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古代都市「マチュ・ピチュ」の使用人は遠方から連れてこられた異民族であることが遺伝子分析で判明

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(著) (編集)

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 現在のペルーにあたる、アンデス山脈の尾根、標高2,430mに築かれた古代都市「マチュ・ピチュ」は、山すそから見ると遺跡の存在が確認できないことから、しばしば「空中都市」とも称されている。

 15世紀にインカ帝国によって築かれたマチュ・ピチュは大勢の使用人(召使い)たちによって管理されていた。

 そうした召使いたちのDNAを分析した最新の研究によると、彼らはインカの人間ではないことが判明したそうだ。

 彼らの出身地はアンデスの高地やペルー沿岸部で、インカ帝国によって征服され、貴族の世話をさせるためにマチュ・ピチュにまで連れてこられたらしい。

インカ帝国の古代都市「マチュ・ピチュ」

 アンデス山脈の標高2430メートルの高地に築かれた「マチュ・ピチュ」は、15世紀初頭から16世紀半ばまで南米アンデス地方を支配していたインカ帝国の遺跡だ。

 インカ帝国をはじめとするアンデス文明は文字を持たなかったので、マチュ・ピチュがなぜ作られたのか詳しいことはわからない。

 だが1438~1471年に在位したインカ帝国の皇帝パチャクテクのために作られ、王族や貴族の避暑地などとして使われたという説がある。

 5月から10月のシーズン中、マチュ・ピチュには最大750人の人々が暮らしていたが、その多くがこの都市を管理し、皇帝や貴族の世話をする召使いだった。

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photo by Unsplash

マチュ・ピチュには征服地から様々な民族が連れてこられた

 インカ帝国は南アメリカのペルーとボリビア(チチカカ湖周辺)を中心にケチュア族が作った国とされている。

 だが「ヤナコナ(yanacona/男性の召使い)」や「アクリャ(aclla/女性の召使い)」と呼ばれた使用人たちは、インカ人(別名:ケチュア人)ではなかったことが明らかになっている。

 たとえば、マチュ・ピチュでの過去100年にわたる調査では、1420年から1532年の間に亡くなった200人近い人々の遺骨が発掘されてきた。

 彼らが納められていた陶器がインカ様式ではなく、作りも簡単であることから、遺骨は身分が低いヤナコナやアクリャのものだと考えられている。

 そうした遺骨を生化学的に分析してみると、じつにさまざまな民族の人たちだったことがわかるのだ。

 こうしたことから、彼らはもともとインカ帝国によって征服された地で暮らしていた人たちで、皇帝への贈り物として連れてこられたのだろうと考えられている。

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召使いたちの出身地。アンデスの高地やペルー沿岸部の出身者が多い / Image credit: Salazar, L et al. Science Advances (2023); (CC BY-NC 4.0)

マチュ・ピチュの多様なDNAを確認

 今回、『Science Advances』(2023年7月26日付)に掲載された研究では、イェール大学の研究チームがDNAをもとにこうした仮説について検証している。

 分析されたDNAは、マチュピチュで発掘された34人分の遺骨から集めたものと、インカの首都クスコ北部にある聖なる谷「ウルバンバの谷」で集めた現代人・古代人のものだ。

 その結果、マチュ・ピチュは現代のアンデスの農村よりも、遺伝的にかなり多様であることがわかったという。

 さらに、マチュ・ピチュの召使いたちの出身地が性別によって違うことも明らかになった。男性の召使いのほとんどは高地出身だったが、女性は高地出身者だけでなく、さまざまな祖先がいるのだ。

 召使いの血縁関係を調べてみたところ、今回分析された遺骨のうち、親子と考えられるのはたった1組だけだったという。

 それは母娘のもので、すぐそばに埋葬されていた。母親はアマゾンの低地出身で、娘はアンデスの高地か沿岸部で育ったようだ。

 この親子以外、生物学的に関係があると考えられる遺骨はなかった。

 このことから、マチュ・ピチュの召使いたちは、村全体や家族で連れてこられたわけではなく、1人でマチュ・ピチュにやってきただろうことが推測できるという。

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photo by iStock

マチュ・ピチュは国際都市のようだった

 国立科学博物館の館長で、人類学者でもある篠田謙一氏は、「マチュピチュが当時重要な都市であったことを考えれば、アンデスの各地域から人々が集まってきていたとしても意外ではありません」と、第三者の立場からLive Scienceに語っている。

 篠田氏自身も以前、マチュ・ピチュ周辺で非エリート層の亡骸のDNAを調べたことがあるが、そのときはそれほど遺伝的に多様だとは考えられなかったという。

 だが今回分析された遺体は、1912年に発掘されてイェール大学に持ち帰られ、2012年になってようやくペルーに返還されたもの。そのため篠田氏らが分析していない遺骨なのである。

 今回の研究によって、マチュ・ピチュを管理していた召使いたちの出自や生活について新事実が明らかになったが、貴族たちに関しては、まだ何もわかっていない。

 今後、遺伝子から手に入るデータと考古学的・民俗学的な証拠を組み合わせることで、ありし日のマチュ・ピチュの日常がさらに解明されることを期待しよう。

References:Mitochondrial DNA analysis of ancient Peruvian highlanders – Shinoda – 2006 – American Journal of Physical Anthropology – Wiley Online Library / Machu Picchu’s servants hailed from distant lands conquered by the Incas, genetic study finds | Live Science / written by hiroching / edited by / parumo

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この記事へのコメント 13件

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  1. >彼らの出身地はアンデスの高地やペルー沿岸部で、インカ帝国によって征服され、貴族の世話をさせるためにマチュ・ピチュにまで連れてこられたらしい。

    >マチュ・ピチュの召使いたちは、村全体や家族で連れてこられたわけではなく、1人でマチュ・ピチュにやってきただろうことが推測できるという。

    真逆な事が気が付かないのか?

    • -16
    1. >>1
      ?別に征服したからって村ごととか家族ごととかで徴用する必要なくない?
      各家から一人ずつ若いやつ出してとか村から10人なとか色々あるじゃん
      征服地からごっそり人連れてっちゃったら滅んじゃってそこから年貢取ったりできんし

      • +13
      1. >>4
        >>征服地からごっそり人連れてっちゃったら滅んじゃって

        何気に考古学的にも鋭い指摘だと思う。
        年貢とともに人も徴用することで召使いにできるし人質にもなるね。戦力を削ぎ反乱を防いだかもしれない。
        地方の優れた技術を形式上平和的に得ることも可能だっただろう。

        • +4
    2. >>1
      贈り物なんだから渡して帰っただけやん

      • +1
    3. >>1
      「彼ら(使用人それぞれ個人)」が「(西欧のナイトの様に貴族に仕える祭祀的な栄誉を求めて)一人」かつ「立候補のような形式で連れてこられ」取り込まれた…と解釈することもできる。

      • +3
    4. >>1
      推測でしかないんだけど、戦利品として一度に大量の奴隷を分捕ったんじゃなく、征服した村に「年に○○人の奴隷を税として差し出せ」みたいな感じだったんじゃ?
      いや奴隷というより奉公人って言った方がいいかもしれないけど

      • +2
  2. その説、ちょっと待ちぴゅちゅ!な~ちゃって(;^_^A

    • +1
  3. 自由意志でやってきた出稼ぎや避難民かも知れんわけで、何でもかんで被差別隷属民にするのはどうかと思うが

    • 評価
    1. >>8
      身分制度が当たり前の時代に自由意志で来たはレアでは?

      • +2
  4. 戦国時代の人質的な、安全の保障となる人物だったのかもしれないね
    もっとも戦の戦利品の可能性が大きそうだけど

    • +5
  5. ただの平民でないなら、反乱が起きにくいように出身地をバラバラにして同郷でまとまらないようにした、というのはあるかも。

    • +8
  6. 奴隷は一家庭に一人でいいんですよ
    家に密着型で一生使えます
    全部知ってるわけですから多かったら反逆されますよ
    一致団結されたら襲われて勝ち目在りません
    そんなの奴隷を扱うのに常識ですよ??

    • 評価
  7. ユーラシアから渡ったわずかな人間が1万年も経たずに高地適応して民族階級分かれまくって征服したり連れ去ったりしてんの人類すげえってなるよな

    それにしても1コメやべえw

    • +2

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