
ところが詳しく見てみると、完全に別物であるようで、重要なポイントではまったく同じ建築手法を編み出していたことがわかるという。
神戸大学の佐賀達矢氏らが参加した研究チームは、その謎を解くべくミツバチとクロスズメバチの巣を比べてみた。
すると、進化の歴史は異なっていても、巣の欠陥と考えられていた異なる大きさの六角形を1つの巣盤の上に並べる問題を、それぞれ独自に全く同じ方法で解決していたのだ。
どちらも同様に、非六角形の部屋を組み合わせたり、六角形の大きさを調整したのである。
その結果を『PLOS Biology』(2023年7月27日付)で報告している。
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違う進化を遂げたミツバチとクロスズメバチに共通の問題解決策
ミツバチと社会性カリバチ(クロスズメバチ)が祖先種から分岐したのは1億7900万年も前で、同じハチでもかなりの遠縁だ。だからその巣もかなり違う。まず素材が別物だ。ミツバチはロウで巣を作るが、クロスズメバチは紙(パルプ)で巣を作る。
構造だって違う。ミツバチの巣は小さな六角形の部屋を縦に並べるように作るが、クロスズメバチは水平に広がるように部屋を並べる。
大昔に別々の道を歩き出した両者は、それぞれが独自に巣作りを進化させた。それなのに、どちらも六角形の部屋(ハニカム構造)を並べるという点ではまったく同じだ。
これは進化の素晴らしさを物語る偶然でもある。なぜならハニカム構造は、最小限の材料で強度と貯蔵面積を最大化するには理想的な形であるからだ。
ミツバチとクロスズメバチは、それぞれが独自にこの最適解にたどり着いたのだ。

ハニカム構造の巣の欠陥を同じ方法で解決した両者
だが、このハニカム構造を採用したために、ミツバチとクロスズメバチはとある難題にぶち当たることになった。それが「ハニカム構造に起因するタイル張り問題」だ。ミツバチとクロスズメバチは、子供の身分によって用意する部屋のサイズを変える習性がある。
働きバチの幼虫が育つ部屋は小さい。一方、次世代の女王とオスの幼虫、つまり子作りを担うハチたちには大きな部屋を与える。
すると、大きさの異なる2種類の部屋をどうにかして並べねばならない。
中には女王バチの部屋が働きバチのものより2.7倍も大きい種もある。これを六角形だけで効率的に並べるのは、かなりの難題だ。
そこで今回の研究チームは、ハチ10種を観察して彼がどうやってこの問題に対処しているのか探ってみた。
そして驚くべきことに、ここでもまたミツバチとクロスズメバチが同じ解決法にたどり着いていたことがわかったのである。

イレギュラーな部屋で数学的に正しく対応
両方のハチたちが考案した打開策は、六角形の部屋のほかに、五角形と七角形のイレギュラーな形状の部屋を用意するというもの。それは一貫してペアで作られ、働きバチの部屋には五角形の部屋が、女王バチの部屋には七角形の部屋が組み合わされていた。
この打開策は、大きさの違う部屋を作るミツバチとクロスズメバチ全種に共通していたという。
それだけはない。彼らの巣作りは、数学的にも整然としたものであるようだ。
研究チームが数理モデルで、部屋の大きさの差から、六角形以外の部屋をいくつ使うべきか予測してみたところ、ハチたちはまさにその通りの巣作りをしていたのだ。
ミツバチとクロスズメバチは、1億7900万年という悠久の時間を別々に進化してきた生き物だ。それなのに、それぞれ独自に同じハニカム構造を考案し、それによるタイル張り問題にまったく同じ方法で対処した。

進化の驚くべき合理性
これはまさに、進化の驚くべき合理性と言えるのではないだろうか?またこれは、中央集権的なコントロールのない集団システムが、いかにして柔軟な巣作りをするのかを示した事例でもある。
1つの構造物として完成されたハチの巣だが、それはたった1匹の建築家が設計したものではなく、何百、何千ものハチたちによって築き上げられた合作なのである。
References:Bees and wasps use the same architectural sol | EurekAlert! / Bees and wasps independently invent the same architectural tricks / How geometry solves architectural problems for bees and wasps / written by hiroching / edited by / parumo
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コメント
1. 匿名処理班
昆虫はヤバイ
奴ら宇宙から来てるよ
2. 匿名処理班
めっちゃ昔に別れたんだなぁ・・肉食になるのにどんな突然変異があったんだろう?あれ?ミツバチが先?後?どっちだ?教えて詳しい人
3.
4. 匿名処理班
1億7900万年前にミツバチは、どこから蜜を集めていたんだ ?
被子植物はまだ存在していなかった時代なのだが
5. 匿名処理班
分岐する前の共通祖先の頃からの習性じゃね?
6.
7. 匿名処理班
ハニカム構造は自然界においても様々なところで見られるまさに宇宙の神秘ですよね
8. 匿名処理班
収斂進化 ってやつ?
あ、クロスズメバチは
岐阜では食べますね、、
へぼめしとか秋に食べます。
9. 匿名処理班
ミツバチと社会性カリバチの違いって、哺乳類と有袋類ぐらい離れているのね
10. 匿名処理班
>>2
基本は汁を吸う植物食だったらしい。
植物→寄生バチ→肉食
ただ、ミツバチは肉食への進化後に再度、花粉や蜜を食べるようになったそうな。
白亜紀に顕花植物が増えたことがたぶん影響してる。
11. 匿名処理班
進化の生物学的合理性というより、数学的要請が同じ解答を導かざるを得なかったっていう物理学的な限界って話なのでは
12. 匿名処理班
一匹一匹が数学者の集団
13. 匿名処理班
地球外生命体とのファーストコンタクトも言語ではなく数学で意思の疎通ができると言われてるからこの世で物理的な構築物を成立させるのに数学はうらぎらない
14. 匿名処理班
人間もチンパンもゴリラもオランウータンも何故か鼻くそほじって食べるのと似てる
15. 匿名処理班
7角形と5角形の角数の合計は、6角形の2倍だからちょうど良くなるのは数学的に見なくともなんとなく判るよね
16. 匿名処理班
>>14
基本的には鼻呼吸なんでほじれる構造の奴は皆やってるはず
17. 匿名処理班
>>4
チョウチョみたいに密吸ってると思ってる?
18. 匿名処理班
人間は数学的解釈で理解して教え合うことができるけど、ハチは本能だけでこの作業をこなしているんだろうか。すごいとしか言いようがない(小学生並感
19. 匿名処理班
>>4
最初は蜜ではなく花粉とか食べてたのかな?
20. 匿名処理班
>>9
ミツバチよりアリの方がまだスズメバチに近いらしい
21. 匿名処理班
カリバチが肉食って幼虫だけだからな?
肉団子を作って幼虫に食わせるが、成虫は幼虫の出す分泌液が主食
遠征中は樹液で栄養補給する液体食
ムネとハラの間のくびれのせいで固形食は食べられないんだわ
どうようにクモも獲物に消化液を注ぎ込んで溶かした液体を吸う食性
22. 匿名処理班
>>18
全ての個体が本能で数学するって考えるとすごいエリート集団感だ
23. 匿名処理班
>>5
これだけだとその可能性は否定できないよね。
1億7900万年の共通祖先が既にハニカム構造を作っていて、巣の材料とか構造以外が独自に進化していったと。
24. 匿名処理班
>>18
クモの巣もそうだけど、割と簡単なプログラムで作れるらしい。
25. 匿名処理班
ウスタビガの繭の内部構造はすごいと思うわ
26. 匿名処理班
>>4
1億7900万年前に分岐したってのは
その時代にミツバチとクロスズメバチが
生まれたって意味じゃないのよ。
27. 匿名処理班
>>18
8bitマシン時代にBASICで作ってたな
28. 匿名処理班
>>18
ハチは巣に戻って仲間に道教えるぐらいは出来るからなぁ
ハチやらアリの仲間は底知れん
虫の世界はこいつらがほぼ天下取ってる
29. 匿名処理班
>>4
「ハバチ」っていうのがいてだね、幼虫は葉っぱ食べてます。この仲間は非常に多いです。農業/園芸害虫として有名なのもいっぱいいます。
その後肉食や花蜜食が別れたのかな?そこのところは詳しくないので専門家に説明をお譲りします。
30. 匿名処理班
>>21 へぇー!!知らなかった。
31. 匿名処理班
二億年前に分岐した2つの種が、それぞれ独自に六角形構造を巣の構造に採用したってことのほうが凄いと思う。
ところで "ハニカム" とは honeycomb(蜜蜂の巣) という意味だから「蜜蜂の巣の構造はハニカム構造だ」と言うのはほとんど何も説明してないトートロジーだと思う。
32. 匿名処理班
こういうのってちゃんと考えて作ってるのかな、やっぱり
自分はバカだから、蜂)ここやっぱちょっと狭くなっちゃったなぁ、まぁ閉じちゃお。五角形になっちゃったけどいいっしょ!
くらいの気持ちで作ってるのかと思った
33. 匿名処理班
これは・・別に特に考え無しでも 必然的にそうなっちゃう ような気が・・。
34. 7cg3
MCエッシャーの絵みたいに徐々に変形するんだ!