかな
    そのための前提としてまず最初に広めるミームが、識字能力や基礎教育、情報リテラシーのような「教育」なのかも

    • +5
  5. 文明や技術の発展を進化の一形態とするなら
    種として生き延びる事にはプラスに作用するが、
    幸福に作用するかは甚だ疑問だな、、、
    社会やデバイスの複雑化や情報過多の狭間で人格が
    疲弊している様に感じる。
    脳と言う生物的生存論理と社会環境への対応の
    ギャップで人格は中間管理職の様な矛盾に
    さいなまれている様にワイ個人は感じるね、、、

    • +7
  6. その文明に依存しすぎで人体機能は退化まっしぐら

    • +13
  7. 退化が始まっただけだな
    身体機能だけでなく、モラルや教育が低いほうが子孫を残しやすいんだから
    ヒャッハーな世界までもう秒読み

    • +9
  8. その進化が人の幸せにつながらんことを願ってやまないよぅ

    • +1
  9. どれだけ技術が進んでも巨大噴火、巨大地震や戦争が起きたら一夜で崩壊し力が正義になる

    • 評価
  10. 突然変異による環境適応によって遺伝子的に進化した種が現れるのにかかる時間に対し
    個々の個体が情報を伝達蓄積した結果として生じる文明は
    環境適応を圧倒的に短いスパンで実現するのは確か

    身体能力を拡張したり、病気を克服したり
    本来は数十万年あるいはもっと期間がかかる事を
    文明は100年足らずで実現してしまっている

    これは進化の革命と言ってもいい現象だが、この進化を続けるとすると
    そう遠くない未来、人類が生物であり動物であることが足枷となる日が来る
    もしも人類が動物であることを卒業する日が来たとするなら
    それは新たな上位の知的存在の誕生であると共に、人類が滅びる事を意味する

    • +7
    1. 人類が動物じゃあ無くなるってじゃあなんなのか。
      動かない生物と言う新たな種?
      AIに取って代わられるとも考えて見たが、、、

      • 評価
  11. 数百年前の産業革命に言われていたことを言ってるだけ

    むしろ近代は電気の発明や蒸気機関などの発明に比べて革新はなく、進歩は滞っている

    • -2
  12. 文明の進歩で人類は幸せになったか?
    結果的に労働時間が異常に増えて一部の人間のみに富が集中
    全世界の99%は不幸なのではないだろうか
    つまり文明は悪である
    猿のままのほうが幸せだったということだな

    • 評価
    1. 文明は悪は言い過ぎだと思うけど、、、
      数十年前と違い科学発展や技術進歩、政治や社会成熟が
      我々を幸福にする、という夢に多くの失望を感じる様に
      なった気はするね。
      効率化だと機械化・オートメーション化・IT化した分、
      人員が削られ一人にかかる業務がより苛烈になったね。

      • +6
    2. 狩猟採集生活のままだと全世界の99%は餓死か病死か捕食生物の餌になるよ
      そして100人以下の少数集団たちが広範囲にバラバラに分布して普段は干渉や交流しない生活(生活圏が被ると食料も資源も足りないから自然と適切な距離を取る)で知識や情報の共有が無い
      マンパワーも足りないから産業も工業も発展せず科学も医学も発展する余裕がない
      なんで石器時代を1万年も続けたか、そこから脱出できなかったかわかる? 「人が増えない(生きられない)」からなんよ
      控えめに言って不幸どころか地獄よこれ

      • +5
      1. 産業革命は確かに多くの人間を飢えの脅威から救いはしたけれど、同時に労働以外に割ける余暇、人生を楽しむ時間を奪ってしまった
        技術の発展が労働時間の短縮に繋がるかと思いきや、その分仕事量が増えただけ
        飢えの地獄と労働の地獄、どちらにも落ちない程々のバランス感覚が大切なんじゃないかと
        もし経済や技術の発展だけを目的とするなら、それこそ人間はいらなくなってしまう

        • +1
        1. じゃあ産業革命以前が人生を楽しむ時間があったか?っていうとそんな事は全然無い。
          生活に追われてそんな余裕ないんですよ。
          江戸時代の江戸市中とかはともかく、農村部だと朝早くから夜日が暮れてからも必ずなんらかの作業に追われる生活。
          むしろ娯楽や文化の発展という面では近代化が進んだ後のほうが娯楽普及率は上がっている。
          「昔は良かった」なんて幻想はやめましょう。 スローライフを神格化もするな。
          せめてやって大変さを理解してから何か言ってください。
          ていうかそんな楽しいものだったら田舎から人が居なくなったしないんですよ現実問題…。

          • 評価
  13. 平均すると人体の窒素の6割はハーバー・ボッシュ法由来。電気や動力に限らず現代人は化石燃料を食べるようになった生き物。それが早くも環境負荷をかけるようになって、生存のために次なる進化を求められている。現代文明が恒久的に定着するかどうかは危ういところだと思う。

    • +4
  14. 精神は無限に奥深い テクノロジーに影響されるのは表面だけ
    2500年前の釈迦 2000年前のキリストにさえ追い付けないのが現実

    • 評価
  15. 人間に限らない

    生物が適応を必要とする相手が「自然環境」から「文明(人工的条件)」にシフトしつつあるってだけであり、更に文明の変化が急激であるから、適応に追いつける個体と取り残される個体との落差が生じているに過ぎない

    それが幸福か否かというテーマは別の問題

    • +2
  16. 優生保護法が正しいとは言わんが
    淘汰が無くなった先にあるのは遺伝子の崩壊じゃないか?って思う
    それは退化とも違う、カオスや
    このまま進めば人は人の形すら保てなくなる

    • 評価
  17. 今後、今の美容整形位の気軽さで遺伝子操作が行われるような時代になったら、生物的遺伝子+ミーム(文化的遺伝子)ハイブリッドのまた新しい世界になるのだろうか?

    • +2
  18. 遺伝子って環境に適応するために多様性を持つことが正義なのであって、今の社会に適応できるかどうかが優秀な適応力かっていうのは違うんじゃないか?あくまで人間目線での優秀ってだけで。
    地球の歴史を見ると様々な脅威が降りかかってきたわけでそれらに対応すべくピンキリ性能を遺伝子さんは作り出したんだろ。
    「引きこもりだけが生き残る災害」のような人間社会では別に優秀とは言えないものが生き残る何かがあるかもわからんわけで、進化の遺伝子的には生き残れば正義、そこに社会への適応力はあんま関係ないんじゃないかと。
    優秀こそ正義なら優秀な遺伝子を複製すればいいだけなのに数多の生物がその手段を取ってない。偶然の滅びに対応するには人間目線での愚かや劣等という多様性も必要だ。
    遺伝子操作で現環境のみに最適化されるようになったらいよいよ滅びそうだよ。

    • +4
  19. ポリコレを推進したい方々ってどうしてこうもやり方がヘタクソなんでしょうね?

    むしろ獅子心中の虫なのでは?

    • -2
    1. >ポリコレを推進したい方々
      →なぜ急にポリコレの話を?

      >どうしてこうもやり方がヘタクソ
      いったい何を指している?

      >獅子心中の虫
      →えっ、この流れでそれどういう意味??

      見事にどの文節も意味が通らない怪文書。
      たぶんあなたなりの文脈があって言ってることなんだろうけど、その文脈を他人と全く共有できてないので、客観的に見た時に意味不明な文章になってる。
      あなたはコミュニケーションがヘタクソね。

      • +1
  20. 近い将来、必ず訪れる決定的な進化は「AIと人間の融合による電脳化」だ。
    スマホはチップになり、人間の脳と直結し、ネットに常時アクセスし、人類の行動の全てをアシストするようになって個体的な能力差がほぼなくなっていくだろう。
    個体の差異が極小化した時、進化はどのような方向に進むのだろうか。

    個体の能力の均衡とAIサポートによる『楽園化』は人間を徐々に弱体化させ、個体数も減少、ユニバース25のラットのように引きこもりと戦争ばかり始める個体群に二分されていき、やがて人間としては絶滅へ向かう。
    電脳化していなくてもその兆候はすでに現れている。

    一方で、「人間」であることを離れた一部の個体は、いわゆる神への階段を登り始め、早ければ今生きている人類も、その場に立ち会えるかもしれない。
    まさに文化が進化の決定的役割を果たす。

    • -3
    1. なんか打ち切りになる漫画みたいな話だな

      • 評価
  21. 遺伝子によって淘汰されてきた命も今は淘汰され難い文化にはなったけど
    社会の枠組みからはじかれると淘汰される文化ではあるね

    と、淘汰される側にいる立場としてそんな感想をもった

    • +4

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