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世界最古のミイラはエジプトではなく、1万年以上前の東南アジアと中国で作られていた

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(著)

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image credit:Pixabay
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 ミイラといえば、古代エジプトや南米が思い浮かぶかもしれない。だが今回、東南アジアや中国南部の遺跡から、1万年以上前の人骨に人為的なミイラ化の痕跡が確認された。これは、これまで知られていたどの事例よりも古く、世界最古のミイラと見なされる可能性がある。

 では、なぜこれまで見落とされてきたのか?その理由は、これらの古代文化で使われていたミイラ化の方法が、エジプトとはまったく異なっていたからだ。

 死者の遺体は長時間にわたり焚き火の煙にさらされ、じわじわと乾燥されていた。これは「燻す(いぶす)」という行為に近く、現在もニューギニアなどで見られる風習と共通している。

 今回の発見は、人類の死者への向き合い方と精神文化の歴史を大きく塗り替える手がかりとなる。

この研究成果は『Proceedings of the National Academy of Sciences』誌(2025年9月15日付)に発表された。

エジプトや南米よりもはるかに古い、1万年以上前の埋葬文化

 オーストラリア国立大学の考古学者、シャオチュン・ホン博士らの研究チームは、東南アジアおよび中国南部の11の遺跡から発掘された人骨に注目した。

 これらはベトナム北部、インドネシア、中国南部に点在する遺跡で、時代はおよそ4,000年前から1万2,000年前にさかのぼる。

 これまで、最古のミイラは約7,000年以上前の南米チリのチンチョーロ族のものとされており、古代エジプトのものは5,600年前とされている。

 だが今回の発見は、それらより数千年も古い。しかも、単なる自然な乾燥ではなく、人の手によって加工された痕跡が確認されたことで、ミイラ化の意図があったと見られている。

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これまで世界最古とされていた南米チリ、チンチョーロ族のミイラ

煙で乾燥、屈葬、切断痕、意図的なミイラ処置

 これまで中国や東南アジアの見落とされてきた最大の理由は、使われていたミイラ化の技術が、現代人のイメージとは大きく異なっていたからだ。

 研究チームは、人骨の一部に高温処理や煤(すす)の付着、部位ごとの異なる熱変化を発見した。さらに、骨には鋭利な道具で切られたような痕も見つかっている。

 分析には、骨に500度以上の高温が加わった痕跡を検出できるX線回折(XRD)と、比較的低温による変化を捉えるフーリエ変換赤外分光法(FTIR)が用いられた。その結果、64サンプル中の約84%に熱による加工の形跡があった。

 また、多くの遺体は胎児のように体を丸めた屈葬の姿勢で、しっかりと縛られた状態で埋葬されていた。これらの特徴は偶然ではなく、何らかの意図をもって行われたと考えられている。

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中国広西チワン族自治区で発見された約9,000年前に中年で死亡し、煙でミイラ化された男性の遺体  / Image credit:Yousuke Kaifu and Hirofumi Matsumura

現代のニューギニア高地に残る風習との共通点

 このミイラ化の手法は、現在もパプアニューギニアのダニ族などに見られる「煙による死者の保存」と非常によく似ている。

 ダニ族の文化では、死者の体を縛り、数週間から数カ月にわたり焚き火の煙で乾燥させ、その後は屋外に展示して先祖と共に過ごす。

 研究チームは、このような風習が1万年以上前の東南アジアにも存在し、長い時間をかけて継承されてきた可能性があると指摘している。

 これにより、パプア、オーストラリア、そしてアジア大陸をまたいだ文化的つながりが浮かび上がってくる。

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中国南部で見つかった完新世初期〜中期(約1万〜6000年前)の人類の埋葬例。この図には、広西チワン族自治区にある貝塚遺跡、南寧市のフイヤオティエン(Huiyaotian:A=M14、B=M19、C=M20)と、ロンアン(Long’an)のリーユーポー(Liyupo:D=M23、E=M24、F=M28)から出土した6体の人骨が示されている。すべての個体は屈葬(体を折り曲げた姿勢)で埋葬されており、そのうち数体(AとE)は極端に折り曲げられた「過屈葬」の姿勢をとっている(AとEは男性、B〜DとFは女性) / Image credit:Hung et al., PNAS, 2025

ミイラは死者とのつながりを保つための「橋」だった

 死者を単に処理するのではなく、保存し、共同体とのつながりを保とうとする精神性が、煙を使ったミイラ化の背景にある。

 今回の研究は、縄文時代の日本や東北アジア、西オセアニアにも同様の文化的痕跡があった可能性を示しており、今後の比較研究によってさらに広い範囲での共通性が見つかるかもしれない。

 研究者たちは、「煙で保存された遺体は、時間や記憶を越えて祖先とつながる手段として重要な役割を果たしていた」と述べている。

References: Oldest Human Mummies Discovered, And They're Not What We Expected

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この記事へのコメント 19件

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  1. 埋葬に関する共通の精神文化が汎東アジアに広がっていたのなら、双方向的な人的交流はあったのかとか気になる。

    • +9
    1. スンダランドの消滅が関係していそうかと思ったけど
      スンダランドの消滅が1.2万年前~4,000年前にかけてなので
      文化の伝播自体はそれ以前に行われていそうだし、
      その周囲で普通に行われた埋葬儀式が、スンダランドの消滅による人々の分散により失われていそう

      • +4
  2. ミイラというか、燻製?腐りづらくはなるんだろうけど

    • +13
  3. (´・ω・`)・・・要するに燻製みたくしてたって事か。
    記事読む前どうせ自然発生的なミイラでしょとか勝手に想像してたけど
    いざ記事を見たらかなり高度な事してるね。
    何か驚いたわ。

    • +13
  4. 屈折させて縛るのは、死後硬直した時に死体が動くからじゃ?日本も昔は遺体が動かないように縛って桶に詰め込んでたはず
    ミイラとかピラミッドとか三星堆遺跡みたいな分かりやすい歴史はないけど、5000年前の石時計の遺跡群もあるし、もっと日本の縄文時代も評価されるべき

    • +9
    1. 遺体を長時間かけて全体的に燻すには横たえていると面積が広すぎて難しいんじゃない?
      燻製機も冷蔵庫みたいな縦長のがあるじゃん
      火元は小さく上に上にと上がる煙で燻すには屈葬の方がいいんじゃないかな

      • +7
      1. 死後硬直の後に、って意味なら筋肉が分解して硬直が解けるのでふにゃっと動く
        死後硬直の時に、って意味なら死後硬直は筋肉が残ったエネルギーを使って収縮することで起きるので(力こぶを作るとそこが硬くなるのと同じ)その時に遺体が動くことがある
        その辺のプロセスは大体起きる順序とかかる時間が決まっているので、刑事ドラマとかでお馴染みの「死亡推定時刻は何時間前で」みたいな話ができるんですな

        • +4
  5. 食人文化のある地域だと別の用途に思えてしまう

    • -4
    1. ブラジルだか熱帯の部族が、猿の燻製齧ってた映像を見た
      だから食料の保存が先で、死体の保存という流れでは?
      だってたまたま焚き火に下げた獲物が腐らないと発見することはあるだろうが
      たまたま死体を焚き火に下げることはないだろうから(荼毘にして生焼けもないだろ、たぶん)

      • +1
  6.  考えて見ると人間だけが埋葬するのかな。 道具を使うのはヒト種を含めたサル一般以外にも鳥など他にもいっぱいいるし、おそらく言語もほかの種もつかってるけど、火の使用と埋葬は明らかにヒト種だけかなと。 ワンコとか穴を掘れるし、仲間の死を悼んだりしてそうだけど埋葬する文化は持ってなさそうですね。
     エジプトだと復活するときのために遺体を保存という考えだったわけで、いぶして遺体をどういう風にしたかったのかなってのが意図が知りたいです。 今後の研究に期待してます

    • +3
  7. エジプトのミイラとは全く別物みたいだね?

    • +1
  8. どっちにしろ水分を抜くって優れた保存技術なんだな。

    しかも数千年単位の実績付き。現在の科学力で発明された保存技術も実績ではこのシンプルな手段に勝てんのかもしれん。

    • +7
    1. かつ節も煮干しもジャーキーも貝柱もミイラだもんね

      • +5
      1. 冷凍・解凍技術が発展してコールドスリープを希望する人が現れたように
        乾物を水に一昼夜つけておくと加工当時の新鮮な姿に戻るという現象は
        当時の人にとっては死後に対する希望の一つだったのではないでしょうか?

        • +1
  9. 中国はだだっ広くて乾燥地帯も冷涼な土地もあるからまだしも
    東南アジアなんて絶望的にミイラ作りに向いてない気候だもんねえ
    どういう意図によってなされたものにせよ、遺体を保存するのに燻蒸処理というのは凄く納得出来る話だ

    • +1

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