
ヒメフクロネコは小さな猫くらいの肉食有袋類だ。西オーストラリア州やノーザンテリトリーなどに10万匹ほど生息しているが、その数は急速に減少しており、絶滅の危機にある。
交尾をすれば個体数も増えるのでは?と思いがちだが度を越した性欲が命取りとなっている。オスは交尾に夢中になるあまり、睡眠不足で死んでしまうことすらあると、オーストラリア、サンシャイン・コースト大学の研究チームが報告している。
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絶滅の危機に瀕している>ヒメフクロネコ
有袋類であるヒメフクロネコの数が激減しているのは、オスの異常な性欲のせいではなく、外来種のオオヒキガエルが侵入してきたことが主な理由だこのカエルには毒があり、食べたり、攻撃したりしたヒメフクロネコは死んでしまう。
ほかにも捕食獣に襲われたり、生息地が減少したりしていることも、ヒメフクロネコを危険な状況に追いやっている。
Saving the northern quoll from cane toads
ヒメフクロネコが絶滅の危機に瀕している理由はほかにもある。オスのすごすぎる性欲だ。
個体数が減少しているのなら、交尾が好きすぎるオスの習性が生息数の維持に好ましいのでは?と思うかもしれないが、実はそうではない。
ヒメフクロネコのオスはなぜ寿命が短いのか?
メスは4シーズンにわたって繁殖するが、オスは寿命が短く1シーズンしか子づくりに参加できないのだ。野生下ではオスの寿命は約1年、メスで約2〜3年だという。オスは子づくりの後、ほとんどの個体が死んでしまうという。
一体なぜヒメフクロネコのオスは、やたらと寿命が短いのか?
サンシャイン・コースト大学のクリストファー・クレメンテ博士はこう述べる。
たった1シーズンでオスの健康が損なわれる何らかの原因があるのは確かです。それは睡眠不足ではないかと考えています

交尾に夢中になった結果、睡眠不足となり寿命が縮んでしまう
クレメンテ博士によると、げっ歯類にとって睡眠不足はとても危険なことなのだという。そしてヒメフクロネコのオスには、「体重減」「攻撃的行動」「命にかかわる無謀な行動」など、睡眠不足であると思わしき兆候がたくさん見られるのだそうだ。
寝不足になるのは、オスが我を忘れるほど交尾に夢中になるからだ。
オスは交尾に全精力を注ぎ込み、毛づくろいをしなくなる。おかげで体調が悪化し、寄生虫も増える。
それはメスとの比較でもわかる。オスはメスよりも睡眠や休憩の時間が短く、その一方で移動距離は長い。
例えば、研究チームがオス2匹を観察したところ、一晩で平均9〜10キロも移動したという。歩幅をもとに人間に換算すると、30〜40キロに相当する長距離だ。
休まないせいで、オスは警戒心が低下する。そうした状況が続けば、やがて回復不能なほどに疲弊する。
「オスは天敵の餌食になるか、車に轢かれるか、あるいは単に消耗して死にます」と、研究チームのジョシュア・ガシュク氏は説明する。

ワンシーズンに命をかけるオス
1回の繁殖期に全エネルギーを投じる繁殖戦略を「一回繁殖(semelparity)」という。ヒメフクロネコは一回繁殖を行うことで知られる最大の哺乳類だ。こうした研究は、オーストラリアとパプアニューギニアに生息するほかのほ乳類の寝不足の影響を理解する手がかりになるとのこと。
例えば、有袋類のキタオポッサムはやはり一回繁殖を行うが、ヒメフクロネコのように寝不足で死んでいる様子はない。
ところがタスマニアデビルは、体調を崩し、免疫力が低下することもある。
なぜそのような違いが出るのか? ヒメフクロネコのオスはその謎を解明するモデルとして有望な候補なのだそうだ。
この研究は『Royal Society Open Science』(2023年1月1日付)に掲載された。
References:Quoll males value sex more than sleep leading to death / Too much sex and not enough sleep is deadly for endangered marsupial | UniSC | University of the Sunshine Coast, Queensland, Australia / written by hiroching / edited by / parumo
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コメント
1. 匿名処理班
古典落語の定番、「短命」(「長命」とも言う)を思い出しましたよ。
2. 匿名処理班
ロックな生き方だぜ・・・
3. 匿名処理班
他の雄より早く多く雌を妊娠させる←後からその雌に他の雄が近付いても後から来た雄は遺伝子を残せない←結果繁殖全振り雄の遺伝子が生き残る
羽化直前の雌の繭に出待ちする蜂とかにも通じるものがあると思う
4. 匿名処理班
気持ちは分からんでもない
5. 匿名処理班
げっ歯類ではないのでは…?
6. 匿名処理班
小生欲モンスターかよ
7. 匿名処理班
よく分かります(;^_^A
8. 匿名処理班
一年に一回だけではなく、一生一度の繁殖期に命をかける最近流行りのサステナビリティと真逆を行く生き物なのな。
9. 匿名処理班
>>6
然り。小生、欲モンスターである
10. 匿名処理班
けっヒメフクロネコかよ。ていう煽り言葉を流行らそう
11. 匿名処理班
な?
12. 匿名処理班
同じ有袋類のアンテキヌスのオスも1回の繁殖シーズンで死んでしまう。原因としては繁殖期に男性ホルモンとコルチゾール(ストレスホルモン)が異常に上昇して、これが凄まじい性欲をもたらすのだが免疫はほぼ機能しなくなり病気に蝕まれて死んでしまう(ある意味腹上死とも言えなくはない)。
男性ホルモンには免疫力を低下させる働きがあるため、人間でも男の方が風邪を引きやすく平均寿命が短い原因にもなっている。
13. 匿名処理班
人間の場合、男性は寝ている間に作られるらしくそのせいか事後は眠くなるらしいけど、このネコ?リス?は無尽蔵なんだろうか
14. 匿名処理班
ヒメフクロネコ♂「我が獣生に一遍の悔い無しっ‼︎」
ってか。
男の生き様、見せてもらったぜ(T^T)
15. 匿名処理班
シモネタ好きだなあ笑
16. 匿名処理班
>>4
学生の頃オールで交尾とかしたよなw
17. 匿名処理班
三大欲求のうち性欲だけは明らかに「その個体の生命維持を目的としない」欲だよね。
この例のように、むしろ個体の死を推進しかねない。
それでも性欲を特化させるってことは、つまり「可能な限り子作りしたら、あとはメスの生存の邪魔にならないように(≒餌や安全な寝床の資源を競合しないように)死ね」ってことだけど……生存戦略ってすごいね。
エロいとかいう感想は全く浮かばない。むしろ「壮絶すぎんか?」ってなる。
18. 匿名処理班
個体数増えるならその生き方も有りだと思わんでもないが減ってるんじゃなぁ
それじゃ唯のバグじゃないっすか
19. 匿名処理班
可愛いなあ、猫とリスと鹿?ちょっとずつ混ざってる感じ
つぶらなお目目がたまらん
もっとゆったり生きれば良いのになぁ
20. 匿名処理班
そういう種ならしゃーない
21. 匿名処理班
>>17
自然界における"男なら死ねぃ"理論の究極系なのだろうか?
22. 匿名処理班
>>16
キミ、男子校だったよね…
23. 匿名処理班
鮭「・・・」
24. 匿名処理班
>>3
ただこれの問題はコミュニティーが小さくなると結局は近親相姦になって、正常か遺伝子的には問題ありに分けられて徐々にコミュニティーがさらに小さくなって、当然頭数が減っていくわな。
25. 匿名処理班
>>22
罰ゲームで草
26. 匿名処理班
かつてあった年末のみに必死で使われるプリントゴッコや
一瞬で寿命迎えるそのランプのような生き物だな
27.
28. 匿名処理班
壮絶 免疫力低下するのは知らなんだ勉強になりすぎるコメント
29. 匿名処理班
>>17
弱者の戦略だよね。ある程度強い動物ならオスがメスや家族を守る選択肢も出てくるけど。
30. 匿名処理班
>>18
確実に子孫を残すために短命でも良いと進化したが
環境の激変(外来種、棲息域破壊)でその戦略が通じなくなったということですね
31. 匿名処理班
つまりはただの性欲モンスターではなくて、人生一度きりの繁殖行為に全てを投じて死んでしまうという事か……
32.
33. 匿名処理班
前にすごい数のメスを妊娠させたモルちゃんがいたけど、モルちゃんは短命じゃないのね。
34. 匿名処理班
>>17
性欲が三大欲求だってのはここ十年くらいで言われはじめたことで、
もともとは「食欲」「睡眠欲」「排泄欲」だったはず
それを満たさないと死んでしまう欲
35. 匿名処理班
>>34
今三十台の自分が子供の頃から三大欲求に性欲が入ってたからここ十年って事は無いと思う
36. 匿名処理班
>>16
ああやってましたよ、徹マン
37. 匿名処理班
うわー1番無理
38. 匿名処理班
>>35
今38だけど子供の頃は排泄欲だったぞ
39. 匿名処理班
テクノブレイク。
40. 匿名処理班
リンクのタイトルを目にして
「ヒメフクロウって、それほど性欲が強いのか」
と勝手に誤認識したのは、私だけでしょう・・・。