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去勢することを選んだ男性たちの歴史とその理由

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(著) (編集)

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 国際的な研究チームが、自らの意思で男性器の一部を切除す「去勢」手術を行った男性208人にインタビューを行った。

 その理由を尋ねたところ、回答者の約半数が「なりたい自分」を実現したいと回答した。また、約4分の1の男性は、農場に住んでいて、動物の去勢を見たことがきっかけになったと答えている。

 昔から去勢する男性は世界各国に存在した。中国の宦官や、イタリアのカストラートなどだ。ここでは去勢をする男性の様々な理由について見ていこう。

中国の宦官

 数千年にわたる中国の王朝時代のほとんどを通じて、陰茎や睾丸の一部を切除し「去勢」をする男性たちがいた。それは、皇帝つきの高位公務員「宦官(かんがん)」として奉仕するためだった。

 去勢をすれば、自分の跡継ぎができないため、権力を掌握して、己の王朝を築きたいとは思わないだろうと考えられていた。

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唐の皇太子、李賢の墓に描かれた宦官たちの壁画 / image credit:public domain/wikimedia

イタリアのカストラート

 こうした去勢は、ヨーロッパでも行われていた。特に有名なのがイタリアの「カストラート」だ。

 少年時の声を大人になっても保つため、歌手として選ばれた少年たちが、大人の声になる思春期を迎える前に去勢され、女性の高音域であるソプラノが出せるようにしたのだ。

 去勢することで、喉頭は少年時代のままであるが、肺は成人の肺になるため、強く張った響き、特有の声質、非常に広い声域をもつ。

 カストラートに関する記録は、1562年にまでさかのぼり、モーツァルトのオペラにはカストラートの為の役もあったが、ローマ教皇は1903年にカストラートを禁止した。

A modern castrato (NOT falsetto) ultra rare recording! Mozart Va, l’error mio palesa from Mitridate

現代の男性が去勢をする理由

 まれではあるが、今日の先進国に住む者の中にも、自らの意思で生殖器を切除する選択をする男性もいる。

 2016年から2017年の間に、国際チームの研究者が、208人の去勢者たちにインタビューし、わかったことを『Archives of Sexual Behavior』誌に発表した。

 まず問いかけたのは、去勢の理由だ。回答者のおよそ半分は、「なりたい自分を実現したかったから」と答えた。彼らは性を変えることには興味がなく、単に男性器を持ちたくなかったという。

 股間をすっきりしたいと答えた者もいれば、性別には興味はないので、ペニスは不要という者もいた。

 一方、インタビュー対象者のおよそ13%は、去勢することで性的に刺激されるという理由をあげている。逆説的だが、生殖器を失うことが、却って性欲に火をつけた結果になったという。

 その他の13%は、パートナーやほかの去勢者から、去勢手術を勧められたという。

 10%は、去勢による心理的なメリットを感じていて、精神を変化させるホルモンから解放されたと話している。

 これは、「去勢の平穏」と呼ばれ、性衝動が減り、攻撃的な反応が鈍くなると、おおざっぱに定義されている。

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photo by iStock

なぜ現代の男性は去勢をするのか?

 そもそも、なにが男性たちを去勢に向かわせるのだろうか。

 多くは漠然と、ホラー映画、書物、雑誌、インターネット、聖書などの”メディアソース”が原因だとしている。

「自ら去勢する人の大半は、敬虔なキリスト教徒の家庭で育っているため、聖書の中で”去勢”と出会った可能性がある」と研究者は指摘する。

 マタイの福音書19章12節には、「天の王国のために、自ら去勢した者たちがいる」というくだりがある。

 注目すべきは、去勢者の4分の1が農場に住んでいて、動物の去勢を目撃したことをおもな動機としてあげていることだ。

 「この回答の27.9%の去勢者が、家畜の去勢が一般的に行われる地方の農場で育ったという事実と一致しています。ちなみに、この割合は、アメリカ国の地方に住む人口のおよそ2倍です」

 5%以下という少数だが、性器のない男性のアクションフィギュアで遊んだことによって、影響を受けたという人もいるそうだ。

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photo by iStock

医療的な去勢

 自ら去勢を選ぶ男性の数はそれほど多くないが、北米の60万人もの人たちが、おもに前立腺ガンなどの医学的理由で、去勢せざるをえない状況にある。

 主要な男性ホルモンであるテストステロンは、このガンの拡大原因となるため、化学的(薬剤)や物理的(除去手術)によって、このホルモンの精巣からの放出を遮断することは、命を救うことに
つながるという。

 また、一部の国では性犯罪者に化学的去勢が施されることがある。タイでは、化学的去勢に応じれば、引き換えに刑期を短縮するという法案が承認されたそうだ。

References:Why do some men choose castration? – Big Think / written by konohazuku / edited by / parumo

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この記事へのコメント 45件

コメントを書く

  1. 宦官って後宮の女に手を出さない為だと思っていた

    • +30
  2. 日本国内で
    性別変更を目的に睾丸摘出手術を希望する場合
    手術を受けてから後悔しないように
    ものすごく手順踏むらしいね

    • +11
  3. 俺もトランスジェンダーでは無いけど去勢したいな
    性欲から解放されたい

    • +8
  4. 去勢してホルモンバランスが崩れて肉体的精神的苦痛に悩まされる人も多いのでは?

    • +11
    1. >>8
      カストラートはとんでもなく太ってたと聞いたことはある。

      • +10
      1. >>15
        そういや猫の去勢でも太りやすくなるよね

        • +11
    2. >>8
      女性の更年期障害のような症状が出るのはよくある話
      玉取ろうが何しようがホルモンの支配からは逃れられないんだよね

      • +4
  5. 性犯罪繰り返す奴は 玉取る世界的な法律作って欲しいわ・・

    • +37
    1. ※9
      睾丸を取っても性欲が収まるとは限らない。知人に事故で去勢と同じ状態になってしまった人がいるけど、性欲は普通にあるしエロいこともできる。

      なので同時に竿を切り落として物理的にデキなくしてしまわないと。

      • +7
  6. オレの弟は中学から女子生徒殴ったり店のショーケース割ったりで何度も警察沙汰起こしてたけど18くらいで自分から去勢すると言い出した
    10代の去勢は親の同意が必要だから両親はメチャクチャ悩んで思い詰めてたけど最後には同意して玉とった
    今はすごく穏やかに同性の恋人と過ごしてるけど本人は10代で玉取って本当に良かったと言ってる
    自分でも制御できない攻撃的な衝動を抑え込みたいという理由で玉とる人は結構いる

    • +41
    1. ※10
      10代でその決断力があったのは素晴らしいね
      異常な性衝動や攻撃性を自覚することと解決できることはもっと広まって欲しい

      • +15
  7. 俺もタマタマ取っちゃったわ
    ネットで調べてわざわざ東南アジアまで行って
    ちょっといけない方への性欲が高まりすぎちゃってて、どうせまともに結婚したり子どもを作ったりなんて縁のない話だったし力仕事してるけど今も全く困ったことはない

    • +27
  8. この記事では男の場合しか考慮してないけど、実は女性も一種の避妊治療や子宮頸がんなどの奥の手として子宮全摘とかあるんだよね。
    そして実際、性ホルモンはかなり人間の感情や成長に強い影響を与えていて、男女問わず生殖能力を捨てると、性ホルモンの分泌量を減らし、ストレスや感情の起伏が軽減されることも実験でわかってる。
    倫理的な問題が立ちはだかるけど、もし今後研究が進んで、当たり前に人工子宮とか体外受精とかが発達すればQOLを求めて去勢するという選択肢も現実的になってくる。
    男にとっては時に強姦事件に達するほどの性衝動を消し去ることが出来るし、女の場合も月経などがストップしてずっと生きやすくなるだろう。

    • +19
    1. >>13
      女の場合は、卵巣からホルモン出てるので子宮は関係ないのでは??🤔子宮とってもホルモンバランスの関係もあるから(わざわざ健康な)卵巣取ったりしないし…

      • +11
    2. >>13
      女性の場合は臓器摘出や閉経で性ホルモンの分泌が無くなると、
      逆に更年期障害とか体調不良や気分が不安定に悩まされることが多いから
      ホルモン剤(所謂ピル)を服用せざるを得なくなるけどね
      でも生殖の義務意識や月経から解放されるのはいいから
      技術が発達してなんとかなるといいなあ

      • +14
    3. ※13
      富士見産婦人科病院事件というのがありましたね。

      • +1
  9. よかったー
    子供の頃、ボーイソプラノで学年一番だった
    時代と場所によっては写生の快感を奪われた人生だったかも

    • 評価
  10. 日本は多くの制度を中国から取り入れたけど、宦官だけは入れなかったね、なぜなんだろう?

    • +7
    1. ※17
      動物の去勢も明治になるまで取り入れなかったので、去勢という行為自体を嫌ったんだろうね

      • +9
    2. ※17
      科挙も取り入れなかったから、取捨選択はしてる。
      (というか、あまりにも習慣が違って抵抗が大きいものは、根付かなかった?)

      • +4
    3. >>17
      中国の皇帝ほどの独裁思考を持つ人が出なかったからじゃないかね

      • -1
    4. >>17
       日本が中国に学び始めた時点で、中国では宦官の跋扈により世が乱れた例が既にいくつかあった。
       先例に学んだ結果、取り入れぬ方が良い制度だと判断したんじゃないかな

       畜産が未発達の日本においては、去勢という行為に馴染みがなく、家畜どころか人間を去勢することに対して、強烈な拒絶感もあっただろうと思う

      • +5
    5. ※17
      纏足も取り入れていないよ
      人体改造みたいのは日本人の感性と合わないのかも

      • +2
      1. ※49
        …といって、古代だと
        刺青・ピアス・抜歯や叉状研歯みたいなのも色々あったのに、
        大陸文化が流入して野蛮と見なされると、逆に廃れてる。

        耳飾りに至っては、中国にはあったのに日本では消えてる。
        (平安時代から女性は髪を下ろして耳が隠れるようになり、
         唐風装束では男性が耳飾りをする習慣は無かったから?)

        • +1
  11. そういえば最後のカストラートの人の歌声、悲痛すぎてやばいですよね…。
    特異な歌い方とはいえ、かなり精神的に来るものがあります。

    • +2
    1. >>21
      人生そのものが大変だったからね…

      • 評価
  12. 時々「性欲がつらい」と訴える男性がいて、それがどれほどのつらさなのか異性の自分にはさっぱりわからないけど、つらいならもっと積極的に治療をする方法があればいいよなあ……と思ってはいた。男性科=不妊のイメージが強いが、健康な人の性欲のコントロール法も気軽に相談できたらいいのに
    去勢か、そこまでは考えられなくても、薬で性欲を減じる治療法がもっと手軽なものになれば

    前立腺がんと男性ホルモンの関係に対しては、自分も女性ホルモンが強く関係するタイプの乳がんで手術経験があり、転移予防に女性ホルモンを止める薬を飲んでいるから同じようなものかも。この薬は子宮がんの可能性を微増させるので、命を守るために卵巣や子宮を摘出することも考えたことがある
    もちろんメリットとデメリットがあって、なかなか簡単に決められるものではないですが

    • +8
  13. 私は内服薬で機能そのものを停止させた。
    私の場合は性欲がめっちゃ邪魔だったから。
    本当取っちゃいたいけどそんな金ない。

    • +7
  14. 性欲に振り回されるというのは去勢してない雄犬を見るとよく分かる
    去勢すると太るのはテストステロンが減ることにより筋肉が落ちて代謝が悪くなるのと性欲の分も食欲に全振りするからという感じだった
    毛質がパピーの頃のようにフワフワになったのはびっくりした

    • +4
  15. 宦官は自ら切る人もいれば、捕虜の主に子供が強制的にされる事もあり、カストラートは貧困家庭が金のために子供を去勢+必ずしも美声に目を付けられた訳ではない
    ので、自主的に取った人と比較するには不適だと思うよ

    • +2
  16. ロシアにもスコプツィという性欲を罪悪視して去勢してしまうカルト教団があったなあ。

    • +4
  17. 家はお兄ちゃんが継ぐから僕は勉強して宦官になるんだって決意を表すために子供のうちにセルフカットした健気な弟がいる中国の昔話を読んだことある

    • +4
      1. ※40
        それは小説ですが実際にあったんですよ
        科挙の勉強に性欲が邪魔だ、と切っちゃった受験生が
        その後無事合格して(宦官としてではなく)官僚として宮中にあがっています

        • 評価
  18. 男の言う性欲に振り回されたくない、邪魔ってのは女で言う生理が邪魔と似た感覚なんだろうか
    子孫繁栄は尊く大事なことだけどその為の機能に振り回されず精神的にも肉体的にも安定した状態を保てるのは魅力だと思う

    • +4
  19. 宦官は常時少し小便が漏れている状態なので、小便臭いと聞いて吃驚した覚えがあるわ。

    • +1
  20. 家畜の去勢がきっかけで自分もしたってのは、去勢後の家畜の変わりよう(おとなしくなる?)を見て、自分も攻撃的な部分をなくしたいと思ったみたいなことなのかね?

    • +2
  21. ギャングスタニキはまだ生きているのだろうか

    • 評価
  22. こんなぴったりなサムネ画像が存在することに驚き。

    • 評価
  23. 去勢したい理由ざっとあげるとすると
    ・性欲が強過ぎて性欲に振り回される人生を送りたくないし、周囲にも迷惑をかけたくない
    ・男って時点で色々警戒される世の中が嫌だしその原因になってる自分の男性ホルモン由来の性欲や攻撃性が嫌い
    ・男性ホルモンによって鼻とか顎がデカくなると不細工になるから嫌だ
    ・12、3歳ぐらいで去勢して一生女子に可愛いって言われ続ける人生が良かった
    ・毛深いのが嫌い
    ・ドスの聞いた声が嫌い
    もし挙げるとするとこんなとこだと思う

    • +1
  24. 去勢したければ去勢すればいいという人がコメ欄にいるけど、日本だと母体保護法云々とかで性同一性障害の方が精神科医の診断とかを厳格に受けた上で性転換(去勢?)できるんよな
    つまるところ異性愛者とか性自認は男で同性愛者の人は容易にタマ取れないってこと
    まあ海外行けばできるかもしれんけど
    あとパイプカットなら配偶者いる人なら用意とかあるけどタマは取らないから去勢とは違うな、そして若い独身者はあんまパイプカットしたくてもできないっていうね

    ちなみに素人の知識だから違うかもしれんけど…

    • +1

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