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まばたきができる珍しい魚「ムツゴロウ」が、海から陸へ上がった人類の進化の謎を解くカギを握っている

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 ほとんどの魚は、目を閉じることはできても、まばたきをしない。だが、ハゼ科の「ムツゴロウ」は、まばたきをすることができる珍しい魚だ。

 生物学者によると、ムツゴロウのまばたきは、私たちの祖先が海から陸へと生活の場を変える過程で、どのように進化したかを知る貴重なヒントを握っているのだそうだ。

 『PNAS』(2023年4月24日付)に掲載された研究では、ムツゴロウのまばたきは私たち人間のまばたきと同じ機能を持っていることを明らかにしている。

 この事実は、約3億7500万年前に私たちの祖先が海から陸へと上がることを可能にした能力の1つが、まばたきだったろうことを示しているそうだ。

まばたきをすることができる水陸両用の珍しい魚

 私たちは普段、無意識にまばたきをしており、それをしていることすら記憶に残らない。だが記憶だけでなく、まばたきは化石にも残らない。

 なぜなら、目をつむるという動作はほとんどが軟組織の働きによるものだからだ。硬い骨などと違って、軟組織はすぐに腐敗してしまうため、滅多なことでは化石にならない。

 ところが現生の種であるムツゴロウは、まばたきの進化を探る貴重なヒントを与えてくれるのだ。

 ペンシルベニア州立大学のトーマス・スチュワート助教は、「まばたきという行動を独自に進化させたムツゴロウは、水から出て陸上で過ごす魚で魚で、まばたきがどのように、そしてなぜ進化したかを検証するチャンスを与えてくれました」と語っている。

 東アジアの干潟に生息するハゼ科の魚ムツゴロウ(Boleophthalmus pectinirostris)は、魚であるのに陸上でも活動できる珍しい生き物だ。

 水から出ても呼吸できるのは、皮膚や口の中に水を溜めておけるからだと考えられている。この力を利用して、干潟の泥の上を這うように移動することから、”歩く魚”と呼ばれることもある。

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photo by iStock

ムツゴロウのダイナミックなまばたき

 今回の研究のテーマはもう1つの大きな特徴、すなわちムツゴロウのまばたきだ。

 スチュワート助教らはそれを高速カメラで撮影して分析するとともに、解剖学的な仕組みをまばたきをしない近縁の仲間と比べ、その進化の秘密に迫っている。

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ムツゴロウのまばたき / image credit:Brett Aiello / Pennsylvania State University

 ムツゴロウのまばたきは、私たちのものに比べるとずいぶんダイナミックだ。

 その目は、カエルのように頭頂部から突き出ているが、まばたきをするときはグッと眼球を眼窩に引っ込める。

 すると、そこで「皮膚カップ(dermal cup)」と呼ばれる伸縮性のある膜におおわれ、目をつむったようになる。

 こうしたダイナミックなまばたきは、もともとあった筋肉が並び替えられ、作用線(力が働く方向を示す線)が変化したことと、皮膚カップという新しい組織が進化したことで可能になったものだ。

 それはダイナミックだが、長さ自体は人間のまばたきとほぼ同じだという。

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ムツゴロウのまばたき / image credit:Brett Aiello / Pennsylvania State University

ムツゴロウのまばたきの役割は人間と同じ

 ムツゴロウがまばたきする理由も人間と同じであるようだ。

 たとえば私たちがまばたきをする理由の1つは、乾燥を防ぎ、酸素の供給にも大切な役割をはたす涙で目をおおうことだ。だから目が乾けば、まばたきの回数が増える。

 今回の観察では、ムツゴロウもまた目が乾燥するとまばたきの回数が増えることがわかっている。

 ところがムツゴロウに涙を流すための仕組みはない。ではどうやって目を乾燥から守っているのだろう? その秘密は体と環境の合わせ技であるようだ。

 「私たちの涙が目の周りやまぶたの腺で作られるのに対し、ムツゴロウは皮膚から出る粘液と周囲の水を混ぜて涙の膜を作っているようです」と、シートン・ヒル大学のブレット・アイエロ助教は説明する。

 またムツゴロウが怪我から目を守るためや、目のゴミをとるためにもまばたきするかどうか確かめてみたところ、どちらも「イエス」だったそうだ。

 つまりはムツゴロウのまばたきは、人間やほかの四肢動物のまばたきと同様、「水分維持」「保護」「洗浄」の3つの機能をはたしているようだ。

Mudskipper Blinking

まばたきは陸に適応するための重要な進化だった

 最古の四肢動物と同じように、海から陸へと生活の場を移してきたムツゴロウの行動と体の仕組みを調べた今回の研究は、私たちの遠い祖先がどのように、そしてなぜまばたきを始めたのか理解するヒントになるという。

 海から陸に上がるためには、食べる仕組み、体を動かす仕組み、呼吸の仕組みなど、さまざまな体の機能を作り変えなければならなかった。

 私たちの魚の祖先とはまったく無関係に進化したムツゴロウが、私たちと同様のまばたきをするという事実からは、「まぶたを閉じる動作もまた陸上生活に適応するために必要な能力の1つ」であることがうかがえるのだそうだ。

References:The origin of blinking in both mudskippers and tetrapods is linked to life on land | PNAS / A blinking fish reveals clues to how our ancestors evolved from water to land / written by hiroching / edited by / parumo

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この記事へのコメント 12件

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  1. ムツゴロウさん転生しなんと生きてるじゃないか

    • -2
  2. 目を閉じることができる=普通にまばたきできる と思ってた
    けっこうびっくりした

    • +5
  3. 車のライトでまばたきする
    リトラクタブルヘッドライトってのがあった。

    • +1
  4. 10万年ぐらいしたらムツゴロウの中から完全に陸上型に進化する種が出てくるかもね

    • +6
    1. >>4
      魚食性の鳥類や陸上動物が絶滅すれば可能性があるけど現状空と海の天敵から逃れられる環境なのが干潟だから今後も干潟生物であり続けるでしょうな

      • +1
  5. いやいや有明海にはもっと進化した、地元の人は良く知っているけど、ほとんど陸上に上がっているムツロクロウというのもいるぞ。

    • +2
    1. >>6
      水害対策の面もあるから開門は難しいかもね
      佐賀の道の駅で元気に跳ねる姿を拝めるよ

      • +2
  6. これは目を引き込めるようになったのか
    それとも出せるようになったのか

    • +4
  7. カエルもやるよね
    水陸両用では必須アイテムなんでしょ?

    • +1

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