
実はそのカギを握るのが「超低音」なのだという。しかも、実際に聞こえている必要すらない。
新たな研究で、電子音楽のライブの最中に低周波音を流すという実験を行った。その周波数は非常に低く、人間の耳にはほとんど聞こえない。それなのに来場者はノリノリで踊るようになったという。
カナダ、マクマスター大学の神経科学者ダニエル・キャメロン博士は、「低音は人を踊りたい気分にさせます。それは意識を超えたものです」と語る。
聞き取ることのできない超低音が踊りに及ぼす影響
キャメロン博士らは、これまでの研究を通じて、踊りたくなるような音楽には低周波数が多く含まれていることや、人は低音があるとそれに合わせて体を動かしやすいことを発見していた。だが、もしも人間の耳には聞こえないほどの低音だったどうなるのだろうか? また、そもそも実験室での結果が、現実世界でも同じように再現されるとは限らない。
そこで今回、学術誌『Current Biology』(2022年11月7日付)に掲載された研究では、カナダの電子音楽デュオ「Orphx」のライブを開催。
55分間の演奏中、特殊なスピーカーで低周波音を流したり、停止したりしながら、来場者の”ノリ"を動きを検出するヘッドバンドで測定した。
低周波音とは、一般に周波数100 Hz以下の音で、 低周波音のみが発生している場合、人間が知覚することは困難、音波の性質として他の周波数音と混在している場合に共鳴作用などで影響を及ぼす。

photo by Pixabay
超低音を流すと、踊る来場者が増加。
その結果、 低周波を流している間は、来場者の動きが平均11.8%増加することがわかった。つまり、より激しく、より大きく踊っていたのだ。ライブ終了後に実施されたアンケート調査によれば、来場者(51名)は音楽を身体で感じ、それによって踊りたい気分になっていたことがわかった。
だが、来場者には低周波音が本当に聞こえていなかったのだろうか? じつは聞こえており、そのせいでノリノリになっていただけではないのか?
そこで今度は参加者(17名)に、先ほどのライブの映像と、映像は同じだが低周波音が流れていない映像を観てもらい、違いを区別できるかどうか試してみた。
その結果、参加者はほとんど違いを区別できないことが明らかになった。
つまり、ライブの来場者は、本当に低周波音が聞こえていなかったのだ。それなのに、なぜだか踊りたくなっていたのである。

photo by Pixabay
耳に聞こえない音を皮膚や体内がキャッチする?
なぜ、まったく意識されていないのに、低周波音で踊りたくなったのか?キャメロン博士らによると、耳に聞こえない低周波音は、皮膚や体内の「機械的受容器」や、バランス感覚に関係する「内耳の前庭系」によってキャッチされている可能性が高いのだという。
英ダンディー大学の認知神経科学アン・カイテル博士は、低周波音の影響はそれほど大きなものではないが、驚くほど一貫しているように思えると、第三者の立場から説明する。
今後の研究課題としては、耳に聞こえていない音が脳に及ぼす影響の解明などが考えられるそうだ。
なぜ聞こえない音にも反応するよう私たちは進化したのか? それは本能のようなもので、古くから音楽と踊りと共にあった人類のDNAに刻まれているとでもいうのだろうか?
踊りたくなる以上の深淵なる真実がそこに隠されているのかもしれない。
References:Inaudible, low-frequency bass makes people boogie more on the dancefloor : NPR / Bass instinct: low notes really do get people dancing, research finds | Neuroscience | The Guardian / written by hiroching / edited by / parumo
追記(2022/11/14) 本文中の超長波を低周波音に訂正して再送します。
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コメント
1. 匿名処理班
ズン、ズン、ズン
2. 匿名処理班
低音をやたら強調されるとうるささが倍増して腹立ってくるのは私だけですかね…
3.
4. 匿名処理班
中尾彬の声聞くと何故か踊りたくなってたんだが謎が解けたわ
5. 匿名処理班
超長波を聞くと踊りたがるって潜水艦乗りや受信してる
基地関係者も毎日踊ってるのか
6. 匿名処理班
音楽って不思議だよな
陰キャの俺でも踊りたくなるもん
7. 匿名処理班
なにこれ面白い!と思って調べたらVLFって低域の電波で、音としてみるとめっちゃ高音域のことみたい
詳しい人、音の低音なのか電波の低周波のことなのか教えてー
8. 匿名処理班
踊りたくなるって言うか、体がピクつく時あるよな
ライブの振動って耳じゃなくて皮膚とかで感じてるから
映像みて区別つくわけないじゃんと思う
9. 匿名処理班
それでか。小島よしおがネタやる時のあの曲のイントロ聴くと、体が反応するのは
10. 匿名処理班
踊りたくなるというかいろいろブーストされてると思う
クラブとか行くと知らない人とも積極的に話せるし友達増えるんだけど、音楽と雰囲気で勢い付いてただけで基本コミュ下手だから後日連絡来てもどう接したらいいかわからなくて困る
11. 匿名処理班
※2
それだな
ただイラついて、踊りで発散させているだけだな
12. 匿名処理班
30kHzって周波数高くない?って思ったけど、どこかで翻訳ミスってるぽい。
ソースにはVLF スピーカー (8 〜 37 Hz)と記載がある
13. 匿名処理班
マイケルのスムースクリミナルが
わかりやすいな
14. 匿名処理班
>>7
私もヘンだなぁと思ってソース辿って確認したら、8〜37Hzと書かれてたよ
VLFの定義が違ってるみたい
そりゃそうだよね、電磁波のVLFなんて人からすれば中音〜超音波だし
15. 匿名処理班
自宅の換気扇とか、夜響いてる感じ
16. 匿名処理班
※2
低音の「量」の話だね。
この記事のは、「質」の話じゃないかな?
で、あたくしも、やったらブーミーな低音強調は嫌いです。バランスが大事だよね。
17. 匿名処理班
ポルターガイストも低周波で踊ってたんだ
18. 匿名処理班
低音聞こうが欠片も踊りたくなったことないわ
踊りたくなるやつは低音関係なく音聞けば踊りたくなるんだろ
19. 匿名処理班
逆から考えると、踊ったり、獲物を追って小刻みにステップを踏んだり、そういう複雑な全身運動でいろんな筋を収縮させたり骨に負荷かけたりしたときに、ヒトは自らの神経系に低周波的ななにかを響かせて感じてるんではないかと。
だもんで安静時でも脳が超低周波を感じると、錯覚して「運動の時間だ!」モードになってしまうのでは?
20. 匿名処理班
低音てだけではだめで、低音がリズムを刻んでる必要があると思う
耳に聞こえないくらいだとしても楽器からは出てるんだろうし
21.
22. 匿名処理班
※14
ありがとう!パルモさんも訂正してくれてた
筋トレとかランニングなんか、ほかのことにも応用できそうでいい情報だね!
23. 匿名処理班
>>2
街中で激ウーハーで走ってる車の運転は大体…ね。
24.
25. 匿名処理班
車にウーファー積んでどんどん鳴らしてサービスエリアとかでノリノリの若者の行動は合理的だったとは
26.
27. 匿名処理班
太鼓の音を聞いていると自然と体が揺れてくるのはこのせいか
28. 匿名処理班
ズン・ズンズン・ズンドコ
29. 匿名処理班
シューマン波と関係あるかもね
30. 匿名処理班
虐殺器官にあったなぁ
軍隊の音楽は、まるで拳を開くようにわたしの背筋を伸ばす
音は意味をバイパスすることができる
31. 匿名処理班
ずんだ、ずんずんだ、ずんだ、ずんずんだ
32. 匿名処理班
>>13
パン!
茶!
宿直!
33. 匿名処理班
ヒップホップ系やブレイクダンスのバックに使われるブレークビーツは低音を強調するし、ファンクやR&Bみたいなグルーヴのある音楽はベースラインが重要だったりすからこれは納得。
34. 匿名処理班
日本人で実験しても同じなら本物だなぁ
35. 匿名処理班
赤ちゃんがノってます!
36. 匿名処理班
>>34
日本人は低音だの高音だのというより、
阿波踊りとか、ソーラン節とか、よさこいとか、だんじりとかの、
祭り囃子のリズムで体が動く民族な気がする。
若いうちはヒップホップだのラップだの言ってても、
自らのDNAに刻み込まれた大和民族の本能には抗えまい。
37. 匿名処理班
>>5
理性がない前提やめろ
38. 匿名処理班
ベーシストのワイ、深く頷く
39.
40. 匿名処理班
エヴァのティンパニーとかにワクワクするのは踊りたくなるドキドキが混ざってる感じなんかね。