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ストレス解消?中国で大人のおしゃぶりが流行

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(著) (編集)

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 香港メディアの報道によると、中国で「大人のおしゃぶり」が流行中だという。

 なんで大人がおしゃぶりを?と思うかもしれないが、実は大人のおしゃぶりは、口に刺激を与えることで、ストレスや不安の解消に役立つと信じられているそうだ。

 「ストレス解消」「安眠」「禁煙に効果的」などを謳った大人用おしゃぶりは、新たなトレンドに躍り出たわけだが、専門家は、歯や口に悪影響を及ぼすとして警鐘を鳴らしている。

「大人用のおしゃぶり」が中国で大人気に

 話題の「大人用おしゃぶり」は、ショップによっては月に2,000個を売り上げるヒット商品になっているという。

 大人用のおしゃぶりは、子供用の物より当然ながら大きいサイズ。値段は1個10元(約200円)から500元(約10,000円)と幅がある。

 購入者のコメントを見てみよう。

  • 高品質で柔らかく、吸い心地も抜群です。呼吸を妨げません
  • 禁煙にとても役立っています。精神的な安らぎが得られ、禁煙期間中も落ち着きがなくなるんです
  • 一晩中、これを咥えて眠っています
  • 仕事でプレッシャーを感じると、ついおしゃぶりを吸ってしまいます。赤ちゃんだった頃の安心感に浸れるような気がするんです
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歯科医師や口腔外科医にはこの状況を危惧する声も

 だが、このトレンドを危惧する向きもある。

 専門家によると、長期間おしゃぶりを使い続けると歯が摩耗してしまうだけでなく、顎関節症を引き起こし、口を開ける能力が阻害されたり、物を噛む際に痛みが出たりする可能性があるというのだ。

 杭州師範大学付属病院口腔科の医師ゴン・チェン氏は、おしゃぶりの精神安定効果は完全に否定できないが、長期の継続的使用には注意が必要だという。

そのプラス効果を完全に否定することはできません。例えば、乳幼児にとって、おしゃぶりは精神を安定させ、心を落ち着かせるのに役立ちます。

しかし成熟した大人が1日に2~3時間、あるいは一晩中おしゃぶりを咥えていると、確実にあごに影響が出ます。

特に思春期や成人してすぐの時期には、顎関節症の原因となり、あごや歯に問題が生じやすくなるのです。

口呼吸の過程で、口の中の細菌は外気と接触します。常におしゃぶりを吸っていると、口の中が細菌の温床になってしまう危険があります

 さらに、物理的な危険についても言及する。

口腔粘膜に対しても脅威です。大人用おしゃぶりの素材やデザインは、成人の口腔環境に適していない場合があり、長時間使用すると粘膜損傷や潰瘍を引き起こす可能性があります。

また、就寝時の使用にも安全性の問題があります。おしゃぶりを口に咥えたまま眠る、呼吸が妨げられ、最悪の場合、窒息の危険があります

 四川省成都の歯科医師もその危険性を語る。

1日3時間以上おしゃぶりを吸っていると、1年後には歯の位置が変わって、かみ合わせに問題が生じる可能性があります

 さらに、眠っている間にパーツの一部を誤って飲み込んでしまう危険性も指摘されているそうだ。

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vimage credit:photoAC

「感情消費」の一環としてトレンド入りか

 実は最近中国では、最近「エモ消費」や「キダルト(キッズ+アダルト)消費」といった感情消費系の行動が、非常に活発になっているという。

 感情消費とは、商品やサービスを消費する際、購入者の感情的な満足感や共感を重視することだ。

 好きなキャラクターや推しに関するものや、ノスタルジーを感じるレトログッズ、子供が好むような可愛いアイテムなど、感情に訴えるグッズやサービスを好んで所有・消費したいという欲求が、社会全体で強くなっているのだという。

極度のストレスや克服できない問題に直面すると、人は無意識のうちに発達の初期段階に退行する傾向があります。おしゃぶりは幼児期の安心感と、快適さを象徴しているのです

 2024年の中国国内の「ストレス解消」グッズ市場は、なんと200億元(約4,000億円)規模を突破。これは前年比で15%増しの数字だ。

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 この状況を、浙江大学医学部付属精神衛生センター(杭州第七病院)精神科の胡希文医師は次のように分析している。

長年にわたるファッショントレンドの変化と相まって、大人用おしゃぶりの人気は現代人の過度のストレス問題を反映しています。

大人用のおしゃぶりも、こういったストレス解消グッズと同じ原理です。フロイト的な観点から見ると、これは典型的な心理的「退行」のメカニズムであり、本質的には現実のプレッシャーからの逃避です。

これは、幼児期に習得した噛む、咀嚼する、吸うといった口腔活動を用いて、不安を和らげたり、感情的な欲求を満たしたりすることを意味します

 胡医師によると、緊張するとガムや爪を噛む行為も、同じ原理なんだそうだ。さらに、この時期に需要が増えているのには、季節が関係している可能性も指摘している。

夏は気分調節障害が最も起こりやすい季節です。高い気温の影響を受け、人はイライラしたり怒ったりしがちです。

大人用おしゃぶりは確かに一部の人の不快感をすぐに和らげることはできるものの、頻繁に使用すると効果がなくなる可能性があります

海外からは「理解できない」との声も

 このニュースはSNSやメディアで世界中に拡散され、多くのコメントが寄せられている。

  • いや、変態かよ!
  • まさに「巨嬰(大きな赤ちゃん)」の国向きだね。何十年も前から、医者やパイロットとか、睡眠が不規則な人たちは使っていたらしいけど…
  • 人類はついにここまで来たのか
  • 冗談だと言ってくれよ…
  • 一時アメリカのティーンで流行ったことがあるらしい。ただ、使いすぎると前歯が押し上げられて歯並びが崩れるって話もあるよ
    • ヤク中の人が、ハイ状態で舌を噛まないようにするために使ってたんだよね。大人がおしゃぶりしてたら、まずそっちの文化と結びつけて考えちゃうと思うよ
    • 元祖レイブ時代のトレンドだよな
  • つまり、甘やかされて育った「小皇帝」たちの多くは、実際にはまだ赤ちゃんみたいなものなんだ。だから赤ちゃんとして扱えばいい
  • おそらく、多くの中国の赤ちゃんは、衛生上の理由から母乳や指しゃぶり、おしゃぶりを禁止されて、口唇期を急いで通過させられてしまう。そのせいで、自己慰撫(セルフ・スージング)スキルが未発達なままになるんだろう

 コメントには中国人と思われる人からのものも多く、「巨嬰」は、大人になっても精神年齢が赤ん坊のままの、いわゆる精神年齢が低い人を指す言葉だ。

 さらに「小皇帝」は、一人っ子政策時代の中国で甘やかされまくって育った子供たちのこと。どうやらこのあたりに、現代中国の特定の世代が抱える問題が垣間見える気もしてくる。

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image credit:photoAC

満たされない「リビドー」を満たすため?

 ちなみに口唇期とは、赤ちゃんが口に物を咥えて安心する時期のことである。0~1歳くらいとされており、フロイト曰く「口を通してリビドー(欲動、エネルギー)を満たそうとする」時期なんだそうだ。

 作業やゲームに熱中している時、手持無沙汰でボーっとしている時、何となく口さみしさを覚えることはないだろうか。フロイトによると、この感覚も口唇期に関係あることになるらしい。

 成都のある心理学者は、感情的なニーズが満たされないために、おしゃぶりに助けを求めている可能性があるとする。

本当の解決策は、自分たちを子供のように扱うことではなく、課題に正面から向き合い、解決することなんです

 ちなみに日本の通販サイトでも「大人用おしゃぶり」はたくさん売っていたりする。赤ちゃん用に比べるとお値段は多少張るが、それでも外食一回分程度だ。

 アリエクなんかを見るとさらに安い。精神的安定を求める大きなお友だちは、一度試してみてもいいのかもしれない

“成人安抚奶嘴”走红月销破千件!商家宣称能“解压助眠”“辅助戒烟”等,口腔专家提醒:长期使用有牙齿畸形风险!(光明网)#大象主播说

References: Adult pacifiers trending in China for stress relief and sleep; doctors warn of health risks / 成人安抚奶嘴走红,为何爱嘬这一口?

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この記事へのコメント 26件

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  1. 昔は噛み煙草、ガム
    今はフリスク、グミ
    で これか

    • +19
  2. タバコを吸う、ガムを噛む、飴をなめるなどで安心感を得るなんて話を聞いたけど
    これは見た目がしまらんねぇ

    • +10
    1. これ
      大人のおしゃぶりといえば昔からタバコと相場が決まっている

      • +8
  3. マイクロプラスチックが怖いので舐めたくない

    • -5
    1. マイクロプラスチックとはペットボトルやレジ袋などのプラスチック製品が、紫外線や波の力などで細かく砕かれたもの

      よく言われる電子レンジほどの振動波でもないし大丈夫じゃないか
      そもそも赤ん坊が咥えるものだし

      • +8
      1. 紫外線は日常生活のどこでも受けるし(レジ袋も物入れに流用したまま室内放置すると、数ヶ月~数年でパリパリに自然劣化する)、おしゃぶりや哺乳瓶の吸い口からのマイクロプラスチックも指摘されてはいるよ。哺乳瓶はそもそも、熱湯や消毒を加える性質上、ガラスでない場合、吸い口より瓶自体からの放出のほうがより問題視されているけど。

        • -7
    2. 身体への影響よりも、たぶん味がダメなんだ(涙)
      こどもが良く夏に食べるアイスキャンディ、ペプシコ?チューペットだっけ?パピコ?
      あれすら気分悪くなってだめ
      なんでみんな平気なんだ。。。

      • -3
    3. 私はビニール袋に直接、直接食品が入っているのに抵抗を感じます
      調理前のものならいいのですが…
      (ソーセージの袋詰めはOK 焼いたソーセージは駄目)
      なんか微細なビニール分子が体に入ると思い食欲がなくなるのです

      • +1
      1. 調理前も調理後も同じで変わんねーよ。食べる物無くなるから自分への言訳でしかねぇ。

        • +2
  4. なんとなくわかる
    爪を噛む、たばこを吸う、コーヒーを飲むなど、ストレス解消と口は関係してるよね

    • +11
  5. ストレスの多い生活に当たり前に耐えていかないといけない、という時点で、なんか、こう、間違ってる気がしなくもない
    老後働かずに生活したい、みたいな過度な欲が無ければ、ほどほどに平穏かつストレスない生活できんのかなぁ

    • +8
    1. とはいえストレス度の低い生活が実現したことなんて人類の歴史上一瞬だって無いからなあ。

      近代以前なんかそれこそ飢餓やら暴力やら命の危険レベルのストレスが当たり前の時代が何百万年も続いていたわけだし。
      近代以降に人権やらハーバー・ボッシュ法やらが発明されて、個人の福祉と先進国の食糧事情はだいぶ改善したけど、それはそれで近代人特有のストレスってのに見舞われるようになったんだし。

      たぶん人間は何かが改善しても今度は別の何かに必ずストレスを感じるように出来ているんだと思う。

      • +13
  6. 感情消費って、生活必需品以外はそういうものじゃないのか
    まるで今まで心が満たされない買い物ばかりしていたみたいに聞こえる

    • +9
  7. ひとつのネタで若者全体にレッテルを張って叩くのは特定の世代の問題じゃなくて
    あらゆる時代あらゆる土地が抱える問題だなあ

    • +9
  8. いかにもおしゃぶりだから違和感しかないけど、似たような効果がありそうなマウスピースにすればいけそうじゃない?

    • +13
  9. 見た目まで乳児向けに寄せてる辺り、単純にそのものの効果よりは幼児化願望用商品に近いのでは?という気がする

    • +13
  10. イライラ・そわそわ・手持ちぶさた解消、いわゆるフィジェット玩具とかの市場と共に伸びてくのかね?

    究極の安心・甘え・無責任を感じられる象徴的アイテムとして求められているのかも…

    • +6
  11. 実は「コエンマ」の名前が出るのを静かに観察していたのだが
    ここまでないな

    • +9
  12. 歯に危険があったりパーツ飲み込みの可能性あるなら他の物でストレス解消の方がいいのでは…

    • +3
  13. 『口唇に固着点がある』人はある程度いるが
    日本でのガムの売り上げの減衰を考えると減ってると思える
    だが中国はより退行したようだ
    これからますます話し合いなんて通じなくなるだろう
    要求が満たされないと即攻撃が口唇期性格

    • +5

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