
ある科学者は、そんなドーム状の”バブル(泡)”のような自然保護区、いわば「森林バブル」を火星に建設しようと提案している。それは興味本位の思いつきなどではない。
火星の「森林バブル」を実現できれば、地球外の自然保護区として動植物を守れるほか、いざという時の人類の避難場所や、食糧・原材料の供給源としても利用することができるという。
人類と地球上の生き物の未来を考えた上でのアイデアなのだ。
火星に東京ドーム5個分の広さのドーム状の地球外自然保護区
英国ブリストル大学工学部の土木技師であるポール・L・スミス氏は『International Journal of Astrobiology』で、火星に地球外自然保護区 (森林バブル) を構築する方法について説明している。突拍子もないアイデアに思えるかもしれないが、基本的なコンセプトはできている。
たとえば、火星の大気・気温・季節・放射線・天候・重力・利用可能な太陽光など、スミス氏は火星特有の問題を指摘した上で、その解決策を提示する。

火星に持ち運ばれるのは、セイヨウネズやカバノキといった植物や、土壌微生物、菌類、あるいはミミズやクモのような無脊椎動物など、火星に適応できそうな地球の生物だ。
そうした中に、鳥・魚・アライグマといった脊椎動物は含まれていない。自然な活動が望めない地球外環境にそうした動物を連れて行くのは、倫理的に好ましくないとの配慮ゆえだ。
そもそも、スミス氏の提案の狙いは、火星に地球の森林を完全コピーすることではない。
現時点で、地球の森を火星で再現するなど土台無理な話なのだ。それでも、予想外なやり方で機能する、新しい生態系なら作ることもできるだろう。
その広さは50 エーカーを予定しているそうで、東京ドームに換算すると5個強にあたる。

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80億人を超えた人類の行く末を見つめるために
この提案の中では、コストについてほとんど取り上げられておらず、スミス氏自身そのことを認めている。人一人を宇宙へ送り出すだけでも相当なお金がかかるのだから、さまざまな生物を火星に連れていき、そこで生態系を作ろうとすれば、どれほどの予算が必要になるのか想像もつかない。
それでもタイムリーな思考実験ではあるだろう。スミス氏が論文で述べているように、つい先日、地球上の人口は80億人を突破した。そんな私たちの暮らしが、自然に大きな負荷をかけていることは言うまでもない。
これに気候変動が加わる現在の状況を見れば、人類だけでなく、動植物の避難場所も探さねばと思いたくなるのも無理からぬことだ。
「設計者の仕事は大変なものだが、地球上の生物をこれからも生存させるには、課題を克服しなければならない」と、スミス氏は述べている。
References:Extraterrestrial nature reserves (ETNRs) | International Journal of Astrobiology | Cambridge Core / Should We Build a Nature Reserve on Mars? - Universe Today / written by hiroching / edited by / parumo
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コメント
1. 匿名処理班
か、火星の自然は破壊しても良いんだ?w
まあそうよね、自然なんて言うけど人間の都合のよい環境、の事よね。砂漠を緑化するのには環境団体も文句言わないもんな。
2. 匿名処理班
あの不安定で貧弱な磁場部分に作るの?人より先に?
机上の空論にもなってない気が、誰に提案したらまともの話きいてくれんだろ
3. 匿名処理班
「自然」ってなんだろう?
4. 匿名処理班
ごめん放射線、隕石を防ぐシールドのバブルがあるのね
は?
5.
6. 匿名処理班
そこから徐々に人間が住めるような環境に変えていくのかな
変えられるのか知らんが
7. 匿名処理班
シュワちゃんが入れるオバハン型メカの
開発もお忘れなく
8. 匿名処理班
火星の過酷な環境下に地球と同じような環境を整える手段を考える方が先じゃね
気温や気圧を地球と同じぐらいに出来たとしても重力までは操れないから
地球の1/3しかない火星に上手く適応できるかどうかも考慮しないとね
9. 匿名処理班
植物とか微生物だけならバイオスフィア2みたいな状況になっても生き残れそうだね
10. 匿名処理班
銃夢かな
11. 匿名処理班
まずは1000年規模で壊れないもしくは経年劣化しないガラスの開発が先にくるな。
12.
13. 匿名処理班
火星に地球の植物持ち込む時点で「自然」ではないから
「植物園」と言った方が正確やろな。
14. 匿名処理班
火星人「外来種の持ち込みは禁止です」
15.
16. 匿名処理班
ジャガイモでも植えますか
17. 匿名処理班
食料や資源危機を煽ってるのに宇宙開発なんて実態の不透明なものに割り当てられるリソースは無いだろ。
宇宙関連の金の流れを洗って欲しいもんだ。
18. 匿名処理班
ドームは二重のガラスで間にジェル状の水でも充填すれば放射線、隕石を防いで光は通すかな。
一番外側のガラスが隕石で壊れるのはしょうがないとして、ジェル状の水で防ぐ。
ただの液体だと外側のガラスが割れたときに流れ出すから。
想定外に大きい隕石が落下した場合も想定して、船みたいに内側はブロックを分ける必要ありそう。
どっちにしろそこまでして火星に作る必要性がわからないが。
19. 匿名処理班
将来、火星基地で人が健康的に住めるようにするための施設の一部と考えれば有用な思考実験じゃないかな?
20.
21. 匿名処理班
火星も地球も月も表面に住もうとするから大変。
いっそ地中都市を作ったらどうか。
重力は無理だけど放射線とか嵐には左右されないし、空調もしやすいかも?
費用は度外視。
22. 匿名処理班
まず月に数人くらい人を送れるようになってから考えればいい事
実現したとしても100年以上先の話だろ
23. 匿名処理班
地上にドーム作るより、くぼみのある地形に頑丈な屋根作ったほうが楽だと思う。森ビルみたいに太陽光を光ファイバーで送れば消費電力も削減できる。
24. 匿名処理班
これを作る技術とリソースがあるなら地球を再開発する方が遥かに容易でしょ。そも発想が方舟やら楽園思想やらから抜けきれてない。地球ほど恵まれた惑星の人口爆発や資源の枯渇「程度」を問題視するような文明には荷が重過ぎる。
25.
26. 匿名処理班
これ、SF作品でよくあるドーム型バイオスフェアだね
ただし建造してもうまくいくかどうかはわからんよ
現実に建造されたバイオスフェア上手くいかなかった
微生物のCO2排出が原因だったらしい。
まあデータが得られた時点でプロジェクト自体は
成功だったのですが
このプランだと正直上手く行くかどうか疑問
特に透明なガラス系のドームで覆うんでしょ?
隕石被害や放射線対策とかもあるし
それなら完全に地下空間で建造したほうが
良いと思うけどね
27. 匿名処理班
イーロン・マスクの事業に食い込むためか?
28. 匿名処理班
※8 ※24
バックアップってのは本環境と切り離された場所でないと意味がない
じゃないと本環境が壊滅した時にバックアップも巻き添えでおじゃんでしょ
火星植民の根本にあるのは、そういう地球の外にも人類の種を蒔いておこうって発想
もちろん地球環境の改善は喫緊の課題だが、長期的には地球外にバックアップもあった方がより安心
そしてテラフォーミングなんて一朝一夕にできるものでないんだから、
できるだけ早く技術開発に着手しておくのは悪いことではない
29. 匿名処理班
地球ですらまともに暮らせなくなった種族が火星で生きていくなんて無理だと思うよ
30. 匿名処理班
月のほうが近くていいんじゃない?なんで火星なのだろう
31. 匿名処理班
※18
そのクソデカいやつを作るのに何トンのガラスとジェルが必要なのか、いくらかかるのか、どうやって資材や建材を火星に送るのかって考えると机上の空論としか言えない。
32. 匿名処理班
まさにSF、ファンタジー、空想の話でしかないな。
成功できるとは思えないし、よしんば技術的に可能性が見えてきたとしても莫大な予算払って誰も行けない遠方に小さい植物園作る意味がない。
33. 匿名処理班
※1
火星に独自の生態系があるというなら、環境団体の言う事にも一理あるんだけどさ
少なくとも現状では火星に生物が生存していないと思われるのだから、環境破壊云々というのには該当しないんだよ
環境”破壊”とは、あくまでも住民(生物)が不利益を被る環境改変の事なんだからね
34. 匿名処理班
※31
スペースXとかのロケット開発状況を考えると、机上の空論と断じるのは早計だと思うがね
とにかく近年になって急激に宇宙開発がスピードアップしてるわけで、それを知らずにいつまでも20世紀末頃のイメージで語ったところで意味はないと思うぞ
35. 匿名処理班
※34
君はロケットのペイロードと費用の問題について少しでも知っているのかい?
36. 匿名処理班
昔NASAがシュミレートしたら細菌類の繁茂で酸素供給が追い付かなくなったじゃないですか