
現在火星にいる探査機は、そうした太古の生命の痕跡を求めて地表の撮影を行なっている。だが、生命の痕跡とただの岩石を見分けるのは至難の業だ。
そこでハワイ大学の研究グループは、もっと手軽に生命の痕跡を発見する検出器を考案した。『Scientific Reports』(2022年6月17日付)で発表した。それはレーザーを岩石に照射した時に現れる生物発光(生体発光)を手がかりに、生命の存在を明らかにする。
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特定の波長を浴びると光る生物の特性を利用
その検出器は、生体の不思議な事実を利用したものだ。どんな生物でも、特定の波長を浴びると「蛍光」を発する色素やタンパク質といった分子を持っている。だから例えば、米コロラド州で発掘された数百万年前の生物の化石を抱えた岩石にレーザーを当ててやれば、「生物発光」が生じる。
実際、アヌバム・ミスラ氏(ハワイ大学)やクリストファー・マッケイ氏(NASAエイムズ研究センター)らは、それが本当に可能であること実証している。
彼らが開発した「コンパクト・カラー・バイオファインダー」は、昼間であっても最大5メートルまで生物発光を検出することができるのだ。
10年かけて開発されたバイオファインダーの特徴の1つは、対象をごく短時間で撮影するカメラにある。これによって昼間の光を無視することができる。
一般に地球外生命の捜索では、DNAのような地球上の生命に似た痕跡を探そうとする。一方、バイオファインダーはもっと大雑把なアプローチをとる。
それが検出するのは、レーザーで生物発光する化合物だけだ。

地球上の生物ならどんなものでも「芳香族アミノ酸」を持つ。そして芳香族アミノ酸なら必ず「蛍光」を発する。
芳香族アミノ酸にはこのような普遍性があるため、たとえ地球外生命が地球の生命とまったく同じアミノ酸を持たなかったとしても、やはり蛍光を放つだろうと考えられる。
一方で課題もある。レーザーを浴びて発光する物質は、アミノ酸と生体化合物だけではない。鉱物の中にも発光(リン光)するものがあるのだ。
幸いにもバイオファインダーには、生物発光とリン光を区別する仕掛けがある。一般に、リン光は生体発光よりもずっと長く持続する。これを手がかりに両者を見分けるのだ。

photo by Pixabay
更なる改良で精度を上げる
だがバイオファインダーも万能ではなく、それだけで生命の有無について最終的な結論を出せるわけではないと、マッケイ氏は指摘する。そのためには、もっと多くの情報が必要になるのだ。バイオファインダーで発光するサンプルが見つかった場合、それをさらに分析して、本当に生物由来のものなのかどうか詳しく調べる必要がある。
バイオファインダーの開発にも携わったことがあるパトリック・ガスダ氏(ロスアラモス国立研究所)は、具体性に乏しいことが最大の欠点と指摘する。
例えば、火星探査車「パーシビアランス」に搭載されているスーパーカムもまた、レーザーで岩石や土の化学組成を調べることができる。それでも直接的な分析とまったく同じデータが得られるわけではない。

そうした欠点を克服するべく、現在ガスラ氏とミスラ氏は、共同でバイオファインダーの改良版「オーガニカム(OrganiCam)」の開発に取り組んでいる。
こちらもレーザー誘起蛍光法が採用されているが、くわえてラマン分光法という化学分析技術が取り入れられており、レーザーで対象の分子組成を測定できる。
またこうした機器を実際に地球外で使うには、探査機に搭載できるよう小型化し、打ち上げ・惑星への着陸・宇宙線でも故障しないよう耐久性をも高めねばならないという。

photo by Pixabay
地球でも未知の生命体の探査に有用
いつの日か、バイオファインダーは地球外生命発見という大ニュースをもたらしてくれるかもしれない。だが、じつのところ地球上でも便利な装置だ。マッケイ氏は一例として、メキシコの山脈の地下にある巨大な石膏結晶で満たされた洞窟を挙げる。そうした結晶の中にも珍しい極限環境生物がいるかもしれないが、今の時点でそれを調べるにはハンマーで洞窟を削らねばならない。
いくら科学のためとはいえ、貴重な洞窟に傷をつけるなど、いろいろ問題もあるだろう。だがバイオファインダーなら、洞窟を破壊することなく未知の存在を探すことができる。
地球であれ火星であれ、あるいは他の惑星であれ、バイオファインダーなら砕いたり、孔を開けたり、サンプルを回収したりすることなく生命を探すことができる。それがこの画期的検出器の核心となるコンセプトなのだそうだ。
References:Biofinder advances detection of extraterrestr | EurekAlert! / written by hiroching / edited by / parumo
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コメント
1. 匿名処理班
近隣の惑星には何も居なさそう
太陽系に植物生物いるの地球だけだろ
地球以外は砂・土・岩しかねえ
なんとか高速航行を可能にしてもっと外に探しに行くしか
2. 匿名処理班
一昔のキャバクラみたいにブラックライトだらけになるのかな?
3. 匿名処理班
ああ!なんでこの方法を思いつかなかったんだろう!
カラパイアの過去記事でも「生物発光」の話題はいくつもあったのに!
(まあ自分は科学者じゃないしけど…)
4. 匿名処理班
わたくしといふ現象は
仮定された有機交流電燈の
ひとつの青い照明です
5. 匿名処理班
火星に生物がいたとする
それが一体何だというんだ?
地球で他にやることいっぱいあるだろ
6. 匿名処理班
えっ、宇宙人にも禿げが
7. 匿名処理班
※5
いつも思うんだけど、何で0か1かでしか考えられない人が居るんだろうな
科学や産業の発展のためには、それこそ今は役に立たなそうな研究でも色々やってみるのは大事だと思うんだけど?
この記事の最後の方にもあるけど、バイオファインダーの研究は地球上での生態研究にも役立つし、そうすれば環境保全だとか薬品に利用可能な生物の発見とかにも使える
もちろん火星生物の研究は将来の宇宙開発にも有用だろうしね
8. 匿名処理班
発光を捉えるだけかと思ったらレーザー照射で発光させるのか。俺の骨も何万年経っても光るんかな…
死ぬまでに生物の痕跡や地球外生命体発見のニュースが聞けたら良いなぁ。夢を抱いて逝ける